コメディ・ライト小説(新)
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- 君に染まってしまえば―――伝えてしまえ。やっと完結!!
- 日時: 2020/02/25 16:05
- 名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: FCVTIPcN)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12710
始めましての人は初めまして、雪林檎と申します(´▽`*)
えーとバレンタインデーが過ぎた今日ですが、
“短編”のバレンタインストーリーを書きます。
いや、遅くね!?
と思ったそこの貴方……つっこまないでくださいませ。
それでは、どうぞ!
≪prologue≫
君に染まってしまえば 伝えてしまえば……。
冷静沈着とか言われてるけど君には、きっと私だって迷子だよ。
バレンタイン、縁のなかった日。
≪Character≫>>1
≪continuity≫
〈 みわside 〉
Valentine1 「白色の心模様。」 >>2
Valentine2 「白黒はっきり。」>>3
Valentine3 「スキ。」>>4
〈 充希side 〉
Valentine4 「チョコレート計画。」>>5
Valentine5 「失敗。」>>6
Valentine6 「覚悟。」>>7
〈 寧々side 〉
Valentine7 「悩み。」>>8
Valentine8 「不安。」>>9
Valentine9 「好き。」>>10
******
Valentine10 「ハッピーバレンタイン!」>>11 ←完結!!
えー、やっと完結しました。
見てくれていた方々、ありがとうございました!!
- Re: 君に染まってしまえば―――伝えてしまえ。 ( No.7 )
- 日時: 2020/02/20 16:53
- 名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: FCVTIPcN)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
Valentine6 「覚悟。」
バレンタイン、前日の夜。
私はキッチンに一人、立つ。
「よしッ!!」
エプロンを羽織り、袖を捲くり上げて手を洗う。
綺麗にまとめたノートを開き、冷蔵庫に閉まっておいたミルクチョコレートを手に取った。
「まずは……チョコレートを細かく刻む。」
トントントン、、、とチョコが割れる音が響く。
その間、私はニヤニヤしながら作っていた。
今日、返事を聞き忘れたけど許してくれそうな雰囲気はあった。
だから。
明日、渡せば解ってくれると思う。
仲直りが出来て、告白も出来るという事だ。
効率が良すぎる。まさに一石二鳥という言葉が似合う事だ。
それに渡して返事はYESだったら付き合えるし、もしNOだったとしても友達のままだ。
だってNOでもきっと千耀はありがとうって言ってくれるから。
千耀に今まで渡した子も仲良さげに喋ってるしフラれる、付き合うどっちでも私にとっては、どーんと来いって感じなのだ。
「次に……ホイップとチョコをフライパンで混ぜたら冷やす、ね。」
パタンと冷蔵庫を閉めて私はホッと安堵する。
「寧々とみわ大丈夫かな……。」
そう呟いた瞬間、ピロンッとスマホが鳴る。
それは二人からのラインだった。
グループラインを開いて見てみると、
みわからは、
照れくさそうに笑いながらバレンタインチョコを手に持っている写真が。
寧々からは、
短く『買えた。』というメッセージが。
「二人とも頑張ったんだ……。よしっ、作り終えて早く送ろう!!」
私は冷蔵庫を開けて、チョコを立方体に切り分けて言って、ココアパウダーやカラースプレーなどをふりかけていった。
「出来たッ!!」
袋にチョコブラウニーを包み、可愛いリボンとバレンタインカードを挟んだバレンタインチョコが目の前に在った。
「喜んでくれるよね……!」
リボンは千耀をイメージしたオレンジで袋は水色にした。
まさに千耀色に染まったバレンタインチョコ。
〇 〇 〇
千耀色に染まったチョコ……って自分で書いててですが恥ずかしいですね(; ・`д・´)
次は、私の推しちゃんである寧々ちゃんのバレンタインストーリーです。
楽しみ!!!(^^)!
寧々ちゃんは金平糖が好物です。
覚えてくださいませ、寧々ちゃんsideにはあの花と太陽の千雪ちゃんを
登場させようと思っております。
先生になった千雪ちゃんを見てください!!
