コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 人ならざるもの
- 日時: 2016/02/23 11:58
- 名前: 琉夏 (ID: 9UBkiEuR)
私は自分が嫌いだった。誰にも必要とされずただ朽ちていく。
早く消えてしまえば良いのに。どうして生き永らえてしまうのだろう。
人間がずっと羨ましかった。短い人生なら。誰かに必要とされるなら。
どんなに良かっただろう。どんなに幸せだろう。親とはどんなものだろうか。
愛されるとは、愛するとは、どういうことだろう。知れることができたなら。
こんな悩みも意味は無いのだが。
私は森の中にひっそりと住む、妖というものらしい。どうやって生まれ、成長したかは分からない。
記憶も無く、ずっとここにいた。人間にも動物にも見られず、触れず、声も届かない。
ずっと一人だった。誰も森に入って来なかった。
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- Re: 人ならざるもの ( No.2 )
- 日時: 2016/02/25 18:06
- 名前: 魅雨 (ID: rs/hD2VF)
みさめという者です!
すごく面白い展開になりそうですね!
続き楽しみにしてます!
- Re: 人ならざるもの ( No.3 )
- 日時: 2016/02/25 13:35
- 名前: 琉夏 (ID: 9UBkiEuR)
男は私の背中をさすって座らせてくれた。とても温かくて、どうしてよいか分からなかった。
いつまでそうしていただろうか。ふと、男が言った。
「名前。僕がつけてあげるよ。葵はどう?その綺麗な髪の色だ。」
ア、オ、イ。きれいだと思った。だけど、泣きすぎて返事ができず、精一杯頷くことにした。
「葵。僕の名前はひなた。こう書く。」
ひなたは、私の新しい名前とひなたの名前を土に書いた。ひなたは、向日葵と書く事を知った。
「一緒の字だよ。僕はこの字がとても好きだ。」
「・・・うん。私もだ。・・・向日葵。」
人の名前を呼ぶのは恥ずかしかったが、向日葵は嬉しそうに笑った。その笑顔で余計顔が熱くなった気がした。
- Re: 人ならざるもの ( No.4 )
- 日時: 2016/02/26 13:41
- 名前: 琉夏 (ID: 9UBkiEuR)
向日葵は毎日来た。そのたび、人間の物を持ってきた。
トランプは、なかなか勝てなくて悔しかったが、やっぱり向日葵は笑っていて、楽しいと思った。
鉛筆は、持つのが難しくて途中で諦めてしまった。
本は、人間の文字が読めなくて困ったが、向日葵が読み聞かせてくれた。
携帯電話、と言う物は凄く面白かったが森の中では電話とメールは出来なくて向日葵が悲しい顔をしていた。
「いつでも声が聞こえるようになると思ったのに。」
と言われた時は、顔が熱すぎて大変だった。
そして向日葵はよく人間の話をした。とても楽しそうに話した。
また、時々向日葵に傷がついている時があった。そんな日は、特に笑顔だった。
「痛そうだな。どうした?」
あるとき聞いてみた。するともっと笑顔になって、
「転んだんだ。ドジだから。」
と言った。流石の私でも、そんなにしょっちゅう転ぶはずがないと分かっていた。向日葵はなにか無理しているようだった。
- Re: 人ならざるもの ( No.5 )
- 日時: 2016/02/27 19:08
- 名前: 琉夏 (ID: 9UBkiEuR)
だから私は森から出る決意をした。向日葵のことをもっと知りたかった。
向日葵が帰るとき、後についていった。今度はばれないように、木や建物に隠れた。途中で見た池に頭に皿の乗った緑の人間がいた。手を振ってきた気がしたが、多分気のせいだったんだろう。
向日葵が家に入ったのを確認すると、屋根の上で寝た。いつもよりドキドキして、あまり寝付けなかった。
向日葵は朝が早かった。いつもよりきっちりとした服を着て、同じ服を着ている人間のところに行った。学校、というものらしい。
向日葵は一人でいた。他の人間は皆一緒にいるのに。
向日葵の顔が、昔の私の顔に似ていると思った。一人、湖に顔をうつし、泣いていたときの顔に。
向日葵は帰るとき、石を投げられていた。向日葵はやり返さなかった。
私はもう見ていられなかった。私には何もすることができない。私は無力だった。
森に帰って、一人で泣いた。
- Re: 人ならざるもの ( No.6 )
- 日時: 2016/03/06 16:31
- 名前: 琉夏 (ID: 9UBkiEuR)
いつもどおりの時間、向日葵はきた。笑顔だった。私もいつもどおりを心がけた。
向日葵はいつもと同じように人間の話をした。とても楽しそうに。何度も涙をこらえた。なぜあんなことをされて笑っていられるのか。
日が暮れ始め、向日葵が帰る時間になった。
「今日、いたよね。僕の近くに。葵。」
びっくりした。一瞬何を言われているのか分からなかった。
「・・・・うん。ごめん。」
向日葵は振り返らずに言った。
「情けないよな。いつもいつも。葵にも心配かけて、隠し通せなくて。」
向日葵から見えないことはわかっていたが、静かに首を振った。そして、こらえきれなくなって抱きついた。
「向日葵は情けなくない。こんなに温かくて、こんなに優しい。私のようなものが見えているから人間の仲間に入れないんだろう。でも向日葵は独りじゃない。私にも名前をくれた。たくさんの世界を教えてくれた。その優しさは、きっと他のやつの支えになってる。大丈夫。」
向日葵は頷いた。
いつまでそうしていただろうか。しばらくして、月が明るくなった頃に向日葵は顔を見せず帰った。
きっと向日葵の顔を見たら、私はもっと泣いてしまうから、これで良いと思った。
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