コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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愛しのキャットダーリング(執筆停止)
日時: 2015/06/20 12:38
名前: 占部 流句 (ID: yJbSBs4g)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=39551

 初めまして!又はどうもです。占部 流句と書いて、せんぶ るく と読みます。

 更新は週4〜5回が目標です。どうぞ、宜しくお願いします!


※URLは、同時執筆中の新作小説「神聖なるカルテの中の腐った住人」です


執筆を停止しました。勝手ながら申し訳ありません。


 ○●お願い●○

*コメント頂けると嬉しいです。アドバイスとかも是非お願いします。
*荒らしと判断したら無視します。ご了承ください。
*誤字、脱字の指摘、是非お願いします。すぐに直します!


 ○●登場人物●○ ※随時更新


*一宮 花凛 ーIchinomiya Karinー

*櫻田 秋也(シュウ) ーSakurada Shuyaー

*鈴木 美香子 ーSuzuki Mikakoー

*アリシア・プライム ーAlicia primeー

*セト・カルシュワル・ドゥ・ミスターチ

*チェゼル・ライアン

♪詳しくは>>53 (1/25更新)



 ○●目次●○


《表紙絵 ぱんなこった様作》>>21


プロローグ >>01

第1章【あなたと】

◇ 1話 ◇
№1>>04 №2>>07 №3>>10 №4>>12 №5>>20 №6>>24 №7>>27

◆ 2話 ◆
№1>>32 №2>>33 №3>>34 №4>>35 №5>>37 №6>>38 №7>>39


第2章【ネコと】

◇ 1話 ◇
№1>>42 №2>>43 №3>>44 №4>>49 №5>>50 №6>>51 №7>>52

◆ 2話 ◆
№1>>54 №2>>56 №3>>57 №4>>58 №5>>59 №6>>60 №7>>61 №8>>64 №9>>65

◇ 3話 ◇
№1>>66 №2>>67 №3>>68 №4>>72 №5>>73 №6>>74 №7>>75 №8>>78 №9>>81 No.10>>82


☆ Special ☆

参照200記念>>36

参照500記念>>55

参照900記念>>71



 ○●お知らせ●○

14.10/05 スレッドを建てました!
14.10/22 〝参照100〟感謝です!!
14.12/05 〝参照200〟感謝です!! 
14.12/25 〝参照300〟感謝です!!
14.01/26 〝参照500〟本当にありがとうございます!
14.02/06 お知らせ等のいらないページを消去しました
(返信数とスレッドナンバーがズレていますが、問題ないです)
14.02/22 内容を一部修正しました。
>>64-66
14.03/22 〝参照1000〟感謝×感謝!これからもよろしくお願いします
14.04/04 〝参照1100〟ありがとうございます!



 ○●コメントを下さった方々●○

☆レモンさん……いつもありがとうございます^ ^僕が小説を書き始めたきっかけとなってもいる人です。色々なジャンルも書けますし、凄いですねぇ。

☆モンブラン博士さん……結構著名な方ではないでしょうか。可愛らしい作品から、リアルなものまでなんでもこなされてしまいます!

☆紗悠さん……『純』な恋愛がわかっているお方です。更新のスピードもはやいので、とても読みやすい作品を執筆されています。

☆はるたさん……コメライ板の有名人ですよね。僕の作品なんかも見に来ていただける、とてもお優しい方です。どの小説の設定も、面白いんですよねぇ。

☆★(黒星)さん……初めましてです。僕の描写が上手いと頂けました。こんな技術を褒めていただけるなんて*\(^o^)/*コメライ板の作家さんでもあります。

☆てるてる522さん……初めましてです。此方の方もコメライ作家さんだそうです。よく名前をお見かけします♪

☆鳥ちゃんさん……なかなか親しくさせて頂いています♪なかなか可愛いタッチで執筆をされています。わっ。お客様No.がラッキー7だ!

☆あんずさん……初見でもその世界観に引き込まれてしまいそうな甘めの短編集を執筆されているかたです。凄く読みやすかったです♪

☆ユキさん>可愛い、面白い、キュンという三大褒め言葉をいただきました! コメライの作家さんです。ちょっとserious……

☆新排心さん>擬音が多いのは僕の怪談好きのせい(笑)描写もお褒めにあずかり恐縮です。更新が遅れてしまってすみません^_^;

☆Garnetさん>僕は男です(笑)僕が思っていた理想を全て言っていただきました。面白いって、もしも嘘でもすごく嬉しいですよね♪

☆古鳥さん>はじめましてです! 読みやすいとお言葉を頂きました。ありがとうございます。名前が凄く可愛らしくて僕は好きです♪



 Thank you for coming to my novel !

