コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- VISIBLE(完結) 良ければコメお願いします!
- 日時: 2013/07/30 16:34
- 名前: すをん (ID: rMENFEPd)
「幽霊」
この世に未練が残り、成仏できない死者の魂。
幽霊は未練に縛られ、この世を憎み苦しんでいる。
そう思われがちですが…。
「彼らは、意外と幽霊ライフを楽しんでいます(笑」
時に、人間を脅かしてみたりする事もありますが…呪い殺す事などできるわけがありません。
しかし、訳あってこの世に留まっている事は確かです。
これは…そんな彼らの声を聞く事ができる…1人の高校生の物語。
これは、小説では無く…一つの物語として見て貰ったら幸いです。
- EP2「幽霊ストーカー ( No.3 )
- 日時: 2013/07/30 16:01
- 名前: すをん (ID: CWUfn4LZ)
「今日も、全く授業頭に入らなかった…もう受験生なのに〜。」
そう言って、放課後のガヤつく教室の机に頭を横にする。
「由美ちゃんに後で教えて貰おう…。」
そんなこんなで、教科書などに目を通していると1人の女子生徒が私に近づいてく。
「あ、麗愛さん…。」
「ん、何?どうしたの?」
すると、女子生徒は一つの手紙を私に渡した。
「こ、これ…堀沢君に渡して欲しいの!」
「えぇ!?私が!?」
「お願い!他に頼れる人がいないの!」
自分の手紙を他の人に渡させて告白するのもどうかと思ったが、引き受ける事にした。
「分かった!私に任せてよ!」
「ありがとう!やっぱ頼りになるー!」
「で、堀沢君ってどこにいるの?」
「確か…屋上に上がる所見たよ。」
「分かった!じゃあ、行ってくるね!」
そうして、私は屋上に向かった。
途中、窓から飛び降りた人がいたけど気にしない。
屋上に着くと、1人…空を見てる堀沢君らしき人を発見した。
私は、手紙を差し出しながらその人に話し掛けた。
「あのさ、絵里香ちゃんがあんたに渡してって頼まれたんだけど。」
すると、その人はゆっくりと振り返った。
「え、俺?」
「そうだよ。」
その瞬間、その人の目が驚きに変わった。
「え!?君…それどうやってるんだい!?」
私は、キュトンとした。
「え…どうやってるって…何を?」
その人は、手紙を指さした。
「手紙だよ!どうやって持ち上げてるんだい?俺と話せるって事は君も幽霊だろ?」
「………………。」
「え、何?」
「………………。」
「まさか、君…。」
「人違いでしたー!!!」
そして、私は猛スピードで屋上を出て行った。
「あ、ちょっと待ってくれ!」
私は階段を駆け降り、鞄を持って校舎を出た。
途中、超笑顔で階段を転げ落ちてる人がいたけどやっぱり気にしない。
「だから、ちょっと待ってくれよ!」
その声が聞こえたのは真上からだ。
「えっ?」
さっきの幽霊が屋上から飛び降りて、私に一直線で落ちてきた。
「ぎゃああああああ!」
私は思わず尻餅をついたが、幽霊は私の体をすり抜けて着地した。
周りから見れば、私はもちろん狂ってる。
「いやあああ!!」
私はまた走り出す。
「ちょっと!まだ逃げるのかよ!」
もう、自分でも何で逃げてるのかも分からない。
それに、私は部活には所属していない。
校門辺りで限界だった。
「はぁ…はぁ…はぁ…あんた速過ぎ…。」
「そりゃ幽霊だからね。疲れないからどこまでも全力疾走だよ。」
私は、近くの公園で水を飲んだ。
そして、ベンチに座り一息付いて聞いた。
「で、私に何か用?」
「用も何も、本当に俺と話せるの!?」
「今話してるじゃん。」
「いやー、霊媒師とかを何件も訪ねたんだけど…どこもインチキでさ…。」
「まさか、本当にいるなんて思わなかった!」
あれ?これって、頼み事されるパターン?
私はベンチから立った。
「そ、そうなんだー!じゃあ、私は急いでるのでこれで…。」
「あ!ちょっと待ってくれよ!君に頼みたい事があるんだよ!」
ほら見ろー!!
