コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- Believe 1
- 日時: 2017/03/07 22:39
- 名前: ノッチ (ID: 9YApmA.n)
ここは、ノーウェスト少年少女養護施設。親が死んだり、捨てられたりして家族を失った10人の子供たちがここで生活しています。このお話の主人公のフラビア・リアラスもその一人です。
ある真夜中のこと、フラビアはティッピーという、小さな少年のうなされる声で
目が覚めました。
「どうしたんだい?落ち着いて。」
「またあの夢を見たんだ。お化けがうじゃうじゃいる暗い部屋の中に鍵をかけて閉じ込められるんだ。」
フラビアが泣きそうなティッピーの肩を優しくトントンと叩いていると、寝ていた他の子たちも目を覚ましました。
「うるさいなぁ。眠れないじゃないか。」
「いっつもメソメソしてさ、まるで赤ん坊だぜ。」
「あんたの涙で、あたしたちのベッドまで汚れちゃったじゃないの。」
「そんなのウソだ!」
ジェイク、レオナルド、イザベラの3人に冷たく言われてカッとなるティッピーを落ち着かせようとするフラビア。
「気にするなよ。ティッピー。」
「そうさ。こいつのような間抜けは相手にしちゃ駄目だぜ。」
「オレは間抜けじゃない!」
- Re: Believe 1 ( No.3 )
- 日時: 2017/02/14 13:42
- 名前: ノッチ (ID: 9YApmA.n)
足跡の持ち主達は、フラビア達のいる2階の寮のドアを、大きくバタンと開けました。
「起きろ!この愚か者どもめ!」
太ったスキンヘッドのヒスが子供たちに向かって怒鳴りました。
無理矢理起こされた子供たちは、渋々かび臭いベッドから体を起こしました。そして、いつものように年の差順で一列に並びました。
髭を生やして、ガリガリに痩せ幌っているシェリフも、口を開きました。
「さぁて。てめぇらが大好きな朝の掃除の時間だ。床を磨いて、モップをかけて、玄関の前をほうきで掃いて、窓と階段の手すりを拭いて、皿を洗って、ゴミを捨てて、この建物全体を綺麗にしろ。今すぐにだ。」
- Re: Believe 4 ( No.4 )
- 日時: 2017/02/14 13:42
- 名前: ノッチ (ID: 9YApmA.n)
またいつもように、朝から仕事を押し付けられて、フラビアたちはすっかりうなだれています。その途端、
「返事はどうした!!」
ヒスが大声で怒鳴りながら、手に持っていたムチを床に叩きつけました。
「わかりました。ミスター・ヒス、ミスターシェリフ。」
「さぁ、とっと働けな!!」
シェリフに命令された子供たちは、バケツやホウキ、モップを手に取って、早速掃除を始めました。
まず、フラビアとピーターとフィーフィーが窓と階段の手すりを拭き、ジェイクとアンジェリカとダニエルが床を磨き、イザベラとティッピーが玄関の前をホウキで掃いて、ノアとレオナルドがモップで床を綺麗にしました。 それからみんなで分担して、お皿を洗って、食器を棚にしまって、テーブルを拭いて、じゃがいもの皮を剥いて、台所から出たゴミを養護施設の近くのゴミ捨て場に捨てて、そして2階の自分たちの寮に行って、それぞれのベッドのシーツや枕カバーを洗濯カゴに入れました。
- Re: Believe 1 ( No.5 )
- 日時: 2017/04/14 15:31
- 名前: ノッチ (ID: PODBTIS5)
それから、冷たいシャワーを浴びて、全員並んでぞろぞろとミスター・ジョンが待つ、一階の食堂へ降りていくのです。
ノーウェスト少年少女養護施設の施設長のミスター・ジョンは、やせてとがった顔に、短くて真っ黒い髪をしています、とても残忍で冷酷な性格の持ち主である彼は、見るのもぞっとする悪魔にそっくり.....というより、悪魔そのものでした。
フラビアの養護施設での一番最初の記憶は、たぶん、二歳か三歳のものでしょう。寮の床で、車輪が二つ取れたぼろぼろのミニカーで遊んでいると、見上げるような、ミスター・ジョンの真っ黒い影がぬっとそびえ立ちました。
「立て。このまぬけなみなしごめ。」
ミスター・ジョンは、そう怒鳴ってフラビアをぐいっと引っ張って立たせると、体罰用のずっしりとした重いへらでフラビアのお尻を二十回叩きました。でも、フラビアは泣きませんでした。そんな幼い頃から、フラビアはどんなに叩かれても決して泣きませんでした。そうしたフラビアの負けん気が、ミスタージョンやヒスとシェリフをイラつかせるのです。
- Re: Believe 1 ( No.6 )
- 日時: 2017/02/14 13:43
- 名前: ノッチ (ID: 9YApmA.n)
フラビアはすぐに、養護施設でも一番気が強くてかしこい少年になりました。そして、だからこそ、ミスター・ジョンは、施設長になってから二十三年間、面倒を見てきた子供たちの誰よりも、フラビアを嫌いました。
「いつかあの生意気なガキの鼻をへし折ってやる。」
ミスター・ジョンは心の中でちかい、フラビアによぶんな雑用をさせました。湯気の立ちこめる地下の台所で、油で汚れた鍋やフライパンを洗わせたり、汚れのこびりついた窓の掃除を言いつけたり、はいくつばって床を磨くよう、命じたりもしました。世話係の二人も、仕事をしているフラビアに水をかけたり、ゴミをかぶせたり、足をひっかけたりと、悪質な嫌がらせをフラビアに受けさせました。けれども、フラビアは決してうちひしがれたりせず、ニッと笑ってあたらしいしごとにとりかかるので、ミスター・ジョンたちはますます頭に血をのぼらせました。
「つまり、おれ対ミスター・ジョンとその連中ってわけ。戦争みたいなものさ。おれは絶対に負けない。絶対にな。」
フラビアは、ほかの子たちに言うのでした。
こうして数年が過ぎ、フラビアは養護施設での日々の生活にも慣れていったのです。
- Re: Believe 1 ( No.7 )
- 日時: 2017/02/14 13:44
- 名前: ノッチ (ID: 9YApmA.n)
「しゃべるな!」
食堂では、ミスタージョンの怒鳴り声が飛んでいました。
子供たちが黙って固い木の椅子の並んだ長いテーブルにつくと、ヒスとシェリフが朝食を配ります。
フラビアの記憶にある限り、養護施設の朝食はいつも同じでした。青みがかかったスキムミルクと、熱いおかゆが一杯。おかゆはミスター・ジョンが作ったもので、ねずみ色で、ところどころ塊が残っていて、食べると学校で使う白いのりの味がしました。
初めて養護施設に来た子達はたいてい、吐き気をもよおして、ひとさじも飲むことができません。けれど、しばらくするとすっかり慣れてしまうのです。
養護施設では、朝食はおかゆか、何もなしか、そのどちらかしかないのですから。
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