コメディ・ライト小説(新)

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ある少女の少し大きな物語
日時: 2017/04/27 17:47
名前: ラッテ (ID: KE0ZVzN7)

どーも、ラッテです。

SAKUYAとして活動していた時に更新していた『ある少女は成長する事を拒むのです』が未完結でしたが、ラッテという名で新たに活動を始めた為、新しくリニューアルしてしっかり更新していこうと思います!(相変わらず超不定期更新だと思いますが…。)

続編なので、前回の『ある少女』も見ていただくと嬉しいです!

前作が重いイメージがあったので、今作でははっちゃけていきますよ〜!

毎度のことですが文才が無いため駄文になると思います。

それでは、よろしくお願いします!



*お知らせ*
2017.4.10 目次作りましたよ >>1
2017.4.25 のんたんさんからコメントを頂きました!>>7-8
2017.4.26 チェリーソーダさんからコメントを頂きました!>>9-10

*お客様*
のんたん様
チェリーソーダ様

ようやく1話。 ( No.3 )
日時: 2017/04/12 21:34
名前: ラッテ (ID: KE0ZVzN7)

第一章 地獄のテスト



第一話 始まり


まだ五月だというのに、今日はやけに暑い。今朝学校を出る前に見たニュースによると、最高気温は三十度を上回るらしい。何故今日に限って、このようなコンディションになってしまったのだろうか。神様はとても意地悪だ。

今日は、五月五日。何をトチ狂ったか、この学校はこの日を最初のテストの日にしている。

さて、一つ疑問が出てきた。

『五月五日ってゴールデンウィークじゃないの?』

正解は、イエス。今日はゴールデンウィークの筈だ。

なのにだ。この学校は貴重な三連休を潰す方針なのだ。

この学校の名物の一つ、休日キラーがここにも活かされている。

そんな訳で、本来であれば友達と遊んでいたはずのゴールデンウィーク最終日は、学生が最も嫌うであろうテストの日となってしまった。




「あー、緊張します……」

学校に向かっている途中で、やよいちゃんはそう呟いた。

いつも元気なやよいちゃんが弱音を吐く事など滅多に無いので私は少し驚いたが、その意味をすぐに理解した。

やよいちゃんは今、テストでいい点数を取れなければ外出禁止という約束を親としている。

今回のテストで四百点を超えなければいけないのだ。

更にやよいちゃんは勉強ができない。想像もつかないほど。

そんな訳で、学校に向かう途中ずっと弱音を吐いていたやよいちゃんを慰めながら、私水原さぐりは歩いていた。

私も当然緊張する。が、不登校だった間の時間を利用して勉強していたため、人一倍勉強には自信がある。方だ。

そんな私の学力を遥かに超える、男がいる。

学校に着いた私達に最初に声をかけてきた男。そいつこそが、その男だ。

「よ、水原にやよい。テストの方自信はあるか?」

ヘラヘラしながらその男は話しかけてきた。

名を須原レイという。彼は、入学式の日、教室が分からずに迷っていた私を見つけ出し、教室まで連れていってくれた。中学一年、まだ不登校になる前にいたクラスの同級生だ。

あいつは普段の言動から勉強はできないはずだ、と私は考えていたのだが、現実は残酷だった。

こんな男が、私よりも遥かに良いテストの点数を取り、それでいて人並みに勉強をしていないというのだ。

これ以上腹立たしい事があるだろうか。いや、無い。

私がそんな事を考えている最中、須原とやよいちゃんは短い会話を交わしていた。

「全然ダメです〜……。不安です……」

「大丈夫だ、水原を信じろ!今までお前に勉強を教えてきた、水原を信じろ!」

何を他人事のように、と須原に対する不満をまた抱き、やよいちゃんを引っ張って校舎の中に入っていった。

その途中、私は須原に対して宣戦布告をした。

「言っとくけど、自分の心配もしなさいよ!私の方がいい点数を取ってやるんだから!」

大声で言ったため、周りにいた人々が注目した。

一気に恥ずかしくなり、急いで校舎の中へと逃げ隠れていった。

チラッと振り返って須原の顔を見たが、動揺している様子はなく相変わらずヘラヘラしていた。

……絶対あいつより点数取ってやる!