「ごめんなさい!本当に急いでるから!」
そう言って、私は家に向かって走り出した。
冗談じゃない!
幽霊の頼み事なんてきっとまともじゃない!
私は家に帰り、水を飲んだ。
「あら、おかえり…どうしたの?そんな息切らして。」
「いや…何でも無いよ…。」
私は自分の部屋のドアノブを握った時、あるお約束が脳裏を過ぎった。
いるんじゃね?あいつが…。
だって、そうじゃなきゃ物語的に面白くないでしょ?
私はドアを勢い良く開けた。
「いるんでしょ!?」
「よっ!遅かったね。」
やっぱりいた。
- EP3「幽霊の頼み事」 ( No.4 )
- 日時: 2013/07/30 16:03
- 名前: すをん (ID: mKkzEdnm)
「いくら幽霊でも、年頃の女の子の部屋に勝手に入るなぁぁぁ!!」
私は、その辺にあるドライヤーやハサミなどを投げつけた。
もちろん当たらない。
「いや、ちょっ!まぁ、とりあえず落ち着いて!」
「しかも、部屋ちょっと散らかってたし…最悪!」
私が落ち着くまで、結構な時間が掛かった。
「あのさ…悪かったよ…ごめんってさっきから言ってんじゃん。」
「…………………。」
私は、目を逸らしたまま何も言わない。
「やっぱり…まだ怒ってる?」
「当たり前!早く出て行ってよ。」
すると、幽霊は頭を下げて言った。
「頼むよ!君にしか頼めない事なんだ!」
「嫌だ!」
「頼むよ!一生のお願い!」
「一生はもう終わってるじゃん!」
はぁ、とりあえず…話し聞いてあげないと帰ってはくれなそうだね。
私はため息をつきながら言った。
「…話しは聞いてあげるから、ちゃんと帰ってよ?」
「本当!?良かった!ありがとう!」
幽霊の表情がとても明るくなった。
良く見れば、イケメンな幽霊なんだよなぁ…。
「…君の身体……ちょっと貸して欲しいんだ……。」
「はい、分かりました。お引き取り下さい。」
そう言って、私は部屋を出ようとする。
「ええ!?ちょっと待ってくれよ!即答かよ!」
「ごめんなさい、許容範囲を超えました。」
「ってか、バカじゃない!?いきなり、私の身体を貸すなんてできるわけ無いでしょ!!」
「頼むよ!1日だけで良いから!」
「それに長い!」
とりあえず、私は座った。
「で?何?私の身体で一体何をするつもり?」
「話しをしたい人間がいるんだよ…。」
「話したい人?」
「え、ちょっと待って…それって私の身体でその人の所に押しかけるつもり!?」
「うん。」
「駄目に決まってるでしょ!?いきなり見ず知らずの女がフレンドリーに話しかけても、私の今後の人生に関わるだけだよ!!」
「あ、そうだね。」
「あなた、頭良さそうな顔してるけど…本当はバカでしょ?」
やばい、頭が痛くなってきた…寄りによってなんでこんな常識外れの幽霊の頼みなんか…ってか幽霊の存在自体、常識的じゃないけども!
