コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 俺と少女の1日ミッション *完結しました*
- 日時: 2016/03/21 14:48
- 名前: ろろ (ID: HSAwT2Pg)
すぐ終わります。
3.21(月) 完結しました。
無理難題なミッション >>1-3
伝えなくては >>4
諦めない >>5-6
脱線と後悔 >>8
終わりと始まり >>9-10
感想をくれた心お優しいお方
・湯桁のろま 様
- Re: 俺と少女の1日ミッション ( No.6 )
- 日時: 2016/08/13 06:23
- 名前: ろろ (ID: HSAwT2Pg)
…………? 彼女は何が言いたい? 俺が死ぬのはまだいいだろう、だが、身の回りの誰かとは? 家族? 友達? それとも──。
「なあ」
「はい」
少女は真顔のまま、まるでロシア人形のように表情がない顔で俺の言葉に反応する。
「その、俺が道連れにする人って誰なんだ」
「さあ。それはあなた様が知っていると。“1番思っている人”ですよ? それはわかりきっているではありませんか。頭のいいあなた様なら、わかりますよね」
「…………」
俺は黙る。
「大丈夫ですよ。だって、そんなことは起こりません」
「え?」
起こらない? ならば、いまのは──嘘?
「これは、嘘なのか?」
「いえ、本当ですよ。あなた様がミッションをクリアできない場合は、1番思っている人が、あなた様の道連れになって死にます。しかし、それを回避する方法は簡単ですよ」
「…………」
「だた──麻川結に告ればいいのです」
だからそれが思春期の男子にとっては、どれ程無理難題なことだと、こいつはわかっていっているのか? と、俺が言おうとしたとき、優月の顔が辛辣なものになった。
「あ、やっば」
「どうした?」
今日会った間柄で言うのものなんなのだが、1度も見たことのない、辛辣な、まるで全身串刺しにされたかの如く、苦しい表情の優月に俺は心配する。
そしたら、自分の顔の重さに気づいたのかよく解らないが、優しく優月は俺をじっと見て微笑んだ。少し惚れてしまいそうなぐらい、可愛い笑みだった。
「いや、少し所用を思い出しまして。ちょっと行ってきます」
俺ははっとして、優月を止めようとする。
「え? ちょっ! 待てよ、まだ言いたいことが………」
「グダクダだ言ってないで男なんだから女々しいこと言うな! 女子か? お前は! ということで、私は少しここから離れますが──」
そこで優月が俺のとなりに来た。そしてバンッとなんか破裂したかと思うぐらいの音がでるほど、勢いよく俺の背中を叩いた。
「痛ってぇ!!」
俺は思いっきり叫んでしまった。しかし、少女は不敵な笑みを浮かべ、俺を激励してくれた。
「頑張れよ、叶佑!」
そのあと、優月は走って何処かに行ってしまった。
また、俺は家に帰りもせずに、今度はさっき腰を掛けていた机に寄りかかって虚空を見つめていた。
そんなときだった。また、聞き覚えのある声がした。
「あれ? 一宮くん? どうしたの、そんなぼけーっとした表情で」
「あ、麻川……」
声の主、麻川は俺の顔を不思議そうに見ながら、俺の右隣に立っていた。
やばい。これはやばい。何であいつが今いる? おかしくないか? 私は今、叶佑が通っている学校の屋上に入る。なぜかというと、さっき、叶佑と話しているときに見てしまったのだ。いま、ここにいてはいけない“あいつ”の姿を。
「おい! どこだ! おい!」
私は叫ぶ。あいつがいられても非常に迷惑なだけだ。
「そんなに叫ばなくても、僕はここにいるよ」
上の方から声が聞こえた。声がしたのは上空だった。私は上を見る。外は曇りで、雨は降りそうになく、少しだけ太陽がちらつくような空だ。
なんとも曖昧な、そしてあいつの性格を表しているような空で私は居心地が悪くなる。
「っち……」
私は声の主の姿を目で捕らえ、舌打ちをした。
呑気に宙なんかに浮きやがって………。
「えー、舌打ちなんかしないでよー。カナシイジャーン」
声の主はヘラヘラと笑う。まるで何かの劇を見てるみたいに。
「全然悲しそうに見えないがな。死神」
「まあまあ、そう言うなよ、闇に落ちなかった幽霊よ」
私が冷たくいい放つと、死神も一瞬氷のような表情になりそのあと、またヘラヘラとした顔に戻った。
そう、彼は死神。私利私欲で大鎌を持って人間の魂を狩り、我が物顔でその狩った魂で遊ぶ死神。私が大嫌いな生き物だ。服装は手や足が隠れるほどのブカブカの黒いコート、下の服もやはり黒い。