そう誓った。




緊張で今にも倒れそうなやよいちゃんを何とか教室まで連れて行き、私は自分の教室へと向かった。

と言っても、すぐ隣なのだが。

教室のドアを開けて、小さい声でおはよう、と言った。

自分の席に座ろうとして歩き出した瞬間、目の前に人が現れた。

「水原さん、聞いて聞いて!シロウさんの新刊本、発売だって!!しかも、シリーズ作品なんだって!!ああ、ワクワクするなぁ!!」

テスト前の静寂な雰囲気に包まれていた教室の雰囲気を一変させた。

そんな事も知らないだろうこの生徒は、竜胆たつき。

読書が大好きなうるさい人で、特に南川シロウという作家が書いた本が大好きだ。

今日もいきなり南川シロウの話題から始まった。

「いやー、シリーズ作品なんていつぶりだろう!?「『攻略不能の鉄壁彼女』以来じゃ無いかな〜!?いやー、もうあの作品も連載終了してから約一年が経つのか〜。時は経ったが、シロウさんへの愛は変わらん!南川シロウ、万歳!!」

周りの視線を気にせずこうも自分の趣味を堂々と語る事ができる竜胆さんを、私は少し尊敬する。

だからと言って、これはうるさすぎるが。

いつもなら放っておいて鞄を片ずけに机へ直行するだろう。

しかし、何故だか私はこの読書廃人がしっかりとテストで点を取れるのだろうか、と心配になってしまい、その勢いで質問した。

「あの、竜胆さん?テストの方は大丈夫なの?」

そう言うと、竜胆さんは自信満々で答えた。

「ふっふーん。今回は自信があるの、水原さん!見ててね、みんなの目ん玉が飛び出ちゃうくらいの点数取って見せるから!」

アハハ、と微笑。いや、苦笑といった方が良いだろうか。

とりあえず、自信がありそうでよかった。私も、頑張ろう。




テスト開始、十分前。

みんな、教科書とにらめっこをしている。本番前に詰め込んだって意味は無いと私は思うのだが、共感してくれる人はいるだろうか?

私は参考書などを見る気にもならず、周りを見渡していた。

誰もが集中している。恐らく、こんなにも余裕をかましているのは私と須原くらいだろう。

案の定、須原は寝ていた。隣の席に座っているメガネを掛けた真面目そうな女子は、嫌そうな目で須原を見ていた。

そりゃ、テストの前に寝ていたら周りから良い目では見られないだろう、と思いながら再び教室中を見渡した。

その時、前の方の席に座っている姫川サクヤと目が合った。

サクヤもどうやら余裕をかましているらしい。

私と目が合ったのに気がついたのか、サクヤは軽く手を振った。

その時、何故か私は急いで視線を逸らしてしまった。

自分でもどうしてかは分からなかったが、何故か逸らしてしまったのだ。

もう一度サクヤの方に目を受けようとした時、教師が教室に入ってきた。

片手に持っているのは、全学生の憎むべき敵が詰まった紙袋だ。

遂に、始まる。

「教科書等はしまえー。テスト始めるぞー」

学校が開始してから初めてのテストが、開幕した。

あー、頭痛い。とりあえず二話。 ( No.4 )
日時: 2017/04/22 20:17
名前: ラッテ (ID: KE0ZVzN7)

第二話 テストという壁


チャイムが鳴った。それと同時に、歓声が起きた。

「うえーい、やっと午前のテスト終わったー!」

「やっと給食だ」

「あと一教科〜!!」

などなど、誰もが午前のテストが終わった事に喜びを隠せないでいる。

気持ちは分かる。あと、一教科だけになったのだから。あと一教科で、今まで自分たちを苦しめてきたテスト勉強などという地獄の作業をしなくて良いどころか、考えなくても良くなるからだ。