「とりあえず!生きてる人に俺の言葉が伝えられるような何か良い案を考えろよ!」
「何でそんな上から目線!?」
すると、下の階からお母さんの声が。
「麗愛?さっきから声が大きいけど誰かいるの?」
「あ、いや、誰もいないよ!大丈夫だよ!」
そして、私は小声で話した。
「とりあえず、話しはまた明日聞くから…今日はもう帰ってよ…!」
「分かったよ…。」
そう言うと、幽霊は壁の向こう側に消えて行った。
翌日
私は、学校に行く準備をしていた。
結局、あの後は一度も顔を見せなかったあの幽霊。
もしかしたら、もう私の前に姿は見せないんじゃないかと思ったりもしていた。
「いってきます!」
ビルから幽霊が飛び降りているのが見える。
やはり、いつも通りの朝だ。
「よっ!おはよ!」
やはりいたか…。
「やっぱりいたんだね…。」
「もちろん!ずっと君の家の庭にいたよ!」
暇な幽霊である。
「あ!そういえば、自己紹介してなかったね!」
「俺は、逢沢 蒼空!君の名前も教えて欲しいな!」
「夕凪 麗愛だよ。言っておくけど…まだ手伝うとか決まった訳じゃないからね?」
「えー、なんでだよー!ちょっと身体貸して貰うだけだからさ!」
「だから、それが駄目なんだってば!」
2人は学校に向かって歩いて行く。
「あ、じいさん!おはよう!」
「よ、おはよう!今日もビルから飛び降りるか?」
「悪い、今日はちょっと用事がな…また今度!」
学校に向かいながら、私は話す
「あのさ、やっぱ学校までついて行く気?」
「もちろん!俺も毎回学校で昼過ごしてるからな!」
蒼空は笑顔で言った。
「いやぁ、嬉しいよ!こうやって、また生きてるやつと話せるなんてさ!」
「そう?とりあえず、授業は邪魔しないでよ?ただでさえ幽霊が見えて集中できないんだから…。」
「分かってるって!」
そして、授業中。
「なぁ…暇なんだけど…。」
「………………。」
「そうだ、指スマしようぜ。」
「なぁ…。」
「うるさい……!今授業中なんだから、あんたと指スマなんか出来る訳無いでしょ!」
「分かってるって…。」
そして授業が終わり放課後になるなり、私は机に横になった。
「あー!!今日も何も分からなかった!あんたのせいだからね!」
「悪かったって…。」
一言謝ると、蒼空は一つの机を指さした。
「なぁ、今日来てなかったけど…あの机って誰の席?」
「えっと、新井 未来さんだっけ…?1年生の時は来てたけど、2年生くらいになった時から学校来なくなっちゃったの。まぁ、引きこもりってやつかな?」
「来ていた時も、何となく暗くて…話してる所なんか一度も見た事なかったなぁ。」
「そっか…。」
蒼空の目は、少し悲しそうだった。
「どうかしたの?」
「いや!なんでもない!それより、麗愛ちゃんの身体に乗り移れる方法を知っている人が駅にいるんだ。ちょっと寄って行こうよ!」
「だから、私の身体は貸さないって!!」
- EP4「幽霊の憑依講座」 ( No.5 )
- 日時: 2013/07/30 16:05
- 名前: すをん (ID: Yry.8Fde)
とか言いつつも駅に向かう私。
だって、言う事聞かないと何するか分からないし…。
幽霊だもん。
蒼空は駅のホームに入って行った。
「ちょっ!ホームに行くの!?待って!入場券買うから!」
私は、100円玉を入れて入場券を買った。
思わぬ出費だ。
「で、どこにいるの?」
「ほら、あの隅にいるじいさんだよ。」
目を凝らすと、人混みの中に1人座ってる老人がいる。
「よっ!じいさん!久しぶり!」
すると、老人は睨みつけるように私を見た。
「ひっ!」
呪われそうだ。
何秒か私を見た後、老人は言い放った。
「何だその娘…ワシが見えるのか?」
私は焦って口がまわらなくなったのを察した蒼空が答えてくれた。
「そう!麗愛ちゃんって言うんだけど、俺達が見える生人らしいね。」
「ほう…。」
すると老人は、麗愛の方に近寄ってきた…。
「あ、あの…。」
「確かに、やつと同じ感じがする。」
その言葉を聞いた麗愛は、思わず口走った。
「え、やつ?」
「ワシは、一度お前のようなやつに会っておる。」
「え!?そうなんですか!?」
「もう50年前の話じゃ。」
私みたいな人が他にもいたんだ…。
ちょっと安心した気がした。
「で、その時に…乗り移る事ができたんだよ。このじいさんはな、だから聞きにきた。」
「なるほどね…って、だから乗り移られるなんて嫌だからね!」
「む?お前乗り移りの方法を聞きにきたのか?」
「そうなんだよ!頼む!じいさん!教えてくれ!」
「…構わんが…宿主には、ちょっとした副作用が起きるぞ?」
副作用だってぇぇ!?
