コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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Last Days
日時: 2015/08/28 23:43
名前: 久遠 ◆rGcG0.UA8k (ID: O0NjrVt8)

ずっと、ずっと伝えられなかった思い
このまま卒業するんだってそう思ってた


だけど、変化は嵐のように訪れて


——高校生活最後の年、それは私達にとって忘れられない日々の記憶となって未来へと続く


『目次』
《主要人物紹介》>>1
episode1【型破りな転校生】>>2 >>3 >>4 >>5
episode2【すれ違う思い】>>6 >>7 >>8 >>9

#2015/8/27【執筆開始】

*挨拶
どもです久遠と申します
この度は LastDaysを閲覧頂き有難うございますっ

皆様に少しでも楽しんで頂ける様、コチラも書いていこうと思います
感想などいつでも歓迎してますので、ちょっとした事でもコメント頂ければ嬉しいです
それでは、いってらっしゃいませ!

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Re: Last Days ( No.4 )
日時: 2015/08/28 13:15
名前: 久遠 ◆rGcG0.UA8k (ID: 3rAN7p/m)

栞side

「これで大体終わったかな……?」

生徒会に来て、書類の整備やら日誌の記入やらをしているうちに時間は過ぎて。
気付けばもう放課後だった。

掃除とかまで勝手にしちゃったけど、荷物は動かしてないし大丈夫だよね。
そう考えて生徒会室を出ていこうとドアに手をかける。

この時間なら保健室に寄るよりも帰宅する方が丁度いいだろう。
そう考えて鍵を閉めて——

「天海さん? もしかして今来たとこ?」
「か、会長……」

今、一番会いたくなかった人に見つかってしまいました。

「職員室に寄ったら鍵がなかったから、もしかしてって思ったんだ」
「す、すみません。勝手に持ち出してしまって……」
「んー、それは良いんだけど。取り敢えず中に入ろっか」
「はい……」

そんな訳でまた生徒会室に逆戻りしましたと言うことで。

「今日は何からしようか、まずは書類整備かな……ってあれ、全部分けてある?」

机に置かれた書類の数々を見て驚きの声を上げる会長。
今更、実はもう全部済ませて帰るところでした、なんて言う勇気はなく。
驚く会長に申し訳なさを感じながら部屋の隅で小さくなっていた。

「……天海さん、もしかして」

やっぱり勝手に触ったら不味かったのかな。
と言うより私が嘘ついたのバレて……!?

動揺した拍子に背後にあった本棚に思い切りぶつかってしまって。

「っ……」

その結果、重なる様にして乗っかっていたファイルが降って来て。
衝撃を覚悟して、ギュッと目を閉じた。

「っ、大丈夫? 天海さん……!」

だけど痛みはなくて、代わりに凄く近くから会長の声が聞こえた気がして。
俯いていた顔を上げ、瞼を開ける——そして。

「「っ」」

ほんの一瞬、唇に柔らかな感触。目を見開いた会長の顔。
近い距離、重なる視線——それらの意味するものは一つで。

私……今、会長とキス、した?

そう考えた途端、みるみる頬は熱を持って、会長の方を見られなくて俯く。

「っと……大丈夫、そうだね?」

言いながら会長は立ち上がって、落ちたファイルを片付けていく。
それから、ポツリと一言。

「書類整備も終わってるみたいだし、今日はもう帰ろっか……」

その言葉に賛成しつつも、どうしても顔を上げられなくて。
せめてもの救いは一瞬触れたことに対して会長が何も言ってこないことだった。

……奇妙な沈黙を保ちながら二人で生徒会室を後にして。
会長は職員室に、私はそのまま帰宅した。

Re: Last Days ( No.5 )
日時: 2015/08/28 14:14
名前: 久遠 ◆rGcG0.UA8k (ID: GX8mvGbi)

