コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- そこのあなたに恋愛系短編集!
- 日時: 2015/12/22 19:07
- 名前: 紅色ゆりは (ID: gKAFDMkE)
こんにちは、紅色ゆりはです。
「私の後ろの不良執事」(コメディライト)と同時進行して短編もの
をいくつか書けたらなと思ってます。
要は不良執事の方がアイディアが詰まっているので、どうにかして
アイディアが出せないかなーというつなぎです。
でもこちらもちゃんと書いていきたいと思ってます。目指せコメント
100突破、です。大きく出てみました。
コメントもオリキャラも随時募集中! 反映は遅いですが必ず
どこかしらには登場させます! 主人公の友達とか!
よろしくお願いします!
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- そこのあなたに恋愛系短編集! ( No.3 )
- 日時: 2015/12/20 13:43
- 名前: 紅色ゆりは (ID: gKAFDMkE)
事の発端は、ほんの些細な口げんかの様なものだったときいている。
実際のところ、細かい事情は私も知らないのだ。クラスに大きく
分けて3つある勢力のうち、第3勢力にいる私は、流れてくる情報も
人より遅く少ない。知っているのは、第1勢力のリーダーと第2勢力の
リーダーがもめていて、男子のほんの一部が第二勢力を支持していると
いうことくらいだ。
第3勢力である私たちとどの勢力にも属さない女子、そして主な男子
は、そのピリピリとした空気の中でひたすら下を向いているしか
なかった。樫村も同じだった。
そんな張りつめた空気の日常を送っていたある日のことだった。
「ねえ、目の前でいちゃつくのやめてくれない?」
樫村の後ろの席に座っている第2勢力のリーダーが、ぽつりとそう
言ったのだ。きつい口調ではない。分裂する前と同じような、波風を
立てない愛想笑いだった。
でもいつもならそんなことを言う人ではなかったからか、私は
背すじが寒くなった。毎日のこの異様な空気のせいで、疲れているの
かもしれないと思った。そうだとしても、この状況はまずい。
休み時間だというのに教室が静まり返っている。普段話をしたり
しない私と第2勢力のリーダーが話すのを聞いて、何かの進展か、と
クラスのほぼ全員が察したんだろう。こんな時ばかり協調性を発揮
する。
ちらりといつも一緒にいる女子を見てみると、全くこちらに
気づいていないようだった。それが演技かもしれない、なんて疑って
しまう自分がむなしい。
「や、あはは。隣のやつがさ、ちょっと授業中うるさくて。いちゃ
つくとかじゃないんだけど……」
なんて私は陳腐な言い方しかできないんだろう。もっとほかにうまい
言い方があるだろうに。
「そっか。変なこと言ってごめんねー。……あ、そうそう平野さん」
そう言って、にこっと笑った。樫村の笑い方とは違い、誰でも一目で
愛想笑いだとわかる笑い方だった。
「年賀状送りたいから住所教えて! いいかな。私のも教えるし」
「え、うん、いいよ」
やってしまった。そう思った。
普段あまりわかりやすい表情を見せない樫村でさえ、驚いたような
顔をした。
年賀状自体は問題ではないのだ。ただ、お世辞にも仲のいいとは
言えないこのクラス内で、第2勢力のリーダーが私に、まるで
随分仲の良いようにふるまっていることが他から見て異様だったのだ。
その何とも言い難い状況の中で、これまたタイミング悪く、高3で
あるトキ兄が私を訪ねてきた。
「悪いけど平野千鶴呼んでくれる?」
満面の笑顔で、トキ兄は廊下側に座っていた女子にそう頼んだ。
「はい。あ、お久しぶりです!」
「あれ、えっと……」
言いよどんでいるトキ兄に、女子はさわやかな笑顔を返した。
「白鳥亜紀です。この間はどうも」
「あ……千鶴の友達だよね?」
「はい。あ、じゃあ千鶴ちゃん呼んできますね」
そう言って、白鳥さんは私のところに駆け寄ってきて、
「千鶴ちゃん、お兄さんきてるよ」
「うん、あ、ありがと」
トキ兄のところに行くと、さっき借りていった私の辞書を手渡して
きた。
「じゃあな。お前にも今の子みたいな美人な友達できるんだな」
なんて言って帰っていった。
友達? ——トキ兄。白鳥さんなんて紹介したことないのに、適当な
相槌打たないでよ。
白鳥さんも、私が今話してた鶫さんも、今日初めて話した、クラスの
2大勢力のリーダーなのに。
つづく
