コメディ・ライト小説(新)
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- 復讐に駆られ、最強になった者
- 日時: 2019/12/26 21:38
- 名前: マンホール (ID: uI2pxZHD)
様々な種族同士が争い続け、今もまた争い続ける世界≪アルティナ≫
そんな物騒な世界の辺境の村で、1人の男の子が生まれた。
だがそこは辺境の地。健康で元気な子に育つ確率は低い。
だが男の子は一度も病気にかからず、すくすくと成長した。
やがてその男の子が10歳になるころ、村が魔物の群れに襲われた。
村の男達が束になって追い払おうとするが、1人、また1人と死んでいった。
魔物の群れは男の子の家に入ってきた。
男の子の家は、両親と7歳の妹がいた。
両親は息子と娘を守ろうと囮になった。
その意思をくみ、泣きながら妹を連れ男の子は山に向けて走った。
数日後に村に戻ると、もう村の姿は無かった。
絶望した男の子と妹は地面に突っ伏そうとしたが、できなかった。
かなりの速度で馬がこちらへ走ってきたからだ。
格好を見れば分かる。人さらいだ。
妹を守るため、また妹の手を掴んで走った。だが相手は馬だ。人間の、それも子供の脚じゃ逃げ切れなかった。
必死に抵抗し、奇跡的にも逃げられたが妹が連れ去られてしまった。
二度の絶望を男の子は味わった。
死のうかと思ったが、妹のことを置いて死ぬなど言語道断。
妹を助け出すために修行をすることにした。
修行する為にはこの地を離れなくてはならない。
山を10ほど越えた。
まずは剣術。対戦相手や師匠などいないため素振りを行った。
1日に素振りが1万こなせるようになると、魔物の狩りもし始めた。
だが相手は魔物。腐っても魔物なのだ。当然強いし、こちらを殺そうと襲いかかってくる。
何度も何度も死にそうになりながら狩りを続けた。
そうして一年が経つ頃には我流の剣技が身に付いた。
魔物の狩りも苦なくこなせるようになった。
剣術が身についたので、次は魔法に手を出した。
だが、剣術と違い魔法は何をすれば良いのか全く分からない。
一つだけ方法があるとすれば、魔物だ。
魔物の中には魔法を使う奴もいる。
そうした奴から学習すれば良いと考えた。
仕組みを理解するまでにはかなり時間がかかったが、それからは幸いなことに、魔法の才能があったようでメキメキと上達した。
剣術と違い、魔法は半年程で極めた。
魔法には属性があるが、全て使いこなせるようにした。
そして、そろそろ妹の救出を考え始めたころ。森に鎧を纏った男達が現れた。初めての事だ。
だが、簡単に魔物にやられて全滅してしまった。何とも弱い奴らだ、と落胆した。
放置は勿体無いので、死体を漁った。
その男達は地図を持っていた。見ると、ここから数百キロ先に大きな街があるそうだ。
男の子はそこに行こうと決め、<転移>で行った。
着くとそこはかなり大きかった。初めて見たのでビックリした。
服を<創造>で作り直し、身体を<洗浄>でキレイにして街に入った。
中も圧巻の一言だった。大勢の人間や亜人がいた。建物も沢山あった。
中央の方にはより一層大きな城があった。
確かに驚き、感動もしたが、心は冷え切っていた。
早く妹を助けなくてはならない。妹が苦しんでいるのに自分だけ楽しんではいけない。
すぐさま捜索をした。聞き込みもした。
妹を街で探し始めてから2週間後。
妹が見つかった。街の郊外の森の一角で死体として。
妹が連れ去られてから1ヶ月後に死んだらしい。連れ去られた後に色々され、力尽きたと言ったところだ。
発狂した、皮膚を掻きむしった、地面を転げ回った、何で、何でと誰にも分からず大声で問いかけた。
一通り泣き叫び、力尽きた後、瞳には復讐の憎悪の炎が浮かんでいた。
それから2年程、その男の子は人さらいや盗賊などを見つけては全員殺し、見つけては全員殺し、を繰り返していた。
皮肉な事に、そうやって殺しを続けているうちにも強くなっていった。
2年も狩り続け、やがて虚無になった。
街へ戻り、死のうとした。だが、そこで呼び止められた。
そこには老いぼれのジジイが立っていた。
そいつが男の子にこう言った。
「お前さん、全てを捨てた目をしとるな。」
余計なお世話だと男の子は言った。
「まあまあ落ち着け。お主、まだ15になっとらんじゃろう?」
だったら何だと男の子は返した。
「15になったらこの街の学園に入学すると良い。これはその推薦状じゃ。」
そんなものいらんと切り捨てた。
「こんなところで死ぬより、少しは世界を見てみたくはないかね?」
そんなもの見たくないと言い、そろそろ面倒臭いと思い始めた。
「じゃがお主が何かに絶望しているのは目に見えておる。そんな子供をむざむざ見殺しにはできぬ。どうせ死ぬのであれば少しは何か体験しておいた方が良いと思うぞ。」
これまで妹のために時間を費やしてきた。それは無駄だったが。村で妹と過ごしてた時、妹と約束事をした。いつか一緒学校に通おうと。
妹は助けられなかった。だが、妹と約束したことくらいはしても良いんじゃないかと思い始める。
考え抜いた末、目の前のジジイの提案を受けることにした。
「うむ、では楽しみにしてるぞ。」
そう言ってジジイは消えた。
学校と言うくらいだからそれなりに勉強はできなくてはならないだろう。
入学までの残り2年間は勉強に費やす事にした。
そうして2年が経った。
そこはこの街、いやここは正確には王国らしい。
この王国で一番大きな学園の門を叩いた。
推薦状があるため、試験は免除らしい。
来週からこの学園での生活が始まる。住居は寮だ。
それなりに期待を持ちながら学園が始まるのを寮で待った。
1週間がたち、いよいよ学園が始まる。
妹と一緒に、と言う約束は無理だが、せめて自分だけでも学校に通う。それが妹にできる唯一の事だった。
- Re: 復讐に駆られ、最強になった者 ( No.2 )
- 日時: 2019/12/26 21:47
- 名前: マンホール (ID: uI2pxZHD)
「よーし、じゃあ今日は早速剣術の訓練をするぞー。」
「………ん?」
「どうかしたの?サド君?」
「いや、この学校は剣術の訓練をするのか?」
「そうだよ?剣術と魔法の訓練は必須科目だよ?」
「魔法までもか!?俺は学校とは勉強する場所だと思っていたのだが…」
「いや、もちろん勉強もするけどさ…もしかしてサド君、知らなかったの?ということは…試験受けてないの?」
「ああ、俺は推薦だな。」
「えぇ!?推薦って凄いんじゃないの!?…でも推薦されるってことはそれなりの実力があると思うんだけど…」
「まあ、それなりにはあると思うが…」
(正直この力は妹を助けるために付けたもの。あまり大っぴらに使いたくは無い………ふっ、これも俺のわがままなのか?)
