コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 5ーanotherー
- 日時: 2013/07/29 21:32
- 名前: トウマ (ID: 5TWPLANd)
これはトウマが書いている『5』の本編に入り切らない番外編です。
本編を読んでなくても大丈夫かも知れませんが、本編も読んでくれるとトウマが喜びます。あと、そっちの方がわかりやすいです。
弱者の強み。
里見 春喜 AND 山梨 智哉
“ジャッジ”コンビの昔話
今日で俺たちの人生の10年間が終わる。長かったような、短かったような。だが、5年間ぐらいは記憶にないからやはり短いのだろうか?
ああ。勘違いしないで欲しい。
別に今から死ぬとかではないから。
今日は俺と春喜の誕生日なのだ。
春喜と智哉は家も近所で、生まれた病院も一緒。生まれた日も同じ。時間は春喜の方が2時間程早かったらしいが、殆ど同じ都合で生を受けたわけである。
「今日は春喜も智哉の家よね?」
さすがに生まれた日は全然違う幼馴染の柚子が春喜の肩を叩いた。
学校は菓子の持ち込み禁止だが、別の手には飴が握られている。
紫と赤がマーブルになったそれは魔女がかき混ぜる釜の中身を想像させる。
「もちろん。今日は家に誰もいないし」
誕生日の集まりは毎年智哉の家だった。
それは今年も変わらずで、春喜は口をにんまりとして智哉にピースなどしている。
「桜連れて後から行くから」
「うん。親にも言っとくよ」
「智哉んちに直行するから」
「家帰れよ。隣だろ」
「あれ? 扱いに差を感じる? これは俺の気のせいだろうか」
「気の所為だ」
「気のせいよ」
6月の雨の多い季節。
梅雨の雨に俺は悩まされていた。
春喜には智哉にも言ってない悩みがあった。
ザーー。ザーーーーー。
ガーーガッ。ザーーーzaaaー。
『最近、ヒドイな』
ガーガーッ。ザーーーーー。
ガァァーーガ。ザーー。
頭痛にも似た耳鳴りである。
ザーとかガーガーとかのノイズが前触れなく訪れる。
春喜は人目がないのを確認すると、普段はけして見せないしかめっ面をした。
「音の異能か」
「へ? うわっ!」
驚いたことは、言うまでもないだろう。
確かに人目を確認したのにその女は春喜の眼前にいた。
リアクションが遅れたのはけして春喜のマイペースではない。
「あぁ。驚くな。確かにお前が確認したときはここにはいなかった」
女はニタッと歯を見せて上を指差す。
「頭上注意だ」
年は30代の半ばだろうか。
だが、若々しさを感じる。
「空でも飛んでた?」
「そうだ。親戚に天狗がいてね。ちょっと空の歩き方を教えてもらった」
「天狗は空を飛ぶんだよ」
「多少は生意気な子どもだな」
「異能って? エスパー? サイコパス? コンパス? 定規? 鉛筆?」
「肝の据わった喰えないやつだな。お前、名前は?」
「サトヤ」
……即答が真実とは限らない。
普段は能天気だ、頭の中が春爛漫だ、お花畑だなんだと言われているが、春喜はキレる子どもだった。
「そっちの天狗は?」
「“ホウキボシ”」
「へぇ?」
危機感がなかった訳ではない。
ただ、その女の人は敵ではないと感じたのだ。
「あの子供は違う。耳鳴りは音の異能者の特徴だ」
「おかしいな。東弟が重力捜査の異能だって」
「左京か! 右京の方にかまされたんだろ?」
「いえ。確かに弟の方だと思ったんですが。柚鷹もいなかったし」
「だから言ってるだろ? あの兄弟は扱いにくいと」
春喜の泣き顔は見たことがない。
いつでも緩い笑顔をしている。
作り笑い、愛想笑いは気に入らないが、春喜のはそういう類いでない。
元から緩いのだ。
「遅いわね、春喜。何で隣なのに一緒に帰らないの?」
「俺も体育委員会があったんだよ。とにかくその向けてるチョコを降ろせ! 溶けるぞ」
「お姉ちゃん。ハル兄こないの?」
「家にも帰ってなかったしな」
「智哉。ちょっと学校まで見に行こうよ」
「私も行く!」
「雨降りそうだから桜はここにいて」
年下の桜は不服そうだったが何も言わなかった。
何故春喜の泣き顔のことを考えたのか。
それは最近春喜が何かを深くかんがえているようで、時々表情が愛想を浮かべていたからだ。
また家で何かあったのか?
