コメディ・ライト小説(新)
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- Let`s go,brass!
- 日時: 2019/05/10 18:37
- 名前: ぷっち (ID: Iju2i7Ct)
プロローグ
「私、倉庫行くから先に帰ってて」
「分かった。鍵、かけてね。早めに帰るんだよ」
西池田中学校、四階。彼女はそう言って友人と別れた。向かったのは楽器倉庫。鍵を差し込み回すと、ぎいっと音を立てて扉が開く。埃っぽい匂いがその場に広がった。コツ、コツ、と彼女の足音だけが狭めの部屋にひびく。壁際の棚には黒の楽器ケースが行儀よく並び、部屋の隅の窓からはほのかな光が差し込んでいる。トランペット、トロンボーン、ホルン。彼女は隣の楽器の名を唱えながら、窓辺に寂しくたたずむ机に向かって歩を進めた。軽く光を反射する机の上には、一人の少女が映った写真と白い布に包まれた長方形のハードケース、花が飾られた花瓶が置かれている。彼女が繊細な手つきで布を捲れば、小さな楽器ケースが姿を現した。かちゃりと留め具を外し、ケースを開く。焦げ茶と銀のピッコロが入っていた。あぁ、懐かしい。あの頃の記憶がまざまざと甦る。一緒に笑って、楽器を吹いていた。私はアルトサックス、あの子はピッコロ。楽しかった。本当に幸せだった。
なのに、あの子は逝ってしまった。
3年になる矢先に、同期も後輩もピッコロも残し、散ってしまった。
涙が止まらなかった。もう、どこにも存在していない。そう思うと、苦しくて寂寥感がして、何より悔しかった。何も出来なかった自分に腹が立った。部の雰囲気も悲愴を帯び、暗い日々が過ぎていった。
でも。
彼女は親友の遺言を胸に立ち上がらなければいけなかった。
「私はここまで。もう、これ以上生き永らえる事はできないの。でも、私のピッコロを貴女に託す。貴女が、私の半身を渡しても大丈夫だと思う子に、そのピッコロを・・・」
あの子は最後にそう言った。彼女は、あの子の最後のお願いを果たすためにここまで来た。
明日、新しい1年生がやって来る。
あの子が最後に願った事を、自分が果たす。
あの子の願いは、絶対叶える。
そう心に決めた。
いよいよ、願いを果たす新しい年度が始まる。
- Re: Let`s go,brass! ( No.2 )
- 日時: 2019/06/19 21:11
- 名前: ぷっち (ID: Iju2i7Ct)
人物
追々更新します。
~flute/piccolo~
白神瑞希
主人公。一年。
矢上琴歌
瑞希の幼馴染みの先輩。二年。
~saxophone~
池田みどり
ソプラノサックスの三年。明るい感じのアクティブ部長。
- Re: Let`s go,brass! ( No.3 )
- 日時: 2019/05/11 14:56
- 名前: ぷっち (ID: Iju2i7Ct)
第一章
第一話 スタート
私は白神瑞希。れっきとした中学生。先ほど始業式を終えて、帰路につこうとしている。
「あれ?瑞希じゃん!」
後ろからかかった声に振り向く。声の主はこちらに向かって手を振っていた。高いところで縛られたポニーテールがよく似合う少女。
「乃愛・・・?」
彼女とは小学校の時、特別仲が良かった。鈴本乃愛。こんな所で会うなんて、奇遇だ。乃愛はととっと駆け寄ってきてにこりと笑う。
「瑞希、部活入らないの?」
意外な質問に、私は首を傾げる。
「入らない」
その答案が不満だったのか、乃愛が頬を膨らませる。
「えー?入らないのー?」「うん」
きっぱりと言い切った。だって部活なんか、めんどくさそうだもん。固めてあった決意が乃愛の一言で粉々になる。
「じゃあさ、吹部入ろうよ!」
何故、と言う間もなしに乃愛が私の腕を掴んだ。そのまま階段を上りだす。
「え!?ちょ、ちょっと!?」
乃愛がスピードを緩めることはなかった。
・・・吹奏楽なんて、興味の欠片も無いのに!