「サド君…何一人でニヤニヤしてるの…?」
「いや、何でもない。」
「おーい、そこで話してる二人!授業に集中しろー!」
「は、はい!………サド君のせいで怒られたじゃん…」
「む?俺のせいなのか…」
「もうっ!」
アレドナ先生に怒られたので授業に集中する。
どうやら今から軽く剣術のみの模擬戦をやるようだ。
「じゃあ適当にペアを作って始めてくれ。」
(ふむ、ペアか…)
周りを見る限り、男は男と、女は女でやっている。
(するとシンシアとは組めないか…)
そうやって悩んでいると、
「ねえ君。サド…って言ったっけ?」
何やら金髪の男子が声をかけてきた。
「ああ、何の用だ?」
「いや、ペアいなさそうだったからさ。」
「なるほどな。確かにいないな。」
「そっか、それは良かった。僕の名前はトーマス・クリタワ、自己紹介で一回言ったけどたぶん覚えてなさそうだからね。」
「じゃあトーマスは俺とペアを組むって事で良いのか?」
「うん、よろしく頼むよ。」
そう言って手を差し出してきたので、握り返す。
周りを見ると、チラホラと始めているペアがいる。
「じゃあ僕達も始めようか。」
「ああ、分かった。」
ちなみに使うのは訓練用の木剣だ。
(さて、我流の剣術は使いたく無い。周りの奴らを見る感じ、かなりレベルが低い。)
そう、レベルが低い。1年もの間魔物を狩り、2年間人を殺し続け、我流の剣術を鍛えてきたサドには足下にも及ばないだろう。
(まあレベルが低いなら大丈夫だろう。)
そう思い構える。が、
「サド…構え方変じゃないかい?」
そう指摘された。周りの奴らの構え方を見よう見真似でやってみたのだが、どうやら若干違ったようだ。
「剣が構えられないって…」
「すまんな、正しい剣術はやったことがなくてな。」
そうなのだ、正しい剣術はやったことがないのだ。
「剣術をやったことがない?それって…戦えないってことかい?」
「うーむ…そう言われたら、そうなるんだろうか?」
「そうなるんだろうかって…」
何やらこっちを冷たい目で見ている。
「これじゃあ練習にならないじゃないか…」
なにやらブツブツ言っている。
何かと気になっていると、
「ごめん、君とは出来そうに無い…」
そう言って大きな声でアレドナ先生にこう言った。
「先生すいません!サドは剣術ができないそうなのでペアを変えたいです!」
周りの手がぴたっと止まる。
「剣術ができない…?」
「それってどうなんだ?」
「少なくとも試験にはある程度の剣術の腕前は必要の筈だろ?」
「じゃあ試験無しで入学したってことか?」
「コネ入学とかだろ…」
「というか今時剣術の一つもできないって…」
「あいつもしかして…雑魚?」
周りはザワザワしている。
アレドナ先生もビックリしている。
「え、えぇーっと、じゃあサドは休んでてくれ。」
「…分かりました。」
どうやら俺は雑魚認定をされたらしい。
ーーー
授業が終わった。とは言っても俺は隅で休んでいただけだが。
何やらクラスの数名がこちらを見てコソコソ喋っている。
気になったのでそちらの方を向くと、バッ、と目をそらされる。
(…面倒臭いことになりそうだ)
あそこは嘘でも剣術をやった事があると言うべきだったかと後悔していると、
「おいサド、ちょっと来てくれ。」
と、アレドナ先生に呼び出された。
取り敢えず呼ばれたのでいく。
「少し確認をしたんだが、サドはどうやら推薦入学らしいじゃないか。」
「ええ、まあそうですね。」
「推薦入学なら普通は剣術が使える腕前の筈だ。…なあ、正直に言ってくれ。コネか?」
どうやら先生は俺のコネ入学を疑っているらしい。
「いえ、コネではないですね。」
「そうか…別にコネだからって即退学とかにするつもりはない。まあ、今後剣術が使えるよう頑張ってくれ…」
そう言って去っていった。
(なるほど、推薦だと正しい剣術が使えないと駄目なのか。)
どうやら今から正しい剣術を学ばなくてはならないらしい。だが、あまり興味がないので適度にやる事にする。
と、後ろから声を掛けられた。
「ねえねえサド君、剣術が使えないって本当なの?」
シンシアにそう聞かれた。
「まあ本当だな。」
「うそ、サド君って推薦じゃなかったっけ?」
「ああ、そうだな。ちなみにコネじゃないぞ。」
「そう…サド君がそう言うなら信じるけど…周りは皆コネって言ってて、サド君ちょっとした悪者みたいになってるよ?」
「悪者?」
「うん。だって皆は試験に合格してこの学校に通っていて、もちろん落ちた人もいるのに、コネで試験なしで入学したなんて人がいたら嫌でしょ?」
「なるほどな。」
「だから、サド君後ろから刺されないように気をつけてね?」
「ああ、忠告ありがとう。」
シンシアは良い奴だ。
「ねえ、ちょっと良いかしら。」
…次はアスカに話し掛けられた。
「何だアスカ?」
「…いつ誰が私を呼び捨てにして良いって言ったのよ。」
「じゃあ何と呼べば良いんだ?」
「あなた、推薦入学らしいけど、はっきり言ってコネよね?」
「聞けよ…」
「ここにいる皆は試験をして、それに合格してここに通っているの。」
「だから何だ、俺はコネで入った訳じゃない。」
「嘘ね、コネじゃないんだったら剣術が使えるはずだもの。」
「確かに俺は正しい剣術が使えないが、でもコネではない。」
「はっきり言うわよ、クラスメイトにそんな奴がいて欲しく無いの。」
「コネじゃないって言っているんだが…じゃあどうしろって言うんだ?」
「自主退学をしてちょうだい。」
俺とアスカのやりとりをクラス全員が聞いている。
「嫌だな。」
「金に物を言わせてこの学校に入って、何か楽しいのかしら?」
「だからさっきから俺はコネじゃないと言っているだろう?」
随分としつこい奴だと思った。
「そこまでしてこの学校に入りたかったの?」
「はあ…」
いい加減面倒臭くなったので無視をする。
「ちょっと聞いてるの?」
アスカがイライラしている。
「ねぇ!」
それでも無視をする。
ワナワナとアスカが震えている。
ガーン!