と、心配していたのだ。
以前に春喜の家でポルターガイスト騒ぎがあった。
風も吹いていないのに物が倒れたり、椅子が浮いたりしたと。
その時も春喜は智哉が頑なに質問攻めにしなければ言い出さなかった。
まったく良くで来た幼馴染である。
傘を用意しているとき、ドアが開いた。
「あれ? 出かけんの?」
「ハル!」
キョトンとした顔の春喜だった。
「お前なにしてたんだよ?」
まさか、耳鳴りが酷くてぶっ倒れてたなど言えるまい。
「ノラネコと戯れてた」
……即答である。
「おじさんとおばさんは?」
「さっき店に戻ってったよ」
「柚子がいるってことは桜ももういるんだろ? 腹減ったよ。もう始めよう!」
「最後に来たのが何言い出してるのよ。罰としてケーキのイチゴはちょーだいね」
「あれ? 俺たちの誕生会だよね?」
「主役はゲストをもてなさないと」
「何か違う気がする!」
この頃から世間に異能者は増え出していた。
多くの組織が誕生したし、多くの事件が起きた。
ポルターガイストはそりゃビックリ! だったよ。
相変わらず家で一人の時しか起こらないし、最近は耳鳴りもすごいし。
だけど、変なことはそれだけで終わらなかった。
天狗に会ったのもそうだしーーいや、天狗の親戚か? 親戚が天狗だったけ? まぁ、どっちも一緒だ。
子供だけでワイワイやってると、来客があった。
「おかしいな。今日も店やってるんだから、そっちに行くとおもうんだけど」
智哉の家はケーキの美味しい喫茶店だ。
近所では評判で人気がある。
だから、
まぁーーーーおかしかったんだ。
全て。
過激派の思想はすでに広まっていた。おかげで異能者犯罪は増えていたし、異捜もとっくにできていた。
この頃はまだ知らなかったが、流れるニュースの特ダネの多くは異能者絡みだったらしい。
「もう泣くな」
「うっう……。だって、こんなに、小さな子が……」
「香。何か見えたか?」
「……………………犯人は大学生ぐらいの男。……能力は馬鹿力みたいだ」
「4人目か」
被害者は小学生の低学年ほどの子供だった。
強い力で顔を殴られている。
過激派の思想に酔った矮小な犯人はいつも子供を狙う。
雨が降り始めた。
香と達己は被害者が雨を凌げるようになるまでそこを離れられなかった。
何が起こった?
何が起こった?
智哉が飛んでいる。
壁にドスンと嫌な音と共に当たってやっと落ちた。
何が起こった?
柚子が悲鳴をあげて桜をだいた。
聞こえてくる笑い声。
ははははははははあは。あは。
よく飛んだなぁ。ああ。でも、死んでないだろ? 手加減って難しいんだぜ?
何が起こっている?
Page:1 2
- Re: 5ーanotherー ( No.1 )
- 日時: 2013/07/29 22:02
- 名前: z@w* ◆ASDjPGARDc (ID: eso4ou16)
来ました( ☆∀☆)
智哉に一体なにが?!
番外編続きが気になるq(^-^q)
- Re: 5ーanotherー ( No.2 )
- 日時: 2013/07/30 19:25
- 名前: トウマ (ID: 5TWPLANd)
z@w* ◆ASDjPGARDcさん
いらっしゃい(^^)/~~~
どうもです。
本編そっちのけで番外編書いたトウマです。
智哉はハッキリいってピンチですよ。
トラウマ決定の瞬間ですね。黒歴史ですね。あの頃は若かったですね。
続きもすぐにあげるので是非見て下さい(OvO)
- Re: 5ーanotherー ( No.3 )
- 日時: 2013/07/31 07:46
- 名前: トウマ (ID: 5TWPLANd)
「さと!」
「うっう……。ハル、逃げろ」
駆け寄った春喜の腕を掴み、智哉が力ない声で言った。
全身に痛みが走るのか、ビクンと体が唸っているのに、その腕だけが力強い。
「柚子と桜を連れて裏から」
「おおっと。逃がさねぇよ? せっかくの獲物逃がすわけねぇだろ」
男が首を馴らしながら土足で入って来た。
桜を抱く柚子。
その横の誕生日ケーキを見て、
大口を楽しそうに開く。
「はははははは。お前らも次は俺みたいに新人類に生まれたらいいな!!」
それは死刑宣告と変わらなかった。
「新人類って何よ! 早く二人から離れて!! 警察呼ぶわ!」
柚子は普段はおっちょこちょいでドジを踏むことも多いが、しっかり者だ。
すぐに携帯を出して男に気丈に言った。
楽しいのは男である。
「ケーサツを呼ばれちゃうよーー? ぼくちゃん困っちゃうww やめてよ〜〜」
「なに?」
「ふふふ。あは。はあふはあははあはーーーーーバーカ」
男が拳を作って智哉に肩を貸そうとする春喜を殴った。
いや、そのギリギリの壁を殴った。
ばきっ。
嫌な音がして春喜の目に小さなゴミがはいり、目を瞑った。
いや、違う。
壁が吹き飛び、木っ端が目に入ったのだ。
「ケーサツなんか皆殺しだ」
目が、同じ人間の目ではなかった。
それは血に飢えた蝙蝠のような目で、春喜は息を呑んだ。
死ぬ。
殺される。
嫌だ。
柚子も
桜も、
智哉が死んでしまう。
ーーーーーー嫌だ!!
