コメディ・ライト小説(新)

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君を想い出すその時には君の事を――。
日時: 2020/09/24 17:41
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: w1UoqX1L)

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Re: 君を想い出すその時には君の事を――。 ( No.8 )
日時: 2020/01/08 16:30
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: FCVTIPcN)

第2章 第1話;「自分の運命を決める闘い。」 【お父様。】

「藤~花ちゃんっ!あたしが準備していい?」
部屋を訪ねられて追い返すのも性に合わないので北小路さんを部屋に入れた。
準備というのは私の家――つまり、マンションを造った管理者。
お父様の誕生日パーティが行われるからそのドレスなどの準備という事だ。
「藤花ちゃん、元気ないわね。」
……!!私は北小路さんのことを見ようとしたら、
「動かないで、今髪を結ってるからね。……図星かしら?チビ……じゃなくて九条の事?」
私は昨日、九条君に酷いことを言った。
やっぱり、人と一緒には生きていけないと考えたのに今、こうして人と話している。
 私は、矛盾している。
「どんなことが原因なの?」
――私は心のモヤモヤを取る為に素直に話した。
「誰かに裏切られても気にしなかったのに、九条が誰かにキスされているところを見て動揺し酷いことを言った……。」
それは――と言い私の髪を丁寧に結う。
「嫉妬ね。」
 嫉妬……?
「藤花ちゃんが九条の事を簡単に言えば大切に思っているてこと、難しく言えば説明出来ない感情を九条に抱いてるという事よ。」
 大切?説明出来ない感情?
「出来た!説明出来ない感情の答えを自分で見つけるしかその感情の事は解らないわ。」
次、ドレスいくわねと言い部屋に有るドレスを持って来る。
「これは悩むことじゃないわ、悪い事でもない。良い事よ。」
 良い事……。

 「はい、出来た!!」
鏡に映し出された私は私じゃないみたいだった。
髪は綺麗に梳かされていてトップの髪は上げられていて可愛い髪飾りで結わかれていた。
ドレスは淡いピンク色でビーズや小さなお花がちりばめられていて、
腕の方には薄い半透明のきめの細かい布があって純清楚なドレスなっていた。
 私じゃないみたい……。
「そんなに九条の事気にしてるんだったら、さっさと仲直りしなさいな。」
 仲直り……。
「――アドバイス、ありがとう。北小路さん。」
えぇ、と北小路さんと私は微笑み合う。


 会場に行くと多くの関係者が居た。
「おっ、藤花。すげえ似合ってるな。」
と藤谷が笑う。
「流石に藤谷もジャージじゃないな。」
「あぁ、今朝さー。ヒノのさ。お付きの人たちが部屋に来て、なんかやってくれたんだよねー。」
「ハッロ~ン☆猫さんの登場だよ~。あ、うかたんはそういうドレスなんだね~。」
「君はパーティ会場でもそんな感じなんだね。」
というと、猫月さんはこちらに近づいてきて言う。
「君が探しているのはどちらかな?冷静で君の事を大切に思っている月?それともいつでも明るく照らしてづける太陽かな?」
どちら?と楽しそうに笑いかける。
 月?太陽、探す?
疑問が頭にでき始める中、私は頭をフル回転させて考える。
――!!
……多分、猫月さんの言う月と太陽はあの二人のたとえだ。
 私は――。
「いっぱい食べる……!!」
「る、瑠璃一緒に食べよ。」
「うん、水無瀬頑張ろう……!!」
「本当に初々しいわね~。」
真っ赤に染まっている水無瀬君、料理を次々と食べている小倉さん、ニマニマして二人を見つめている北小路さん……。
「……。」
辺りを見回しても九条君はいない。
 ――パーティに来ていないの?でも、マンションに住むものは全員参加だ。
来てる、来てるはず――。じゃあ、なんで彼はいないんだ。

私が探そうと走り出したその時――。
 
 グイっ!!