聞かないわけにはいかない。
「え!?副作用!?何ですか!?」
「もの凄く体がだるくなるな。」
「よーし!分かった!じゃあ、早くやり方教えてくれ!」
「待ったぁ!!私の身体の心配は無し!?」
「え、良かったじゃん。人間だれでも経験するような事で。」
「いやいや、だけども!」
「簡単じゃ。憑く側と憑かれる側が「そるろす」って言った後に、憑く側がゆっくりと憑かれる側の身体に入れば良い。」
当然の事だが、蒼空が聞いた。
「そるろすって?」
「知らん。」
「え!?ヘンテコ過ぎるでしょ!?」
「とりあえず、試しにやってみたらどうじゃ?」
「そうだな!よーし!麗愛ちゃん行くよ〜!?」
「まてーい!!」
話を急激に進めすぎである。
「憑く側と憑かれる側の心境は違うの!!憑く側ワクワクしてるのか分からないけど、憑かれる側は不安しか無いの!」
ごもっともである。
「え〜、じゃあ止めるの?」
「…はぁ…やるよ…仕方ないなぁ…。」
2人は並んだ。
「そるろす。」
「………………。」
「え、もう行って良いの?」
「早くしてよ!!来るなら早く来て!!」
「もう一回じゃな。」
「じゃあ麗愛ちゃん、行くよ?」
「ん〜もう…。」
「そるろす。」
そして蒼空は、麗愛の身体に入ろうとする。
「あ、ちなみにゆっくり入らんと宿主が死ぬからな。気をつけるんじゃぞ。」
「ちょっと待ったぁぁ!!」
蒼空の動きが止まる。
「おじいさん!それは凄い大事な事!体のだるさとかよりも全然大事な事だから!先に言って!」
「はい!3度目の正直!行くよ!」
「本当に…次起きたら、あんた達と一緒になってるなんてごめんだからね…。」
「そるろす。」
今度こそ、ゆっくりと蒼空は麗愛の身体に入って行く。
「どうじゃ?成功か?」
「すげーよ!じいさん!成功だ!」
「おぉ、良かったな。」
「やべ!身体があったかい!心臓の音が聞こえる!」
「やっべー!懐かし過ぎるー!」
周りの人達は不思議な目でこちらを見てる。
「ん?なんだ?あれ…うわっ!!」
すると、麗愛の身体の中から蒼空の幽体が出て来た。
「はぁ…はぁ…あまり騒がないでよ!ってか、本当に憑かれるとは思わなかっ……!?」
「なんか、急に座り込み出したぞ。」
「副作用が出たみたいじゃな。」
これが結構痛い。
「ちなみに、憑ける時間は長くても30秒じゃ。」
「え、そんなんじゃ何もできないじゃないか!」
「はい、じゃあ憑依は無しね!」
「30秒かよ…。」
蒼空は大変残念そうだ。
「そういえばさ、おじいさん。いつもここにいるの?」
「そうじゃ。ワシはこの駅で電車にひかれて死んだんじゃ。」
「その時の痛みときたら、この世の物ではなかったわい。ガッハハハハ!!」
笑い事じゃねぇよ。
「それじゃあ、私は帰ります…。」
「気をつけて帰れよう。」
「じゃあな!じいさん!」
そして、麗愛は自分の部屋に帰ってきた。
「ふぅ…疲れた…幽霊の考えてる事はやっぱり分からないや。」
「まぁ、そんな事言うなよ。」
「って…何でまた私の部屋に勝手に……!」
麗愛はハサミを手にとった。
「わぁわぁ!ごめんっては!頼むよ!寝るまでには出て行くから。」
「はぁ……そうしてよ…。」
麗愛は今日は大分疲れているようだった。
「あ、いっぱいDVDあるじゃん!流してくれよ!」
「くつろごうとするな。」
蒼空は棚を見ていると、一つの写真を見つけた。
笑顔で、私と男の子が写ってる写真。
「ん?誰?彼氏?」
「…あ…。」
私は写真を手に取り、机の引き出しに押し込んだ。
「え、隠すこったぁ無いだろー?」
「良いの!それより、DVD見るんでしょ!?」
「うん、まぁ。」
しかし、私はある事を思いつく。
「そういえば、蒼空だっけ?あなたの目的ちゃんと聞いてないんだけど。」
すると、蒼空は少し表情が硬くなった。