- そこのあなたに恋愛系短編集! ( No.4 )
- 日時: 2015/12/21 17:35
- 名前: 紅色ゆりは (ID: gKAFDMkE)
それからだった。いつも仲良くしていたはずの女子が、急によそよそ
しくなったのは。
当り前だ。鶫さんとも白鳥さんとも仲良くしておいて黙っている
なんて、何ととらえられても仕方がない。
トキ兄が悪いわけじゃない。私が帰ったあとに思わず怒鳴り散らして
しまったら、トキ兄は驚いて一言、「ごめん」と謝ってくれた。
友達の反応だって辛かった。辛かったけれど、一番こたえたのは、
樫村の反応だった。
いつものように樫村からノートの切れ端を渡してきた。
今日はなんだろう、クイズか、らくがきか、それともくだらない
ギャグか。そう思いつつ見ると、意外なことが書いてあった。
『知ってる? フラミンゴって足が疲れると立ってる足を変える
んだ』
……なんで急にフラミンゴの豆知識?
すると、もう一枚切れ端を渡された。
『フラミンゴにはなるなよ』
————————
カッコつけなやつだ。いつもなら『中二病?笑』とかなんとか書く
ところだった。でもその時は、そんなこと書けなかった。
樫村の言いたいことはわかる。足が疲れたからって——空気が重く
なったからって、友達をそう簡単に変えるなよ、ってことだ。
確かに最近のクラスの空気には疲れていた。でもだからって友達を
変えようだなんて思ってもいなかった。鶫さんと白鳥さんの争いに、
思わぬ巻き込まれ方をしただけだ。
それがわかってもらえなかったことが、辛かった。
私は樫村の愛想笑いと本心の笑顔との区別だってつくのに、何で
樫村は私のことをわかってくれないんだろう、とまで思う。
こんな感情身勝手だ。その人の気持ちが本当に理解できているか
なんて他人に判断のしようがないのに、勝手に自分は相手を分かって
いると思って、相手に自分の理解を求める。そんなの身勝手すぎる。
たとえ私が思う「樫村を理解できている」ことが本当だったと
しても、それを樫村に同じく求めるのは筋違いなのだ。
——だって、樫村は私をただの隣の席のやつとしか思っていないだろ
うから。
「千鶴」
いつまでもドアの向こうに座り込んでいる私に向かって、トキ兄が
声をかけてきた。ゆっくり部屋で考え事をしようと思っていたのに、
気が付けばこんな寒い廊下でマグカップを持ったまま思い出し泣きを
するなんて、どれだけ今の私は思考が鈍っているのだろうか。
「お前が言ってた隣のやつが言った鳥、フラミンゴだったっけ」
「……そうだけど」
パーカーの袖で涙をふくと、私は泣いていたのがばれないように、
なるべくはつらつとした声で答えた。
「フラミンゴってさ、寒いから片足を折ってあっためてるだとか、
湖の成分が有害だからなるべくそれにつけないようにしてるとか、
色々説あるけどさ。ようするに自分を守るためなんだよ」
トキ兄は何が言いたいんだろう。
「でも片足で立つのってフラミンゴだけみたいに言われてるけど、
ほかの鳥だって寒けりゃ片足で立つのだっているんだからな」
慰めているつもりなんだろうか。
愚痴ついでに話してしまった樫村のことだって、「仲良くなかった」
といったのに。
そうだ。仲なんて良いように見えて、実はノートの切れ端でしか
会話したことなんてない。休み時間はギリギリまでどこかに遊びに
行ってるし、授業中だって私は「やめて」という内容の文しか書か
ない。あくまで会話は樫村からの一方通行みたいなものだった。
だから樫村がやめればおわる。それが自然だ。そしてまた来月の
席替えで、まるで何事もなかったかのような関係になる。
……それがきっと、自然なんだ。
一口マグカップのミルクを飲んでみると、かなりぬるくなっていて、
温まるどころか体が冷えたように感じた。そういえば冷え込む夜に
なるとテレビで言っていたっけ。
もうきっと外は真っ暗だ。明日になれば、また冬休みまで異様な
クラスの空気が続くんだろう。ならいっそ夜なんて明けなければいい。
明けなければ、いいのに……。
≪ピンポーン……。≫
「……え」
「なんだなんだ」
トキ兄がいきなりドアを開けたためにドアの角が私を直撃した。
「あっ悪い」
そういうとサンダルをつっかけてのぞき穴を覗き込む。
何が「あっ悪い」だ。大切な妹にドアをぶつけといてその程度か。
それなりに痛かったが、それよりこぼれたミルクが心配だ。
そう思って雑巾を取りに洗面所に行こうと立ち上がった時だった。
「樫村です。千鶴さんいらっしゃいますか」
……え?
