コメディ・ライト小説(新)

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下書きだらけ
日時: 2020/01/09 23:09
名前: モズ (ID: MHTXF2/b)


 タイトル通り。
端から見たら下書きのような、まだまだ物足りない文章が
SSとしてレスに表示されていく予定です。

 長編は無理だと気付いた。だから、短編。色んなことを書いていたい、それがモズ。
久し振りな投稿もこれから続けられたら良いな、と。
みんなが帰ってくると良いな、と思いながら、珠に書きに来る。

 

Re: 今は無題 ( No.2 )
日時: 2018/10/14 22:46
名前: モズ ◆hI.72Tk6FQ (ID: OypUyKao)

『迷い故の洋館にて』



 昔々の噂話、今ではそれが話題に出ることなんて珍しい程に昔の噂話。
今ではそれを信じる者も居なくなり、過去なら禁止されていた『深夜の森への出入り』は解除された。
 そう、過去には深夜に森へ出入りした少年少女ばかりが失踪する事件が勃発していたのだ。
何人かは戻ってきても口を揃えて、



 「何も無かった……何も無いんだ」



 そのような旨を述べていく。それから『深夜の森への出入り』は禁止された。
すると、勃発した少年少女の失踪はパタリと止まったのである。
 しかし、時間が経てばそんなの気にならないお話として括られていく。
過去は過去でしかなくて、今ではその話が真実だなんて誰かが証明するつもりなのか?
そのリスクを避けたのか、過去の話としたのか、またはそれ以外の理由か。
訳はわからずとも、その禁止事項は解除された。
 一人の少女が春先というのにまだ肌寒い深夜を紺のワンピースと海のような青のショール。
それだけを身に付けて、あとは透き通る青いパンプス。
手には一冊の分厚い本と真っ赤に熟したりんご。それだけを持って。
 森へと駆け出す、後に続く者は誰一人としていない。彼女を包むのは静寂、それだけ。
 突如現れた霧、彼女は動かずに何もせずに霧が消えることを待った。
そして霧が晴れた時、そこには無かった筈の洋館が建っている。
 中からは愉快な笑い声、そしてこちらをジトリと見るような視線。
そして彼女を招き入れるように彼女より遥かに大きい扉は開かれるのだ。



──さァ、中へ入りなさイ。少女よ、もう戻ることは出来なイのよ。



 その声に吸い込まれるように彼女は扉へ導かれ、歩き出してしまった。
その先に何があるのか知らずに、入ったらもう戻れない、何かをするまで。
歩んでしまってよいのか、もう歩んでいるじゃないか。もう、知らないよ。
彼女を唯一見守る月は彼女を見放すように雲に隠れてしまった。
包んでいた静寂は館の住人の笑い声で無かったことにされる。
 迷いこんだ少女は、彼らと愉快に笑いを上げる。あぁ、感化。そうなのか。



 春先なのにまだまだ肌寒い深夜、りんごと一冊の本を持って森を歩くのは、私。
人っ子一人いない中、私を包むのは静寂、そして月明かりだけ。
 周りには誰もいない、先程まで私を包んでいたのは静寂と月明かりだけ、そう思っていたのに。
いつの間にか霧が立ち込めていたみたいで目の前でさえ、何も見えなくなっていた。
視界は完全に遮断された、そう表現するのが正しいのだろうか。
そしてまたいつの間にか霧は晴れていた、眼前には今まで見えてなかった、存在してない洋館。
アンティーク調、見上げなければ上の方まで見えない、不思議な洋館。
ぼんやりとした明かりに照らされて窓から見える人影は複数で愉快な笑い声を上げている。
洋館の大きな扉は開かれ、まるで私を歓迎するかのようにそんな声が聞こえた。



──さァ、中へ入りなさイ。少女よ、もう戻ることは出来なイのよ。



 その声に自然と体は洋館へ吸い込まれていった。足は止まらずに歩み続ける。
あの笑い声が近付いていく、会話の内容もだんだんと、はっきりと聞こえてくる。
 気付いたら寝ていた。目を開けたのに視界は暗く、閉ざされている。
丁寧にも腕は綺麗に並べられ、足も揃えられた状態で床に横たわっていた。
何も見えないぞ、その疑問に答えるように手は動き出す、筈だった。
ガチャンガチャ、と音がする。そういえば、私は手錠をされているのか。今更気付いた。
それではこの暗さはアイマスクか目の光を奪う力か、部屋がただ単に暗いか。
アイマスクのような布を皮膚では感じられなかったからアイマスクは候補から除外された。
そんなことを考えても仕方ない、結局はこの結論に陥るのだから。
 ただ、これからどうすれば良いだろうか。身動きも取れず、視界による情報は得られない。