しかし、そんな状況でも喜ばない人間達がいる。

そのうちの一人が、私だ。

理由はそう。残った教科が一番苦手な英語だからだ。

勉強はもう復習するところは無い、というほどしてきたのだが、それでもやはり苦手教科というのは緊張する。

更に、運悪く給食、昼休み、と一時間以上の間が空いてしまう。

落ち込んだ気分でいると、隣にもっと気分を落ち込ませている男がいた。

どうしたのか、声をかけようとしたがすぐにやめた。

どうせまた女に対する嫌味を言われるだけだからだ。

私の隣の席にいる、女性恐怖症という全くもって女側からしては腹立たしくて仕方がない恐怖症をお持ちの男の名は、加納オサムだ。

クラス初めての席替えの時に隣の席になったのだが、未だに私が少し触れると調子が悪くなった、とか言って保健室へと直行する。

全くもって、腹立たしい男である。

そんな男が気分を落ち込ませていようと、私には関係ない。私は家から持ってきた弁当を取り出そうと鞄のところまで行った。

今更だが、この学校は弁当を持ってきて昼ご飯を食べる、という風になっている。一応購買もあるが、腹を空かせた野獣男子どもが我先にと信じられないスピードで購買のおばちゃんのところまで行き、たった五分で大量のパンやおにぎりなどを買い占めてしまうので、私のような力弱い女の子はとてもではないが購買を利用することはできない。

だから私は、弁当派。弁当は、自分で作っている。

こう見えても、料理は好きな方なのだ。それを知っているのは、やよいちゃんくらいだが。

弁当を取り出して、やよいちゃんの所へ行こうとした時、誰かに止められた。

後ろから肩を手で掴まれたので、後ろを振り返った。するとそこには、ナルシストこと葉山トオルが困った顔で私の肩を掴んでいた。

「何?葉山。私急いでるんだけど」

いや、本当に。みたいな顔を作り出す事に努力したのだが、その努力も虚しく葉山は私に話し始めた。

「急いでるところ悪いね、ちょっと聞きたい事が!見れば分かるけど加納が今までにないくらい落ちこんでるんだよ!何か知らない?不慮の事故だったとはいえ、加納の体に何回も触れてしまったとか……」