飛鳥side

「失礼しました」

天海さんと別れた後、鍵を返して今は伊織を探してるとこ。
とこなんだけどっ……。

「さっきのって、当たってたよな……?」

思い出すだけで体が火照ってくるのが分かる。
天海さんの前では平常を保ってたけど、でも。

「嫌じゃなかったかな……」

なんて、何考えてるんだ僕は。あんなの事故みたいなものだし。
それに、今は伊織を探さないと——

「あれー? 会長じゃん!」
「花房先輩……」

廊下でバッタリ会ったのは花房薫先輩。僕達の上級生だった人で今は留年者。
そして、生徒会役員の一人でもある。

「お前が一人なんて珍しいな。てか、何か顔赤いけど熱でもある?」
「僕だって一人の時くらいありますよ……気のせいです」

悪態をつきながらも敬語になってしまうのは、花房先輩が年上というのもある。
が、それ以上にこの人は色々と面倒なのだ。

「ふーん、ま、いいけど。桂ならさっき女の子と親しげに話してるのを見かけたぞ」
「それって何処でですか!」
「何処って昇降口に続く階段で——」

花房先輩の言葉を聞き終わらないうちに僕は走り出して。
教えてもらった場所で目にしたのは、伊織と優月が親しげに笑いあっているところだった。

それを見て危機感を感じた僕は二人の間に割って入って。

「何してるの?」
「飛鳥っ」
「僕に隠れて密会なんて、いい度胸してるよね」
「そんな言い方しなくったって! 伊織くんは悪くないよ、私が!!」
「伊織くん?」

いつの間に名前で呼ぶ関係に? いままで誰にも呼ばせなかったのに。
やっぱり優月を伊織に近付けさせるのは危険だ。

「飛鳥、落ち着いて。俺が良いって言ったんだ」
「……伊織は黙ってて、僕は優月をこれ以上、伊織に近付けさせるつもりはないよ」
「なんで、そんな事、飛鳥に決められないといけないの!!」

僕の言葉に優月が声を荒らげた時だった。

「なになにー? 修羅場かな?」

後をつけていたのか、花房先輩がニョキっと割り込むように現れた。

「茶化さないで下さいよ、僕は真面目に言ってるんです!」

言い切る僕に見向きもせず花房先輩は、優月に近づいて。

「君が例の桂を追って来たっていう子? 生徒会に入りたいんだっけ?」
「!」

品定めする様な視線を向けながら花房先輩は言う。
僕は口を挟もうとしたけど、花房先輩の目がそれ許さなかった。

「いいよ、入れてあげる。ただし明日の陸上大会で全種目一位だったらね」

何を言い出すかと思えば、花房先輩の提案は無茶苦茶だった。
全種目って何種目あると思って——これなら優月も諦めるだろうと視線を向けて驚愕した。

「分かりました、今の言葉忘れないで下さいね!」

優月の瞳は凄くやる気に満ちていたから。

そうして生徒会所属を掛けた陸上大会の幕は上がったのだった。

Re: Last Days ( No.6 )
日時: 2015/08/28 15:21
名前: 久遠 ◆rGcG0.UA8k (ID: GX8mvGbi)

episode2【すれ違う思い】
栞side

翌日、学校に来てから思い出すのは今日が陸上大会だということで。
校庭には既に生徒達で溢れかえっていた。

「これなら会長と会うこともないかも……」

生徒会は準備に忙しく私も忙しなく走り回ってる。
昨日は一度に色んな事がありすぎて全然眠れなかったし、変に緊張もしてたけど。
これなら心配する必要はなさそうだった。

でも、私が帰った後にあんな事になってるなんて思わなかったな。
あんな事、と言うのは栗山さんの生徒会入隊の為の条件のことだ。

花房さんが提案者らしいけど、会長複雑だろうな。
今日の大会で全種目一位、並大抵で出来ることじゃない。
そう思うのに遠目から見た栗山さんの表情を思い出すと本当にやってしまいそうな雰囲気があって、他の皆も口にはしないけど注目してるのが分かる。

「応援したくなっちゃうな」

会長との関係は気になるけど、それでも私は転校してまで桂くんを追いかけて来た栗山さんを応援したいと思う。

「でも応援するなら仕事終わらせないと……」

そう思い直して、大会で使う道具を持ち直した。



お昼も過ぎてあと二種目を残して大会が終わるという頃。
ようやくひと息つけた私が耳にしたのは栗山さんの事だった。

「あの桂君を追って来こ、凄いね。今までぶっちぎりで一位だよ」
「あと二つで制覇って……ホントに達成しちゃうんじゃない?」

どこへ行っても話題は栗山さんの事で持ち切りで、純粋に凄いと思った。
それだけ本気なんだ、栗山さん。

もし栗山さんが生徒会に入ったら、歓迎したいと思うし仲良くなりたいとも思う。
結局、昨日は話せなかったけど……友達になれたらいいな。

そんなふうに思って、立ち上がった瞬間だった。
グラりと視界が歪んで、次いで体がズシリと鉛のように重たくなる。

可笑しい、そう思った時には体が言うことを聞かなくて、意識を失った。

Re: Last Days ( No.7 )
日時: 2015/08/28 19:54
名前: 久遠 ◆rGcG0.UA8k (ID: 0.f9MyDB)