- Re: 君に染まってしまえば―――伝えてしまえ。 ( No.8 )
- 日時: 2020/02/22 15:23
- 名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: FCVTIPcN)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
Valentine7 「悩み。」
ピコピコ……。
暗がりの部屋の中でゲーム機の音が響く。
「―――……。」
私のアバターが相手のトドメをさそうとするとゲーム機が真っ暗になる。
もう、何なのよ。
こっちが勝ってると通信を切って……これじゃあ、ランクが上がらないじゃん。
イライラしながら、近くにある金平糖を口に入れる。
ボリ、ボリボリッ。
あぁ……この甘さが脳に沁みわたるんだよね。
ほっぺたが落ちそうになるような甘さに溺れて居たらピロンッと黒と白のスマホが鳴る。
スマホを見ていると、親友である充希からのメッセージとあと…………。
「!?」
メッセージをくれたのは真宮だった。
LINEを開いてみると綺麗な朝日と『おはようございます。』といったメッセージが。
充希からは、
『チョコどうするの、渡すの?話したいこといっぱいだから、学校に早う来いっ!!』
最後にはアングリーマークが付いていた。
「……ぷっ。」
私はそのマークから充希の怒った顔が想像でき一人で噴き出してしまった。
そういえば、もう七時。
学校の支度をしなきゃな、、、首を長くして起こっている人もいるし。
「よし。」
ヘッドホンと眼鏡を外し、カーテンを開ける。
物凄く、綺麗な朝日だった。
腕を伸ばし、私は制服を着始めた。
支度が終わり、家を出て通学路を歩くと街は甘い雰囲気に包まれていた。
むさくるしいほど、甘ったるいなあ。
どの店を見てもバレンタインに関してだった。
「チョコか……。」
立ち去ろうとしても、気になって見てしまう。
「―――……。」
思わずチョコのパンフレットを手に取ろうとした瞬間、スマホが鳴る。
『あっ、寧々!!生きてる??もう門、閉められちゃうよ?!』
やばッ!!
もう時計は7:30を指していた。
私は学校に向かって走り出す。
「間に合っては……ないか。」
門はガッチリと閉められていた。
まあ……飛び越えればいいか。
風紀委員にまたマークされる、、、めんどくさいなあ。
「寧々~!!」
おはよう、と充希とみわに抱きしめられる。
「……おはよう葉桐さん。大丈夫だった?」
優しい声が私を呼ぶ。
振り向くとそこに居たのは、カメラを持った黒縁眼鏡を掛けている男子だった。
「えと――――……はよ。」
もっと可愛く挨拶をしたいのに言葉が出てこない。
チラッと真宮を見ると優しく微笑んで今日も頑張りましょうね、と言って席に戻ってしまう。
真宮は他の男子よりも優しい。
私の事をよく解ってくれるし、解ろうとしてくれる。
それに、趣味も同じで話が面白い。
撮るものを綺麗に撮りたいだとか、生き生きとしてありのままの姿を残せたらいい、だとか自分の譲れないポリシーを持っているから。
そこがかっこいいと思う。
一緒に居ると落ち着くし……こういうのが“好き”って事なのかは判らないけど、多分私の中で真宮は大切な人なんだと思う。
- Re: 君に染まってしまえば―――伝えてしまえ。 ( No.9 )
- 日時: 2020/02/22 15:24
- 名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: FCVTIPcN)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
Valentine8 「不安。」
「……真宮の事はそう思ってる。」
食堂で充希とみわに真宮の事を言ってみると、
「「それって恋だよッ!!」」
と二人とも嬉しそうな顔をしながら言う。
その嬉しそうな顔に疑問は残るが、私は真宮の事が……。
ボっと瞬間、顔が熱くなる。
「じゃあ、チョコ渡すの?!」
充希が身を乗り出して訊く。
チョコだなんて―――私なんかが……。
でも、、、渡したら……どんな顔をするんだろう。
『―――ありがとう、実は僕も葉桐さんの事が……。』
潤んだ目で顔を真っ赤にしながらチョコが入った箱を握りしめる。
「……ん、葉桐さん。」
気が付くと、私は部室に居た。
あれ……?
