コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 十六回目の夏物語
- 日時: 2016/10/03 21:30
- 名前: 八ッ眼 奇薇 (ID: 4NzAaWKB)
今年も夏が来た。
蝉がそこらで鳴き狂い、人間は猛暑でバテる寸前。
そんな中、高校一年の「野咲薫」と幼馴染みの「戸壁瑞希」は、
冷房のよく利いたラーメン屋でラーメンを食べていた。
薫は額を流れる汗を拭い、窓の外へと目を向けた。
途端に薫は咳き込み、慌てたように窓の外を指差した。
「菜奈ちゃんだよ!」
先週別れた、瑞希の元彼女だった。
猛暑にも関わらず、凛としたあのたたずまいは、絶対に「家並菜奈」だった。
「ねえねえ、呼んでこよう?」
薫が言うと、瑞希は目を伏せ、「行かない」と言った。
瑞希は複雑な表情のままラーメンをすすったので、薫は困ったようにあたりを見渡し、
「ガリガリ君、買ってくるよ!」
と言い、店の近くの売店に駆けて行った。
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- Re: 十六回目の夏物語 ( No.4 )
- 日時: 2016/10/04 15:49
- 名前: 八ッ眼 奇薇 (ID: 4NzAaWKB)
「そうだ」
薫がひらめいたように指を立てた。
「瑞希が教室で尋人くんと話さないのって何で?」
「何で?」
薫の話後、間髪入れずに逆に問うた瑞希。
薫は一瞬ひるんだが、
「莉菜と自分とは喋るから、何でかなあって思って」
と再度問うた。
「尋人くんの机の周りはいつも人がいるから、話しかけたくても話しかけられないんだ」
食べ終わったガリガリ君の木の棒を眺めながら、瑞希は言った。
その時、ドッと風が吹いてきた。柔らかくて優しくて穏やかな風が。
薫は言った。
「今度一緒に話しかけよう!」
- Re: 十六回目の夏物語 ( No.5 )
- 日時: 2016/10/06 16:42
- 名前: 八ッ眼 奇薇 (ID: 4NzAaWKB)
「端辺尋人くんに話しかけよう!大作戦」当日。
早めに学校に来た薫と瑞希は、尋人が来るのをジッと待ち続けていた。
二人が来てから一時間後に尋人はやって来た。
多くの友人に囲まれ、腹をかかえて笑っている。
「どうする?瑞希」
机の下で薫は言った。
瑞希は顎を触り、ウーンと唸った。
「まず、近付こう。距離があり過ぎる」
確かに、遠い。
薫と瑞希が隠れている机は窓際の真ん中の席で、尋人の席は廊下側の一番後ろだった。
二人はしゃがみながら、忍び足で尋人に近付いて行った。
- Re: 十六回目の夏物語 ( No.6 )
- 日時: 2016/10/12 20:09
- 名前: 八ッ眼 奇薇 (ID: 4NzAaWKB)
距離、約一メートル。
尋人の一つ前の席に隠れた二人は、ジッと周りの様子を見渡した。
このクラスはほとんどが遅刻グセがあるから、数人しかいない。
尋人を囲んでいる友人達もいつもより少ない。
話しかけるチャンスは…「今」。
薫は瑞希とアイコンタクトを取り、尋人に一歩、近づいた。
「お、おはよう…」
二人がぎこちなく手を上げると、尋人は気付き、豪快に笑った。
「なんだよ、お前ら!なんかぎこちないぞ」
尋人の笑いに誘われ、囲んでいた友人達も笑いだした。
それを見た二人はあたふたとし、つられて、クククっと笑った。
控えめな笑いから爆笑へと変わり、遅れてきた生徒も何故か笑っていた。
教室に和やかな空気が流れた。
- Re: 十六回目の夏物語 ( No.7 )
- 日時: 2016/10/19 23:03
- 名前: 八ッ眼 奇薇 (ID: 4NzAaWKB)
あれから数日。
尋人と瑞希の距離はすっかり縮まっていた。
たまにしか遊ばない仲だったのが、徐々に毎日のように遊ぶようになったり。
薫にとって内向的な瑞希が、交友関係を広げてくれるのはとても嬉しい。
一方で犯罪に手を染めないかなど心配で、いつもヒヤヒヤとしている。
だが、瑞希には人一倍の信頼を置いているので、そんなことはしないと分か
っているが、人はいつ道を誤るか知ったこっちゃない。万が一だ。
そして今日も、瑞希は尋人の家に遊びに行く予定らしい。
最近の瑞希は尋人とばかり遊び、幼馴染みの薫はほったらかし。
正直のところ、薫は寂しい思いをしていた。
瑞希が離れていくようで____瑞希が尋人との約束で家を出るとき、とても
胸が苦しくなった。
今考えてみれば、幼い頃から寄り添い、仲良くしていたのは瑞希だけだった。
薫は幼い頃から社交的だった。友人も多く、先生・親・親戚からの評判も
抜群に良かった。
だが、仲良くしていたはずの友人達は自然と離れていった。
その理由は今でも分からない。
そんな時も、あんな時も、こんな時も、そばにいてくれたのは、「瑞希」。
いつしか一緒にいるのが当たり前の存在で、瑞希は薫にとって、
「かけがえのない」人になっていた。
- Re: 十六回目の夏物語 ( No.8 )
- 日時: 2016/10/29 00:02
- 名前: 八ッ眼 奇薇 (ID: 4NzAaWKB)
だからといって、「結婚したーい」とか「好きよー」とかっていう恋愛感情は、
サラッサラなく、どっちかって言うと家族のような存在なのです。
薫は額を流れた汗を拭い、リビングのソファーに腰掛けた。
昼のバラエティ番組を横目で見ながら、薫はそっぽ向いていた扇風機を自分側に向けた。
少しの間生ぬるい風が顔にあたっていたが、すぐに心地よい風へと変わり、汗は少しづつ乾いていった。
数分後、心地よ過ぎて眠っていた薫のもとに、一通のラインが来た。
薫はビクッと体を震わせながら起き、豪快に欠伸をし、携帯を覗いた。
ロック画面に『これからあそばない?』という瑞希からラインのメーセージが届いていた。
薫は急いで『行く👌』と返信し、飛び起きた。
瑞希から『3時から遊べる?』と返信が来、『OK』と即返信した。
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