 「目覚めたか? おはよーさん」



 少し距離が空いている、が同じ空間からその声は聞こえた。若い男性だろうか。
そもそも手は使えないから体制を起こすことも出来ず、立ち上がることなんて出来なかった。
だから動かず、声も出さずに寝ている、そんな風に装った。



 「……無視かよ、まぁ良いや。お嬢さん、ちょっと失礼するから暴れんなよ」



 そう言われると同時に体がふわりと浮き上がる、まるでそんな風に感じられた。
厳密にはお嬢様抱っこをされた。それなりの年の私をそんな風に持ち上げるこの人は誰なんだろう。
何も見えない今ではそんなことを考えることしか、暇を潰せるようなことは無い。
普通だったら照れたりしちゃうんだろうけど、状況が状況だからそんなことは一切なく。
 椅子、のようなものに座らされて、その人の手は離れた。
けど、まだ何かを話してくれているようだ。



 「今から手錠を外すから動くなよ……」



 まずは手錠を外されて、手は自由になった。どうやら外す、には続きがあったようで。
またもや、動くなよと忠告をされてから何かを掛けられたような感覚がした。
 すると、今まで何も見えなかった目が光を得て景色を写し出した。
座らされていたのは椅子、椅子以外の何物でもない。
私のいるこの部屋は椅子しか、私の座るその椅子しか置かれていない部屋だった。
それなのに上京したての芸人のようなワンルームよりもずっと広い部屋。
何で明かりがついているのだろう、光源は見当たらない。探してみたが分からなかった。
目の前には先程の彼、と思わしき男性が目線を合わせてくる。
目付きは悪そうだが世間的に言えば、イケメン。それに部類されるような人なのだろう。
女子が羨ましがるようなぱっちり二重と涙袋、生きてんのかと思わせるような色白、
薄くも厚くもない丁度良い厚さ、且つ程々の発色をした唇。
それだけでも充分羨ましいというのに、近くで見ているが肌はキメ細かく毛穴なんて無いようで。
目はキレ長で少女漫画に出てくるさながら学園の王子様のような……典型的なイケメンといった所か。



 「どうかしたか、俺の顔なんか見て……」



 「典型的なイケメンに部類されるような人なんだろうと思いまして」



 「正直だな」



 「よく言われます。正直者は得をすると私の祖母にはよく教えられました」



 「典型的なイケメン……か、ありきたりという意味か。それは嫌だな」



 「イケメン、それだけじゃ嫌なんですか」



 「個性がないのと同じだろ、典型的だなんて。ありきたりなイケメンなんて一般人と同じさ」



 「変わった人ですね」



 「それはお互い様だと思うがな」



 お互いに正直者である、それを認識したようだ。言葉のキャッチボール、そんなスピードではなく。
お互いに撃ち合う、そんなスピードで互いに言葉を聞き、そして発して交わしていく。
 そして何事もなかったように彼は何故か、私の顔を見てくる。
それに対抗するように私も彼の顔を見る。そして互いに何かを思ったのだろう、言葉が交差した。
それに彼は驚いてお先にどうぞ、と話す順番を譲ってくれる。
しかしそれに応えたらなんか負けたような気になってしまうのが嫌でこちらも譲る。
そんな私の気持ちなんて知らないだろう、彼は話す。



 「お嬢さんは素敵な顔をしているなと思ってな」



 「あら、そうですか。褒めて頂いてもらうような人間ではないと自負してるのですが」



 「少なくとも今までここに迷いこんだ人間のなかでは、のお話だよ」



 「今までもここに人が来たことがあったんですか」



 「お嬢さんも何か話したがっていたんじゃないの」



 まるで人が来たことを言いたくないかのように見事にスルーされたが、まぁ良いだろう。



 「あぁ、忘れてました。申した方がよろしいですか? 」



 「とか言いつつ、言いたいんだろうに」



 「私たち、本当に似た思考をしているのね。ある意味、同族を思わせる」



 それほどに彼とは話しやすかった。とはいえ、私も話したいことがある。
彼に催促されたのならば、答えなければ。私が話したかったのだから、話すのである。



 「目の赤いライン、そして首もとが気になりましてね……それらは何でしょうか」



 目元にはアイラインとして赤を差し、首もとには何かは分からないが目に付く何かが描かれていた。
どうして今の今まで気にならなかったのだろう、彼に興味がなかったからだろうか。
と、自問自答するのである。一呼吸置いて、