目の前に立っていたのは、真宮だった。
その純粋な目をまともに見られなくなって思わす俯く。
なんて妄想してたんだろう……自分が恥ずかしい。
こんな私がチョコなんて渡せるはずない。
「……チョコなんて。」
そう呟くと、
「渡すんですか?」
気が付くと俯いていた真宮が私の事を見つめる。
熱っぽい目で。
「へ、えと……ま、真宮は渡してほしい人いるの?」
とチョコという単語に変に動揺してしまって、聞き返してしまう。
「僕は―――。」
ドキン、ドキン、、、ドキ。
鼓動が早くなる。
顔が火照ってくる。
熱い、苦しい。
永い沈黙の末、真宮がようやく口を開く。
「いますよ。」
星に願っても叶わない相手だけど、いつも一緒に居るだけでいいって思っていたんです、と眩しそうな目で言う。
「でも……一緒に居るだけで良いと思えないくなってきました。」
「―――あっそ。」
素っ気なく返したが、本当は胸が刺されたように痛かった。
静まりかえった部室はいつもより居心地が悪かった。
その沈黙が妙に心を縛り付けた。
- Re: 君に染まってしまえば―――伝えてしまえ。 ( No.10 )
- 日時: 2020/05/01 11:34
- 名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: FCVTIPcN)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
Valentine9 「好き。」
真宮は好きな人がいる。
この真宮に対する思いは真宮にとって邪魔なものになる。
だから……。
私はグループラインを開き、震えた指先を動かす。
『渡さないことにした。』
そう打った瞬間、充希やみわからも心配のメッセージが送られてくる。
すぐに返信しなきゃいけないのに、無視してしまった。
学校も今は行きたくない、なんでって聞かれるから。
金平糖を缶から取り出して口に入れる。
ボリ、ボリボリ……ッ。
金平糖が口の中で砕ける音が響く。
ヘッドホンと眼鏡を付けてゲーム機を起動させる。
ピコ、、ピコピコ。
暗がりの部屋の中でゲーム機の音が鳴る。
「…………。」
私は銃で群がってくるゾンビを倒していく。
ステージをクリアする度に広告が入る。
その広告の内容はチョコ関係だった。
「!」
渡さないのに―――何故、こんなにも過剰に反応してしまうのだろうか?
「馬鹿じゃないの、私……。」
溜め息を吐いて、ベットに寝転がる。
フォトアプリを開き、充希やみわとの思い出の写真を見る。
そこにはたったの一枚だけではあるが、文化祭の準備で真宮とふざけあった写真があった。
「…………。」
諦めるって決めたはずなのに、指が止まってしまう。
矛盾している。
いつ、こんなにも甘ったるい考えになったんだろう。
「―――寧々、小遣いやるから漫画買ってきてくれないか!?」
下に居る兄から呼び掛けられる。
自分で買ってくればいいのに…………。
でも、そんなことは言えなかった。
兄は東大に行けるっていう頭を持っているから、家族のみんなも大目に見ている。
早く返事をしなきゃ、また怒られる。
家の中で権力を一番持っているのは兄でその下に居るのが母と父、そして私、その下に妹だ。
急いで、服を着替えてヘッドホンを外しドアを開ける。
リビングにはあくびをしながら、パソコンを操作している兄、そして小学校の宿題をといている妹が居た。
「何……。」
「これ、買ってきて。二千円やるから。」
こんな兄にこき使われているのは嫌だが頭がいいんだから仕方がない。
天才なのだから。
玄関に行き、外に出る。
コンビニで兄からの漫画を買い、残りのお金でスーパーで夕飯の材料を買っているとチョコのコーナーに足が傾いてしまう。
「…………。」
買いはしないけど、、見るだけだったらいいよね。
そう言い聞かせて綺麗に包まれたチョコを見る。
手に取ろうとしたその瞬間、きめの細かい綺麗な男の人の手と重なる。
びっくりして手を離して謝る。
