コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 知らなくて、よかった
- 日時: 2016/04/08 17:23
- 名前: hinn (ID: q6B8cvef)
一つ上の凌也とは幼馴染の間柄だ。
家が近所だったため小さい頃から一緒にいて、それが普通だった。
よくケンカもしたし、その度に擦り傷をつくったものだけれど翌日には何事もなかったかのようにまた遊んで。
当時は身長なんて大差なかったけど、気づけば凌也はグングン背が伸びていて、いつまでも小さいままの私は不公平だ!とよく文句を言ったものだ。
そんな彼ももうすぐ受験間近。
同じ小学校、中学校、高校と凌也を追いかけてきた私はこの時期になるとひどく落ち込んだものだった。
また凌也はこうやって私より一歩先を行ってしまう。
それはしょうがないことだと分かっていても落ち込んだ気持ちは簡単に浮き上がってはこなかった。
- Re: 知らなくて、よかった ( No.10 )
- 日時: 2016/04/24 11:24
- 名前: hinn (ID: IpxDtp3C)
海斗に無理やり店から引っ張りだされてから、無言で駅までの道なりを歩く。
腕はもう離されていたけれど痛みはまだじんじんと響いていた。そっと見てみると赤くなってしまっていた。
小さくため息をついて海斗の後ろを歩く。
駅近くの公園に差し掛かったとき、ふと思いついて口を開いた。
「ねえ」
「…あんだよ」
「なんで面倒事が嫌いなアンタが私たちに声かけてきたの」
海斗の足が止まる。
つられて私の足も止まった。
「……」
「…ねえ、なんで?」
生徒会として一緒に仕事をしてきて海斗は面倒事がとてつもなく嫌いだということに気づいた。
それなのにただ注意をするためだけにお店に入ってきたとは考えにくい。
買い食いは確かに校則違反だ。でもそんなことをしている生徒は先述の通りゴマンといる。その証拠にさっきのお店に私達の他にも同じ学校の生徒が何人かいた。
見せしめに注意、なら分からなくもないけどそんなチマチマしたことをこの男がするだろうか。
海斗がますます分からない。
じっと見つめていると不意に海斗が振り返った。その顔はいつもとは違い真剣そのものでドキリとした。金色の髪が夕焼けが反射してさらにキラキラと輝いてみえる。
「名前」
「……え?」
海斗は軽く舌打ちをすると顔を歪めて首に手をやった。それからまたまっすぐに私を見つめてきた。
「俺のことは名前で呼べ」
「え、なんで?」
「最初の命令」
それだけ言う海斗は走って行ってしまった。一人残された私は海斗の言葉を頭の中で反芻し、思わず吹き出した。
「名前って!…ははっ変なの!」
不思議と嫌な気がしないのは夕焼けに充てられたせいだろう。腕の痛みなどとうにどこかへ消えてしまった。
- Re: 知らなくて、よかった ( No.11 )
- 日時: 2016/04/24 14:32
- 名前: 火野カフカ (ID: EHM01iHp)
こんにちは、火野カフカと申します。
暇だな〜と思って色々な小説を読んでいたら、この小説のタイトルがが目に入り、どういう意味だろうと気になりました。
とっても細やかで綺麗な文ですね^ ^
これからも頑張ってください^ ^
- Re: 知らなくて、よかった ( No.12 )
- 日時: 2016/04/24 17:10
- 名前: hinn (ID: IpxDtp3C)
こんにちは。
読んで頂きありがとうございます。
タイトル回収は後々出来たら、と思っております…笑
お褒めいただき感謝の極みです。まだまだ未熟ですが頑張ります!
- Re: 知らなくて、よかった ( No.13 )
- 日時: 2016/05/15 08:49
- 名前: こん (ID: yWbGOp/y)
100を踏みました!
おめでとう!!
- Re: 知らなくて、よかった ( No.14 )
- 日時: 2016/05/18 13:39
- 名前: hinn (ID: yWbGOp/y)
月は変わって7月。
定期試験が迫っていた。
部活動は殆どが試験休みで活動休止になっていた。軽音部も例に漏れなかったがあるバンドだけは違った。
そのバンドはもちろん『vivi』だ。
校内での練習は禁止されているが、駅前のスタジオを借りて勉強の合間に練習をしているらしい。
そんなことをしているから凌也はいつも赤点スレスレなのに、全く学習しない。
試験休みと聞くや否や嬉々としてスタジオを借りに行く。そんな様子を最初は諫めてたりもしていたけど今となってはもう諦めた。凌也の楽しそうな顔を見たら言えなくなってしまう。
「はぁーあ。……勉強やだなあ」
大きなため息をついて放課後の校内をぶらつく。
学校に残っている生徒はもうほとんどいない。部活も試験一週間前で休みだから閑散とした雰囲気を匂わせている。
私の足は図書室へと向かっていた。
家に帰ってもどうせ勉強なんかしないし。携帯いじっちゃうし。
がらりと図書室のドアを開けると誰かの話し声が聞こえてきた。
(ん、誰かいるのかな)
特段気にもせずにドア近くのテーブルに座る。
バッグから教科書とノートを取り出し、さあやるかと意気込んだその時だった。
「あれ?結月?」
背中から聞こえてきたその声に心臓がドクリと動く。
優しい声。振り向かなくてもそれが誰か、なんてことくらいすぐにわかった。
「凌ーー……」
名前を呼びかけて、止まった。
後ろを振り向いた自分の顔が硬直したのがはっきりと分かった。
凌也と知らない女子生徒が二人で奥のテーブルに腰掛けていた。
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