 「目の方も首の方も理由は同じ、憑かれたんだ」



 「疲れた? 人間として生きるのに疲れを感じたのですか」



 「まぁそれも間違ってないけどその『疲れる』じゃなく、俺のは妖怪に憑かれるの方」



 「ほう、間違ってはないのですか。そして何かに憑かれたと」



 「狐だよ。それで俺は人間なようで狐にもなれる何かに変身した訳で」



 「へぇ、それは面白いですわね。変身してくれないの? 」



 「興味あるんすか? 」



 「なかったら、何も言わないでしょうに」



 「そうだな。では尾には触るなよ……」



 彼がこちらに向かって可愛らしい花の匂いがする大きな、質感の良い布を被せてきた。
それはしっかりと私の頭に、顔に被さる。変身のその瞬間を見せたくないなら、そう言えば良いのに。
尾には触るなよ、その言葉は何だろう。きっと本心からだろうが、そう言われたら触りたくなる。
それが人間というものである。



 「これでどうか……」



 その布をぶん投げてしまえば、目の前には彼に狐の特徴ともいえよう、ふさふさとした複数の白い尾、とがった耳。
目の赤いラインも首もとのもそういうことか、と何とか理解することができた。
彼がそれであることの僅かな印、私自身はそう理解することにした。
人間とはいえ、彼の尾には触れないでおこう。私、とても偉いのね。



 「さぁ、皆の元へ参ろうではないか」



 もとの姿に戻った彼が未だに名乗らずに先に部屋を出ていこうとする。
それでは着いていくしかない、勝手に体は動くものだ。
 それにしても他にも何かがいるのか。部屋を移動して彼が止まる。
すると、私は止まらざるを得ない。わざわざこちらを振り向いて



 「ここだ、皆がここにいる。怖がらなくても良い、なんて言っても意味無いか」



 どうやら目の前の扉の奥に皆、がいるそうだ。わざわざ心配もしてくれたようだが、確かに意味はない。
彼の人の良さに安心していたからここへの恐怖は殆ど消え去っていた。



 「そうね、誰かさんのお陰ですっかり安心してるわよ」



 その答えにふっ、と微かな笑い声を溢した彼はそうかそうか、とこちらに笑いかける。



 「なら、良かった。入るぞ」



 耳に障るような古めかしさを感じさせる甲高く、苛つく音を立て、扉が開く。
その先には彼と私を待ち構えていたように複数の人達が立ち並んでいた。
 左からフードを被った金髪の小さい女の子、生気の無い、ちゃんとした白髪の男の子、
彼とは反対的な、狼みたいな目付きの赤髪男性、腰まで伸びている黒髪が特徴的な美女。
そしてテーブルの上にヤンキー座りをしてこちらを冷たく見ている灰色の髪の男の子。
フードを被り、その袖をぶらぶらさせて。私がそちらを見つめるとニィ、と口角を上げて笑って。
そして後は先程まで一緒にいた彼だけ。
 お互いに定め、定め合うのが続くかと思われたが、それは案外早く打ち破られた。
そう、フードの金髪少女によって打ち破られた。



 「迷い込んだのはこの子か……変人の館へようこそ! 」



 手を広げ、歓迎を示すジェスチャー。健気な少女、そう思わせる元気な声に安心した。
声に合わせ、表情も笑顔であることを確認して私は安堵の息を漏らす。



 「その筆頭はお前だろ、毒ロリ」



 「煩いな、馬鹿犬は」



 「犬じゃねーよ、何で犬なんだよ」



 「ギャンギャン煩いから、それしかないっしょ」



 フードを被った金髪少女に突っかかるように狼みたいな赤髪さんが毒を吐く。
かと思えば、その少女も余裕そうに言い返す。この二人はいつもこうなんだろう、周りの冷静さがそれを感じさせた。