「す、すみません。気づきませんでした……。」
「いえ、俺もすみませんでした。」
凛とした低い声が響き、私は顔を上げる。
そこには目がきりっとしていてモデルみたいな高身長の男性が立っていた。
「これ買うんですか?」
と聞かれ、
「いえ、、、見ていただけです。」
と言うと難しそうな顔をする。
「――――……見ていたって事は買おうか迷っていたってことですよね?」
図星をつかれ、口をつぐんでしまう。
「それは…………。」
「渡そうとしている人が居たら渡した方がいいと思いますよ。」
にこっと微笑まれて、ドキッとしてしまう。
「俺もそうだったけど…………渡した方が悔いは残らないと思いますよ。」
思いつめたような、それよりかは何かを思い出すような顔は眩しかった。
「…………。」
「まあ、俺は渡す人がいるから買っていきますね。」
チョコを持って、立ち去る彼をぼうっと見つめるしかできなかった。
モデルさんか何かかな…………凄い綺麗だったな。
さっきの彼の言葉が
『…………渡した方が悔いは残らないと思いますよ。』
こだまのように頭の中で響いていた。
悔いは残らないか…………。
「―――っ。」
震えた手が勝手にチョコを取り、気が付かないうちに買ってしまっていた。
- Re: 君に染まってしまえば―――伝えてしまえ。 ( No.11 )
- 日時: 2020/02/25 16:01
- 名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: FCVTIPcN)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
Valentine10 「ハッピーバレンタイン!」
〈 みわside 〉
ドキン、ドキン、、、ドキ。
昂る鼓動を抑えながら、私は深呼吸をする。
自動販売機の後ろに隠れて、公園のベンチに座っている三澄君をチラッと見る。
チョコを渡すために公園に呼んだが、どう渡せばいいか頭が真っ白になってしまった。
このまま、、、渡さなければ、待たせれば流石に優しい彼でも帰ってしまうだろう。
「…………っ。」
スマホのLINEを開き覚悟を決める。
震えた指先を動かして文字を打つ。
『チョコ、渡しに行ってくる!』
そう打って、スマホの電源を切る。
―――……神様、どうか今日だけ味方して。
そうちょっと、神頼みをして声をかける。
「――三澄君!!」
叫んだ私を見て、驚く。
「香坂さ……。」
彼の言葉を遮るように私は言う。
「いきなりでごめんなさい。ずっと前から好きでした。」
「受け取って下さい。」
差し出したチョコを三澄君は震える手で受け取ってくれた。
その事に対してほっと安堵した私は、顔を上げる。
そこにはトマトみたいに真っ赤に染まった三澄君が居た。
「…………ぇ?」
そんな彼を見て私は思わず声を漏らしてしまう。
口を塞いだ私は凝視してしまう。
彼は鞄の中から、ゴソゴソと大きな袋を取り出す。
「……お返しには早いけど、ずっと前から好きでした。」
微笑みながら、私の首にマフラーを巻き付けた。
「街中で見つけて香坂さんに似合うかなって買っちゃったんだ。」
良かった、本当に似合ってて、と瞳を輝かせた。
その瞬間、空から冷たい物体が降ってきた。
「雪?」
ちらちらと白い雪が降ってくる。
私達は顔を見合わせて、
「「ハッピーバレンタイン!」」
と言った。
******
〈 充希side 〉
私はバスケ部の練習が終わるのを待っていた。
ドキン、ドキン、、、ドキ。
練習が終わればこのチョコを渡すことになる。
昂る鼓動を抑えて、何回もシュートをカッコよく決めている千耀を見つめる。
その時、スマホが鳴った。
LINEを開いてみると、
『チョコ、渡しに行ってくる!』
みわからだった。
先を越されちゃったなっと返信する。
『頑張れ、私も頑張る!』
みわは成長したと思う。
遠くから見ているだけだった彼女はチョコを一人で渡しに行った。