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戴冠式の日の小さな奇跡 ( No.71 )
日時: 2015/03/07 20:32
名前: 占部 流句 ◆PCElJfhlwQ (ID: zCJayB0i)
参照: 遅くなって申し訳ないです

*参照〜900突破記念*

 いつも本作品をご覧いただきありがとうございます♪ 本当はもっと早く出したかったんですけどね(・・;)
 参照1000はまだですが、それも含めて記念小説という形にさせていただきます。




☆番外編〜戴冠式の日の小さな奇跡〜


 彼の名はセト・カルシュワル・ドゥ・ミスターチといった。ミスターチ家に引き取られた身である。
 それは彼が5つも歳のいかない頃だった。父は翼(ウイング)の持ち主ということで、彼が産まれてすぐ殺された。母も、病で死んでしまった。彼は親戚をたらい回しにされ、ついにミスターチ家の家来の1人。カルシュワルの元へとやってきたのだった。
 カルシュワルはと言うと、彼を我が子の様に大切に育てた。当時国王のセインにも事情を話し、広い宮殿の中庭で、ミスターチ家の子供や、他の家来の子供たちと目一杯遊ばせた。自然が豊かで、小鳥も住み着く中庭は、彼にとって絶好の遊び場となったのだ。
 2人が家に帰ると、ミスターチの妻がニコニコと笑みを浮かべて待っていた。まだ小さい、自分たちと姿も違う彼を、彼女はいつでも優しく面倒を見た。

 彼が10くらいの歳になると、彼はその知性を発揮した。中庭で遊ぶ時には、他の子供をしのぐ程の運動能力を見せ、小鳥とは会話もできた。カルシュワルが、将来の役に立つと言って教えていた外国語も、この頃にはカルシュワルと対話できるくらいになっていた。皆は彼を神童だと呼んだ。しかし一方で、翼を持つ彼を非難する者を現れた。
 彼はその後もずば抜けた才能を発揮し、15になる頃には家を出て、ミスターチ家宮殿内で働くようになった。ちょうどカルシュワルの妻が亡くなったくらいの頃だった。
 彼の腕は、翼と共に生きる。なにかと厄介な事もあった。例えば当時介護の必要があったセインを背負う時、翼の羽根が邪魔だった。
 セインが亡くなると、彼の子供が王位についた。すると、セトを次期王にという提案も出された。彼は生物としても、家来としても優秀で、政治を任せてもいい程の頭を持っていたからだ。王が納得すると、その話は宮殿外にも広がった。
 その頃、彼は公務にも少しずつ参加するようになった。ある時、参加者が集まり過ぎて、混乱状態となった。それを彼は大きな身体をうまく利用して、しっかりと誘導したのだ。王はそれにも感動し、次期王というのに自分の1票も捧げた。
 王位が彼に移ったのは、実に彼が22の時で、王家ではかなり若い方だった。無論、王家以外の者が王位につくのは初めてで、賛否両論であった。
 戴冠式当日。厳かな雰囲気で行われる会場に、突然の雷撃が落ちた。後の調べによると、死傷者は52名。会場の1割ほどとなった。皆がその方向を向くと、そこにはセトと同じくらいの歳の、1人の少女が立っていた。その少年は「お前なんぞ!」と言い、セトの方へと向かっていった。手に握り締めているのは、杖だ。使い古されていてボロボロになっている。
 少女がセトの目の前に立つと、突然禁止術の死の魔法を唱え始めた。ほほうとセトは頷き、少女の杖に触れた。その時の衝撃は伊達にならないものだっただろう。セトは苦しみを抑え、杖を伝って意思疎通を試みる。なかなかできないようだ。するとセトは口を開いた。