 「この二人はいつも煩いから気にしなくて大丈夫、ねぇコンコン……どうするつもり? 」



 黒髪美女がおっとりとした口調で誰かに話し掛ける。コンコン、だからきっと彼なのだろうが。
それでも二人は口喧嘩を続けている。これが彼らの日常の一つなのだろう。



 「コンコンはやめてください……それに関してはまだ良いでしょう、面倒ですし」



 予想的中、コンコンとはやはり狐に憑かれた彼だった。黒髪美女の方が年上なのだろうか。
それにしてもそれ、とは何だろう。
残りの二人は喋る素振りを見せない。白髪の方は地面を見つめ、フードの方はヤンキー座りはやめた。
テーブルの上、足をぶらぶらさせている。相変わらず、行儀は悪いようだ。



 「犬は黙ってろ……で、君の名前を教えてよ。嫌なら仮の名前でも良いから! 」



 喧嘩は終わったのだろうか、キラキラした目でこちらを見つめながらそう声を掛けてきた金髪少女。
犬と呼ばれた彼は金髪少女をギロリ、と睨んでいるが口は硬く閉ざされていた。
これは表現ではなく、現実である。目の前の少女にきっとされたのだろう、口には綺麗にガムテープ。
勝手に取られないために手さえもガムテープで拘束されていた。



 「リゼリア、彼女は客人よ。先ずは私達から名乗るべきでしょう、それが礼儀ではないの? 」



 「はぁ、名前を出さなくても伝わるから。んで、名はリゼリア、よろしく……」



 金髪少女の名はリゼリア、だが名前を出せば嫌な態度を示している。何故だろう。可愛いのに。
 次は私かしら、と再びあのおっとりとした声が聞こえてきた。



 「私はメトリーと申します、よろしくお願いしますね」



 よく見たら着ているのはゴスロリ衣装、まぁ口調の割に綺麗な顔をしているから似合うんだが。
私ならきっと似合わないだろうし、着る勇気はないと思う。
 さて、迷う。リゼリアさん、そしてメトリーさんは自己紹介してもらった。
リゼリアさん曰く犬はガムテープを貼られて喋れない、リゼリアさんはガムテープを外す素振りさえ見せない。
生気の無い男の子は床にうずくまっている。フードを被った方はその子の傍で寝ている。
猫背だったからか、テーブルの上に座っていたからか。思ったよりも身長が大きい。
犬さんか、狐の彼。彼らとそこまで変わらない身長。生気の無い男の子はリゼリアさん程で大きくはない。
狐の彼は自己紹介をするつもりは無いらしい。では、私になるのだが。何と名乗ろうか。
 仮の名前でも良いってどうすれば良いのだろう。それはそれで迷う。
私も自分の名前は好きじゃないからそれは助かるけど、代用の名前は直ぐに思い付かず、
狐の彼に助けを求めるしかなかった。


5,870文字、修正、又は続きを書く。

Re: 下書きだらけ、二代目 ( No.4 )
日時: 2018/10/20 12:32
名前: モズ ◆hI.72Tk6FQ (ID: OypUyKao)


 『』



 暗闇に打ち上がる色鮮やかな花火が目の前の景色を、僕らを彩っていく。花火色に。
下を覗けば祭り提灯がほんのりと灯され、各々が浴衣やらカジュアルな服を纏って砂利を踏み締めて歩いていく。
中には花火を見上げて立ち止まったり、屋台で遊んだり買ったりする者も当然居るわけで。
まぁ、そんな彼らはそこから少し離れた所から登ることのできるこの石階段には見向きもしないのだろう。
 後悔はしているのか、ともう一人の僕が問い掛けてくる。居る筈も無い存在だと言うのに何様だ。
それに対して端からは独り言、僕から見たら僕への返答をする。