遂にアスカが俺の机を叩いた。
「コネ入学した奴は人の話も聞けないのね!」
とそこでアスカの友人らしき人たちが止めに入る。
「あんな奴、このクラスにいらないわ。」
ようやく去っていった。
「何とも面倒臭い奴だな。」
クラスの奴らから睨まれた。どうやら悪者は俺のようだ。
ーーー
「えー、じゃあ次は魔法の訓練をするぞー。試験でもやったが、的当てだ。徐々にレベルアップしていくから、高いレベルが出来るよう頑張ってくれ。」
(次は魔法か…いつになったら勉強をするのやら…)
そして魔法の授業が始まる。
(さて、さっきは剣術でいざこざがあったからな。魔法もできなかったら流石に殺されそうだ。)
しょうがないので魔法を使うことにする。
皆自分が使える中の一番威力が低いものを使うらしい。
(だが何故皆<火球>や<水球>などを使っているんだ?一番弱いのは<火>とかじゃないのか?………そうか、皆使えないのか、レベルが低すぎて。)
この考えはあっているが、実際<火>などの最下級魔法を使えるのは魔法を最大まで極めたサドのみだった。
という間に番が回ってきた。
(さて、じゃあ<火>を使うかな)
そうしてロウソクの炎並みの火を出し的に当てる。
(お前らが使えない魔法を使った。これで俺は魔法はできると思われただろう。)
周りは皆ポカーンとしている。
そして誰かがこう呟いた。
「…ちっちゃ…」
この日から俺は剣術も魔法もできないコネ入学したクズ野郎のレッテルが貼られた。
- Re: 復讐に駆られ、最強になった者 ( No.3 )
- 日時: 2019/12/27 00:41
- 名前: マンホール (ID: uI2pxZHD)
学校に入ってから初めての休日が訪れた。
1日目の授業が終わってからのここ一週間は、酷いの一言だった。剣術も魔法も出来ない奴だと思われ、イジメというイジメは無かったが、陰で悪口を言われたり、わざと肩をぶつけてきたり、アスカに至っては俺を親の仇を見るみたいに睨んでくる。
唯一救いなのがシンシアだ。シンシアは何と言われようと俺を庇ってくれた。本当にシンシアは良い奴だ。
さて、話は戻るが、学校に入ってからの初めての休日だ。特にすることが無い。
「休日…休日なぁ…」
既に学校に行くのが億劫になっているので、休日は有り難いのだが…
なにぶんする事がない。
「仕方がない、少し魔物でも狩りに行くか。」
本当にすることがないので魔物狩りをすることにした。
ーーー
サドは王国のはずれにある木漏れ日の森と呼ばれている場所に訪れていた。
「王国に一番近い魔物が出るスポットはここだと言われた来たが…」
取り敢えず<探知>を使い半径5キロを調べてみる。<探知>を使うとマップが表示され、その上に魔物は赤い点で示される。
「見た感じだと結構いるな。」
少なくともサドが修行した場所の5倍はいる。
「こんだけ多いのか…」
何故かワクワクしてきた。初めて来る場所で、無意識にどんな魔物が出るのか気になっているんだろう。
「さて、取り敢えず一番近い魔物の場所へ行…「だ、誰か!!助けて!!」
………どうやらテンプレらしい。
「助けに…行くか。」
助けを呼ぶ声は女性のものだったし、こういうのは大体貴族様と相場が決まっている。助けて感謝されたら万々歳という薄汚い魂胆で助けに行く。
ーーー
叫び声が聞こえたところへ着くと、シンシアと同じくらいの背丈のドレスらしきものを着た女の子が今肉食植物を巨大化させた様な魔物に触手でキレイに絡め取られ、食べられようとしていた。
(見つけて早々だが、早速助かるか。)
そして腰の剣を取り出そうとして、ピタッと止まる。
(あ、やべぇ、剣忘れた。)
大問題だ。魔物を狩りに来たというのに肝心の剣を忘れた。だがもう助けに飛び出しているのでどうしようもない。
(ちっ、仕方ない。手が汚れるからやりたくなかったが、手刀でやるか…)
女の子を捕まえている触手目掛けて手刀を振り下ろす。ここでふと思う。サドが修行した場所の魔物は手刀でも余裕で行けるようになるまで修行したが、この森の魔物は分からない。もしかしたらサドが修行した場所の魔物が極端に弱かっただけなのかもしれない。
だが、その懸念は杞憂に終わった。サドが修行した場所の魔物よりも一回りもふた回りもすんなり切れた。
(何だ、案外簡単に切れるじゃないか。)
内心そんな事を思っている。
「ふぇっ?」
女の子がそんな声を出した。
(おっとヤバイヤバイ。)
女の子を捕まえている触手を切ったので、女の子は重力に逆らうことなく落ちていく。
そのまま落ちてもらっちゃ困るので“空気”を蹴って方向転換し、女の子を横抱きにする。すれ違い様に魔物が攻撃してきたが、あまりにも遅かったので逆に相手を手刀で細切れにする。
「何だ、随分簡単にやられるんだな。」
今まで狩ってきた魔物よりも物凄く弱いので呆気なく思った。
と、腕の中から「えっ…?」と言う声がした。
「ん?ああ、そう言えば降ろしてなかったな。」
腕で横抱きにしたままだった助けた女の子を降ろす。
「見た感じ怪我は無さそうだが、どうだ?痛むところとかは無いか?」
「……ぇ…っあ!は、はい!大丈夫です。助けて頂きありがとうございます。」
言葉遣いや礼儀もしっかりしていた。やはり位の高い家系なのだろうか。
「そうか、無事で良かったよ。」
「はい。……あ、あの。」
「ん?何だ?」
「助けて貰ったばかりで大変恐縮なのですが、少し質問しても良いですか?」
まあ質問ぐらいはあるよな。
「ん、大丈夫だ。」
「あ、ありがとうございます。で、ではお名前を伺っても?」
「サド・ハインケルだ。そちらさんの名前は?」
「あっ、すいません…私の名前はティアラ・ラストリアと言います。お気軽にティアラとお呼びください。」
「了解したティアラ、俺の事もサドと呼んでくれ。」
「分かりましたサド……さん…」
何故か俺の名前を呼びづらそうにしている。二文字だから呼びづらいとかは無いと思うのだが…
「えっと、サ、サドさんは何故この森に来たんですか?あっ!違いますよ!?別に何か疑ってる訳じゃないですからね!?」
「そんなに焦らなくても…俺はこの森に暇つぶしに来たんだが、そこでティアラの声が聞こえたから助けに来たんだよ。」
「そうでしたか…本当に助けて頂きありがとございます。あそこで助けて貰っていなかったら今頃どうなっていたか…」
「まあ無事で良かったさ。」
「あと、もう一つ良いですか?」
「ん、何だ?」
「私が捕まってたあの魔物を細切れにしていましたが、あの魔物の事をどう思いましたか?」
「ん?初めて戦ったが雑魚だったな。あと、今の発言でティアラが傷ついたのならば謝る。」
あの魔物を雑魚呼ばわりしてしまうと、それに捕まっていたティアラはもっと雑魚になる。
「い、いえ、お気になさらず…」
そうは言ったが、案外気にしてそうだ。
サドはティアラが雑魚呼ばわりされた事を気にしていると思ったが、ティアラは全く気にしてなかった。むしろ話を聞いてすら無かった。“途中”から。
(あの魔物が雑魚?あの魔物は個体名付で最低でもAランクの冒険者5人とBランクの冒険者10人は必要な筈…)
ーーーここで一つ、この世界の冒険者について説明するーーー
この世界の冒険者は、基本冒険者ギルドに所属している。
各都市にある冒険者ギルド支部から依頼を受け取り、依頼を達成したら冒険者ギルドに報告する。報告の際は、魔物の場合は指定された討伐部位を、採取系の場合は採取してきたものを、お手伝い系はお手伝い先の責任者のハンコを貰い、それぞれ依頼書と一緒に冒険者ギルドの窓口に提出する。依頼達成が認められたら、晴れて報酬が貰える。(因みに、冒険者ギルド本部は国からの依頼と各支部の統計を纏まる役割なので、基本的に冒険者は入れない。)
そして、冒険者にはランクというものが存在する。
ランクは一定の依頼達成で上がる。
ランクが上がる毎にランクを上げるのは難しくなってくる。無論依頼の難易度が高い方が上がりやすく、ランクが上がれば上がるほど難易度が高い依頼を受けれるという風にはなっている。
冒険者のランク、いわば格付けとなる冒険者ランクはF〜Sまである。Fが初心者。Eに上がると初心者脱出。Dになると中級者。Cから上は上級者とされる。冒険者ランクAともなれば皆に羨望の眼差しで見られ、讃えられ、優遇される。(因みに一番高いランクのSだが、この世界には“今は”2人しか居ない。)
ーーー以上がざっくりとした冒険者についての説明だーーー
ティアラが捕まった魔物は確かに個体名付だった。個体名付とは、稀に生まれる大変食欲の強い魔物が、食欲に耐えられずに同族となる魔物を食いまくった結果生まれる通常の魔物とは比べ物にならない程強くなった魔物を冒険者ギルドが特別指定危険魔物として名前を付けた魔物である。個体名付は厄災として考えられる。
ティアラは最低でもAランクの冒険者5人とBランクの冒険者10人は必要と言ったが、あくまでそれは“最低”である。死者を出さないで安全に倒すにはAランク冒険者10人とBランク冒険者15人はいる。それでも負傷者、最悪死者も出るだろう。それ程迄に危険なのが個体名付だ。実際ティアラも抵抗も何もできずに捕まったのだから。もしあのとき個体名付が腹を空かせてなく、その状態でティアラを見つけた場合…考えたくもない…
そんな、非常に危険な個体名付を知らず知らずのうちにサドは一瞬で細切れにし、終いには雑魚と言う。ティアラが混乱するのも無理はない。
(ちょ、ちょっと待ってよ。そしたら私を助けてくれたこのサドって人は個体名付に手も足も出させず、一人で細切れにできる程の力の持ち主ってこと!?)