「わたしを殺したいのなら殺せ。しかし、皆を巻き込むのはやめてくれないか? みんな、わたしの愛する者たちだ」

 少女は呪文を唱えるのをやめない。聞いたもの全てを死に追いやるこの術からなんとか逃れようと、会場は大混乱だった。セトは続ける。

「わたしは翼を持っている。そんなわたしを育ててくれた人がこう言った。〝生とは、どれだけ他人を愛すかだ〟」

 すると少女の手が一瞬だけ緩んだ。その隙を見逃さずに、セトは杖を自分の方へよせる。

「ほら。君だって愛している者がいるだろう? 一緒に来なさい」

 彼は笑みを浮かべてそう言った。人々は小さな奇跡と喜んだ。
 その後、少女がどうなったかは誰も知らない。処刑されたとか、セトと結婚したとか噂があるが、きっと少女も愛する者と一緒に、幸せに生きているのだろう。




2章 3話 №4 ( No.72 )
日時: 2015/03/12 21:59
名前: 占部 流句 ◆PCElJfhlwQ (ID: zCJayB0i)


 かなり深い森のようで、歩いても、歩いても、声は一向に大きくならなかった。まるで同じ道をぐるぐる回っているようだ。

「あれぇ。全然近づかないよ」
「せやな」

 アリシアもはぁとため息をつく。私はシュウ君に目をやると、シュウ君も困った様子であたりを見回していた。

「んー? ここ、さっきも通らなかった?」

 今歩いているここも、なんとなく見覚えがある。そんな気がする。シュウ君に了解を得て、着ていた上着を木に引っ掛けるようにした。これでここを通った時にわかるという事だ。

「じゃあ、頑張って行こうか」

 シュウ君の声に「うん」と返し、上着を見失わないように歩く。
 ついに上着が見えなくなって数秒後、私達3人の足は止まった。さっき木に引っ掛けたはずの上着が、前方の木に現れたからだ。しかも、その木の形も、さっきと全く変わらなかった。

「う、嘘やろ……」
「さっき見えなくなったのにぃ」

 拗ねた女子2人を見ながら、シュウ君は腕を組んだ。そして、やっぱりか……と呟き、口をひらく。

「魔法だよ。なにかが可笑しいと思ったんだ。やっぱりここ、侮れないね」

 シュウ君は、その後黙々と喋り続けた。
 何百年も前、黒魔道達はここで数々の魔法をかけた。具体的にというと、まずは湖の底に異空間を作る事。そして、そこに永遠に人達を閉じ込める事。これをするためには、かなりの人手と、時間がいる。

「昔は王家と黒魔道士は対立していたから。きっと王家の人を閉じ込める用だね」

 散々苦しめてから心臓を奪い取る。それが彼らが好んだやり方だという。当時王家は魔法を拒んでいたから、かなりの死亡者が出た。

「僕でもここまでのはかけられないな。でも、解けるかな……」

 ここにかけられている魔法は実に単純で、前に進みたい者を無限ループさせるものだ。つまり、私達3人は前に進むことすら許されない。黒魔道士なら、通れるという。人によっては近き道。また、人によっては遠き道だ。

「僕1人じゃ無理そう。……あ。アリシア」

 シュウ君がアリシアの方を向く。よくアニメで見る、ピコーンと頭に電球がついたよ──。

「あぁ! わかったわかった。わかったよ! アリシアが手伝えばいいってことでしょ!」

 私が自信たっぷりで言うと、シュウ君はガクッと顔を横に曲げ、頭をぽりぽりとかいた。

「違うよ。アリシアのワープを使えばいいんじゃないかって」

 ぐっ、やられた。しかし、ここでこんな姿は見せたくない。私は「ボケたんだよ。ボケ……ね」と誤魔化すけれど、完全にみんな言葉を失った。

「じゃ、じゃあ。アリシア?」
「おう! いくでぇ」


◇◆◇


 彼らが出発してから、実に2時間の時が経っていた。チェゼルが顔をしかめる。3人に何かあったのだろうか。

「セト様……私は一生あなたから離れませんから、ね。」

 セトは相変わらず、安らかに眠っていた。息も立てないほど静かに。チェゼルはそんなセトの手を撫でながら、昔の事を思い出していた。

 チェゼルが初めてセトに会ったのは、セトが即位した日だった。戴冠式から帰って来たのを、当時王宮に使えていた彼がちょろっと見ただけだった。しかし、チェゼルは確信していたのだ。セトに一生ついていくと。
 セトが国王になると、ガクタラの街はますます栄えた。セトはまず、法を整え、道を整備し、人々の声に耳を傾けた。特に力を入れた教育法は、海外からも支持され、年に何回も街の教育場を見に来る大臣がいた。チェゼルは、セトの全てが完璧に思えた。
 チェゼルも自信があった頭で、大臣まで登り詰めると、憧れのセトと接する事も多くなった。チェゼルの輝く目を、セトは気に入り、一緒に政治をする事もあった。今に至るまで、数え切れない程の思い出が、チェゼルの頭をよぎる。
 はぁ。とため息をつくと、握っていたセトの手が、微かに動いた気がした。まるでセトが〝ため息などつくな〟と言っているようだった。