期待を裏切らない、日本人が死神を想像して思い浮かぶ格好だ。と言っても顔だけは立派な人間だ。言いたくはないが、イケメンだ。外国人顔だ。というか、ハーフ顔だ。このやろう。むかつく。
私は死神を睨む。
「おい死神、なぜ今度の狙いをあの男にした?」
「おや、いけないかい?」
今にも腹を抱えて笑いそうな死神に対し、私は淡々と、機械のように反論する。
「人間の命を、私利私欲の為だけに狩ること事態がいけないことだ」
「あらまあ」
律儀だなあ、と死神はため息をつく。何が律儀だ。
「なぜ、あいつに?」
「気分だよ、き、ぶ、ん。大丈夫、ちゃんと君の予想であっているから。あと少しで僕はあの男の子と、たぶん居合わせるであろう女の子の命を狩る。楽しみだなぁ。わくわく」
自分でわくわくとか言った。ウザい。こいつの方が死ねばいいのに。
「おい、何でお前はそんなことをするんだ。なぜ、若い者の命ばかり狙う」
「楽しいからだよ! 若くて、青春を謳歌している人間ほど、魂を狩るのは楽しいよ。あ、僕は今からちょっとした準備をしなくちゃいけないんだった。今はこれでおさらばするよ。じゃあまた朝方に会おうね──」
そう言って、ヘラヘラと笑いながら死神は消えていった。
「くそっ」
私はフェンスを叩く。いくら幽霊でも私は物を触れる質だから。だから、人間らしく、と言っても人間ではないと思うけれど、せめて異邦人位だったらみえるから、そういうふりをして、私みたいな人が増えないように………増えないようにしなければ…………。
「叶佑、頑張れ」
私は、すべての感情を押し殺し、機械のようにポツリとそう呟いた。
- Re: 俺と少女の1日ミッション ( No.7 )
- 日時: 2016/03/21 13:43
- 名前: ろろ (ID: HSAwT2Pg)
今回は小説ではないです。
あ! ああああ、あ、あ、あ、あの!? ふぁ!?
!?1?!!?!? へ?
何が起こっている1? 今のスレッド数これ含めて7だよ1? なのに、参照100!? おかしいよ? おかしい! これはおかしい!
いや、でも本当に読んで下さり、ありがとうございます!!
嬉しい限りなのです!! この話は私の中ですでに完結しているのですべて今日投稿してしまう予定です! はい!
この話は小説家になろう様でも書いていたので、それでなんかおかしい表記になっていたらごめんなさい。すべて投稿した後に見直します。
うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああうれしいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
- Re: 俺と少女の1日ミッション ( No.8 )
- 日時: 2016/08/13 06:25
- 名前: ろろ (ID: HSAwT2Pg)
「別に、ちょっとした考え事をしてただけだ」
俺はそっけなく、目線をまた窓の向こうに移して答える。
「ふーん。それって、今日の朝と同じ事?」
麻川はそのままの位置で座ってきた。俺の右隣だ。距離で言うと約30センチぐらいだ。
「まあ、そんなところ」
「なんなら、私が相談に乗ってあげようか。そしたら少しだけでも、その悩みが晴れるかもしれないし」
「お前に言ってもなあ」
「私には言えないことなんてあるの?」
「そりゃあ、あるだろう。最近一緒にいると言っても出会ってからまだ1年ぐらいしかたってないし」
そう、麻川と出会ったのは高校に入ってから。たまたま一緒のクラスで、よく話とか合うので仲良くなった、というか、仲良くなってしまったのだ。
そして、好きになった。麻川結のことが好きになった。決してひと目惚れというわけれは無いのだ。だからこそ、言いにくいのだ。なんか、ひと目惚れでした! って言った方が素直に言えそう。内面に惹かれました! ってなんか照れくさい。だからこそ、言えない。こいつを好きだなんて。
「そりゃそうなんだけど……。でも、友人として、いつも能天気に笑っている一宮くんが悩んでいるなんて知ったならびっくりしてしまうものだよ」
麻川は伸ばしていた足を自分の肢体に近づけ、体育座りをする。かわいい。
というか、
「そんなに俺っていつも悩みがないような奴に見えるのか?」
俺でも、いつも悩みの1つや2つ抱えながら生きているのだが。
「そうじゃなくて、悩みを抱えてても、とってもちっぽけな悩みな感じがする。話せば1分もせずに解決するような感じの物」
「うわー。ひでえ」
こいつ俺の悩みをこけにするような顔つきで笑ってやがる。俺の悩みは、そんな簡単に言えるものではないんだ! 俺の悩みはネットサイトを何十回も巡回しないといけない悩みなんだ。なのに、なのに、この顔とは!