そんな人材をティアラは見たことが無かった。最早伝説とも言えるSランク冒険者でさえも一人では不意打ちで倒すのが精一杯だと言うのに。(それでも凄いって言うのがこの世界の常識だ。)
(こ、この人は…)
よくよく見るとティアラと同い年くらいだろう。
「なんだ?人の顔をジロジロ見て。何か付いているのか?」
ついジーッと見過ぎてしまったらしい。
「い、いえ!何でもありません!」
「そうか。じゃあ俺は行くから、気をつけてな。」
そう言ってサドは去ろうとする。
(あ、ああっ!)
ティアラは慌てた。当然だろう。Sランク冒険者よりも遥かに強い人が目の前にいるのだ。そんな人と関わりが持てるかもしれない幸運をはいサヨナラと手放したりはできない。
(ど、ど、ど、どうしましょう!?と、取り敢えず引き止めなくては!)
「あ、あの、サドさん。」
「ん?どうかしたか?」
「こ、怖いので、送って頂けませんか?」
まあ引き止めるとしたら妥当なところだろう。
(ふむ、どうしよっかねぇ…)
せっかく森まで来たのだから探索したいという思いがあったが、結局は只の暇つぶしだ。それならまたこの森に来れば良い。
「そうか、分かった。護衛を引き受けるよ。」
そう言ったらティアラの顔がパァーッと輝いた。
(そんなに嬉しかったのか?)
護衛を引き受けただけなのだが、と思っていると、目の前にいるティアラがへなへなっと座り込んでしまった。
「す、すいません…急に足から力が抜けちゃって…」
本当に怖くなってしまったらしい。まあ当然だろう。今まではサドの圧倒的な力にビックリしていたが、一通り会話が終わって緊張が解けたところ、さっきの出来事を思い出したのだ。座り込むのも無理はない。魔物に食われそうになったのだから。
よく見ると身体全体が小刻みに震えている。目尻に涙も浮かんでいる。
(まあ、死にかけたんだ。当然の反応か。)
「大丈夫か?」
と、声を掛ける。
「あ、足に力が入んないんです…」
そうか、と声を掛け、ティアラに近づき背を向け腰を下ろす。
「え、えっと?」
ティアラが困惑している。
「ほら、おんぶ。動けないんだろ?」
意味が理解できないのか、固まっている。しばらくして、ティアラの顔がボンッと赤くなった。
「えぇぁ…いゃ…はぇ…?………そ、それじゃ…お、おねがいします…」
少し動揺した後、俺の肩に手を掛け、照れながらそう言ってきた。
「ああ、じゃあ立つぞ。」
ティアラをおんぶする事ができた。
「そ、想像以上に恥ずかしいですね…これ…」
余程恥ずかしいのか、周りに誰もいないのに顔を隠すように俺の肩に押しつける。
「じゃあ、行くぞ?」
そう声を掛け、来た道を歩いて引き返して行く。
ティアラは見た目以上に軽かった。
- Re: 復讐に駆られ、最強になった者 ( No.4 )
- 日時: 2019/12/27 18:41
- 名前: マンホール (ID: uI2pxZHD)
「おい、ティアラ。そろそろ着くから起きろ。」
足が動かないと言うからおんぶしたのだが、何故か途中でティアラは眠ってしまった。
「ぅ…ぅん…」
少しティアラをおんぶしながら揺すっていると、そんな声を出して目を開けた。
「……おはよー……ございますぅ……」
どうやらティアラは寝起きが弱いらしい。
「そろそろ着くから起きてくれ。」
流石におぶったまま検問所に行くのは良くないと思ったのでしっかり起こす。
「…ぅぅ………ぅん?……ぁっ……す、すいません!」
どうやらしっかり目が覚めたらしい。俺の背から焦りながら降りた。
「す、すいません…寝てしまって……」
「気にしなくていい、精神的に疲れたんだろう。」
「あ、ありがとうございます…」
恥ずかしかったのだろう、少し顔が赤い。まあそろそろ検問所だ、さっさと行くとしよう。
ーーー
「じゃあ俺はここで失礼する。」
検問所で検問を受けた後、王国内に入ってから俺はティアラにそう言った。
「ぇ…ぇえあ!いや!ちょっ、ちょっと待ってください!」
立ち去ろうとティアラに背を向けたのだが呼び止められてしまった。
「ん?どうかしたのか?」
「え、えっと、サドさんは私の命の恩人です!なのでお礼をさせて下さい。」
どうやらお礼がしたいらしい。
(まあこの後特に用事がある訳でもないからな…)
「そんなに気にしなくて良いんだが…まあありがたく受け取ろう。」
そう言ったらティアラの顔が輝く。
「ありがとございます!!では付いてきてください。」
そう言って俺の手を取る。何故手を取るのかは知らんが。
「あっ……す、すいません。」
そう言ってパッと手を離す。
心が鉄のハートで出来ているやつとかはここで手を握り返すのだろうが、俺はそんな事はしない。
「はぁ、早く行こう。何処にいくか知らないがな。」
赤くなって俯いてしまったティアラにそう声を掛ける。
「は、はい…」
ーーー
俺は今、前方にあるでっかい屋敷を見ている。
「なあティアラ、お礼をするのはここでか?」
俺がティアラに連れてこられたのがこのバカみたいにでかい屋敷の前だった。
「はい!ここが私の家です!」
やはり俺の予想通りティアラは貴族だったようだ。
「何故お礼をするのにティアラの実家に行くんだ?」
「命の恩人ですので…家でおもてなしをしようかと思いまして…」
今日は週末なので家にはティアラの両親がいるだろう。どうやら俺はティアラの親に挨拶をしなければならないようだ。
ーーー
「ど、どうぞ…」
ティアラが一度家に入り、親に許可を取ったらしく、改めて家に招かれる。
「じゃあ、お邪魔する。」
やはりこの屋敷は玄関一つとってもでかい。貴族っていうものは皆こんな感じなのだろうか?
