コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 同じ空の下で
- 日時: 2013/07/12 20:05
- 名前: 蛍 (ID: nhHNmtBk)
prologue
「また 来年も会えるといいね」
今ではもう
思い出せない、彼の声。
今 あなたは
何を想っていますか 。
- Re: 同じ空の下で ( No.1 )
- 日時: 2013/07/12 20:37
- 名前: 蛍 (ID: nhHNmtBk)
玄関のドアから一歩外に出ると、
体を突き刺すような凍った空気が
爪先をかすめた。
上を見上げると、一面の星空から
雪が降りてくるのが見える。
吐いた息で,空が白く曇った。
私は、心配して「雪降ってるじゃない。今年はやめといたら?」
と言って出てきた母に、「大丈夫だよ」
とだけ言って、自転車にまたがった。
目的地は決まっていた。
あの場所ならきっとよく見れるだろう。
自転車のカゴに、望遠鏡と懐中電灯だけ入れて
ペダルを踏んだ。
今日は 数年に1度の、流れ星の日。
私の住んでいる地域では、何年かに1度
大量に星が見える日がある。
それにまぎれて、流れ星が流れる。だから流れ星の日。
いくつかスポットもあって、
綺麗に見える場所なのだが、
私がまだ幼い頃に父に連れられて行ったところ、
写メを撮ってる人や、うるさい人などで
とても天体観測、なんてものはできなかった。
それ以来、私は家のベランダから見ていた。
でも今年は、ちょっと遠出をして
絶対綺麗に見える、と確信した場所へ行く。
ちょっと寒いけど このくらい平気だ。
あそこはきっと人もいないはず。
手がかじかんできて、段々スピードが落ちる。
腕の時計を見ると 夜の10時半を指していた。
耐えろ、今まで工場やビルの光に邪魔されて
見ることができなかった空が、ようやく見れるんだぞ。
そう言い聞かせて、もうすぐ、と思った瞬間 。
思いもしない光景が目に入った。
私の目的地。つまり浅枇野川をはさんだ橋。
そこには 人、人、人。
携帯を持った人、ギャルの格好をした人
家族連れの女性。
少なくとも、40人ほど居る。
残り数10メートル、というところで
私は一気に興奮が冷めた。
どうしよう、家に戻ろうか。
雪も酷くなって来たし、それが1番いい考えかも。
それか、あの中に入るか。
せっかく望遠鏡を持ってきても
きっと使うことができないだろう。
私は諦めて、元来た道に戻ろうとした。
「あ!」
私の目に映ったのは、浅枇野川の河上のほうの土手だった。
ちょうど人が座れるスペースはあるし
あの集団ともかなり距離がある。
見たところ、人はいない。
あそこなら。
私は強く、ペダルを踏んだ。
- Re: 同じ空の下で ( No.2 )
- 日時: 2013/07/12 20:45
- 名前: 珠紀 (ID: 6AakIVRD)
はじめまして
文章がとても素晴らしいです
丁寧できちんと読者に伝わってきます(´・ω・`)
珠紀も見習いたいと思いました焦
『彼』とは誰なのかとても気になります。
更新頑張ってください!!
- Re: 同じ空の下で ( No.3 )
- 日時: 2013/07/12 22:11
- 名前: 蛍 (ID: EJjJyNPn)
自転車を止め、冷えきった手をこすり合わせた。
どうやら予想が的中した。人の気配はない。
マフラーで顔を庇うようにし、
カゴから望遠鏡と懐中電灯を出した。
白い息をはきながら、土手へと降りる。
川は音もなく、静かに揺れていた。
白い雪が、水面に落ちては溶け、それを繰り返す。
それだけでもとても幻想的だった。
住宅街からだいぶ離れているので、
明かりも全くない。いくら星が出ていても
これだけ真っ暗だと何も見えないと思い、
懐中電灯のスイッチをいれた。
「うわっ」
いきなり横から声がし、
驚いた私は声がした方に光を当てた。
1mほど離れたところに座っていたのは、
高校生くらいの人だった。
その人は光をさえぎるようにして、腕で目を覆う。
「すみません!先客がいたなんて知らなくって…」
私が慌ててそう言うと、
その人は目を覆ってない方の腕を振った。
「いや、暗いし分からないの当たり前だから。
俺も分からなかったし。
あの、それより懐中電灯…」
「あっすみません、すぐ消しますね」
そう言って、私は懐中電灯をポケットにしまった。
どうしよう。
離れた方がいいのかな。
ここだときっと迷惑だよね。
私がとぎまぎしていると、彼は苦笑した。
「いいよ、ここ座りなよ。毛布敷いてあるんだ。
今日寒いでしょ?」
ふいにかけられた優しさだった。
同学年の男子達とはまるで違う。
顔はよく見えないけど、大人しそうな人だと思った。
「ありがとうございます、じゃあ…」
私は彼の隣にちょこん、と座らせてもらった。
何か話した方がいいのかと、
またもやそわそわする。
「綺麗だね。」
隣の彼を横目でみると、真っ直ぐ上を見上げていた。
そっか。私、星を見にきたんだった。
「星、好きなんですか?」
「うん。小さい頃、プラネタリウムに行ったんだ。
そしたら、自分の住んでるところでも同じものが
見れるって知って。それからかな」
「へぇ… 私はそんなには詳しくないんですけど
この街から見る星が一番好きなんです。」
「俺も」
髪や顔に雪がかかる。
先ほどまで凍るような寒さだったのに
それが少しやわらいでいた。
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