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- 鬼ノ娘
- 日時: 2016/02/21 20:25
- 名前: 魅雨 (ID: fnEXgJbc)
道に迷った。
細い獣道らしき道に入ってから約十分が経過。
そのわずかな時間で高校生の僕は、その、あまり言いたくないのだが、迷子になった。
不幸中の幸い、携帯は使えるのだが、まだ未開拓のこの辺りの森の地図など探してもある筈がない。というか探しても無かった。
冷たい風は、僕を嘲笑うかの様に僕の頬をぴちぴちと叩いた。
目が乾いて涙が出そうになったので、思わず目を瞑る。
萌え袖状態になっているパーカーの袖を右手でぎゅっ、と握り締め、左手で黒いスマートフォンを落とさないように抱え込む。
スマートフォンの充電はもうほとんど0で、これ以降は役に立ってくれなさそうだ。
僕は静かにため息を吐きながら、この森に存在するであろう館を探しはじめた。
そもそも、何故僕が地図もないこの森に潜り込んでいるかというと、それは
「ねぇ、アンタ」
…声が、した。
その声が上から聞こえてきた気がしたので、渋々上を見上げる。
「ちょっと、何よその顔」
上には、綺麗な朱色の小鳥が一匹。
それ以外に目立つものは無し。
—上ではないのか。じゃあ何処に?
僕は体を回転させ、横も後ろもしっかりと確認したが、何もない。
あるのは僕を迷子にした悪魔の木々だけだ。お前らに用はない。
「…どこ見てんのよ、…怒るわよ!」
1人でぶつぶつ何かを言っていた誰かが、もう抑えられないとでも言う様に叫んだ。
次に気がついた異変は、頭が、抉られるのではないか、と思う程に激痛を訴えていることだった。
「!?いったぁ!?な、何するの!!」
僕は反射的に叫ぶ。
思わずしゃがみ込んで頭を押さえている僕の目の前にいるのは、綺麗な朱色の、小鳥。
いや、まさかとは思ったが、本当にこの小鳥が喋っているとは。
「…君、喋れるの?」
僕が恐る恐る口を開くと、小鳥は当たり前、とでもいう様に胸を張って言った。
「ええ、喋れるわよ。じゃあ私の質問に答えなさい。アンタは誰?なんで此処にるの?」
早口でぺらぺらと喋った小鳥に対し、多少嫌悪感を覚えたものの、僕は微笑みながら答える。
「僕は齋。彼女ー、…魅鞠っていう女の子がこの森にある館に囚われているって聞いて、ここに来た。君の名前は?」
僕はフレンドリーな青年を演じながら、優しい声色で尋ねる。
「名前?んなの無いわよ。私は一応野生動物よ。呼ばれるとしたら『鳥』くらいじゃないかしら。」
この鳥に関わってもいいことなんてある筈無いのに、僕は顔を近付けて小鳥にこう言った。
「じゃあ、僕が名前付けてもいいかな?」
小鳥はびっくりした様な顔をし、その後嫌味を言う様にこう呟いた。
「いいわよ。変な名前だったら絶対許さないけどね」
僕は変に張り切り、名前を考える。
いつき、みまり、い...り、み…
「ミキ」
僕は先程の小鳥の様にぼそっと呟いた。
そして改めてもう一度、その名前を口に出す。
「ミキって名前、どうかな?」
小鳥、いや、ミキはニヤニヤしながら言った。
「いいわよ。だけどそれ、自分の名前と彼女の名前から取ったでしょ」
僕は顔が赤くなるのを感じながら、うん、と小さく頷いた。
ミキは満足そうに言う。
「よし、アンタがいい奴だって分かったし、彼女がいるっていう館に連れて行ってあげるわ」
ミキは、僕の袖を引いて何処かへと進み出した。
- Re: 鬼ノ娘 ( No.5 )
- 日時: 2016/02/23 19:48
- 名前: 魅雨 (ID: fnEXgJbc)
2月24日に更新しますー
- Re: 鬼ノ娘 ( No.6 )
- 日時: 2016/02/24 19:32
- 名前: 魅雨 (ID: rs/hD2VF)
僕の袖を器用に掴んだミキは、道なき道を進んでいく。
木の枝に殴られ、僕の左頬にある絆創膏にも傷を付けられた為、僕の機嫌は最悪だ。
「此処よ」
ミキが飛ぶのを止めた。
その声で我に返った僕は、木の枝が顔に当たらない事に初めて気が付き、静かに顔を上げる。そこにあるのは、綺麗に手入れされている草原と、ホラー映画に出て来そうな古い塔。
蔦が散々絡まっていて、更に恐ろしい雰囲気を醸し出していた。
僕はその蔦を右手でいじりながら、隣に居るミキに疑いの目を向ける。
「…本当に此処なの?」
「本当に此処よ」
ミキは堂々と言う。
真下に居る、というのもあるのかもしれないが、この塔は全く最上階が見えない。
魅鞠は囚われている場所を「館」と言っていた為、此処ではないのではないか、という疑念をい抱いたのだ。
「私は生まれた時から此処に居たのよ?この森にある建物がこれしかないってこと、知ってんのよ」
ミキはそう言い捨てると、僕を気にする素振りも見せずに、人間の様に扉をノックした後、ずかずかと塔の中へ入っていってしまった。
弱虫で臆病な僕は、1人にされるのが本当に嫌いで、親友の光にメールを送り、慌ててミキの背中を追って塔の中へ足を踏み入れた。
光からの返信でピロリン、と音がしたけれど、もうそんなことを気にしている余裕など無かった。
- Re: 鬼ノ娘 ( No.7 )
- 日時: 2016/02/24 23:33
- 名前: 湯桁のろま (ID: Cyd1DlTj)
魅雨様
初めまして、湯桁のろまと申します。
あの、いきなりですが、お名前何と読むのですか?「みう」さんであってますか??笑
題名を見て、気になって気になってやって参りました笑
魅雨さんのような、文章好きです。
こういう、しっかりとした文体に憧れます・・・!
それに、お話も面白い・・・なんというか、この独特な、ちょっと怪しい(?)というか、ミステリアスな感じの雰囲気、好きです笑
続きがとても気になります!
これからも、頑張って下さい!
湯桁のろま
- Re: 鬼ノ娘 ( No.8 )
- 日時: 2016/02/25 06:31
- 名前: 魅雨 (ID: rs/hD2VF)
評価ありがとうございます!
名前は「みさめ」と読みますー
- Re: 鬼ノ娘 ( No.9 )
- 日時: 2016/02/25 13:47
- 名前: 琉夏 (ID: 9UBkiEuR)
魅雨さん!
コメントありがとうございました。
魅雨さんの作品ずっと気になっていたので、読めてよかったです。
正直、とっても面白いです。
続き楽しみにしております。
琉夏
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