コメディ・ライト小説(新)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

うちのクラスには魔王がいる
日時: 2019/09/09 08:49
名前: 塩鮭☆ユーリ (ID: MK64GlZa)
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=1175.png

 はじめてカキコします、塩鮭☆ユーリです。

 主にコメディ風味でやっていきます。
 感想やアドバイスなども募集しているので、気軽にコメントしてください。荒らしなどは無視させていただきます。
 URLに表紙画像を貼っております。
 イラストに関するお話がありましたらリクエスト掲示板にて話しかけてください。

☆あらすじ

水野龍太は、ごくごく普通の中学二年生である。だが……龍太がいくら普通であろうとも、このクラスは普通ではない。
なぜならーー魔王がいるから。

「かっはは。我にひざまずけ愚民どもよ!」

「麻尾宇、この問題解け」

「くっ!?お、お主やるな……だが、我とて魔王。そのくらいで膝を折ってやると思ったら大間違いだ!」

数学の問題に苦戦する魔王がうるさい。

☆目次


『麻尾宇くんとツッコミ龍』 >>01 >>02 >>06 >>07
『麻尾宇くんは友達になりたい』 >>8 >>11 >>12 >>13 >>14 >>15 >>17
『昔話をしようか』 >>18 >>21 >>25 >>27
『美少女勇者様(自称)』 >>29

Re: うちのクラスには魔王がいる ( No.11 )
日時: 2019/06/04 21:45
名前: 塩鮭☆ユーリ (ID: 7/pkw8b6)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

☆麻尾宇くんは友達になりたい 02




「……」

 俺が一ノ瀬と話していると、隣で麻尾宇が一ノ瀬をきつめに睨んでいることに気づいた。

「どうしたんだ、麻尾宇」

 俺の中にあった麻尾宇への恐れは今朝の少しの時間ですっかり消えてしまっていた。普通にツッコミをいれられる自信がある。もっとも、俺にとってツッコミは義務みたいなものなので、それを指差して「仲良しだなー」とか言われると呪いたくなるのでそこのところよろしく。

 ……しかし、麻尾宇が人を睨むのは珍しいことだ。
 数学の宿題を睨んでいる様子はよく見かけるが、人を睨むというにはなかなか見ない。

 実は良い奴とかそういうことではなく、単に周囲を自分と同格だと思っていないだけで、睨む価値を見いだしていないからだと、俺は解釈していた。

 石ころに向かって睨む奴はいないだろう。

 それと同じだ。解釈がぶっとびすぎだと思われるかもしれないが、それが俺の麻尾宇に対するイメージなので仕方ない……と、思う。

「僕の顔に何かついてるかな?」

 気をきかせた一ノ瀬の質問に、麻尾宇は犬歯ののぞく口を開いた。

「……お前、どこかで見たことある……気がする。我の中の危険信号が明滅しておる」

 ……それって。
 ほら、ファンタジーな物語でよくある、魔王と勇者の感じみたいに、麻尾宇が魔王で一ノ瀬が勇者というオチなのではないだろうか。

 一ノ瀬は勇者のイメージにぴったりくるし、きっとそれだろう。
 俺が一人納得していると、一ノ瀬が困惑顔で助けを求めてきた。

 それを受け、俺はただでさえ図体がでかいせいで邪魔になっていた麻尾宇を席につくよう促す。
 俺だって中学二年生である。
 自分のペット扱いに納得はできなくとも、勇者や魔王と聞いて少なからず胸を踊らせるものがある。

 今後の展開が気になった。

 ……自分が巻き込まれなければいいが。

Re: うちのクラスには魔王がいる ( No.12 )
日時: 2019/06/06 21:30
名前: 塩鮭☆ユーリ (ID: 7/pkw8b6)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

☆麻尾宇くんは友達になりたい 03




 始業のチャイムと同時に担任の先生が入ってくる。ここまで時間に正確な先生も珍しいもので、基本的にマイペースで時間にルーズな麻尾宇とは相性が悪いらしい我がクラスの担任ーー。