「だって実際にそうでしょ。どうやったらあのゲームは早く攻略できるか、あのゲームの裏ステージはどうしてあんな鬼畜なんだ。とかいう悩みなんでしょ?」
「…………」
なぜ、知っている。
「そんなことなら、私はあんたがやっているゲームなんてほぼほぼ持ってるし、ほぼほぼクリアしてるから言ってくれれば教えてあげるのに」
「は?」
こいつ……なんて言った?
かわいく太ももを抱えるようにして体育座りをしている、麻川はなんて言った?
俺の反応を見るや、少し嬉しそうに彼女は言葉を付け足しながら必要な部分だけを俺に言ってきた。
「だから、言ってくれれば教えるよ。先週発売されたあのネットで鬼畜ゲームって叩かれていたゲームもクリアしたし」
え? マジで? そういやあ、俺このゲームの発売が楽しみなんだ! とか言ってこいつに無意味にも、そのゲームの詳細が書かれているゲーム雑誌を見せていたが、まさかこいつも買っていたとは……。そしてすでにクリア済みとはどういうことだ!? あれ、本当に鬼畜ゲームなんだよ? 俺、1週間頑張ってゲーム全体の五分の一しか進んでないんだぞ? なのにこいつは……。
「貴様は何者だ」
「麻川結だよ」
「貴様は何者だ」
「麻川結さ」
「貴様は——」
「麻川結だ」
「貴様——」
「麻川結」
「…………」
俺は、窓の外に向けていた目を移して、麻川を見る。そして、少しだけ頭を下げた。
「すみませんが、そのゲームをクリアできる方法を教えてください!」
「よかろう」
そのあと俺と結は俺の家に行って、明日学校もないということもあり、寝落ちするまでゲームをすることになる。
「やってしまった」
俺は起きてからそう言った。ただいまの時刻午前5時。昨日、優月に死を宣告されたのが午前7時。俺が死ぬまで、あと2時間だった。
- Re: 俺と少女の1日ミッション ( No.9 )
- 日時: 2016/03/31 14:03
- 名前: ろろ (ID: HSAwT2Pg)
やばい。これはやばい。死ぬのか? あと2時間で? まさか。
俺は隣にある人陰に視線を送る。そこには、かわいらしい寝息をたてて、目を瞑っている麻川がいた。とても幸せそうに寝ていた。
「本当に、こいつの顔は整っているよな。とても綺麗で、儚げで、力強く根を張っている花みたいだ」
そんなことを俺は呟く。
そういえば今日は親が出張でいないんだっけ? だから俺と麻川は寝落ちしてしまったのか。というか、
「俺、何してるんだよ。なに気ままにゲームなんかやってるんだよ。もっと早くミッションをクリアできる機会はあっただろう? なのに……」
待て、今、自分のことを責める時間があるのなら、こいつを起こさなければ。起こさなければ……。脳裏に昨日優月に言われた言葉が浮かぶ。
——ミッションをクリアできなかった場合、あなたの一番大事な人を道連れに、地獄に落ちる
「マジかよ」
俺は失笑する。おかしすぎる。
とりあえず、俺は麻川を起こすことに決めた。
「おい、麻川。起きろ」
俺は華奢な、少しでも圧力をかけたら今にも折れそうな体を、ゆさゆさと揺らす。
「うーん?」
「起きろ! 起きてくれ!!」
——死にたくないんだ。
まだ、本気で受け止めきれてない。だけれど、もし、本当だった場合、たぶん死ぬのは俺と、俺と麻川だ。どういう死に方をするのかわからない。わからないから怖い。だから、それを避けたい。
「麻川! 麻川!!」
俺は必死に麻川の体を揺する。
死にたくない。死なせたくない。そんな思いが頭の中の思考を砂時計のように降ってきて、埋めていく。お願いだ。起きてくれ。
「起きろ! 起きろ、麻川!」
麻川は寝起きが悪いらしい。起こし始めてから約1時間後。
「なに? わ、どうした!? 一宮くんなんで泣いて……」
麻川はやっと起きた。
「お前、起きるの遅い……」
俺は、泣いていた。絶望しか、脳内を制御していなかったからだ。もう、タイムリミットまで20分。終わりだと思ってた。
