コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 好きなんて、要らない。
- 日時: 2016/08/10 20:53
- 名前: 花野 千聖 (ID: 9yNBfouf)
神様は不平等だ。
カワイイ人、ブサイクな人。
お金持ちの人、貧乏な人。
恋が叶う人、失恋する人。
あたしは当然、失恋する人の部類で。
好きになる人は大抵、人気者。そして、誰にでも優しい人。
その人を見ると大抵、彼女が満面の笑みで話してて。
叶うわけもないのにヤキモチ妬いて。
運命の人だけを、好きになることが出来たら。
…何にも辛い思い、しなくて良いのにな。
- Re: 好きなんて、要らない。 ( No.21 )
- 日時: 2016/10/10 22:27
- 名前: 花野 千聖 (ID: 8PS445C3)
回覧数が順調に増えていって嬉しい限りです!
これからも頑張りますので、どうぞよろしくお願いします!
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《黒田 浩介》
「もう、可愛いなぁ、ほんっとに」
言ってから、俺はハッとした。
今まで翠以外の女子を可愛いなんて思ったことないのに……なんで。
そして気がつく。気づいてから、なんで気づいてしまったんだと後悔した。
こんなことなら気がつかない方が何倍も楽だったのに。
…………俺が好きなのは、もう翠じゃない。咲良ちゃんだ。
最初はただ純粋に、プレゼントを選んでもらうだけだった。これに嘘はない。けど、たった午前中一緒に居ただけで、俺は。
こんなにも簡単に翠への気持ちがなくなってしまうとは思いもしなかった。つい昨日まで、どうやったらオチるかとかきゅんとくる告白の言葉とかを馬鹿みたいに考えてたっていうのに。
咲良ちゃんは、ずるい。ちょっとしたことですぐに顔が真っ赤になったり、なんの迷いもなく人を褒めたり、『浩介くんに頼んで良かった』なんて女子に言われたらかなり嬉しいセリフをさらっと言ってみたり。
そんな屈折のない笑顔向けられたら、かき乱されるに決まってんだろっつーの。
そのくせ自分がしたことの影響力を分かってないから『計算して話してない』って余計に嬉しくなるし。
どれもこれも可愛すぎるんだよ、まったく。今のままでも一瞬で恋にオチたってのにこれから翠のアドバイスが加わったらどうなるんだ?
はあ…………。翠が好きなんて、言わなければ良かった。そうしたらもっと。
俺は、どうしたらいい?
- Re: 好きなんて、要らない。 ( No.22 )
- 日時: 2016/10/11 00:23
- 名前: 花野 千聖 (ID: 8PS445C3)
《井上 咲良》
「わあ!」
まず紫苑さんに連れて行ってもらったのは、お洋服屋のフロア。ここから、まずは店ごとに自分なりに組み合わせてみて、って言われたけど、何より服の数が多いし、それがまたどれも可愛いんだぁ。
私が迷ってると、紫苑さんが『組み合わせに迷った時はまずシューズショップに行けばなんとかなるよ!』と言ってくれたので、訳もわからずシューズショップへ。
「咲良ちゃん、ここで、色の組み合わせを頭に刻み込んで」
え?なんでですか?
「あのね、シューズショップ、というか靴って、色の組み合わせが良くなかったら見栄えがしないから、必ず合う色を使ってるんだよ。だからこれを、ファッションに使うの」
はぁ〜〜。流石だなぁ、紫苑さんは。こうやって意外な所に着目して、自分を可愛くしてる。
「一つ聞いてもいいですか?」
「うん?」
「どうしてそんなにファッションにのめり込んだんですか」
その時、紫苑さんは一瞬驚いたような、怯えたような、そんな表情をした。
でもそれもほんの一瞬で、紫苑さんは答える。
「自分を可愛くしたいから。可愛いって、最高じゃない?」
それだけじゃないと思う。けど、それは口にせず、笑顔を返した。
きっと、紫苑さんは、好きな人に振り向いて欲しくて、頑張ってるんだ。
- Re: 好きなんて、要らない。 ( No.23 )
- 日時: 2016/10/11 18:21
- 名前: 花野 千聖 (ID: 8PS445C3)
《紫苑 翠》
「どうしてファッションにのめり込んだんですか」
もしかして、井上さん、気づいてるの……?