 

2章 3話 №5 ( No.73 )
日時: 2015/03/18 21:59
名前: 占部 流句 ◆PCElJfhlwQ (ID: h5.UUysM)
参照: 短めです。ただ、会話文が多いです


 彼と過ごす時間はゆっくりと流れ、1秒1秒をチェゼルは大切にした。
 3人が出発してから実に4時間が経った頃、段々と外が騒がしくなってきた。チェゼルはなんだろうかと思うと、外から声が聞こえてきた。

「はやく逃げろ!」
「もうそこまで来てるぞ!」

 声はどんどんと大きくなる。はやく逃げた方がいいのは、チェゼル自身もわかっているが、セトがいる。セトを外に連れて行き、人目に晒すのはなんとか避けたい。
 少しずつ暑くなってきている感じかした。彼自身も、建物自体も。額からは、汗が滲む。もう時間がない。そう感じたチェゼルは、悩んだ末に行動に出た。


◇◆◇


 ワープした先は、見覚えのないところだ。しかし、やはり森だった。
 私はついた膝を起こし、立ち上がる。……あ、あれ? 目の前に立っているのはシュウ君ではない。全身を覆う黒いローブに、少しだけ見える真っ赤な髪。身長はシュウ君と同じくらい高い。ゆっくりと、一歩ずつ近寄ってくるローブの人に、恐怖を覚えた。
 私が一歩後ろに下がると、ローブの人が一歩前に出る。こんな時にシュウ君がいたら……なぜシュウ君はいないの?
 ついに私は後ろの木に足がついて、そこにもたれる体勢になった。ああ、もう。こうなったら。

「あ、あなたは……誰ですか……」

「──知っているだろう?」

 聞き覚えのある声だった。ちょっと紳士的で、こっちをあざ笑うかのようなこの声。
 あの人だ。私の脳裏には、すぐに場面がよぎった。嵐と共にやってきて、私にシルクハットを渡した、確かシュウ君の魔法学校の先生だと言っていた。

「──わかったね」と、彼。

「シュウ君はどこですか」と、私。

「君に話がある」と、また彼。

「私の質問に答えて下さい」と、また私。

「あれは結構前だったなあ。魔法学校の創立650周年くらいだったと思うよ」ついに、彼は話し出した。

 全く話が噛み合っていないし、私の質問は無視された。しかし、彼は続ける。
 結局のところ、シュウ君の話だった。突然現れて校長を殺害という、かなり残酷な内容だった。

「彼には力がありすぎるのだ。私達の指導でなんとか死に対する言動、心情は抑えることが出来た。しかし、それも限度がある。彼はそのうちに暴走し、世界を破滅させるほどの力を発揮するだろう」

「すみません。さっきから言ってますけど、シュウ君はどこですか」

 私が強めに言うと、彼はシュッと話を止めた。そして、

「人の話を聞け! もう知らぬ。それ程にシュウが恋しいか? それ程にシュウといたいのか? ならば、彼が容赦をしないぞ」

 彼はそう言い残して、短く何かを唱えた。私の記憶はそこで途切れる。


2章 3話 №6 ( No.74 )
日時: 2015/03/20 21:02
名前: 占部 流句 ◆PCElJfhlwQ (ID: h5.UUysM)

 一筋の光が見えると、それはどんどんと広がり、視界が開けた。目の前にいるのは……シュウ君だ。
 私は目がよく見えないまま立ち上がろうと頭を持ち上げると、おでこにゴツッと衝撃が走った。

「あいっ……た」
「カリン、大丈夫?」

 目を開けると、やっと見えたシュウ君。おでこがちょっと赤くなっていた。私が「おでこ、赤いよ」と笑いながら言うと、シュウ君も「カリンさんもね……はは」と鼻で笑った。ちょっとひどい。
 そんなことより、ここはどこだろう。見た所、さっきのあの人がいたところと同じようだ。