それでも俺は笑顔を取り繕う。
そして、俺の顔を見て跳ね起きた麻川を抱きしめた。
「!? うわ! すっごく体ふるえてるよ。ねえ、本当にどうしたの? もしかして悩みごとのこと? ねえ——」
「そう、悩みごとのことだよ。俺さ、昨日の朝の7時、今でも信じられないけれど、ある人に今だとあと20分、だから——その時の時点であと1日で、お前は死ぬって言われたんだよ」
声が震える。手も、足も、唇も、俺の身体と、俺から流れる音はすべてまるでケータイ電話のバイブ機能が発動しているみたいに、小刻みに震えていた。
そして、俺の言葉に対し、麻川が怒る。
「は!? 死——!? 嘘でしょ、そんなの。なに言ってるの。なに、ふざけ——」
俺は麻川の体を抱きしめたまま、言葉を遮った。
「ふざけてなんかない! ふざけてないんだ。本当に……言われたんだ」
「なんで? どこか体でも悪いの?」
だんだん麻川の声が曇っていく。反対に俺は、できるだけ声を明るくした。
「いや、身体に異常ない。ないんだ。だから、どうやって死ぬのかわからない。そして、こうも言ったんだ。俺の人生に後悔がないようにお前にはあるミッションをクリアしてもらうって」
「は、何それ」
「そしてこうも言われた。『ミッションをクリアできなかった場合、あなたの一番大事な人を道連れに、地獄に落ちる』って」
すると、彼女は呆れたように笑みをこぼした。同時に生暖かい、透明な涙も、流す。
「は、なにそれ、理不尽すぎでしょ」
「……だよな」
俺は苦笑した。本当にバカバカしくてしょうがない。
「……で、そのミッションって、なに?」
「密かに思いを抱いている女子に、告白すること」
「……。いるんだ。好きな人」
なぜか悲しそうにする。俺は、優しく、でも力強く言う。
「うん、いる」
「いるのに、私なんかを抱きしめちゃっていいの?」
「うん、いい」
「なんで」
「なんでって——そりゃあ——」
そんな時だ。俺の部屋のベランダに続く窓と、1部の壁が壊れた。
俺は部屋に勢いよく入り込んできた瓦礫や埃から、麻川を守るようにとっさの判断で抱き着いていた手を解き、覆いかぶさるようにする。
「きゃ!」
「ぐっ」
俺と麻川は壊された壁を見る。
そこには、月明かりに照らされ、不気味に光っている大鎌と、真っ黒い人影が存在した。
「はーい、タイムオーバーまであと10ぷーん! 迎えに来たよ。さあ、逝こうか、地獄に」
- Re: 俺と少女の1日ミッション ( No.10 )
- 日時: 2016/08/13 07:05
- 名前: ろろ (ID: HSAwT2Pg)
俺と麻川は幸いにもお互いに大きな傷はなかった。
俺はその黒い人影を睨む。
「お前、誰だ」
黒い影はニヤリと、とてもこちらが不安に、黒い何かに襲われているような感覚になる笑みをこちらに向けてきた。
怖くなったのだろう。麻川が俺の右手を両手で掴んでくる。
「僕? あの幽霊、今回も俺の存在教えなかったのか。全く、ひどいなあ」
幽霊? 誰だそれ。
「僕は、死神っていうんだよ」
「死神? それって物語に出てくる、生き物の魂を狩るっていう……」
「お? 知ってるのかい? でも、残念。死神はこの世に存在するよ。だから僕はここにいる、存在している」
嘘だろ。本当に死ぬのか。
「一宮くん……」
麻川さんは俺の手を握っている手の力を強くする。
「…………」
俺は、ここで告白したら、どうなるのだろうか。もしかしたら、彼女だけ。彼女だけでも助かるのではないのか? でも、そうしたら、残された彼女にはどうなるのだろうか。トラウマになってしまわないだろうか。俺のせいで。俺のせいで……。でも、それでも、彼女には生きていてほしい。
時間は、もう、無い。
「あと、5分。今回はどんな味がするのだろう? 楽しみだなあ」
死神の言葉に耳を貸してはだめだ。時間が無くなる。
俺は、麻川さんの目をじっと見つめる。
「ねえ、麻川さん」