でも、悟られたくなかったから、あたしは無理やり笑顔にして、言った。
「自分を可愛くしたいから。可愛いって、最高じゃない?」
その瞬間、井上さんの目の奥に切なさが見えた。まるで、あたしに同情するみたいに。
でも、それも一瞬で、笑顔を見せた。
ーー 絶対気づいてる。
でも、彼女はそれを黙ってた。それは多分……あたしと同じだから。
つまり、ライバルってわけね。
でも、ライバルにアドバイスをしちゃったら、あたしの知恵を彼女の良さに足されてしまって、あたしは勝てない。
そうだ、彼女の良いところ、あたしも聞いたら良いんだ。
あたしは、聞く。
「じゃあ、あたしからも質問ね?自然に笑うにはどうしたら良いの?」
「へ?」
彼女は完全に不意を突かれたみたいで結構まぬけな返事を返してきた。で、そのまま口は閉まらない。
あたしはつい吹き出してしまって、気づけば笑っていた。
ーー あれ?あたし、笑えてる。
今まで、可愛い笑い方を意識しすぎて自然に笑えたことなんてなかったのに。彼女の顔を見ただけで、あたしは、こんなにも簡単に笑えてる。
この子は、いったい、どんな魔法を使ったの?
あたしが驚いていると、井上さんはニコッと満面の笑みでこう言った。
「さっきの質問の答えです」
……ああ、そうか。そうだったんだ。
さっきの質問の答え。それは。
あたしは、恋愛をするうえで、いやそうじゃなくても、一番大切なものを、教えてもらった気がした。
- Re: 好きなんて、要らない。 ( No.24 )
- 日時: 2016/10/11 21:05
- 名前: 花野 千聖 (ID: 8PS445C3)
《黒田 浩介》
俺が二人に追いつくと、なぜか翠が笑っていた。それも思いっきり。
俺はもう翠が好きじゃないことに気づいていながらも、ショックを受けた。
今まで『絶対翠を幸せにしてやるぞ』なんてほざいて努力してたのに、ほんとはそうじゃなかったんだと実感した。
そして俺でさえ本気で笑わせられなかったものを、可能にしたのはやはり、咲良ちゃんだった。
彼女には何かがあるんだな、きっと。人の気持ちをリラックスさせつような、安心感を与えられるような何かが。
まあ、そのおかげで難しい恋に落ちてしまったわけだけれど。
「さっきの質問の答えです」
咲良ちゃんはそう言って靴屋の靴を眺めに行った。
「なーに笑ってたの?」
俺がそう聞くと、
「何でもないっ」
と意地悪な笑みで返された。何の話か分からなかったけど、翠もまた、彼女に救われたうちの一人だということは分かった。
「ま、話したくないならいいけど」
俺も、ほんの少しだけれど、心が軽くなった気がした。
- Re: 好きなんて、要らない。 ( No.25 )
- 日時: 2016/10/11 23:05
- 名前: 花野 千聖 (ID: 8PS445C3)
《黒田 浩介》
「さーくーらちゃん。どう、服選びは。つーか、靴選び?」
「ん?あ、浩介くん!」
突然満面の笑みを向けられて、俺は目をそらしたくなるのを必死にこらえた。
でもその空気を変えてくれたのは意外にも当の本人だった。
「っていうか、ひどいよ。なんでさっき助けてくれなかったの?おかげで今も手首痛いんだよ!」
だって、咲良ちゃんが好きだっていうのに気づいちゃったんだもん。
「ごめん、ごめん。でも見てたら面白かったよ」
「ひどーい!人が真剣に助けを求めていたのに対して面白かったじゃないよ!浩介くん、案外S?」
「違うって、最後まで聞いてから言えよな。それに、咲良ちゃん可愛かったし!」
その瞬間、かあああっと咲良ちゃんの顔が赤くなった。
ああ、なんで動揺すんの。こっちまでつられちゃうじゃん?こっちだってさらっと言ってはみたものの顔が赤くならないようにするの大変だったんだから。
「そ、そんな嘘、わわわ私に言わないで。そ、そういうことは、紫苑さんに言って下さい」
え……。
そっか。そうだよな。咲良ちゃんは、俺は翠が好きだと思ってるんだっけ。
そんなことさっき気づいて後悔したばっかなのに、やっぱグサッて刺さるもんなんだな。
はあ……。どうしたら良いんだよ。俺が好きなの、咲良ちゃんだよって言いたい。けど、言えない。プレゼントにぴったりなものまで選んでもらっちゃったし買っちゃったし。
その後で『本当は咲良ちゃんが好きだったんだ』なって言えるわけがねえ。あーもう!どうすんだよ、俺。
はあ…………。
どうしたら良いんだ?ほんとに。
好きが言えない訳じゃないのに。好きなんてこんな状況じゃなきゃもっと、今よりは楽だったよなあ。
好きだよ、咲良ちゃん。可愛いなんて、気がない女の子に言うとでも思ってる?違うよ、気があるから、好きだから、言ってんだよ。
気付いてよ。
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