つづく
- Re: そこのあなたに恋愛系短編集! ( No.5 )
- 日時: 2015/12/21 18:50
- 名前: 紅色ゆりは (ID: gKAFDMkE)
何で住所がわかったんだろう。
一番に思うのがそんなことだなんて、悲しいやらむなしいやら、だ。
とにかく今わかるのは、玄関ドアの外に樫村がいる、ということ。
「かしむ……樫村さん?」
トキ兄は私の方を見て何か察したようにジェスチャーをした。入れて
いいのかどうか迷っているらしい。
どっちでもいいよ。
そう口パクで伝えると、トキ兄は手招きをしてきた。どうやら私に
外に出ろと言っているようだった。樫村のことをあれこれしゃべって
しまっているからか、樫村に対しての印象があまり良くないらしい。
中に入れる気はないのだろう。
私はカップをトキ兄に手渡すと、ゆっくりとドアを開けて外に出た。
寒い。息が白くなる。こんな薄手のパーカーでは保って十数分だ。
ここがマンションの8階だからだろう。遠くの方まで夜景が見える。
「……よ」
樫村は茶色のジャンパーを着て黒い手袋をつけていた。樫村の吐く
息も白い。
「……ん。——なに、『千鶴さん』って」
「だってここ平野んちだろ。全員『平野』じゃん」
「そうだけど……」
こんな声で、こんな喋り方をする奴だったんだ。今更だがそう思う。
「……その、何で住所わかったわけ」
疑問をそのままぶつけると、樫村は「あー」とばつの悪そうな顔を
した。
「鶫と年賀状の話してた時さ、細かい住所とか聞き流してたけど
ここのマンションの名前だけ憶えててさ。5階に住んでる町田いる
だろ。聞いたら8階に平野が住んでるっていうからさ」
そこまで言って、「一歩間違えたらストーカーだよな。ごめん!」
と謝ってきた。
やっぱり変な奴だと思った。そんなことどうでもいいと思いつつも、
本当はそこまでして会いに来てくれたのが嬉しかった。
「……で。なんでこんなことして会いに来たかっていうと……」
樫村は音がするくらい勢いよく、頭を下げた。
「悪かった」
「……え? な、なにが」
「フラミンゴが!」
頭を下げたまま、樫村は続けた。
「平野がいつも一緒にいる女子の何人かから、平野の様子がおかしい
けど何か心当たりがないかって言われたんだ。その女子たちも僕も
急にあんなことがあって驚いて、平野に嫌な接し方をしたと思う。
決定打みたいなことをした僕が代表で謝りに来た。悪かった」
「……樫村」
急によそよそしくなったのは、わざとじゃなくて、ただ驚いてただけ
だったんだ。樫村だって同じだ。こんな風に一人で謝りに行くなんて、
どれだけ緊張しただろう。どれだけ勇気が要っただろう。
「……樫村。私もごめん。勘違い、たくさんしてた」
私が思っているより、私は被害者なんかじゃなかった。あんなこと
で避けられるような細いものではつながっていなかった。
「樫村。私たちって仲良いかなあ。ちゃんと、仲いいかなあ……!」
樫村は笑った。私には、本心の笑顔に見えた。
「仲良いだろ。クラスの中で一番くらい!」
「そっか……!」
白い息が、まるで空気に溶け込むかのように消えていった。
勘違いだった。全部、全部、こうやって話せば解決することだった。
あとでトキ兄も話してあげよう。もう私は大丈夫だって。
でも、樫村の笑顔に少しきゅんとしたのはまだ秘密だ。
そして年が明けて2月頃、クラスの居心地の悪い空気はほぼ
なくなっていた。そもそもがケンカの延長だったから、熱が冷めてきた
というのもひとつの原因でもある。でも大きな原因は別にある。
私と樫村が付き合い始めたことで、クラスが全体的にからかいムード
になってしまったからなのだ。
おしまい
- そこのあなたに恋愛系短編集! ( No.6 )
- 日時: 2015/12/22 19:06
- 名前: 紅色ゆりは (ID: gKAFDMkE)
フラミンゴ女子、おしまいです。こう、純情的な恋愛ものを書くのは
初めてなのであまりうまくかけていなかったと思います。その前に
文才の問題ですね……。フラミンゴ女子を読んでくださった方、
すみません。そしてありがとうございました!