ああ、女に触られた前提なんだ。同じ男から見ても、あいつが落ち込む理由はそれくらいと認識されているのか。

私は加納に触れていないし、触れようとも思っていない。だから、私は無関係だ。

「んーん、知らない。他の誰かじゃない?」

「そうか、ありがとう!」

そう言うと葉山は近くにいる女子のところへ走って行った。

何だか女子を片っ端からナンパしている男にしか見えないのだが、まあ良いだろう。

教室にはもうほとんど人は残っていなかった。ほとんどの人が弁当を持ってどこかへ行ったのだろう。

残っている人は、どこで食べるか話している人達と、葉山と、加納と、そして一人で弁当を食べている女の子一人だけだ。

状況を把握した時、私は迷った。

一人で弁当を食べているあの子に話しかけるべきか、そうするべきではないか。

確か彼女の名前は町野みなだった筈だ。いつも静かにしているため、影の薄い彼女は、誰かと笑って話しているところを見た事がない。

私は、もしかしたら自分もそうなっていたかもしれない、と思い彼女に声をかけるべきだと思ったが、やよいちゃんを待たせているのでまた今度にしようと思い教室を去った。

この時、私は彼女に声をかけるべきだったのかもしれない。




「さぐりーん!早く早く〜」

私達がいつも弁当を食べている場所は、屋上にある屋根付きベンチだ。

この学校は屋上へ行く事自体はハードルが高くなく、北舎四階にあるドアから、誰でも屋上へと行く事ができる。

屋上は広く、また珍しく様々な物が置いてあるので、生徒には人気のスポットだ。

しかし、弁当を屋上で食べる人は少ない。

理由は簡単。屋上まで行くのがめんどくさいからだ。

生徒の教室は全て南舎にあり、北舎まで行くには時間がかかる。そんな時間がかかる行動をするより、南舎の空き教室やグラウンドの日陰で食べた方が早い。

なら何故私達はここで弁当を食べているかというと、誰もいないからだ。

誰もいないからこそ、色々な話を遠慮なくできる。周りの目を気にすることなく、好き勝手に話す事ができる。だから私達は屋上で弁当を食べる事にしている。

やよいちゃんが先にベンチに座っており、手を振ってきたので手を振り返した。

そこで私の視界に映ったのは、やよいちゃん一人ではなかった。

やよいちゃんの横に、一人の女子生徒が座っているではないか。

しかも、彼女を私は知っている。須原の隣の席の、眼鏡がトレードマークの榊原まなみさんだ。

ベンチのところまで行くと、榊原さんは軽く礼をした。

私も礼を返すと、やよいちゃんが状況を説明した。

「知ってると思いますけど、この子はまなまな!なんとまなまなはですね、私達と同じ中学だったんですよ〜!たまに話すんです」

同じ中学出身の人が意外と周りにたくさんいて、びっくりしているこの頃。

同じ中学だったと言うことは、私が不登校だったという事も知っているという事だろうか。

ちなみにまなまなと呼ばれているのはもうつっこまない。自然に受け止めるのだ。

「話すのは初めてだね、水原さん。邪魔してごめんね」

「邪魔なんてとんでもない。でも、どうして今日はここに?」

私が尋ねると、今まで穏やかだった顔を急に一変させて突然声を荒げて語り始めた。

「須原に腹が立ったから!やよいに愚痴聞いてもらってたの!あいつ、テスト中も寝てるし、それでいて解答欄は全部埋めてるんだよ!?テスト開始した瞬間に解答欄全部埋めて、それで寝る。あー、腹たつ!なんであんな奴が頭良いわけ!?」

あ、まったくの同感。

須原はやはり色々なところで反感を買っているらしい。

といっても、今はまだ少ないだろう。

今はまだ、テスト中寝ているただの阿呆としか思われていないだろう。

これで、中学時代のような点数を叩きだしたら、みんなは驚くに違いない。

その驚きがいつか敵意に変わるのも、そう遠くないはずだ。

須原に対する愚痴をずっと言っている榊原さんの隣に座り、私はやよいちゃんにテストの出来を聞いてみた。

すると、やよいちゃんが珍しく勝ち誇ったような顔をして、自信満々に答えた。

「バッチリですよ!さぐりんのおかげで、バッチリです!あとは英語だけですけどね……」

やよいちゃんも私と同じく英語が一番苦手だ。

私はやよいちゃんに英語の事で大した事を教える事ができなかった。

やよいちゃんがしっかりと点数を取れるか不安だったが、その心配は不要だったらしい。

「大丈夫。英語なら教えてあげたでしょ」

榊原さんがやよいちゃんに教えてくれていたらしい。

そう言えば、須原に英語は大して教えられないと言ったら、知り合いに勉強できる奴がいるからそいつに英語は頼んでおく、と言っていたような気がするが、それは榊原さんの事だったらしい。

他人に頼むより、自分で教えた方が早いだろうに。

とりあえず、今は自分の心配をしよう。

これまでの四教科はまあまあ自信がある。

あとは、英語だけ。頑張ってみせる。

弁当をモグモグと食べながら、今まで勉強した事を思い返していた。

苦手といっても、これといって全然できないという訳ではない。

ただ、少し文法を覚えるのが苦手、というだけだ。

落ち着いてやれば、大丈夫。大丈夫。

そんな事を考えていたら、いつの間にか私は席に座り、テストに臨もうとしていた。




遂に、英語が始まる。

最大で、最後の壁が私の前に立ち塞がった。

大丈夫。勉強はしてきた。

努力が武器となり、その武器が安心感を齎す。

先生の声が始まりを告げようとしていた。

……よし。頑張ろう。

「始め!!」

遅くなりました。言い訳させて下s……。三話です。 ( No.5 )
日時: 2017/04/22 20:14
名前: ラッテ (ID: KE0ZVzN7)