「それで、お礼って言うのは何をするんだ?」
ただ家に招いただけじゃないだろう。
「え、えっと、まず私の両親と会っていただけませんか?両親もお礼が言いたいそうなので。」
やはり親に挨拶をしなくてはならないらしい。
「はぁ…まあ良いだろう。」
「あ、ありがとうございます!では、リビングに両親がおりますので。」
そう言ってこのバカでかい屋敷の廊下を歩く。
一つの扉の前でティアラが止まった。
「ここがリビングです。……ど、どうぞ。」
人の親、それも女の子の親だ。普通は緊張するのだろうが、俺は特に緊張することなくリビングに入った。
やはりリビングもでかかった。リビングの中心らへんにある大きな机に一人の男性と一人の女性が座っていた。多分あれがティアラの両親だろう。
「ああ、良く来てくれた。サド君……と言ったかな?」
リビングに入ると男性の方に、そう声を掛けられた。
「どうも、そうだな俺はサドだ。」
貴族相手に使う言葉遣いじゃないが、そんなことを俺は気にしない。
「こんにちは、サド君。うちの娘を救ってくれてありがとうね。」
今度は女性が席を立ち、俺にそう言ってきた。
「取り敢えず座ってくれ。」
そう言われたので、素直に席に着く。隣にティアラが着いた。
「では改めて。この度は娘を救って頂き、本当にありがとう。お礼と言っては何だが、何か欲しいものがあれば言ってくれ。できる限り用意する。」
そうティアラの両親に頭を下げられた。
「まあ偶然助けただけだ。気にしなくていい。」
ティアラの両親が頭を上げる。
「偶々でも、助けてくれたのには変わりない。是非お礼をさせてくれ。」
(うーむ、特に欲しいものなど無いのだがな…)
欲しいものは特に無い。だからお礼に何かあげると言われてもどうしようもない。
そう悩んでいると、
「まあ直ぐにとは言わない、思い浮かんだら言ってくれ。」
それは有難い。
「おっと、まだ自己紹介をしていなかったね。私の名前はヘンディー・ラストリアだ。君が助けてくれたティアラの父親だ。」
仕事ができる叔父様という感じで、優しい顔をしている男性だ。
「私の名前はセシル・ラストリア、ティアラの母です。」
ティアラがこの年齢なのでそれなりに歳はとっている筈なのだが、それを感じさせないとても綺麗でスタイルが良い女性だ。
よろしくと言って、2人と握手をする。
因みに、隣に座っているティアラは微動だにしなかった。何故か顔を赤くしながら。
「そうそう、それでだサド君。話は変わるんだが。」
ヘンディーが急に真剣な顔つきで話をし始めた。
「君が私の娘、ティアラを助け出した時に倒した魔物。娘の話を聞く限り個体名付だそうじゃないか。」
(ネームド?)
サドは初めて聞く単語だった。
「すまんがネームドと言うものが分からないのだが。」
そう言ったらティアラの両親は目を丸く見開いてビックリしていた。
「個体名付と知らないで倒したって言うのか?」
何を驚いてるかは知らないが俺は雑魚を倒しただけだ。
「まあそうだが。それで、ネームドとやらがどうかしたのか?」
「い、いや…そうか…知らないのか……」
ヘンディーが何やらブツブツ言いながら俯いてしまった。
(何だこいつは。頭がおかしいのか?)
そんな失礼な事を思っていると、急にヘンディーがバッと顔を上げた。
「なあサド君!私に雇われてくれないか!?報酬なら沢山出す!」
そんな事を言われた。
「いや、急に雇われてくれないかと言われても無理だ。まず俺は学生だ。」
何やら学生という事にも驚いているらしい。
と、ここで少し黙っていたセシルが、
「どうしてもダメかしら?今ならティアラとくっつくのを許してあげるわよ?」
何を言っているのかがサッパリ分からん。
「ちょ、ちょっと待ってくださいお母様!!」
ティアラが真っ赤な顔でセシルに抗議をしている。対するセシルはウフフ、とティアラの抗議をあまり聞いていなさそうだった。
「どうだサド君、ダメか?」
ヘンディーがまだ言ってくる。
「さっきも言ったが俺は学生だ。雇われる事は出来ない。」
さっきから少ししつこいので、きっぱりと断る。
「そ、そうか……それならば仕方ない……今後雇われる気になったらいつでも来てくれ、一家総出でお出迎えをするさ。」
(それは少し大げさな気がするんだが…)
そこまでして俺を雇いたいのだろうか?
「お礼の件は考えておいてくれ。ティアラはバルトス学園に通っている。お礼の件の考えがまとまったらティアラを訪ねてくれ。」
「ああ、了解し……ん?」
「どうかしたのか、サド君?」
「いや、今何処に通っていると言った?」
「ん?ティアラがかい?バルドス学園だが、どうかし……そう言えばサド君さっき学校に通っている言ったね。」
隣に座っているティアラがまさかっ!という目でこっちを見てくる。
「ああ、俺もバルトス学園に通っている。今年入学したばかりだがな。」
「そうか!!それは良かった!ティアラは今年2年生だが仲良くしてくれ。」
(まさかの先輩だと……!?)
それには驚きだった。てっきり同年代だと思っていたのだが…
「そうか、まあ学園ではよろしくな、ティアラ。」
「よ、よろしく、お願いします……」
ティアラが顔を赤くしながらそう言ってくる。
「じゃあ一通り話は終わったようだから、俺は失礼する。」
そう言い席を立ち上がる。
「ああ、付き合わせて悪かったね。もう一度言うが、本当にティアラを助けてくれてありがとう。」
そして俺はこの屋敷を出たのだが、後ろで俺が見えなくなるまでずっとラストリア一家が見送りをしていた。
(明日からの学校は少しはマシになるかな。)
そう思って寮に戻った。
- Re: 復讐に駆られ、最強になった者 ( No.5 )
- 日時: 2019/12/29 23:14
- 名前: マンホール (ID: uI2pxZHD)
朝の教室はかなりうるさい。
一昨日ティアラを助け、ティアラの家族と会い、別れた後、俺は寮に戻った。お礼の件を考えるためだ。
だが、答えは浮かばなかった。正直欲しいものなんて無いしな。
同じように昨日も一日そうやって考えていた。
そして今日。憂鬱な気分になりながら教室へ行く。扉をガラッと開くと、うるさかった教室が静かになる。
「えぇー、あいつ来たぞ…」
「マジで…?教室の雰囲気悪くなるから来ないでくんないかな…」
「ちょっと…超白けたんだけど…」
まあボロクソに言われる。一応小声で言ってはいるんだが、俺には丸聞こえだ。
初日突っかかって来たアスカの反応が少し気になったので、チラッと見る。
どうやらこちらに興味は無いようで、友達と変わらずお喋りをしていた。
(はぁー…嫌になってくるな…)
どうやら休み明けでも俺の評価は変わらないらしい。いや、まあそりゃそうなんだけどな?