 「嗚呼、今のところはしてない。人の笑顔をぶち壊すのは楽しいよ」

 今の僕はどんな表情をして居るのだろう。自然と笑えている、そんな気がする。
下にある素敵なものを見つめながらそれからしゃがんで近付く。
そうだ、と思い出したようにそれを持ち上げて運んでいかなければ。
 石階段を登る。一段一段がそこまで高くないお陰で楽に登ることが出来るのは有り難いことだ。
まだ軽くなったとはいえ、決して重くない訳ではない荷物を抱えて歩くのは大変だ。
足首に巻き付くように触れる草が擽り痒いがそれを我慢して歩き進める。
今日で全てを終わらせる予定が狂ってしまうんだから気にしている暇なんて無いんだ。
自然に何を言おうと無駄なことくらい分かっていても心はそれさえ漏らしてしまう。
 それから暫く、時間にして20分程。目的地に到着したことに気付き、安堵の息を漏らす。
荷物を下ろして自分も腰を下ろす。まだまだ若いのに爺のような声を出してしまった。
日頃の運動不足が祟ったのだろうか、きっとそうだろう。
それから荷物を何度も確認しながら此処からでも見える花火を鑑賞した。
いつも屋台の方で見る花火とは全然違う景色に僅かに驚くばかりだ。
人の群れに、温度に邪魔されることなく自分だけの空間で花火を観ている。
視界に何も障害物の無い、目の前には夜空、打ち上がる花火だけが映されている。
 花火を観ていたら荷物のことを思い出してしまった。嫌なもんだ。
毎年お馴染みだった花火をすっぽかすなんて、ぼくが一体何をしたって言うんだ。
問い詰めても何も教えてくれなかった君が悪いんだから。君が悪いんだ。
 もう、良いや。荷物を解体して仕舞わないと。
水色の生地に金魚が愉快に跳ねている浴衣、それから赤い帯。
元々はそんなものが所々に赤黒い点が跳ねたり、染み込んでいるじゃないか。
それから一箇所にはやたら大きな血の痕が残っている。細長い穴も幾つかと。
 横暴だって言われそうだ。たった一言で勝手に想像して君を殺したんだからね。
毎年お馴染みだった花火をすっぽかした君を根拠なく疑って殺したんだから。
もしかしたら僕が気付かない内に彼氏を持っていたのか、とか僕を嫌いになったのか、とか。
君から僕は害虫のように見えていたのかは知らないが、
訳さえ教えてくれずに僕と行くことを拒否して、一人で花火に行くなんてずるいよ。
きっと、僕は君に恋してたのだろうか。だから、こんな風に感じてしまったのだろうか。
嗚呼、生きてない君を見ている内に僕がとても愚かだったと思ってしまうではないか。
鋭利な刃物で浴衣を、皮膚を、血管を打ち破られた感覚は想像しがたい。
それなのに笑顔で居る君は何なんだ、遠くに本命が見えたからか。
そもそも僕の事なんて眼中に無かったのだろう、それくらい当たり前だ。
 どうして殺すことは容易いのに笑顔の君を土に投げ入れる、ことが出来ないなんて。
子供用スコップを持ってきていたが、それは無駄足になってしまった。
何故君を土に埋めることが出来なかったのか、体が動かなかったのかは分からない。
結局、死んだ君でも僕は君の虜だったから、まだ最もらしい理由を挙げるならそれくらいだ。
 これからどうしようか、と迷い続けていたのだが大した答えには辿り着かなかった。
僕が君を殺したことは事実で過去に戻ってその事実を変更するなんて某青狸でも居なきゃ、無理だ。
殺してしまったんだ、殺してしまったんだ、君を。
花火に照らされ、僕らはどのような表情をしているのだろうか。
僕は笑い、君も……苦しい筈なのに笑ってるじゃないか。
君が、あんなことさえ言わなきゃ。僕は君を殺さなかったというのに。君は不幸だ。


Re: 下書きだらけ、二代目 ( No.5 )
日時: 2018/11/29 03:40
名前: モズ ◆hI.72Tk6FQ (ID: y36L2xkt)

 『高一』4/##~


 私は気付かない内に色んなことを知っていった。少なくとも中学の頃よりも成長はしていると思う。
そんな私を認めてくれる人が少なくても私にとっては沢山居るんだから。


 四月の始めだというのに桜はさっさと散ってしまい、
歯抜けだらけの桜の木を見上げながら私は駆け抜けていく、道路を。
高校生活初日、自転車で学校へ向かう。まだ走り慣れない道を不安げに行く私。
道の途中で真新しい、キラキラと輝くランドセルを背負う小学生、
セーラー服に心ときめかせる中学生の女の子らが背景として映る。
彼らが抱くのは期待、そして希望なのだろう。
中学生の子とはそこまで年齢差は無いというのにそんなことを考えてしまう自分にため息が出る。
私には学校というのは一つのダンジョンのようなもので大変で苦しいものにしか思えない、と。
地味で可愛くも美人でもなく、性格が明るいわけでもないから誰かと行動するというのが多くなくて。
むしろ人と関わるのが苦手で直ぐに緊張して、とパーツを並べていくと私は本当に悪い子だ、と思ってしまう。
数少ない友達もつい最近までは傍に居たのに、高校ではお別れ。つまり私は一人だ、もう慣れたことだが。
花びらの無い桜のように何かが抜けたような私は校内の駐輪場に到着し、自転車を停める。
一人で知らない教室へ向かわねばならない、孤独感が私の心に犇めき、闇で染めて、表情をすんと暗くさせる。
新学期に似合わない顔、そして気持ちを抱えたまま目当ての教室へ向かった。