第三話 終わり、そして始まり

外は今までに無いほど激しい雨だった。

どうやら、そろそろ梅雨の時期が再来したらしい。

五月十九日。普段より一足早い梅雨に、更にテスト結果発表という嫌なイベントが重なり、学校の雰囲気はいつもより暗かった。

テスト結果発表は、昼休みにやる予定だ。

私は、かなり手応えがあったと思う。自己採点では、おそらくだが四百点は絶対に行っているという自信がある。

やよいちゃんも中々自信があるらしいが、四百点を取れなければ外出禁止というルールのせいで今日はやけにおとなしい。

いつもとは違う学校の雰囲気のせいか、今日は何だか何かが起こる様な気がしてならなかった。

その予感は、あながち間違いでは無かったのかもしれない。




三時間目の授業の終わりを告げる音楽が、いつもとは違う音に聞こえた。

相当緊張しているのかもしれない。それも当然だ。

私は中学校一年の時に不登校になったから、テストというのは実に二年半ぶり。当然、結果発表も二年半ぶりなのだ。

中学にまだ通っていた頃、一回だけ結果発表を経験した事がある。

前期中間テスト。中学始まって初のテストという事で、気合いを入れて臨んだテスト。

結果発表の紙が貼り出される直前のあの緊張は、今でも忘れない。

あの時は確か、友達と一緒に結果発表の場所まで行ったはずだ。

中学時代の、友達。一人だけ、友達と呼べる人がいた。

もう、友達とは呼べないし、呼びたく無いけれど。

その結果発表から二週間後、私は不登校へと陥った。

あの事件以来……。

もう二度と思い返さない、って決めていたはずなのに、また思い出してしまった。

だけど、不思議と嫌な気持ちでは無い。

今の私には、本当の友達がいる。

やよいちゃん。それに、竜胆さんとか一応須原だって、結構仲が良い。

やよいちゃん達がいてくれている限り、私は強くいられる。

大丈夫。私には、友達がいるんだから。




「ほんじゃ、行くぞー」

主任の先生が勢いよく折りたたんであった紙を広げ、廊下の壁に貼った。

雨は一層強くなっており、かなりうるさかったのだが、それを掻き消すほどの大声でみんなは騒ぎまくった。

紙には、成績上位十名までの名前と点数が大きく書かれており、あとはその下に小さく細かく名前と点数が記されている。

紙の前には特に男子が群がり、混雑していたため私は少し離れた所からやよいちゃんと一緒に紙を見ていた。

自分の名前を探す。水原さぐり……水原……水……。

あった。

順位は、四百三十二人中二十四位。点数は、四百三十六点だった。

「やった……!」

思っていたよりも点数が高く、思わず喜びの声を口に出してしまった。

今まで身体中を支配していた緊張感が、一気にどこかへ飛んで行った様な気がした。

しかし、まだ油断はできない。

やよいちゃんがまだ自分の名前を発見できていないらしい。

私は一緒にやよいちゃんの名前を探した。

必死になって探している間に、群がっていた人達は少しずつ少なくなって行った。

やよいちゃんの名前を発見できた時には、殆どの人がいなくなっていた。

やよいちゃんの結果は、四百三十二人中百三十位、三百九十二点だった。

その点数を目の当たりにした時、やよいちゃんの顔は今まで見た事がないほど絶望していた顔になっていた。

私はやよいちゃんにかける言葉が見当たらず、結局その状態のまま昼休みは終了してしまった。

何とかして教室へとやよいちゃんを返して、私は自分の教室へ向かい、自分の席に座った。

教室中は、テストの話題でもちきりだった。

話の内容のほとんどが、成績上位者の話だった。

その話の中には、須原、という単語も出てきていた。

あいつはやはり、かなり良い点数を取ったのだろう。

負けてしまった、という事になる。