「ん?どうしたお前ら?何か辛気臭いぞ?」
そう言いながら担任のアレドナ先生が入ってくる。
まあ先生も心当たりがあるのか、俺をチラッと見て溜息をつく。
「はぁー………まあいい、出席取るぞー…」
周りは朝からこんな雰囲気でイライラしている。
因みにシンシアはいつも通り話しかけてくれた。マジで良い奴。
ーーー
1限目と2限目は座学だった。もちろん座学もアレドナ先生が教えてくれるわけじゃない。他の座学担当の先生が教えてくれる。
まあ座学なのでどちらも特に何も無く終わったのだが、3限目が実技だった。
「よーし、今日は基礎体力向上訓練だぞ!グラウンド10周頑張れよ!」
アレドナ先生は元気いっぱいだが、クラスメイトはそうでもない。これは俺のせいではなく、ただ単純に走るのが嫌なだけだ。
(基礎体力はとても大事だと思うのだが、こいつらはそうでもないのか?)
魔法や剣術、武術に関して、基礎体力というものは非常に大事だ。魔法を使う際には魔力の他に精神をすり減らす。じゃあ体力要らないじゃないかと言うとそうじゃない。確かに魔法を撃つのには魔力と精神を使う、だが実際に訓練じゃなくて実戦で使うことを考えた場合、実戦で動かない魔術師などただの的だ。魔法とは常時動きながら撃つものである。(そう思っているのはサドだけです。)
剣術、武術に関しては言うまでも無い。
とまあこのように、基礎体力というものは非常に大事なのである。
さあ現実に戻ろう。今クラスメイト達と一緒にグラウンドを走っている。アレドナ先生の指示により皆で固まってだ。当然ペースはゆっくりになる。だが周りを見ていると皆呼吸が荒い、アスカは少し息が乱れるくらいだが、それでも乱れている。俺は何故こんなお遊戯みたいなペースで走っているのに皆そんな辛そうなのか、訓練をしっかりしていない証拠だ。
「ね…ねぇ…サド君…はぁ…はぁ…な…何で…そんな…余裕…そう…なの…?」
隣で走っていたシンシアが息絶え絶えに聞いてくる。
「いや、何でと言われてもこっちが聞きたい。何でお前らはそんなに辛そうなんだってな。こんなスピードで走ってたら欠伸が出るわ。」
そう答えたが、隣からの反応がなかった。
気になって隣を見ると、シンシアが絶句しながらこっちを見て………そして膝から崩れ落ちた。
「は?……っておい!大丈夫か!」
慌てて先生が走ってくる。周りのクラスメイトも止まっている。
だが、気を失った訳ではなく、どうやら過呼吸になったらしい。
「ぜぇ…ぜぇ…す…すいません…少し…休ませて下さい…」
シンシアはあまり体力がないようだ。
ーーー
シンシア過呼吸事件があったので実技はその時点で終了になった。シンシアには体力の件で少し聞かれたが訓練をしていると言っておいた。
その後、教室に戻り4時限目の座学を終え、昼休みを迎えた。基本昼休みは購買に行き、何か買って屋上で食べるというのが俺の入学からの昼食なのだが…
「す、すいません、サドさんいます?」
俺の教室にティアラが来た。
突然アスカが立ち上がり、ティアラのところへ行く。
「ご機嫌ようティアラ様、本日はどの様なご用件でこの教室に?」
アスカはティアラを知っているらしい。
「あ、えっと、アスカさん…でしたよね?」
「覚えててくださり感激です。」
話し方的にアスカも貴族なのだろうか?ティアラの方が上っぽいが。
「あ、はい。それで、サドさんいませんか?」
アスカが固まった。
「え、いや、ティアラ様?今何と仰いました?」
「え?いやサドさんはいますか?って…」
「え?えっと、あのサド・ハインケルの事ですか?」
そう言ってアスカがこっちを指差す。
「あ、はい!そうです、こんにちはサドさん。」
そう言ってティアラがこっちに頭を下げる。
「え、えぇ!ちょっとティアラ様何してるんですか!?」
アスカがティアラが頭を下げた事に対してとても驚いている。クラスメイトも驚いている。
どうしてだ?と思い聞き耳を立てると、
「えっ、あれってティアラ様だよな?」
「そうだよな?あの三大貴族の。」
「何でサドなんかに頭下げてるんだ?」
どうやらティアラは結構偉いらしい。
「サドさん…呼んでるんですから来てくださいよ…」
ティアラに呼ばれてるので行く。
と、小声でシンシアが、
「えっ?サド君?ティアラ様とどういう関係?」
シンシアも気になるらしい。
「あー、何て言うんだろうな…まあ一言で言うなら命の恩人?」
いや、悩む必要なく命の恩人だったわ。まあいいや。
「へぇー、命の恩人ねぇ……えっ!?」
「まあティアラに呼ばれてるから行くわ、じゃあな。」
シンシアが驚いているが、呼ばれているので行くしかない。
「ようティアラ、どうした?」
俺がティアラにそう挨拶したんだが、教室はシーンとなった。
「すいませんサドさん、教室に押しかけちゃって。」
ティアラだけが動いている、そう言う状況。
一拍おいて、
「ちょっと!あんたティアラ様に向かってなんて態度とってんのよ!才能どころか礼儀すらも無い訳!?」
と、アスカに捲し立てられる。
俺が少し困ると、ティアラが助け舟を出してくれた。
「えーっと、アスカさん?私が呼んだんですし、それに呼び捨ての件も私が頼んだんです。」
アスカはしばらく絶句した後、
「な、何でこんな奴に!?こいつはこの学園に剣術も魔法も何もできないくせに、何かのコネで入ったクズ野郎ですよ!?」
とアスカが言った。アスカは本当に俺のことが嫌いらしい。
とここでティアラが動いた。見た感じ、少し怒ってるか?