「なに、一宮くん」
今、言わなければ。言わなければ、もう、チャンスは無い。俺は意を決して、言葉を紡ぐ。
「俺さ、1年前に出会って、たくさん話して、意気投合して、すっごくいい友達ができたと思った」
「うん」
声を震わせながら、目から涙を溢れさせながら、麻川さんは相槌を打ってくれる。
「でさ、そのうちお前のことを友達じゃなくて、違うものに見えてくるようになったんだ」
俺のその言葉で、麻川さんは、目を見開く。
「え?」
「俺さ、麻川さんのこと、好きだ。友達じゃなくて、女の人として。だからさ、俺と、一瞬でいいから、付き合ってください」
「……て……な」
「え?」
目を見開いたと思ったら、下を向いてしまった。どうしたのだろうか、やっぱり、俺が彼女に告白するなんて、やってはいけないことだったのだろうか。
「……なんていうな」
しかし、違った。彼女は、麻川結は、怒っていた。俺が告白したことに? 否、俺の言葉のある部分に。
「一瞬なんて言うな! 馬鹿! 私だって、私だってあんたのことが! いろんないいところを持ってて、それなのに自己評価がやけに低くて、自分に自信を持ってない、あんたのことが、大好きなんだよ! ずっと一緒にいたいって思ってたんだよ! 友達じゃなくて、恋人として! なのに——なのに! 一瞬なんて言うなよ! 諦めるなよ! 諦めないでよ! 私は、絶対やだ! お前とこの世で恋人になって、結婚して、お前と私の子供を産むの! そうしたいの! だから、そんなこと言うな! 諦めるなよ! 馬鹿!」
両思いだった。嘘だろう。俺なんかのことを、彼女は、好きだと、大好きだと言ってくれた。しかし、でも、昨日言われてしまったのだ。俺は、死ぬと。
「で、でも……!」
その時だ、ある声が聞こえた。
「ミッションクリア、直ちに死神を排除する。よく頑張ったな、叶祐それに、麻川結」
「え?」
その声の主は、俺と麻川の前に立っていた死神と名乗る男の後ろに佇んでいた。
とてもおかわいらしい少女の外見を持っている、見た目からは想像がつかないほどの大人っぽい声を持った者。……優月だった。
「あれ、幽霊。どうしたんだ? しっぽ巻いて逃げたと思っていたのに」
「は、ふざけるんじゃない。死神、お前は今回の人間は諦めろ。というか死ね」
「は? 何を言っている」
死神は、持っていた大鎌を構える、いや、構えているそぶりをした。なぜ、その表現になったか。それは持っていないからだ。さっきまで持っていたはずの大鎌を。代わりに、
「この大鎌凄いよな、これさ、死神をも殺せるらしいぞ?」
「!?」
優月はさっきまで死神が持っていたはずの大鎌を軽々と、片手で持っていた。
「じゃあな、地獄で閻魔にでもこき使われてろ」
そして、優月は死神を斬った。
「大丈夫か」
死神を斬った後、優月は俺たちに平然とした顔で問う。因みに優月に斬られた死神は灰のようになって消えてしまった。跡形もなく、消えた。そして、優月が持っていた大鎌もどうやら持ち主が死ぬと同時に消えるようになっているらしく、同じく灰のようになって消えてしまった。
「う、うん。でも、俺……」
死ぬんだろ? もう。
「あ、そうだ。ミッションおめでとうございます。そして、あなたはこの世であと数十年の余生を楽しんでください」
「え、待ってください! 彼はまだ死んじゃ……て、え?」
言い返そうとした麻川さんの顔がみるみる喜びに満ち溢れていく。
「この世で……数十年の余生を楽しんでください?」
俺は、ポカーンだ。
「もともと、お前が死ぬのは予定だったのはあいつ、死神がお前達の魂を狩ろうとしていたからだ。で、私はそれを阻止したかった。で、私はその死神に対抗するための奴の持っている大鎌を持つ方法が『その狩られる人間が本能で1番願っていることを叶えること』だ。で、お前はそのための手段であるミッションを見ごと本当にギリギリだったけれど、クリアしてくれた。そして、無事、死神を退治できた。だから、お前らは、まだ、生きていられる。生きられる」