悔しかった。悔しかったが、それ以上にやよいちゃんの事が気になって仕方がなかった。

友達だからこそ、その悲しみ・辛さがよく分かる。

帰る時、どんな言葉をかけてあげれば良いんだろう……。

そんなことを考えている時だった。

後ろから急に自分の名前を呼ばれ、返事をする暇もなく強引に椅子から引きずり離され、首元を掴まれてしまった。

急いで後ろを振り返ると、須原が私の制服の襟を掴んでいた。

「なに?伸びるから離してほしいんだけど……」

私の言葉を聞く耳を持たず、須原はそのまま歩き出した。

苦しかったので須原の手を引き離して、そしてそのまま須原について行った。

今までに無いほど、須原の顔は真面目で、深刻そうな顔をしていた。

一体何があったのだろうか。

その内容は、思ってもいなかった事だった。




「雛川ももが、一ヶ月後にこの学校に転校してくるよ」

声の主は、姫川サクヤだった。

須原に連れてこさせられたのは、今は使われていない旧音楽室だった。

不気味な雰囲気だったが、姫川の言葉がさらにその不気味さを増幅させ、恐怖を感じるレベルまでとなった。

今、この男は何を……。

「そんな訳ねえ。あいつは確かに中学時代に転校した。だろ?水原」

雛川もも。その名を、もう一読聞くことは無いと思っていた。その名を、なぜこの男が……。

一体何が起こっているのか、検討がさっぱりつかなかった。

「う、うん……。確か、七月に……、沖縄へ」

「ほらな。冗談は程々にしやがれ。ったく」

須原がそう言うと、姫川はクスッと笑ってこう返した。

「だから、言ってるじゃないか。たまたま先生たちが話しているのを聞いたって。一応学級委員の君達に伝えておこうと思って、呼んだのさ。水原さんは、レイ経由だけどね」

どうやらこの男が雛川ももの事を知っているわけでは無いらしい。

少しホッとした。しかし、須原は気を張りつめたまま、姫川に追求した。

「何でわざわざ報告した?学級委員だからって、知る必要は無いはずだ」

「学級委員はみんなのリーダーだろう?転校生の事は、知っておかなくちゃ」

姫川にそう言われ、須原は返す言葉が見当たらず黙ってしまった。

須原の発言の意図は、私には理解できた。

さっき少しホッとしたが、今は全然安心できない。

恐らく知っている。この男は。

『あの事件』を。




「まあまあ、レイ。僕にテストで負けたからって、そんなに怒るなよ」

この言葉には、素直に驚いた。

須原が負けた、ということもそうだが何より姫川が勉強できる、という事にだ。

須原も姫川も、テスト中は全然本気には見えなかった。

天才とは、こういう奴らのことを言うのか……。

「俺は四百九十で、お前が四百九十二。たった二点差だろうが!」

「二点でも勝ちは勝ち、負けは負けだよ」

「グッ……」

あの須原が押し負けるとは、この男、色々な意味で只者では無いな。

雛川もも。彼女が、この学校に一ヶ月後やってくる。

あの女が、この学校に。

少し、信じられない。彼女は確かに、いなくなったはず……。

旧音楽室から出ようとした姫川が、去り際に放った言葉。

その言葉が、新たな波乱、そして壁を生み出した。




「まあ、明日からの沖縄行き宿泊研修でハッキリするさ。楽しみだね、宿泊研修」




第一章 終わり




『次章予告』

さあさあ、始まりました!今作から始まった次章予告!

今回の担当はこの私、七原やよいが務めさせてもらいます!

今回の話ではションボリしていた私ですが、次章はバリバリ暴れますよ〜!

え?さぐりんと違うクラスだから出番は少ない?そ、そんな!

二泊三日もあるのに、私全然出てこないんですか!?

嫌です!ちょっと、作者さん!私の出番増やしてください!

次章予告?そんなの知りません!出番ですよ、出番!

え?予告したら出番増えるかも!?