「そうだなぁ…麗愛ちゃん良い人そうだし…話して良いかな?」
「うん…。」
蒼空は静かに語り出した。
「新井 未来…知ってるだろ?」
「うん、引きこもりになっちゃった人だよね。」
「それ、俺が原因なんだ。」
- EP5「幽霊の過去」 ( No.6 )
- 日時: 2013/07/30 16:14
- 名前: すをん (ID: Yry.8Fde)
俺が中学3年生の時の話しだ。
未来と俺は、幼稚園の頃からの幼馴染で…いつしか一緒にいるのが当たり前になっている存在だった。
友達も、最初の頃は冷やかされたが…もう皆慣れて、何も言わなくなっていた。
未来は、本当はポニテが似合う奴で…スポーツや体を動かすのが大好きな明るい奴だったんだ。
バレー部のキャプテンなんかもしていた。
対照的に俺はインドア系で、体を動かすのは嫌いではなかったが…どっちかと言うと家でゲームとか映画を見るのが好きだったんだ。
でも、友達は少ない訳じゃなくて…3年生になったらクラスの学級委員長に推薦されるからい、まぁまぁ人気のある俺だった。
そんな光と影みたいな俺達は混ざり合う事無く、中学最後の夏を迎えた。
「私の最後の大会なんだから、絶対見にきてね!!」
その未来の鈴を鳴らすような声に、休みの日に仕方なく早起きして市民体育館に向かった。
体育館に入ると、まぁまぁ大勢の人が来てる。
インドアな俺は、この空気は嫌いなんだ。
今まで幼馴染をやってきた訳だが、未来のバレーの試合を見るのは初めてだった。
俺が来た時には、各チームがウォーミングアップをしている時だった。
未来は俺を見つけると手を振ってきた。
俺も手を振り返す。
まるで親子だなって思った。
そして試合が始まった。
後になって知ったが、相手は強豪校だったらしい。
1回戦から当たるなんて、運が無い奴だな。
なんて、思いながら見ていたが大健闘。
あんなに必死に頑張ってる未来を見たのは初めてだった。
しかし、試合は惜しくも負けてしまった。
監督との最後のミーティング。
皆泣いてた。
だけど、人一倍負けず嫌いな未来は、何故か泣いていなかった。
ミーティングが終わり、俺の所に来た未来。
「えへ、負けちゃった。」
なんて、舌を出して笑う未来を見てられなかった。
その声が震えてたから。
「すげー頑張ってた。未来のことちょっと見直した…来て良かったよ。」
そんな本音がとっさに出てきてしまった。
すると、未来の顔が徐々に崩れ…俺に泣きついてきた。
「ごめんね…!あたし、蒼空に良い所見せたかったのに…こんな…!」
そっか、ずっと泣くのを我慢してたんだなって思った。
負けず嫌いだから、泣くのを我慢してたんだ。
俺の側で、俺の為に、俺にだけに見せた泣き顔は…俺の心の何かを変えた気がした。
その日、俺は未来に告白された。
ずっと好きだった…けど…ずっと言えなかったらしい。
俺は未来の精一杯に見せてくれた素直な心を、受け取ることにした。
「え?普通に良い話じゃん。」
私は、話の途中で口を挟んでしまった。
「まだ終わってないって、最後まで聞いてくれ!」
「はーい。」
そして、蒼空はまた語り出す。
俺と未来は付き合いだして、未来は部活を引退した。
未来は俺の家に毎日来て、俺は未来に勉強を教えた。
未来は、俺と同じ高校に行きたいらしい。
未来は運動ができる反面…勉強ができなかった。
だけど、未来は頑張ると決めたからには頑張る奴。
みるみる成績は上がっていった。
やっぱり、たまに喧嘩をするが…それが何となく幸せだった。
夏も終わりに近づき、風が冷たくなってきたある日。
俺と未来は放課後の帰り道を歩いていた。
「それでね!お母さんったら酷いんだよ!?私が洗い物してあげたのに……。」
鈴を鳴らしたような澄んだ声で話しながら歩く未来。
いつも通りのはずだった。