「――!!」

誰かに腕を掴まれた。
「――やっぱり藤花か。普段と違うから呼び止めようか迷っちゃったよ。」
太陽――穂高……!!
戸惑って穂高を見てから周りを見渡すと、九条君が見えた。
 九条君――!!
行こうとしても、腕を掴まれているから行けない。
いつもは手の届くところに居るのに――今は届かない。
 あれ、痛い。胸が締め付けられるように――。
悲しい、君の声が聞きたい。君の様々な顔が見たい、君の事をもっと知りたい。
「ごめん、穂高。用事があるの!!」
「お、おいっ!藤花!!」
 伝えなきゃいけない、君にこの言葉を届けなきゃいけない――。
『そんなに九条の事気にしてるんだったら、さっさと仲直りしなさいな。』
『気持ちを込めてごめんって言うだけよ。』

「九条君っ!!」

九条君は止まってびっくりした顔で私を見る。
「九条君、私――。君に酷いこと言った。」
そういうと九条君は泣きそうな顔になってだけれど私の話を黙って聞いていた。
「ごめん――。私には、君が必要なんだ。」
九条君は涙を流して言う。
「――僕は、日高さんを不快にさせた。それでも、いいのか?また同じことになるぞ。」
「いいよ。言ったでしょう、私は律儀で正義感が強いんだ。そんなことぐらいで君との契約は一生取り消さない。」
思い出したかのようにクスッと笑って言う。
「そうだったな、忘れてた。」
小指を出し私は言う。
「こんな私でもいいですか?」
「勿論、むしろ君に何と言われようがこれからは一生離れない。」

 私達は契約を結びなおした――。
二人で微笑み合っていたその時、歓声が沸いた――。

「ボスっ!!お誕生日おめでとうございます!!!」
「長生きを願います!!」
――ボス?
繊細な色素の薄い髪をオールバックにして紫水晶色の瞳――。
 あれは!!お、お父様とお母様――。
お父様はパーティ会場のセンターに着くと笑顔で言う。
「今日は俺の為に来てくれてありがとう!!俺の誕生日を祝う場でもあるが俺の娘・藤花が組織に入ったこと、今年で16だという事を機に!!」
……私?え、どうして?
みんな、私を見る。は、恥ずかしい……。
そう思い、思わず顔を隠す。
「セグレートデュエロを行うことにした!!」
セグレートデュエロ……?何、それ?
「娘の婚約者がいるが本当にふさわしいか調べる為。尚、デュエロに勝った者は娘と婚約をし願いを叶えたあげよう。」
それって、私には参加権がないってこと?
 私は商品の一部でただ誰かの婚約者にまたなってじっと見ているだけって……!あんまりよ!!
気づいたら、私は、お父様の前に立っていた。
「あんまりよ!商品の一部にされて私の望みは叶える可能性もないなんて!!取り消してよっ!」
そういうとお父様は何ともないような顔をする。
「藤花、拳で戦うか?俺に勝ったら受け入れてもいいぞ。」
 私が負けるって思ってるからこんなこと言うんだ。
私の何かがキレる音がした――。
周りの人はどうしたらいいか集まって戸惑っている。
「はあっ!!」
私、渾身の蹴りを入れてもお父様はビクともしない。
それよりかはまだまだだなと言わんばかりにニヤッと笑う。
「あ、甘く見ないでよ……!」
何度も蹴りを入れたり拳で殴り掛かったりしてもお父様は笑う。
まるで娘の練習を見ているかのようにアドバイスを入れてくる。
「突き出すようにやるんだ、目的のところを見て!!」
「くっ……。」
ためらうとお父様は言う。
「どうしたんだ。もう終わりか、藤花。」
お父様は強い。だから組織のトップに君臨している。
みんなはざわざわする。
「藤花(ちゃん)……。」
「日高さん――。」
負けたくない、ここで負けたら意見を通してくれない――。
なのに、どうして?
足が動かないんだろう、私はこんなに弱いんだろう。
私がお父様をキッとにらみつけた。
 その時――。

「貴方、もうやめたあげて……。」

凛としたそれでも控えめな声が響いた。
 お母様……。
「藤花ちゃん、貴方への参加を私は認めます。不公平すぎるわ、でも。」
扱い方は女、ボスの大事な一人娘だとしてもみんなと同じ分かったわね?と言いお父様の方を優しく見つめる。
「いいでしょう?ねぇ、今回は見逃してやってくださいな。」
そういうと、渋々目を閉じて言う――。
「日高 藤花の参加を認める!尚、扱いは同じ。」
 認められた……?
良かった……。これで、未来が自分で開ける可能性が広がった――。
「藤花ちゃん、お疲れ様、怪我してない?やったわね!これで意見、通ったわね。」
「まさか、ボスに闘いを挑むなんてビックリしたよな。」
「このデュエロ、負けられねぇな。」
「……勿論。5年分のズワイガニ、お肉勝って食べる!!」
みんなが笑いあって、でも真剣な表情で言う。
私も、絶対に負けられない――!!
勝って、自分で未来を切り開くんだ――。
 ……そういえば、九条君はどうしたんだろう。
さっきまでは居たのにトイレかな?