 「ねぇ、しーちゃんと同じクラスなのかな?」


 「どうなんだろ、同じだと良いね!」


 羨ましい声が指定された私の席の傍から聞こえてくる。
席順はどうやら出席番号順らしいが、まさかこのクラスのままなのだろうか。


 「隣の教室に居たポニーテールの女の子、滅茶苦茶可愛くなかった!?」


 「うん、そうだねー。でも洸、誰にでも惚れやすいのはどうにかしないとまずいよ」


 何とも賑やかな声が聞こえてくる。孤独じゃないから虚勢を張れる。なんて内心で愚痴を吐いてみたけど、
それは孤独でしかない私の敗北宣言のようなものだ、私は一人なのだから。
そんな暗い気持ちを抱えて入学式が、そして始業式も始められようとして居た。
 誰かも知らない先生が生徒を席に着かせると隣には一人の女の子、内なる美しさを秘めた女の子だった。
各集団ごと、計4ブロックに分けられ、四列ずつ並んでいく。私は丁度端っこだった。
後ろに上級生が居るのに少し緊張してたけど、隣の子の一言でそんなの吹き飛んだ。


 「貴方、誰かは知らないけど宜しくね」


 緊張というより不安が吹き飛んだのかもしれない。私なんかに話しかけてくれる人がいるんだって。


 「あ、はい、宜しく御願いします」


 私の口から出た言葉を聞いて静まる体育館とは反して彼女はクスクスと笑っている。
隣のブロックの生徒が気になってこちらを見るも、私の隣の彼女に目が向き、慌てて逸らしていた。


 「また、後で話しましょ?」


 「あ、はい」


 謎の期待感を抱えたまま、式が始まっていった。高校とは何たるもの、という校長の長々しい話、
生徒代表がただ高校生活を語っていくもの、吹奏楽部の演奏コーナー、他にも色々。
新鮮味が無いなぁ、と思いながら見ていたのだがそれは周りも同じ様らしく、背中を丸めて前屈みになる者、
友達同士なのかこそこそと喋る者、髪の毛を弄る女子が居たり、飽き飽きしている人も居るようだった。
 最後に生徒会長の言葉、という名目で出てきた人物に女子のハッと息を吸う声が聞こえてきた。
少しざわさわとした体育館だったが、暫くすると彼だけに注目を集めるように静寂に包まれてしまった。
先程まで髪の毛を弄っていた彼女も目を点にして彼だけを見ていた。
つまり、生徒会長がそれなりの顔立ちだった訳だが、私も隣の彼女も大した反応はしてなかった。
 式典がすべて終了し、教室へ向かうために廊下はごった返す。
何せ、一斉に生徒が我先にと狭き道を通ろうとするのだから、滞るのも仕方あるまい。
それからその流れに無理矢理押し込まれ、流されてる最中。誰かに肩を叩かれた。


 「一緒に教室に向かいましょ?」


 彼女が差し伸ばす白くもキメ細やかで私なんか触るのがおこがましい手を掴むと。
彼女は私を強引に引き寄せ、すいすいと道を抜けていった。
誰かが道を空けている訳でもなく、彼女が体をくねらせて道をすいすい抜けているだけだ。
とはいえ、連れられた私もすいすいと抜けられて教室にはあっさりと着いてしまった。
正直な感想、彼女は何者なのだろう。とさえ、感じた。
二人きりの、暗がりの教室。式典中の先生の話によると集合したクラスがそのまま今年のクラスになるそう。
つまり彼女とはクラスメイト、そんな彼女と二人きりである。
 窓際にて、さわさわと風が遊ぶように彼女の真っ黒で艶やかな髪が揺れていく。
彼女の席は窓際なんかではなかったが、別にそんなことはどうでも良かった。