「あの、アスカさん。サドさんがこのクラスでどういう扱いを受けているのかは知りません。ですが、私の命の恩人を馬鹿にしないでください。」
そう言って俺の手を取り、歩きだす。
チラッとアスカの方を見ると、また絶句して固まっている。
ーーー
「ティアラ?何処まで行くんだよ?」
あまりに無頓着に突き進むため、俺は少し気になった。
ピタッとティアラが止まる。
「サドさん…」
「どうした?」
「私、嫌でした。」
「何が?」
「サドさんが、私の命の恩人が馬鹿にされるのは…」
どうやら俺のことらしい。
「いや、嫌って言われても…なぁ?」
「……どうしてサドさん何もできないクズって思われてるんですか?」
「初日に剣術が出来ないって言ったらそうなった。」
「剣術が出来ないって…?で、でも!私を助けてくれた時は…?」
「ああいや、剣術が出来ないってのは、正しい剣術が出来ないって事なんだよ。」
「正しい剣術?……どう言う事ですか?」
「俺が使える剣術は完全な我流。俺しか使えない剣術って事だ。」
俺の剣術に名前は無い、と言うか決めてない。剣の技には名前があるが…
「えっ……それって結構凄いんじゃないですか?」
まあそりゃそうだろうな。この世界に剣術つったら一つしかないしな。
「剣術……少し見せてもらえませんか?」
そんな事を言ってきた。
いや、見たいのは分かるんだが……さっきティアラに手を掴まれ連れてこられたこの場所はこの学園の屋上。俺が昼食を食おうとしていた場所だ。
本来昼休みなんだからチラホラ人が居るはずなんだが、ティアラと俺が来たことにより誰も居なくなった。やっぱティアラって偉いのな。
という訳で確かに人は居ないんだが。
「いや、ここでか?というかそもそも剣も無いしな…」
実際には空間収納の魔法で剣は持っているのだが、それを出すのは面倒臭くなりそうだから却下。
ここで俺の剣術について説明しておこう。俺の我流の剣術には剣は要らない。(じゃあなんで剣を持っているんだって言う話だが、持っといた方が良いと考えたからだ。)剣は寧ろストッパーだ。俺の剣術に名前を付けるとしたら……“無刀流”だろう。(因みに無刀って言うのは、手刀とは違います。)
「いえ、ここに剣を持ってきています。」
(こいつ……ちゃっかりしてんのな……)
最初から俺の剣術を見るつもりだったと言う事だ。
「いや、そんな自信満々に渡されてもな…」
「一度で良いので…お願いします…」
頭を下げられてしまった。
「………まあ少しくらいなら良いか。」
「本当ですか!!」
ティアラが嬉々として詰め寄ってくる。
「……少しだけだぞ?」
「はい!!では、こちらをどうぞ。」
剣を渡される。俺が持っている剣より数段ショボい。言っちゃ悪いが…(因みにサドが持っている剣というのは、以前森で修行してる際に来た集団が持っていた剣である。)
「この剣は?」
一応気になったので聞いておく。
「はい!この剣は今この王国にいる鍛冶神と呼ばれる方が打った剣です。」
「はぁ、鍛治神ねぇー……」
(……いや、ちょっと待て。鍛治神が打ったこの剣より俺が持ってる剣の方が数段強いぞ?……じゃあ俺が持ってる剣って何だ?)
気になったが、それを言うと話がややこしくなりそうなので黙っておくことにする。
「この剣を手に入れるのに相当苦労したと父が言っていました。」
どうしよう、そんなに苦労して得た剣より俺が持ってる剣の方が強いんだが…
「まあともかく、サドさん。お願いします。」
まあ受けてしまった以上はしょうがない。
「じゃあ、危ないから少し離れてろ。」
そう言ったら素直にティアラは離れた。
(さて、剣を持ってる状態だし…20%くらいで良いかな。ああ、俺の剣術の名前決まったんだっけ。)
「………やるぞ。」
「………はい。」
期待した目でこっちを見てくる。
(さて、じゃあ一の型でもやるかな…)
ふぅ、と息を吐き、
「無刀流 一の型 一閃」
一閃とは、只々剣を横に振るだけ。字体で見ると大した事ないが、実際には剣圧と言うものが飛び、離れたものが切れる。そう、切れるのだ。例えば屋上にある“フェンス”とかが。
ガシャーン
フェンスが倒れた。
「………」
「………」
「あー、えっと……」
「……す、凄い……」
俺がどうしようかと困っていると、ティアラが呆けた目で切れたフェンスを見ていた。
「サドさん……どうして遠くにあるフェンスが切れるんですか?」
いや、どうしてと言われても…
「そうだな…剣には剣圧と言うものがあるだろ?」
「……はい。」
「まあそれを剣を速く振る事で飛ばすって訳だ。」
「……はい。」
うん、分かってなさそうだ。
「まあともかく、このフェンス、どうしよっかな…」
「ああ、それについては校長に私から言っておきます、剣術を披露してくれたお礼という事で。」
そもそも剣術を披露しろと言ったのはティアラなんだが、まあそれはありがたい。
「じゃ、ほら、剣返すぞ。」
ティアラに剣を返す。
「あっ、ありがとうございます。」
「用事は終わったな、じゃあ俺は教室帰るから。」
正直帰りたく無いが、しょうがない。
「待ってください!」
………帰ろうとしたんだが…
「まだ用事が終わってないです、一つ報告があります。」
何と、剣術を見ることが用事じゃ無かったっぽい。………いや、まあそれも用事の一つなんだろうけど。
「サドさん、ううん、サド君。」
「いや、ちょっと待て、何でサド君?」
サドさんからサド君に俺はジョブチェンジした。
「えっ……えっと…サド君の方が親しみやすいかなって……ダメ…ですか?」
うるうる瞳で上目遣い。正直かなり可愛かった。だが俺はそんな事で動じたりはしない。
「まあティアラが呼びたいように呼んでくれ。」
「本当ですか!」
まあ喜んでくれるなら良かった。
「ごほん。」
わざとらしく咳払いをしたティアラ。
「では、サド君は個体名付、通称ネームドと呼ばれる魔物を討伐しました。」
「はあ、ネームドって言うのが何かは知らんがな。」
「その個体名付は冒険者ギルドの特別指定危険魔物ですが、同時に国からの討伐推奨魔物でまあります。」
「それで?」
「その魔物を倒したので、国に報告が入ります。」
………これまた面倒臭そうだ。
「もしかしたらサド君に国からの使者が来るかもしれません。その報告です。」
「まあ分かった。その件については後々考える。それで?用事はこれで終わりか?」
「あっ、少し、良いですか?」
「ん?まだあるのか?」
「いや、まだあるっていうか……」
何か含みのある言い方だな。
「えっと、これなんですけど…」
そう言って俺に差し出してきたのは……弁当箱だった。
「………えっと、これは?」
「お、お弁当……作ってきたので、食べてください…」
「もう少しで昼休みが終わると思うんだが?」
「が、頑張って!」
どうやら俺にどうしても食べさせたいらしい。………毒とか入ってねぇだろうな?