 この時――。
私は知らなかった――。
九条君が今、何をしているかを――。


Re: 君を想い出すその時には君の事を――。 ( No.9 )
日時: 2020/01/31 16:44
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: FCVTIPcN)

第2章 第2話;「自分の運命を決める闘い。」 【九条 総司。】

 薄暗い、小さなパーティ会場の一室――。
僕――九条 総司は黙って跪く。

「――総司、大きくなったわね。何年振りかしら?」
凛とした、それでも控えめな声が響いた。
僕の恩人――日高 藤花の母親。
日高 菖蒲だ――。
「12年振りですね。」
「12年かぁ……。あの出来事から12年も経ったなんて、まさか貴方がうちの娘に自ら近づくなんてびっくりしたわ。」
――あの時から会おうともしなかったからと呟く。
彼女に近づいたのは自分からじゃない、初めて会ったあの日――いや、再会の日。
僕は彼女がこんなにも大きくなって可愛くなったことにもびっくりしていた。
どこかに彼女と一緒にまた、居たい。今度こそ護り切る。
 その気持ちがあったのだろう。
だから、あんなの事言えた、そう思う。だってあの12年前のあの日は僕は彼女の事を護れなかった、逆に護られた。
――能力を使ったあの時、彼女の大切な両親との思い出も何もかも代償としてすべて失った。
僕は両親との絆を壊し距離を取るようになったのも人見知りを重ね、捻くれてしまい無口になったのも
 全て僕のせいだ。
こんな僕が彼女の傍に居られるはずないのに居ることがおかしい、分不相応だ。
彼女が知ってたら、騙してたの?嘘つき!そんなことを言われるに違いない。
なのに、傍に居たいと思ってしまう、新しい婚約者とも上手くいってほしくないと思った。現に日野西との事を邪魔した。
 僕は矛盾している、こんな自分は嫌なはずなのに彼女の傍を離れられない。
唇を噛み締めて下を見て考えていると、
 温かい腕が僕を包んだ――その時___。

  「!」

柔らかい匂いが香ってきた。

___この匂い、この花の匂い。___

「……こんな風に総司や藤花ちゃんの事を抱きしめていたわね。」
 みんなで一緒にお茶を飲んだり遊んだりとしたわねと優しく目を伏せて僕の頭を撫でる。
「総司……。もう悩まなくていいの、今度こそあの娘の事護ってあげて。」
 いいのか?僕なんかが傍に居ても……。
僕の気持ちを察したようにフッと微笑む。
「いいのよ。今回の機会で貴方があの娘の事を護れるって貴和に証明しなさい。」
この機会は貴方の為でもあるのよ?と優しく微笑む。
 ボスに……?
「応援してるわ。貴方が他の誰よりも藤花ちゃんの事を思ってるって知ってるから。」
とウィンクして部屋を出ていく。
 また、彼女は僕の婚約者になってくれるときは来るのか。護らせてくれるようになるのか。
そんなことを考えながら部屋を出た。

Re: 君を想い出すその時には君の事を――。 ( No.10 )
日時: 2020/01/11 20:25
名前: ミコト (ID: D.48ZWS.)

こんにちは雪林檎さん!
雪林檎さんの小説3つ、読ませていただきました。
どれも力作で続きが気になっちゃいますね!特にお気に入りは『花と太陽』ですね(実際全部好きです!)

まだ始まったばかりですが、期待してます!
それではまたの機会に〜。

Re: 君を想い出すその時には君の事を――。 ( No.11 )
日時: 2020/01/14 17:23
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: FCVTIPcN)

ミコトさん、読んで頂きありがとうございます!!
今は『花と太陽。』を中心に書いていて投稿が不定期になってしまいますが、これからも飽きずに読んで頂けると嬉しいでーす!!(^^)/
それでは、またよろしくお願いします!!

Re: 君を想い出すその時には君の事を――。 ( No.12 )
日時: 2020/01/21 16:26
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: FCVTIPcN)

第2章 第3話;「自分の運命を決める闘い。」 【白い子猫。】


「藤花、居るか?」
朝早くから元気な声がドアの外から聞こえた。
――穂高?
「居るけど何か用?」
「ちょっといいか。」
うんと返事をして穂高を部屋に入れる。
そのまま、部屋に入ると穂高は恥ずかしそうに目線を逸らしている。

―――――――何を緊張しているんだろう?