次章の舞台は遂に宿泊研修!沖縄を舞台にさぐりん達が様々な試練に立ち向かっていきますよ!

姫川君の発言がどの様に物語に絡んでくるのか……。

次章!『波乱の宿泊研修』お楽しみに!

これで私の出番増えるん……(強制終了)

珍しく更新早いと思ったそこのあなた。短いですよ、四話。 ( No.6 )
日時: 2017/04/26 19:15
名前: ラッテ (ID: KE0ZVzN7)

第二章 波乱の宿泊研修



第四話 前夜の出来事

さて、この学校の名前を皆さんは覚えているだろうか?

覚えているわけがない。一回も言ってないのだから。

この学校の名前は、梟高校。この地は梟が有名である。

何故今頃そんな事を言ったのか?決まっている。

とてつもなく暇だからだ。

今私達は学校のグラウンドに整列して座っている。

人の横にはセットでどデカイ荷物が置かれている。

グラウンドに残っているのは私達だけのクラス。

まるで、誰かを待っているかのようだ。

校舎に取り付けられている時計の針は、もうすぐ夜の七時を迎えようとしていた。

まず、一体今どういう状況なのか。

説明するには、この梟高校のおかしい制度から話さなくてはいけない。




そもそも、この学校はゴールデンウィークを潰す様な頭のおかしい学校だ。

そんな学校が宿泊研修をやるとなったら、どうなるだろう。

普通なら、二泊三日で楽しい宿泊研修にするだろう。場所も、そこそこ近い所を選ぶはずだ。

それを何をトチ狂ったか、二泊五日の、東京から沖縄旅行という、まるで夏休みに休暇を取れたお父さんを率いてバカンスへでも行く様なプランだ。

二泊五日と言われてもピンとこないと思うから補足すると、まず今日五月二十二日の夜に東京を出発。五月二十三日から五月二十五日まで沖縄に滞在。五月二十五日の夜に沖縄を出発し、五月二十六日の朝に東京に到着。

どうだろう。 こんな宿泊研修をする学校、うち以外にいるだろうか?

今日は五月二十二日。つまり、東京を出発する日だ。

まずは学校に六時半に集まり、バスに乗って空港へ向かう。そして、八時発の飛行機に乗るのだ。

しかし、今の時刻は七時。一体何が起きているのだろうか。

今この校庭には、本来四十三人いるはずのクラスが、四十一人しか集まっていない。

欠席するという知らせが一人だけ届いている。

その生徒の名は、町野みな。普段おとなしい彼女だが、宿泊研修は体調不良で全日欠席らしい。

では、もう一人は誰なのか。

「もう時間やばいですよ、どうするんですか花街先生?」

学級委員である私は、この学級の担任・花街シゲル先生に聞いた。

ここから空港までは二十分はかかる。どれだけ遅くなっても、七時十分には学校を出なければいけない。

時間は、七時五分を過ぎていた。

「遅刻の連絡もきてないし、家にも連絡つかない。何やってるんだ、あいつは!?」

教師にあいつ呼ばわりされる生徒。

大事な宿泊研修で遅刻の連絡すらよこさない馬鹿な生徒。

そろそろ見当がついたと思う。

「仕方がない。あいつが来たら学校に残っている教師に連れてってもらって、俺たちはもう出よう。ったく、無責任な学級委員め」

須原レイ。彼はいまだに、顔を見せていない。

バスはもう出てしまった。私ももうバスの中だ。

一体どうするつもりなんだ!?あの馬鹿!

Re: ある少女の少し大きな物語 ( No.7 )
日時: 2017/04/24 19:09
名前: のんたん (ID: gfjj6X5m)

「ある少女は成長する事を拒むのです」からずっと見てました!(あれ、題名合ってますよね...?)
もうさぐりちゃんもやよいちゃんもどっちもかわいい!というか登場人物がみんな個性があってイキイキとしていてすごいです!いいなぁ~。これから宿泊研修がどうなることやら...。レイくんどこ行ったんだ...
これからも応援しています。更新頑張ってください!


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