青信号を歩く未来は話しに夢中になって信号無視の車に気づかなかったらしい。
俺の体は、自然に動いていた。
次の瞬間、俺は猛烈な痛みと共に意識を落とした。
「それで、あなたは死んだの?」
「だから、人の話しを最後まで聞いてくれ。」
「はーい。ごめんなさーい。」
- EP6「幽霊に出来ない事」 ( No.7 )
- 日時: 2013/07/30 16:18
- 名前: すをん (ID: rMENFEPd)
俺は全身打撲で重傷だったが、助かった。
目が覚めると最初に見えたのは、未来の顔だった。
未来も助かって、本当に良かった。
未来は、一晩中俺に泣きながら謝っていた。
本当に良かった。
毎日欠かさず未来はお見舞いに来てくれた。
今度はちゃんと笑顔で。
そして、2ヶ月ほど経って怪我はほぼ完治していた。
しかし、何故か俺は退院が許されなかった。
そんなある日、俺はいつも通り未来を病院の外まで見送った後に、偶然…自分の親と担当医が病室に入るのを見た。
気になった俺は、病室の戸に耳を当て会話を聞いた。
俺の事を話していた。
聞こえてきたのは俺の名前と
「白血病」
「慢性」
「4ヶ月」
そして、「余命」
え、俺って死ぬのか?
その後、俺の病室に平気で入ってきた親が許せなかった。
俺は、本当に…後4ヶ月で死ぬらしい。
「慢性白血病」
普通白血病と違って、症状が出るのが遅いらしい。
未来には話せなかった。
毎日、笑顔で会いにくる未来を見るのが辛かった。
俺の事を忘れてもらわなくちゃいけない。
クリスマスの夜。
期末テストの結果が良かった未来は上機嫌だった。
「なぁ…未来?」
「ん、なーに?」
未来は、クリスマスツリーを飾りながら俺の言葉に耳を傾ける。
「俺達さ、別れねぇ?」
未来の手が止まった。
「…あはは、一昨日喧嘩したくらいで大げさだなぁ…。」
「いや、マジでさ。」
俺は、本当に最低な事を言ったと思う。
「本当はさ、俺…未来の事恨んでるんだわ。」
「お前を助けたせいでこんなんなっちまって…こんなんじゃ高校にも行けねぇよ。」
「なのにお前は、テストで良い点取って、何調子こいてんだよ。」
違う…俺はそんな事思ってない。
「私はそんなつもりじゃ…!」
「良いから別れろよ。こっちの気も知らないで毎日ヘラヘラ笑いながら病院来やがって。」
違うんだ。
「蒼空…!お願い…!聞いて…!」
「うるせぇ!!早く出ていけ!!」
違う!!
「…………っ!」
未来は俺の前に二度と姿を見せにはこなくなり…。
俺は、俺を忘れさせたかったのに…。
俺は、未来を忘れる事が出来なかった。
余命1ヶ月前。
最後の外出許可が出された。
俺は、当てもなく車椅子で街を移動する。
最後に行き着いたのは公園だった。
よく、子供の頃に未来とよく遊んだ公園だ。
「そういえば、この公園の木の下に…8才の頃…未来と一緒にタイムカプセル埋めたっけなぁ。」
頑張って掘り起こしてみた。
やっぱりビー玉しか入って無かったよ。
懐かしさで涙が出そうになった。
そして…。
3月9日、卒業式の日…俺は息を引き取った。
蒼空は語る。
「未来は、あの時俺に言われた言葉と…俺が死んだ事で深い傷を負って生きてる。」
「辛いんだ俺…そのことを思い出すだけで痛くなる訳無いのに…胸が痛くなる。」
「俺は分かってた。未来は人一倍負けず嫌いなくせに…ずっと傷つきやすかった…分かってたはずなのに…。」
「悲しくて仕方ないのに…。」
「もう涙は出ないんだ…。」
そっか、未来さんは私と同じなんだ。
大切な人を失って辛いんだ…。
「やろう…?」
「え?」
「やる。未来さんの心とあんたの心…救いたい!」
私は、他人事なのに…どうも他人事には思えなかった。
「麗愛ちゃん…。」
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