「そうか、作ってきてくれたならありがたくいただくさ。」
そう言って弁当箱を受け取った。
フタを開けると圧巻の一言だった。
「ど、どうですか?い、一応手作りしてきたんですけど……」
「いや、めっちゃ美味そうだ。いただきます。」
卵焼きを摘み、口に入れる。
「お、お味の方は…?」
「美味い。」
本当に美味いの一言だった。少し甘い味付けの卵焼きで、出汁が良く効いている。
「そ、そうですか!!やった!!」
ティアラが結構喜んでいる。やはり作った料理を褒められるのは嬉しいのだろう。
その調子でどんどん食べ進めていき、昼休みが終わる頃には食べ終わった。
「本当に美味かった。また作ってくれ。」
「は、はい!頑張ります!」
快く了承してくれた。このクオリティの弁当がまた食えるのなら嬉しい。
「じゃあ、そろそろ昼休みも終わるし戻るか。」
「はい!」
フェンスの件が少し心配だが、それ以外は概ね楽しかった。特に弁当。
ーーー
「……何よ…あれ……」
そう言って俺が「一閃」を放ったあと屋上の扉の内側から離れる人影がいた。
それにサドが気づいているかは後々。
- Re: 復讐に駆られ、最強になった者 ( No.6 )
- 日時: 2020/01/11 21:54
- 名前: マンホール (ID: uI2pxZHD)
あれから教室に戻り、5時限目が始まった。
「ねぇ、サド君。昼休みのってどういうこと?」
隣にいるシンシアが小声で話しかけてきた。
「ん?だから言ったじゃないか、命の恩人だって。」
「いや、サド君が助けられたのは分かったんだけど、何でそれでサド君を訪ねてくるの?」
「いや、助けたのは俺だ。」
シンシアは勘違いをしていたらしい。
「ええっ!?嘘付くのは良くないよ!」
「声がでかい!別に信じなくても良いさ。」
俺がそう言うと、何故かシンシアがブスーッとする。
「別にさ、信じないとかそう言うんじゃなくてさ……」
シンシアがブツブツ言い出した。
(おっと、シンシアとの会話ばかりじゃなくてしっかり授業を聞くべきか。)
今は歴史について勉強している。
「……と、いうことだ。」
先生の話が一区切りついたらしい。
とここで、
「先生!最近の話って何かないんですか?」
クラスメイトからそんな声が上がる。
「うーむ、そうだなー……じゃあ「悪者狩人」の話でもするか。」
(誰だそれ……)
(俺も2年程人攫いなどを殺していたから、そう言う関係の奴は大体知っている筈なんだが……)
「こいつはな、2年程前から色々な悪者を倒してきた奴でな。」
どうやらそいつも2年程前からやっているらしい。
「そいつは悪者ばかりを見つけては殺し、見つけては殺しの繰り返しだったんだ。もちろん悪いことをしていない奴には一切手を出さずにな。」
(そうだな、俺も悪いやつ以外には手を出してなかったな。)
もしかしたら同志となり得る存在がいたのかも知れないと少し興味が湧いた。
「だが、そいつを見たことがあるやつは一人もいない。」
(へー、俺と似たような事をしてる奴なんだな。)
俺も常に人に見られないように行動していた。何かのトラブルに巻き込まれないためだ。
「先生、見た事ある人が一人もいないのに何で「悪者狩人」なんて人がいるって分かったんですか?」
確かに、最もな意見だ。
「そこにはちゃんと理由があってな。その「悪者狩人」って奴は全世界を色々と周ったらしいんだが、その道中に殺した悪者がしっかり道筋になってるんだよ。」
「どう言う事ですか?」
「だから、そいつが殺した悪者達がそいつが通ったと思われる一本の道筋として表してるってことだ。」
「へー、そんな凄い人が居たんですね。」
周りのクラスメイトも「凄いな。」やら「かっこいいね。」やら言っている。
「だがな、この「悪者狩人」はつい最近その活動を辞めたらしい。」
クラスメイトが「えぇー…」と落胆の声を出す。
「いや、別に死んだ訳じゃ無い。そいつは今学校に入ったらしい。」
(ん?いやそんな奴が学校に入れるのか?)
ただ単に疑問が浮かんだ。クラスメイトもそうだったようで、頭の上に?を浮かべている。
「実はその「悪者狩人」って奴は今高校1年生だと言うんだ!」
クラスメイトから驚愕の声が上がる。
「えっ、じゃあその「悪者狩人」って奴は今俺らと同じ年代の奴って事ですか!?」
「まあそうなるな。」
流石にそろそろ気付く。
(いや、ちょっと待て。それってもしかして………いや、これ以上はいいや………)
「先生、その俺らと同じ年代だっていう「悪者狩人」って強いんですか?」
クラスメイトからそんな声が上がる。
「まあな、どんなに大人数のグループでも1人で殲滅するくらいだからな。めちゃくちゃ強いんだろうな。」
またもクラスメイトが騒ぐ。
「っとまあ今日はここまでだ。課題やるの忘れるなよ。」
先生がそう言って授業は終わった。
ーーー
HR後
まだ5時限目の「悪者狩人」の話題でクラスメイトは盛り上がっている。
その話に興味は無い………というか聞く意味がないので帰ろうとすると「ねぇ。」と声がかかる。前をみるとびっくり、あのアスカだった。
「………何か用か?」
「あんたこの後用事ある?」
急にそんな事を聞いてくる。
「いや、特に用事は無いが。」
言ってから後悔した。「用事ある?」って聞くっていうことはこの後アスカは俺に何かをさせる気だ。
だが、時すでに遅し。
「そっ、じゃあこの後校舎裏に来て。」
それだけ言ってアスカは去っていった。
しばし呆然した。アスカが俺を校舎裏に呼び出したのだ。校舎裏って言うと有名な告白スポットだ。………まあアスカに限ってそんな事は無いだろうが………
少し経ってから周りを見ると、同じようにクラスメイト達も呆然としていた。
(はぁ、何か面倒事の予感がする。)
ーーー
律儀に校舎裏に行くと、既にアスカの姿があった。
「で、結局呼び出して何のようだ?」
さっさと終わらせたかったのでさっさと要件を確認することにした。
「…………」
だが喋らない。
「おい、用が無いなら帰るぞ。」
「………最低。」
何故か最低と言われた。
「何だ?」
「だから最低って言っているのよ!」
主語が無いから何が最低なのか分からん。
「………昼休み、私は屋上へ行ったわ。」
どうやら屋上での一件を見てたらしい。………まあ知ってはいたが。
「お前が屋上へ行ったとして、どうして俺が最低になるんだ?」
そもそもそれが謎だった。
「ティアラ様に取り付こうとしてズルをして………貴方は恥ずかしくない訳!?」
何がなんだか分からん。俺は特にズルはしていないし、ティアラに取り付こうともしていない。
「何よ、あのデタラメな剣は………あんなので騙されるのはティアラ様くらいよ!」
アスカが俺に対して最低って言った理由は分かった。
それにしても随分と酷いことを言っている、主にティアラに対して。
「要するに、お前は俺の剣を見てデタラメだと、そんな事出来るわけがないのと思ったから俺を呼び出した訳だ。」
「ええ、そうよ。」
「じゃあ仮にそうだとして、お前は俺を呼び出して何がしたいんだ?」
まさか俺をまた退学にさせようとしてるんじゃないだろうな。
「まさか要件が俺に文句を言うだけじゃないだろう。」
「ええ、もちろんよ………私、アスカ・ザストレーはサド・ハインケルに決闘を申し込むわ!」
「いや、は?」
謎だった。
「私が勝ったら貴方はこの学校を出て行って。」
なるほど、理由は分かった。
またもアスカは俺に出て行って欲しいようだ。
「だがな、俺に受けるメリットが無い。」
「ビビっているのかしら?」
「そんな安っぽい挑発に俺は乗らん。」
「そう、じゃあ貴方が私に勝てば貴方の言うことを何でも1つ聞いてあげるってのはどう?」
何でも1つってのは相当でかい筈なんだが、俺に勝つ自信しか無いってことか?
「まあそれなら受けてやる。」
「そう、それじゃ決闘は明日の放課後。演習場でやるわ。」
そう言うと直ぐにアスカは去っていった。
「…………はぁー、やっぱり面倒臭くなった…………」
明日は怠い1日になりそうだ。
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