- Re: Let`s go,brass! ( No.4 )
- 日時: 2019/05/25 19:32
- 名前: ぷっち (ID: Iju2i7Ct)
第一章
第二話 パートを考える
乃愛に引きずられて音楽室まで来てしまった。最悪だ。
・・・うーん、どうしようもない。
ここは腹を括るしかないだろう。私の脳裏に小学時代の友人の顔が浮かぶ。
「楽しいんだよ。部活に入るなら吹奏楽がおすすめ!」
彼女は両親が管楽器奏者で、妹と共に吹奏楽の道を歩んでいた。たしか・・・ファゴットとか言うやつ。妹さんはオーボエだっけ?ちなみに私と彼女の関係は習い事の仲間。新体操をやってたんだよ。
それより、現実と戦わなければ。私は思いっ切り音楽室の扉を開いた。中から好奇の視線が注がれる。
「あ!入部希望者?どうぞ入って!」
明るい声に従って、私たちは中に入った。声の主は教室の前方に立っていた少女だった。彼女は部活の中心人物と思われる。すでに一年は結構集まっていた。ざっと見た感じ30人弱だろう。私と乃愛が入ったら、中心っぽい少女は口を開いた。
「こんにちは!来てくれてありがとう。私はこの部活の部長をしている池田みどリって言います。担当楽器はソプラノサクソフォン。よろしくね」
やはり、部長だった。アクティブな感じがにじみ出ている。
「じゃあ、パート紹介に移ります。自分の行きたいパートを決める参考にしてください」
パート紹介が始まった。
フルート、クラリネット、サクソフォン、オーボエ、ファゴット。木管楽器。難しい響きだな。覚えにくい。
トランペット、トロンボーン、ホルン、ユーフォニアム、低音、パーカッション。だめだ。片仮名・・・
「じゃあ、行きたいパートに行ってね」
・・・どうしよう?
- Re: Let`s go,brass! ( No.5 )
- 日時: 2019/06/19 21:09
- 名前: ぷっち (ID: Iju2i7Ct)
第一章
第三話 パート決め前編
・・・あぁ、どうしよう。
私は白神瑞希、中学1年。親友の乃愛に連れてこられて、吹奏楽部に来ている。だがこれといってやりたい楽器もなく、路頭に迷っているという訳だ。
・・・何か適当に、いや、いっそ割り振ってくれればいいのに。
私の肩を何かが掴んだ。
「白神さん?」「うひゃあっ!?」
ばっと振り返ると、見覚えのある人物が立っていた。肩でバッサリと切り落とした黒髪に、くりっとした人懐っこい瞳。身長は高めで、あちらを見上げる形になる。
「こ・・・矢上先輩」
彼女は私の幼馴染み、矢上琴歌という。幼いころはよく遊んでもらっていた。1つ年上である。
「いやあ、奇遇だねえ」「奇遇ってレベルでもないと思うんですが」
琴歌はにこっと愛想よく笑った。
「パート、迷ってる?」
見抜かれていたようだ。私も開き直る。
「その通りです」「じゃあ、ウチおいでよ」
琴歌は後ろを振り返った。数人の先輩らしき人がいる一角。
「ようこそ、」
一度切られた言葉に、特に意味はなかった。
「フルートパートへ」
これこそが、私の人生に深く関わってくるフルートと、
奇跡のメンバーだということを、
私は知らなかった。
- Re: Let`s go,brass! ( No.6 )
- 日時: 2019/06/25 18:24
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: exZtdiuL)
こんばんは。
四季と申す者です。いきなり失礼致します。
吹奏楽部のお話なのですね。
どうでもいいことではありますが、うちの母が吹奏楽部だったので、この作品にも興味が湧きました。
これからも執筆楽しんで下さいね!
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