「席につけ。日直、朝の会を始めろ」

 くいっと眼鏡に手をそえて、指示を飛ばす栗原先生に、大慌てで日直が朝の会を始める。
 栗原先生は、冗談もあまり通じないしこんな感じだから、生徒からの評判はよろしくない。

 日直がつらつらと朝の会を始める中、俺はちらりと隣を見た。珍しいことに俺から麻尾宇を見たのだ。

 それというのも、麻尾宇がさっきからそわそわとしているからで、どうしたのだと聞きたくなったのだ。
 言い忘れたが俺はこれでも保険委員をしている。麻尾宇の具合が悪いのなら保健室に連れていくのは俺の役目だ。

 つまりは一時間目の栗原先生の数学をサボれるかもしれないとあって、積極的だった。

 しかし麻尾宇はふいにそのそわそわをやめた。
 どうしたのかと顔色をうかがってみれば。

「……」

 今にも絶望のあまり地獄におっこちそうな顔をしていた。

 なまじ美形なだけに、周囲の空気が哀愁ただようものになっている。

 朝の会が終わり、俺は数学の準備をしようとする。くい、と袖をひっぱられた。


「数学の宿題が消えたようだ」

 そうか。忘れたんだな。

「これは我の命の危機……未だ勇者にさえ会っていないというのにここで我が消えてはいけない」

 いくら栗原先生でも殺しはしないと思うよ?
 あの先生、よくも悪くも公平だから。

「そこでだウォータードラゴン」

「俺はウォータードラゴンではない」

「そんなことはどうでもいい」

 よくない。全くよくない。

「我は奥の手を持っている。しかし、それにはお主の力が必要不可欠」

 ……えぇー。
 巻き込むなよ。

「その奥の手の名を……『仮病』という」

Re: うちのクラスには魔王がいる ( No.13 )
日時: 2019/06/06 22:20
名前: 塩鮭☆ユーリ (ID: 7/pkw8b6)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

☆麻尾宇くんは友達になりたい 04




 仮病。
 そう言うなり、何の打ち合わせもなしに突如麻尾宇が倒れた。なにせ体格がいいので、すごい音をたてて倒れる。一瞬の静寂のち、教室は騒然となった。

 俺はとりあえず、脈をとることにした。
 別に悠長にしているつもりではないが、あまりのことに頭のなかがぼんやりとしてて、とっさの行動がぼんやりとしたものになったのだ。

「……脈が……ない?」

 息もしていない。心臓も動いていない。俺はどうするべきかためらう。AED……だが、あいつは魔王だし、仮病と言った。頭のなかがぐちゃぐちゃで、次の行動がわからない。どうするのが最善かーー。

「何してるんだっ」

 泡をとばす勢いで先生は騒然とした教室内の生徒に指示を飛ばす。その眼光は鋭く、騒いでいた生徒たちもそれを見て腹が決まったようで、顔つきがはっきりした。先生は飛ぶように麻尾宇のところへ行って心臓を押し始める。

「先生、でも……麻尾宇に、人間への対処が有効でしょうか」

 麻尾宇に、AEDがきくのだろうか。
 俺は無知な中学生で、よくわからないけれど、そういうものは人間用につくられてはいないのか。
 さらに、麻尾宇の心臓が本当にここにあるかもわからなかった。
 ラスボスの臓器の位置がおかしいのはファンタジーあるあるである。

「今俺たちにできることを精一杯やるんだよ。そうするしかない……魔族にこういうのがきくのかわからんがな」

 たぶん、俺よりもずっと混乱してるはずだ。
 もっと取り乱したっておかしくない。

 だって、目の前で生徒が倒れたのだ。
 取り乱さないほうが無理というものだろう。

「先生ッ」

 バタバタとAEDを持ってきた生徒、他の先生を呼びに行って戻ってきた生徒……それぞれ、自分がするべきと判断したことをしている。

 俺は、ふと視線を感じて教室のすみを見る。






 ーー赤い眼光。
 一ノ瀬が、そこに立っていた。まっすぐに俺を睨み付けていた。人間とは思えない、赤い赤い瞳で。

Re: うちのクラスには魔王がいる ( No.14 )
日時: 2019/06/07 14:25
名前: 塩鮭☆ユーリ (ID: 7/pkw8b6)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

