コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- Blue :
- 日時: 2016/06/27 16:43
- 名前: なつめ。 (ID: 0a987INq)
「ああ、こっから先、全部青ければいいのにな——」
そうやって、貴方は泣いた。
コンクリートの地面に、涙が広がった。
蝉の声が、煩わしく響いた。
私の唇から、貴方の名前が微かに漏れた。
* お客様
立山 桜 さま
ぱる+りんご さま
* 小説開始日 ・ 2016 ・ 6 ・ 26
* 小説終了日
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- Re: Blue : ( No.5 )
- 日時: 2016/06/26 21:49
- 名前: なつめ *。 (ID: 0a987INq)
+ はじまりはその本から
長い廊下に響く、一人分の足音。
重苦しい図書室の扉を、ゆっくりと開けた。
————藍沢 夕(あいざわ ゆう)
よく綺麗な名前、なんて言われるけれど。
自分ではあまり気に入らない名前だ。
在り来たりな響き、ぱっとしない地味目な名前。
ふらふらと部屋の奥の方まで進んでいく。
濃い緑の背表紙を抜き出して、右腕に包む。
いつからここにあるのかも分からない本。
題名は「雨と夕暮れ」、恋愛小説だ。
所謂、運命的なものを描いたロマンチックなお話。
本に挟まっている貸出カードの名前は、なし。
誰も借りていないのに、なぜかボロボロ。
古いからだろう、ページの色褪せもひどい。
ページをめくっても、めくっても。
話の内容は分かっている、結末も在り来たり。
でもなぜかこれしか選べないのだ。
「……————それ、読むの」
「え、」
こんな急に声をかけられると思ってなかった。
何故だろう、反動で声が出てしまった。
背筋がいきなり伸びて、椅子からがた、と立ち上がる。
見たことない顔だった。
ふわ、と少し立った黒髪が印象的で。
見上げる形になってしまう高いその身長。
白い肌にバランス良く並ぶ、切れ長の瞳、高い鼻。
薄い唇は桜色に色づいて、何だか王子様みたいだ。
「答えろよ、聞いてんだから」
「…………え、あ、はい、読みっ、ますっ」
いきなり距離が縮んだと思ったらいきなりの命令。
噛みながら答えると、腕から本が取られた。
瞬きする一瞬だろうか、それとももっと早くか。
嫌な音がして、目の中に白いものが降った。
所々に文字が散りばめられていて、床に散っていく。
最後に大きな音がして、表紙が床に叩きつけられた。
彼はそのまま後ろを向いて、去っていく。
オレンジの夕日が、窓ガラスに乱反射して眩しかった。
————そんな、はじまり。
- Re: Blue : ( No.6 )
- 日時: 2016/06/26 22:39
- 名前: 立山桜 (ID: ???)
>>4なつめさん いえ(^^;)ほんとのこと言ったまでです。 更新頑張ってくださいね♪
- Re: Blue : ( No.7 )
- 日時: 2016/06/26 23:56
- 名前: ぱる+りんご (ID: Q.pGZPl6)
こんにちは、ぱるといいます!初めまして!!
すごーく、綺麗な情景が頭にぽわーって!浮かび!ます!!
なんか、、、美しいですね!!!!キラキラ
これからも読ませていただこうと思います(*^^*)
時々コメントすると思いますので、よろしくお願いします。ぺこり。
- Re: Blue : ( No.8 )
- 日時: 2016/06/27 16:42
- 名前: なつめ *。 (ID: 0a987INq)
* 立山 桜 さま
はいっ、ありがとうございます(`・ω・´)
精一杯頑張らせて頂きますね*
* ぱる+りんご さま
わ……っ、初めましてっ、なつめですっ*
美しいだなんて、もう視界が涙で……;
読んで頂けるというのはああああ嬉しいです←
こちらこそ、よろしくお願いします(´ω`*)
- Re: Blue : ( No.9 )
- 日時: 2016/06/27 17:07
- 名前: なつめ *。 (ID: 0a987INq)
+ はじめてのその声
ばらばらのページに、掌を伸ばす。
何処からか来た生温い風が、紙を飛ばす。
冷たく哀しさを帯びた、彼の声。
とりあえずページをまとめ、修理箱に置いておいた。
故障理由の紙は、空白にしてしまった。
帰る気分になれなくて、気がつけば屋上前に来ていた。
図書室の次に、好きなこの場所。
扉を開けて、体が硬直した。
(……なんで、また居るの、このひと)
白いフェンスに両腕を預け、完全に力の抜けた「彼」がいた。
六月の湿った風がまわりを通り抜けた。
私は思わず、そう、ほんとうに、思わず。
「あ、あの本……っ、修理箱に、置いといた」
「夕(ゆう)、夕——、夕、っ……く、っ」
状況を理解するのに、一体どれくらいかかったんだろう。
彼は確かに私の名前を呼んだ、そう、確かに。
そして、涙を流して、その場に座り込んでしまった。
視線が絡んだ。
彼の涙は青かった、そう、これもまた確かに。
なにかが壊れた音がした。
あの本のように、簡単な意図的なものでなくて。
唇が震えた、梅雨のにおいがその場に香った。
「……涼ノ木 蒼(すずのき あお)」
「藍沢、夕、です」
さっきとは、蒼の声は違って聞こえた。
最後の涙の粒が、白い肌をこぼれ落ちていった。
蒼は、優しく微笑んだ。
私の頬を冷たい掌が包んだ。
びくん、と肩が震えた。
濃く色づいた夕暮れ時の風が吹く。
ああ、きっとこれがふたりの犯した罪だ。
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