「あの…さ…えっとこれ渡すな。」
右手を差し出して言う。
 これは――花のペンダント?
「何これ。」
そう質問しても答えてはくれない。
――もしかして。
「私の事、心配してくれているの、昨日の事。」
「え、な。……そうだけど。」
そういうと恥ずかしそうに首の後ろを触る。
「貴方はいつも心配していると首の後ろを触るから、解ったの。心配してくれてありがとう。」
「あぁ……。」
何だか、久しぶりだなぁ。ゆっくりこうやって穂高と話すの。
「ダリア、あの時と同じね。」
図星をつかれたようにビクッと肩を揺らす。
私は幼かった自分達を思い出して笑う。

――9年前。
私がお母様とお父様や同年代の人に上手く接する事が出来なくて寂しくて泣いていた時に出会ったあの日。
「――お嬢。お嬢の婚約者様が来られましたよ。」
「行かないわ、今は居ないと日野西様に言って下さい。」
誰とも会いたくなくてけど隣に受け止めてくれる人が欲しかったあまのじゃくな私に貴方は会ってくれた。
「藤花ちゃん!いるんでしょう?」
包み込むように明るく、元気な声。
「いませんよ、すみませんが……。あっ!!駄目です、日野西様!!?お戻りくださいませ!!」
騒がしい、一人にさせてよ。

「――藤花ちゃん見っけ。はい、これあげる。」

スッと小麦色に焼けた手が伸びてきてニコッと笑ってくれた穂高。
「なんで、日野西様が……。」
手渡されたものを見て思わず声を上げる。
――ダリアだった。
綺麗で明るくてまるで穂高みたいな、太陽みたいな花。
「綺麗……。」
良かったと笑い私を寂しさから挽き出してくれた。
思い出の日――。


「懐かしいな、覚えててくれたんだ。」
「勿論。」
2人で笑い合っていると忙しそうな足音が聞こえた。
 タッタッタタタ……。
ドアを開けるとサラサラの青っぽい黒髪が目の前を通った。
「あれって……。」
「おこちゃまだよな?」
2人で確認しあって九条君の後を追いかける。
九条君はしゃがみ込んで何かを探している様子だった。
「九条君。」
私が九条君を呼ぶとビクッと肩を揺らして振り向く。
「日高さん!なんで、まだ起きる時間じゃ……。」
そう言うと九条君は焦ったように腕時計を見る。
「どうしたの。何かを探しているようだけど?」

「――関係ない。」

冷たく距離を取られた、突き放す言い方に私はズキズキと痛む胸を抑える。
「関係ないってなんだよ!!おこちゃまっ!」
穂高が怒りを露わにして声を荒げる。
「関係がないから関係ないと言っただけだ。……おこちゃまと呼ぶな。」
「こんな奴はほっとこうぜっ!!」
結構だと言い残し静かに立ち去ろうとする九条君に私は慌てて呼び止める。
「――待って九条君!力になりたいの、何を探しているの?」
「それは、“お願い”か“命令”か?お願いだったら拒否権があるから断るけど。」
命令だなんてしたこともない――でもしなかったら断られて教えてもらえない。
 ごくっ……。
私は冷や汗を流しながら、九条君の様子をうかがう。
「……め、命令よ。」
そう答えると九条君はため息をついてから言う。
「……本当に君には敵わないな。仕方がないから、教える。」
九条君は話し始める。
「3日前に屋上庭園に住み着いた白猫が居るんだ。その猫は親が居なくていつの間にか僕に自然と懐くようになった。」
へぇ、白猫。そんな猫、見たことがないなぁ。
「今日も一緒にご飯と食べようと部屋に招いていたところをどこかに行ってしまって……。」
気難しそうに鼻を触りながら言う。
「手伝うよ。」
「じゃあ、俺はこっち捜すから。」
「私はあっちを捜すね。」
私が捜そうとすると、九条君は呼び止める。
「――その、、、日高さん。ありがとう。」
お礼を言われたらふわっと心が温かくなって表情が自然に緩んだ。
「こちらこそ、九条君に無理言ってごめんね。」
ニコッと微笑むと「あぁ……。」と短く返事して行ってしまう。

――――しかし猫かぁ。どこにいるかな。
声を出してみたら飛び出してくるかなぁ。
「お~いっ!!出てこいよ、猫や~い!!」
居ねぇなぁ、、、、白猫。

 『ミャア。ミー!』

「……あ!!!居たっ。」
『ニャッ?!』
白猫が驚いて走り出す。
 クソ速い……!!
「待てよっ!!」
追いかけると真っ直ぐ走り出す。
『にゃあ。』
猫は一度、止まり俺の方に向く。
 イライラ。
バカにしているような顔をしやがって……。
俺が走ると壺が落ちそうになる。
「よ……っ。――――――危ねぇ!!」
ふうっと息をつくと白い物体が視界に入る。
『ミャア!!』
俺はバランスを崩して直後、割れる音が響く。
 バリンッ!!
「あぁ、、、、ヤバい!!!」
そう叫んだ瞬間――――――寒気が立つ。
「ほ~だ~かぁあああ!!!!」
鬼のような顔のメイド達が俺の事を囲んで俺の事を睨み付けていた。
「ゲッ!!」