「カリン、起きたぁ? 成功やで」

 茂みの方からアリシアがこちらに歩いてきた。手には古ぼけた木の枝が1本。

「どや? シュウ。こんなええ木があったで」
「海で生える神木の枝か。杖に使うのはもったいないね。うーん。剣の持ち手とか」

「カリン、今度これでなんかつくってやろか?」とアリシアに言われたが、シュウ君の方が使いこなせると思うから、と答えた。
 そうそう。とアリシアは話を戻して、鳥までもうちょいやでと笑顔を見せた。

 しかし、歩いてみるとアリシアの〝もうちょい〟は信用できなかった。もう歩き始めて20分は経つ。アリシアにまだ? と聞いても、〝もうちょい〟の一点張り。シュウ君に聞いても「アリシアのことだから、あと30分は歩くよ」とサラッと言い流されてしまった。

「……そういえばさ、カリン。先生に会ったよね?」

 一瞬背筋が──いや、全身が凍りついた。今、私はきっと凄く間抜けな顔をしているだろう。

「わかったの……?」
「うん。なんとなくだけど。何か言われた? どうせ僕が危険とか何とか……」
「──シュウ君は危険なんかじゃないよ」私はそう呟いた。そして私は、シュウ君と話が噛み合う事を、そんな当たり前な事を幸せに思った。
 その時だった。

「いたぁぁぁ! 鳥いたで! ……あ、静かにな」

 アリシアの指がさす方を見ると、木の枝に止まる蒼白い羽色の鳥がいた。
 大きさは30センチ程だろうか。飾りはしないが、尻尾から伸びた2束の蒼い毛と吊り上がった目。そこには美しさがあった。

「カリン、武器を出して。きっとこいつは強敵だな」

 すぐにシュウ君の目が変わったのがわかった。シュウ君は、クルッとバック転をするとするっとした体型のネコとなった。

「燃てきたでぇ。うちは後方、カリンは前方な」
「ちょっ。待って、鳥を傷つけるの? それは嫌だよ」

 こんなにと美しい鳥が痛む姿を見たくはなかった。しかし、私の心配はシュウ君の言葉ですぐに消えた。

「カリン、鳥はそんなちょろくないよ。僕たちの攻撃くらいで傷つかない」

 鳥は神様くらいの力があるらしい。攻撃というよりは追い込んで捕獲するために戦うと、シュウ君は教えてくれた。
 そして、戦うために必要なのは武器だ。もう1度、出せるかな。しかし、とやかく言っている時間はない。とにかく精神を集中させる。出ろー武器出ろー……。地面をしっかりと見つめると、今回は地面から少し離れた空中で例の光が発生した。

『おい、またかよ。まあいいさ』

 あ。また何か聞こえた気がした。なんなんだろう、この声みたいなの。光が止むと、剣がぽとりと落ちた。この前出てきたより、持つところがしっかり、綺麗になっている。気のせいかな。

「ええね。カリン、相手は空飛ぶからな、気いつけなはれや。とりあえずゆっくり近づくんやで……ゆっくり」

 そういえば盾があったらいいのに、と思いつつ蒼い鳥に気付かれないようゆっくり近づく。

 ……カラン。

 しまった。足元に落ちていた小さな石を蹴ってしまった。その音にあちらは、気づいていないのか。こちらを見ていない。
 よし、と思いもう1本足を運んだ瞬間、蒼い鳥が物凄い勢いで飛び去っていった。

「カリーン! ウチゆっくりって、言ったやろぉ」アリシアの怒る声が耳に入る。

「ごめんなさあい」
「とにかく追いかけろ! 見失うぞ」

 シュウ君の走るスピードは速くて、3メートルくらい差があったのに、もう追いついてきた。私も必死に走るが、シュウ君の方が2倍くらい速い。逆に差が開いてしまった。

「シュウ。見つかったらすぐに麻痺させるんやで、わかっとるな」
「でも、鳥だぞ。5秒くらいで解けるよ」
「それまでには追いつくわ」
「シュウ君、お願いー!」

 全員が全員必死に走っていた。そして、私とアリシアがついた時には、シュウ君が既に蒼い鳥との攻防を見せていた。
 シュウ君がスッと尻尾を振ると炎が蒼い鳥を襲う。しかし、蒼い鳥はその炎を翼で起こした風でシュウ君の方へと追い返す。鳥ではあるものの、その強さは折り紙付きだった。