それを思った直後。
男の拳が春喜を襲った。
「い、イヤぁぁぁぁぁ」
「ハル兄ーー!」
柚子達の声が聞こえ、
「…………はる?」
耳元で智哉の声を耳に、
春喜は体に衝撃を感じるまでもなく、叩きのめされた。
「こいつ! 笑ってやがる! アタマいってんのかぁ?!」
春喜の華奢な身体がボールの様に弄ばれる。
口からは血が出て、腹の服が捲れた所には鬱血が見えた。
今、生きているのかも危うい。
「クッソッ! おい! ハルに触んな!」
智哉は男の足に抱きつき、春喜を庇ったが、敢え無く後ろに蹴り飛ばされた。
「ムカつくなぁ。もっと逃げ惑えよ。こいつサンドバッグ決定ぇ」
男に再度挑もうとするボロボロの智哉を桜が止めた。
小さな顔が涙で一杯になり、それでも智哉を止めるために首を降り続けていた。
「柚子。あいつが俺と春喜を殴ってるうちに桜と大人読んで来てくれ」
少し冷静になった頭をフル回転させる。
「逃げろ」とは言うな絶対に柚子は出ていかなくなる。
「でもーー」
「全員でいても殺されるだけだ。速く!! 春喜が死んだらどうする?!」
切実だった。
桜の手を振り切り、柚子の背中を押して、男に飛びかかった。
「ハルから離れろつってんだ!」
肩を噛んでやるつもりで行ったのに、そのまま床に押しつぶされる。
「てめえ……。あっ! あとの二人はどこ言ったんだ?!」
それを聞いて安心して男に唾をはける。
「さぁな」
智哉は十分冷静だった。
男が自分に狙いを変えれば春喜は殴られない。蹴られない。
そうすれば、もしかしたら二人とも柚子が読んで来た大人に助けてもらえるかもしれない。
春喜の泣きっ面も見ずに死ぬなんてごめんだ。
歯を食いしばり、男の蹴りに身を硬くした。
目が覚めたとき、春喜は全身の痛みに声を上げることすらかなわなかった。
焦点の合わない視界がやっと一つに重なったとき。
再び、10歳の里見 春喜は眠ってしまった。
目の前で幼馴染が殴られ、蹴られ、それでも唸り声一つあげていない。
春喜に気付いた智哉は口をパクパクと形にならずに動かしていた。
『そ、のま、ま』
だが、はっきりと聞こえた。
男はまったく春喜が目覚めたことに気づいていない。
智哉はこんなに大きな声で叫んでいるのに。
それから、小さかった唸り声がだんだん叫ぶ様に聞こえてくる。
『うっ』
『がっ…』
何故聞こえない。
耳鳴りが酷い。
智哉の叫びが聞こえる。
やめろ。
やめろ。
やめろ。
やめろ。
やめろ。
やめろ。
耳鳴りが、
やめろ。
やめろ。
やめろ。
やめろ。
やめろ。
やめろ。
やめろ。
やめろ。
やめろ。
『あぁぁぁあぁぁぁあああぁぁぁ』
声にならない叫びが男の耳に飛び込んだ。
瞬間。
ぶちっ。
「ぅっっ!! 何だ! いてぇ! 血が! 何で! 耳から! 血! 聞こえねぇ!何だ!どう!なって!聞こえねぇ!聞こえねぇ!!」
男の片耳、春喜にちかかった方から血が流れた。
智哉が驚きに目を見開く。
男の血? そんな些細なことはどうでもいい。
春喜。
ハル! どうしたんだ!
その目に映ったのは、
感情の一欠片も無い、
仮面を貼り付けた様な、
無表情の春喜だった。
- Re: 5ーanotherー ( No.4 )
- 日時: 2013/07/31 09:40
- 名前: z@w* ◆ASDjPGARDc (ID: eso4ou16)
お、恐ろしい((((;゜Д゜)))
春喜くんが覚醒しただと(笑)
Page:1 2
この掲示板は過去ログ化されています。