☆麻尾宇くんは友達になりたい 05




 結果として、麻尾宇のあれは仮病というか、よくつくりこまれた演技だった。心臓を止めるのも息を止めるのも、魔王にとってはなんでもないことだったらしい。
 AEDを使う直前で目を覚まし、ケロリとした顔で保健室に行きたいなどと言ったのだった。
 加減がわかってないーーというか。全く、規格外なやつである。

 麻尾宇が騒いだおかげで、一時間目の授業の半分が消えた。

 俺はその後、宿題を忘れたのが麻尾宇だけでなかったことを知る。残った半分の何割かも俺への説教へと変わり、滅茶苦茶な一時間目は幕をとじた。その日はそれ以外に変わったこともなく、麻尾宇は保健室から戻ってくることはなかった。

「はー……」

 重い足を引きずって、保健室へと向かう。
 なんで俺が見舞いに行かねばならんのだ。何人もの女子が立候補したが、最終的に「多勢で押し掛けると悪いから、仲のいい水野に行ってもらおう」ということになったのだ。

 仲がいいなんて心外である。

「嫌々でも見舞いに行くとは律儀なことだね」

 ……保健室前の廊下に、整った顔のクラスメイトが立っていた。

「一ノ瀬」

 一ノ瀬仁。
 今はいつもの黒い瞳だが、あの一瞬の赤い光が夢だとは思えない。あれからなんだか恐ろしくてまともに顔をあわせられなかった。

「どうして……ここに」

「決まってるだろ。……龍太。君が魔王様の心臓を止めたんだろ」




 ーーはぁ?

Re: うちのクラスには魔王がいる ( No.15 )
日時: 2019/06/07 21:21
名前: 塩鮭☆ユーリ (ID: 7/pkw8b6)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

☆麻尾宇くんは友達になりたい 06




「そうだろ?そうじゃないと考えられない……」

 いや待って。ストップストップ。

「けしからん……親友にまで上り詰めておいて裏切るなんて……」

 ピクリ。
 親友?
 誰と誰が?

 戸惑う俺を放ったまま、一ノ瀬は形のいい眉を歪めた。

「親友だからって魔王様が油断したすきをつくなんて……見損なったよ……龍太。いいやつだと思ってたのに、実は魔王様の敵だったんだな。勇者の手の者か?それとも勇者本人か?」

「……俺は麻尾宇と親友だった覚えはないし、俺が心臓を止めたわけじゃない」

 俺の否定に、一ノ瀬は目を丸くする。

「そうなのか?」

 いくらなんでも人を信じすぎだと苦笑したくなるが、それが一ノ瀬のいいところでもある。誤解しやすいが、誤解を解きやすく、こじれることがない。

「あぁ。あれは麻尾宇が数学の授業をサボるためにやったことだよ」

 仮病だということを伝えると、一ノ瀬は安堵の表情を浮かべた。

「よかった。魔王様のために何でもするつもりだが、流石にクラスメイトを殺さなければならないとなると胸が痛むからな……」

 ……は?

 殺す?

「というか、さっきから魔王様って……なんで様づけなんだ」

 一ノ瀬は美しい微笑を浮かべる。
 俺が女だったら間違いなく惚れていた微笑だ。

「……そりゃあ、僕は魔王様にお仕えする魔人だからな」

 何の躊躇いもなく、その口で頭のおかしいことを言いやがった。
 ……えっと。

「とりあえず、保健室に入ろうか」

 俺がおそるおそる保健室を指差すと、一ノ瀬はゆるやかに首を振った。

「遠慮しておくよ。僕がここでこうして人間になりすまし、密かに魔王様をお守りしていることは魔王様にバレちゃいけないんだ。……今朝は少し危なかったけど」

 あー。見てたもんな。

「だから、ダメだよ?僕のこと誰かに言っちゃ」

 ドスのきいた声で言い放ち、一ノ瀬は踵を返して去っていた。
 ……嵐のようなやつである。


Page:1 2 3 4 5 6



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。