恋をして気持ちがふわふわしていたせいで被害妄想的なものに
とりつかれてしまった女の子が、友達は自分が思っているより自分の
事を友達だと思っていてくれたんだということと、ちょっとした自分の
気持ちに気づけた、というお話でした。
次は明るいお話書こうと思います。笑
随時オリキャラもコメントも募集中!
- そこのあなたに恋愛系短編集! ( No.7 )
- 日時: 2016/01/03 17:16
- 名前: 紅色ゆりは (ID: gKAFDMkE)
2
ただひたすらに没頭して取り組めることがあったなら、それはどれ
ほどの幸せなんだろう。いや、人によっては不幸かもしれないけれど、
やっぱりある程度には幸福な事だと思う。
それがどんなことであろうと、それくらい大切な物って簡単に譲れ
ないし、少しの犠牲ならかえりみない人もいる。
私は今、そんな人の「犠牲」になっている。
「あの、この子全然喋んないんですけどー?」
「おっかしいな。ラッパはうるせえくらい喋るっつってたけどな」
「ラッパぁ? 誰ですか。あだ名ですか? 適当〜」
「あー、イントネーションが違うんだなぁ」
……うるさいくらい喋るのはあんたたちだよ。
そう言ってやりたい衝動を拳を握りしめておさめ、そっぽを向いた。
ヤンキー、ヤンキー、ヤンキー、その向こうにまたヤンキー。この
町にこんなにヤンキーがいたなんて知らなかった。このクリーニング
屋の真下、要するに地下に、こんなたまり場があったことも。
たいして狭くも広くもない地下のたまり場には、イスやらテーブル
が無造作に置かれ、お菓子の空き箱が床に散乱していた。
例えお金をもらったって、この部屋だけは掃除したくない。
制服を着ているからおそらく高校生だろうけど、あまりに着崩して
いるためにどこの高校だか見当もつかない。とりあえずうちの中学の
奴ではないだろう。
「お? なんだその目。年上に何つー目線向けてんだよ、あぁ?」
「……すいませんでした」
「物わかり良すぎてつまんねぇなーお前。なんなの、悟り世代?」
世代で言ったらあんた方もたいして変わんないよ。
「すいません」
「だからぁ〜そういうの! 面白味がないの! わかる?」
わかるかよ。いい加減に家返してくんないかな。
「ところで先輩。この子どうしたんですか? まさかその辺から
拉致ってきたとか言ったら洒落にならないですよ。俺割とマジで警察
呼びますよ」
比較的背の小さな赤いTシャツをきた後輩らしき人が、この寒いのに
アイスクリームを食べながらそう言った。
「碇、俺がそんなことすると思うか?」
「……すいません」
「三橋、お前に聞いてねえ。あと謝るなよ! 空しくなるだろが」
三橋と呼ばれた長身の人は、イスに座ってスマホをいじり始めた。
「たく、どいつもこいつも……。こいつはな、ラッパの妹の、
なんだっけか……。あーいつもあだ名呼びだから名字もわかんねえ」
「よねむら、です。米村 いぶきです」
下を向いて、そう答えた。怖くなんてない。ラッパ、なんて言われて
いても、兄さんだって割と古風なヤンキーだ。睨みだとかなんだとか、
こういうものには耐性がある。
ただ、わけも詳しく教えないまま私を連れてきたこの人たちに、
少しイラついているだけで。
つづくよ!
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