***

白猫―――――……居た。
しかもあんな高いところ、、届かないだろう。
もっと、、、、背が高ければ。
 
 『チービ。』

「僕はチビじゃないっ!!!」
本棚に思い切って拳を当ててみたところ、本が直後、落ちてきた。
 ドンっ!!!
『ミャアァアア?!!』
猫の悲鳴が聞こえ、僕は振り向くと本と一緒にバランスを崩し倒れてしまっていた。
「あれ―――――猫。」
助けたはずの白猫が居なくなっていた。
どこに行ったんだ、、、潰れてしまっているとか??
しかし、探してみても呻き声も何も聞こえなく居なくなっていた。
『ミャ!!』
得意げそうに喉を鳴らしフッと僕の方を見てから外の方に逃げだしていくのが判った。
僕の事を馬鹿にしているのか??いつも一緒に居たこの僕を……?
 イラッ。
あの、、、猫。

***
「猫―――――……猫ちゃ~ん?」
『ミャアァアアア!!!』
突如、猫の可愛らしい泣き声が響いた。
振り向くと白猫で瞳が青緑色の子猫……に物凄い形相の穂高に、、何故か九条君。
「「逃がすかぁあああ!!!」」
「二人とも、、どうしたの?」
小さく言った声は怒り狂った二人には届かなかった。
薔薇の庭園の小さな休憩所に逃げ込んだ子猫をみて穂高と九条君は悪い笑みを浮かべ言う。
「そこに逃げ込んだならこっちに行く!!」
「僕は回り込んであっちに行く!!」
囲まれて怯えた子猫はキョロキョロしている。
 可哀想、逃げてっ!!
二人が飛び込んで捕まえようとしたその時―――――……猫の小さな悲鳴と共に低い低温の呻き声が聞こえた。
  ゴチンッ!
何かがぶつかったような音がした。
「「痛っ!!!」」
二人は休憩所の枠に額を抑えながら子猫を探す。
『ミャア♪』
機嫌の良い声が近くで聞こえ、やけに温もりを感じた。
ま・さ・か……子猫が??
「―――猫ちゃん。大丈夫だった?」
『ミャア♪』
嬉しそうに喉を鳴らしながら鳴く子猫はとても可愛かった。
二人は恨めしそうに子猫を見つめる。
「―――……くそ、猫って女の方が好きだって言うよな。」
「あぁ、露骨な猫だ。」
二人が珍しく意見が合ってる。
面白い―――クス。
「何を笑っているんだ。」
「藤花、答えろ!!」
いや、別に。と返すと心底不思議そうな顔でお互いを見つめあう。
 あらら、気づいていないんだ。
「……というか藤花の胸から離れろよっ!!」
「しがみつくな。このマセ猫が!!」
ちょっと、、酷い。子猫に向かって―――さっきの追い詰めることも可哀想だった。
 イライラ。
一発、やってもいいよね。
「はぁ!!!」
生々しい音が聞こえ、続いて低音の悲鳴が響き渡った。
 バシンっドス!!!
「……なんで?」
「顔、体中が痛い……。」
青白くなってゲッソリとした顔が二つ。
「あのねぇ!!まだ、解らないの?!」
拳を構えるとビクッと肩を揺らす。
「「十分、理解しています!!」」
こういう時は揃いも揃って同じこと言うんだから、案外仲良しなのかもね。
まぁ、これくらいにしとこう。
可哀想だしね。
「ご飯、食べよっか。」
私が微笑むと二人はドキマギする。
「―――……用意は僕がする、僕の業務だぞ。」
そういうとフッと笑って穂高が宣言する。
「俺、藤花の隣で食べる!!」
「おいっ!隣は僕だっ。」
「速いもん勝ちだぜ!!」
「くそっ。どいつもこいつも僕の事を馬鹿にしやがって……!!」
二人が無我夢中でラウンジに向かって走り出す。
「あ、待ってよ!!」

―――……小さな子猫を通して、二人の素顔と案外仲が良いって言う事が判った一日だった。


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