伊織side

陸上大会が始まって、最初は誰も優月が制覇するなんて思ってなかった。
俺もそのうちの一人だったし。

だけどお昼を過ぎたくらいから、皆が優月へと目を奪われて。
気づいたら応援すらしていた。

そして——優月は本当に全種目一位という異形を達成して、生徒会へ迎えられた。
飛鳥も嫌そうな顔はしてたけど、それが本心でないことは長い付き合いの俺がよく分かっていて。

花房先輩を含めた他の役員も優月の周りに集まる中、一人だけ姿がないことに気が付いて。

そう言えば天海さんは……?

よく良く考えれば、優月がゴールした時にも校庭には居なかったような気がする。
何か嫌な予感がして天海さんの姿を探し始め——



「ここにも居ない……」

人に聞いたりもしながら探すけど、誰も途中から見掛けてないと言うばかりで未だ見つからない。

何処に……?

そう思った時、曲がり角の先で人影を見つけて。
駆け寄ると、青白い顔をした天海さんが地面に倒れていた。

「天海さん!?」

急いで抱き起こすが、目が覚める気配はなく、このまま保健室へ連れていこうとして——

「伊織? こんな所に居たのか。皆探して……」
「飛鳥! いい所にっ天海さんが——」

俺を探していたらしい飛鳥がタイミングよく現れて、天海さんを運ぶのに手を借りようとしたんだけど。

「ちょっと、伊織なにしてるの!?」

腕の中でグッタリとしている天海さんを見た途端、飛鳥は俺を突き飛ばして。

「つっ〜、飛鳥、落ち着けって」

痛みに頭を擦りながら、天海さんの事を説明する。
と、冷静さを取り戻したのか、飛鳥はポツリと言った。

「ごめん、ちょっとどうかしてた」
「俺は気にしてないけど……飛鳥がこんな風に怒ったの初めて見たかも」
「っ、仕方ないだろ。伊織が非道な行いをしてる様に見えたんだから」
「何それ、酷くね!?」

そんなやり取りをしながらも、さっきの飛鳥が本気で怒ってた、というか焦ってたのはよく分かってる。
でも、それを追求する気にはなれなくて、二人で天海さんを保健室へと運んだ。

Re: Last Days ( No.8 )
日時: 2015/08/28 20:38
名前: 久遠 ◆rGcG0.UA8k (ID: 0.f9MyDB)

飛鳥side

保健室につくと先生が不在だった為、僕達で天海さんをベットに寝かせる。
多分、軽い熱中症だとは思うんだけど……心配から傍を離れずにいた。

「ねぇ、飛鳥に聞きたい事があるんだけど」
「何、改まって」

ベット傍らにあった椅子に二人で座って伊織の言葉に耳を傾ける。

「飛鳥は本気で優月の事が好きなの?」
「は、何言って——」
「答えて」

真剣な表情に声音。伊織は本気で聞いてるんだと伝わってくる。
僕はそれに真剣に答えなきゃならない。

本来なら——チラリと眠ったままの天海さんを盗み見る。
多分、僕が本当に好きなのは天海さんだ。でも、それを伊織に言う訳にはいかない。

僕は伊織の為なら何でもするって決めたんだから。

「そうだよ、言っただろ優月の事が気に入ったって。だから伊織には絶対に渡さない」
「……それが飛鳥の本心なんだな?」
「だからそうだって言ってるだろ」

伊織の言いたい事が分からなくて苛立たしげにそう言い切る。
一体、僕に何を言わせたいっていうんだ。

「分かった……なら、俺も手加減しない。優月の事が好きだから」
「何言って——お前、それがどういう事か分かって言ってるのか!」
「分かってるよ、分かってるけど……優月のこと諦めたくないから」

いうだけ言って出ていこうとする伊織を僕は追いかけた。
これじゃ、僕が何のために優月を好きだって言ったか分からない。
全部、伊織の為だっていうのに。

「伊織は何も分かってないよ、お前は来年——日本にいないんだぞ……」

呟いた言葉は届くことなく消えていった。


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