「「…………」」
俺と、麻川さんは、少し言われていることが非現実すぎて理解ができなかった。
そして、その様子を見るや、俺が最初会った時のように、
「なんだ、理解ができないのか? だったらもう1回ゆうぞ。言えばいいんだろ? もともと、お前が死ぬのは予定だったのはあいつ、死神がお前達の魂を狩ろうとしていたからだ。で、私はそれを阻止したかった。で、私はその死神に対抗するための奴の持っている大鎌を持つ方法が『その狩られる人間が本能で1番願っていることを叶えること』だ。で、お前はそのための手段であるミッションを見ごと本当にギリギリだったけれど、クリアしてくれた。そして、無事、死神を退治できた。だから、お前らは、まだ、生きていられる。生きられる。はい、言ったぞ」
と言ってきた。
「「…………」」
俺と、麻川さんは、内容は理解できた。だが、嬉しすぎて何を言っていいのかわからなかった。
そして、ぶちっという音が聞こえてきた。
「おい、まだ言っても解らないのか。この男あって、やっぱり人間が好きになるものは似ているものが多いのだな。このやろう」
優月の頭には欠陥が浮き出ていた。めっちゃ怖え。俺は、慌てて宥める。
「優月! わかった! 理解できた! だから、優月は俺たちを助けようとして、わざわざあの無理難題なミッションを俺のほうに出してきたんだな!?」
「……まあ、そうだ。だから、もう、大丈夫だ。お前らは生きられる。まだ、幸せを体験できる。良かったな」
落ち着きを取り戻した優月はとても嬉しそうに笑って、そのあと、壊させた壁に触った。
「うわっ」
すると、あの死神に壊されたはずの壁が一瞬にして直った。というか、元に戻った。という表現が正しいのだろうか。とにかく、さっき壁が壊されたなんて思いもできないくらい、部屋中に舞っていた土埃は一つもなくなっていた。けれども彼女が戻したのはあくまでも建物のみのようで、俺たちが負った傷はなくならなかったが。
すべて元通りにした彼女は満足そうにしたあと、俺たちに話しかけ来た。
「よし、じゃあ、私は去るとする。あ、そうだ——」
それから、俺たちは普通に生きている。俺と麻川、改め結は、無事付き合うことができた。
優月は最後に自分が何であるか、どうしてこんなことをしているか、簡潔に話してからどっかに去ってしまった。
彼女は今、幽霊のような存在で、それになった原因は私欲の為だけに死神に斬られそうになった恋人を庇ったことで、天国にも地獄にもいけなくなったからだそうだ。そして、彼女は死んでいるけれど、死んでいない。幽霊だけれど幽霊じゃないという自分でもよくわからない曖昧な存在になってしまったらしい。因みに彼女を斬ったのは今回俺の魂を狩ろうとしていた死神だそうだ。
だから、彼女は敵は打てたと言って嬉しそうにしていた。
で、俺のような、私欲の為だけに死神に狙われている人間を見つけては助けるように、できるだけ阻止できるようにしたいと願ったら、俺たちに説明してくれた方法でのみ、助けることができるようになったらしい。
そして、彼女はそれを話してくれた後、こう言って去って行った。
「また、会えた時、その時にはあなた方が幸せになっていることを願います」
街路樹が規則的に並ぶ大通り。そこに俺と結は手をつなぎながら、これから何をするか? また、新しいゲーム寝落ちするまでやろうかなど、たわいのない世間話をしていた。
そして、俺は見た。あいつの姿を。そいつは、健康的な青少年を罵っていた。俺の時のように、楽しそうに。
そして、彼女は俺の姿に気が付いた。そして、言ったのだった。確かに。
「今のあなた方は、幸せそうで何よりです」
と。
「ああ、幸せだよ」
そう呟いて、俺は、結に向かって大げさに楽しそうに微笑んだのだった。
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