 「そうね、お話をしましょう」


 彼女がそう口を開いたなら従うしかない、クラスメイトになる存在なら尚更。
勝手に彼女へ良くない印象を抱いていたが、それは妄想だった。


 「私は鷺澤楸、貴方は?」


 「坂口蒼です、宜しくお願いします」


 彼女に聞かれた通り、名前を答えそれから礼をした。
すると、またクスクスと笑い声。まだ誰も来ていないのが不思議だった。


 「私なんかに敬語だなんて。それに律儀に礼なんてしなくて良いの。
だってクラスメイトだしそもそも同級生なんだから」


 楸、聞いたことのある単語だったけど何だったかなぁ。
脳内に問い掛けてみたが、反応は薄い。
漢字は思い出せても秋っぽいなぁ。という微妙な情報しか入ってこない。
そこから人がぱらぱらと教室へ入り始め、一瞬彼女のことを見ながら話しているクラスメイトが見えた。


 「蒼、私のことは嫌い?」


 「嫌い、ではないです」


 いきなり、この人は何を聞いてくるんだろう。
ほぼ初対面、何も知らないのに人を嫌う人間だと思われてしまったのだろうか。
もし、そうだとしたら私の高校生活は此処でthe end なのだが。


 「私は人として蒼に興味がある。だから友人でいさせて」


 もう一回、心の中で言わせてもらう。この人、何を聞いてくるんだろう。
人として興味がある、だから友人でいさせて。どういうことだろう。
ほぼ初対面の人間にそんなことは言うべきではないと思う。
とはいえ返答をしないわけにはならない。


 「……前半の言葉はよく分かりません。後半の言葉は認めます」


 私なりに正直に話したつもりだ。
そして友人が居ない高校生活が始まるのは困るから、そう答えた。
彼女の顔をじーっと見ていたが、彼女は学年でも数少ない美人の部類に入る人間だと思う。
クラスメイトがちらちらと彼女のことを、知らない誰かが覗き見ていたのも納得が行く顔。
対して私は地味、というか空気みたいな存在。この学校なら尚更。
今更ながらにどうしてこのような存在が彼女に興味を持たれたのかが疑問だった。


 「ねぇ、私の名前、呼んでくれない? 楸って」


 私の返答に一切関係ない話題を投げ掛けてきた。
名前を呼んで、ってまだ初々しい彼氏と彼女か。とツッコんでおいた。心中で。
その言葉に私は声を出すなんかせず間抜け面して頷くことしかできなかった。


 クラス、というものが私は好きではなかった。理由は簡単、人間だらけだから。
そもそも人間と話すことが得意ではない私にとってそういう環境自体が苦手だった。
それに学校は何をする、無理矢理にでも協調させようだの一緒に楽しめだの。
私にとって数少ない友達もそういうのが苦手な、いわば同類であったから仲良くなれただけなのだ。
一人でいるのが嫌だから、一人だと可哀想って思われちゃうでしょ。
誰かが提言した訳でもない。けど、自然とそういう流れが存在しているのが学校。
友達が居ない一人ぼっち、力も人望も何にもない。周りには孤独のみ。
それを避けるために同じ利害を共有していた、それだけなのかもしれない。
それでも会話をしていたし楽しくなかった訳ではないから完全に否定はできない。
 つまり、私にとって鷺澤楸とは異分子、というかぶっ飛んでいるという認識である。
折角話し掛けてくれたのは嬉しいのだが、彼女のようなコミュ力カンストしてそうな人間とは面識が殆ど無い。
未経験、接し方が分からない。一般的な人間の価値としては高値なのだろうが、私にはそれは分からない。


 今日はホームルームだけで終了とのことだった。まぁ、知っていたが。
私の席と鷺澤さんの席は前後の関係、とても距離が近かった。
やはり彼女にはオーラやら何かしら見えない何かがあるようで私が苦手な派手なグループが彼女に興味を持っていた。
他のクラスだろうお調子者らしい男子が覗き見をしていた。きっと彼女を見ていた。
担任となった20代なのに童顔な女性職員が解散、のよう旨を伝え教室を出ていくと肩をポンポンされた。
誰かは分かっていたからゆっくりと振り返ると、


 「蒼、一緒に降りよう?」


 満面の笑みでそう声をかけてきた。それを見つめる一部の女子、男子の視線が痛かった。


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