2章 3話 №7 ( No.75 )
日時: 2015/03/22 20:46
名前: 占部 流句 ◆PCElJfhlwQ (ID: h5.UUysM)
参照: 夏までに書き終わらないと思う…

 アリシアと私も応戦するが、敵は空の上。なかなか私の剣は届かなかった。どんなに高く振りかざしても、まだだ。まだだ──。
 アリシアは相変わらず、しっかりシュウ君と私の援護をしてくれている。お陰でまだ疲れていない。

「あ! カリン、その剣見してみい」

 アリシアが不意に言った。私が警戒しながらアリシアに近づき、剣を見せる。すると、アリシアの目がキラッと光った。

「やっぱりやな。これ、もう使えるで」

 何を言ったのか……。何が使えるのか……?
 アリシアの言葉をシュウ君が聞き付けたらしく、シュウ君がこちらを向いた。

「もう? さすがカリンだな。よし、今から言うことに従って」

 まず、足をしっかり着いて、深呼吸。タイタスと叫んで剣を振る。シュウ君が言ったのはそれだけだった。
 足を踏ん張って、目を閉じ深呼吸……。ふう。シュウ君と蒼い鳥の必死のやり取りが聞こえる。──はっ! と、思った時には私の身体は10メートルほど後ろに吹っ飛んでいた。
 驚いて目を開けると、目の前には蒼い鳥。疾風のような攻撃をまともに受けてしまったようだ。このままだと木にぶつかってしまう。踏ん張ろうとするが、地面に足が着かない。ぐっと力を入れると、少し身体が軽くなった。

「あっかんわぁ」

 アリシアが間一髪のところで浮遊術をかけてくれたようだ。危うく死ぬところだった。

「少しでも長く距離をとって、もう一度!」
「うん!」

 全ては一瞬のことで終わった。足を着き深呼吸をして……。

「タイタス!」

 大きく剣を振りかざすと、シュンッという音と共に、蒼い鳥の鳴く、というより叫ぶ声が聞こえた。
 鳥が落ちている。私の剣から出た何かは、確実に蒼い鳥に届いていた。

「アリシア、はやく!」
「おう」

 アリシアが蒼い鳥の落ちるところを予想し、着地地点へと急ぐ。着地地点へと着くと、アリシアの心の武器である杖を上に向けた。
 アリシアが何も言わずとも、杖は彼女の命令に従った。一瞬電気を発したと思えば、電気がばっと放射線状、つまり網のように開く。そのなかに蒼い鳥がちょうど入った。
 すると、電気の網はキュッと底を結び、初めて地面へと着地。鳥は痺れているように見えた。

「どや? アリシア特製の電気網。こんなん、うちしか使えへんで」
「おっと、暴れるよ。気を付けて」

 痺れているはずの鳥だが、網の中でバタバタと暴れていた。しかし、1分も経たないうちに動かなくなった。気絶してしまったようだ。

「よし、王様のところに戻ろうか」


◇◆◇


 アリシアのワープで、街に戻ったとき、こそは火の海だった。木は焼け落ち、赤いレンガの建物でも崩壊していた。あちこちで泣き叫ぶ声が聞こえ、頬には熱風が伝う。

「火事だ。珍しいな」
「お、王様は? どこかな」

 私が心配していたのは、寝ていた王様、セトであった。鳥を持ったアリシアはその場に立ちすくむ。その目は生きていなかった。
 迷う私たちの元に、1人の男が近寄ってくる。こんな大火事だというのに、青い上下の半袖とズボン。少し筋肉質な身体と似合わないサラッとした金の髪の毛に、ブルーの目をしている。そして、手には長い鉄の棒を持っている。

「やあ。お嬢さん達。ここは危ないよ? 君は、魔法使いかな? 随分と魔力があるんだね」

 彼の声は少し太くて、綺麗だった。

「あなたは火消しですね。ここは随分と昔のやり方をとるものだ」

 シュウ君が吐き捨てるように言った。日本にも、江戸時代なんかにいたと聞いた。火消し。要するに、持っている棒で周りの建物をどんどん壊している人達だ。

「お嬢さん、はやくお逃げなさい。俺は何もしないからさ」

 彼はそう言って立ち去ってしまった。シュウ君は少しカリカリしているようだ。ああいう人達が苦手そうなのはすぐわかる。

「……はやく王様を探しに行こう」




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