そんなみわを親のような目で見ていると、
「「「「ありがとうございました!!!」」」」
千耀の声が体育館中に響いた。
練習、、、終わったみたい。
「―――待たせちゃってごめんな。」
汗を荒々しくタオルで拭いていた千耀はニコッと微笑む。
「ええと、、、あのね……!」
頭が真っ白になってしまった私を見て
「……一緒に帰ろう。話したいことがあるんだろ?」
と、言ってくれた。
二人きりになった今、千耀は私の隣を歩いてる。
その現実に鼓動が早まる。
早く言わなくちゃ…………家に着いちゃう。
そんな焦りを感じつつも行動に起こせなかった。
『チョコ、渡しに行ってくる!』
覚悟を決めた臆病だったみわの言葉を思い出した。
何、今まで散々アタックしてきたのに…………。
みわに先を越されて、怖がっているんだろう。
こんな私、カッコ悪くてみわと目を合わせられないじゃないか。
自分の甘い考えをぶっ飛ばし、鞄からチョコを取り出す。
「―――私ね、千耀の事が好きなの!!」
チョコを差し出し、目をギュッと瞑ると体にぬくもりを感じた。
目を開けると、千耀に抱きしめられていた。
「俺ね、充希の事が好きなんだ。だから、充希がチョコ渡す相手がいるって言った時、嫉妬して苛立った。ごめんな。」
そういうと、もっと強く抱きしめる。
「ううん、私もごめんね。」
チョコを千耀は手に取り、袋を開けて口に入れる。
「あんまっ!」
赤く染まった彼はニカっと笑った。
空から、白い物体が降ってきた。
「「雪だッ!!」」
二人同時に叫び、顔を見合わせて手を繋ぐ。
「「ハッピーバレンタイン!!」」
と言った。
******
〈 寧々side 〉
赤く染まった部室に私は外を見つめる。
外にはちょうど、二人で校門を出る充希と桐ヶ谷が居た。
グループラインには二人が覚悟を決めたメッセージがあった。
みわは、
『チョコ、渡してくる!!』
と語尾にビックリマークが二つもついているし、
充希は、
『頑張れ、私も頑張る!』
って皆、一歩一歩頑張って踏み出してる。
なのに…………私は動けない。
買ってしまったチョコを渡せないまま、真宮は先に帰ってしまった。
チャンスはいっぱいあったのに、呼び止められなかった。
二人にどういえばいいんだろう。
俯いていると後ろから声を掛けられる。
「こんなバレンタインの真っ最中に一人部室に残ってどうしたの?」
優し気な声―――……振り向くとそこには映研の顧問である綾瀬先生がいた。
いつも部室に来るのは下校時間を知らせる時だった。
「部室に来たって事はもう下校時刻すぎてますか?」
そう言ってみると、
「いいえ。」
と目を伏せて首を振る。
その姿を見て、ホッと安堵した私は、スマホを握りしめる。
「………迷っているという事はしたいって事でしょ?」
不意に図星をつかれ私は顔を上げる。
「行動に起こした方が悔いは残らない。」
あの男性と同じことを言って私は少し驚いた。
「!」
「大切な人を想っている気持ちは伝えた方がいいってその時、藍君が背中を押してくれたから泰陽と結婚できたんだな…………。」
最後の方は聞こえなかったが、眩しそうに目を伏せて言う先生は言葉を失うほど綺麗だった。
それから、チョコを私は見つめる。
『葉桐さん!』
―――……真宮の馬鹿野郎。
こんな、真宮なんかと出会ってなかったらこんなことしなくてもよかったのに。
「先生!私帰りますッ!!」
勢いよく立ち上がり、部室を後にする。
真宮、真宮…………どこにいったの?
廊下を走って階段を駆け下りて、人とぶつかりそうになった。
「うおッ!!って葉桐?」
ぶつかりそうになったのは映研の部員で真宮と仲がいい瀬戸だった。
「瀬戸………真宮、どこにいるか知ってる?!」
そう訊くと
「今さっき公園で会って駅の近くのイルミネーション見て帰るって…………。」
ありがとっ、と私は駅に向かう。
はあ、はあ…………足が重たく感じる。
どれくらい走ったんだろう?
「…………っ。」
渡したい、迷わない、ただこの気持ちを伝えたい。
『行動に起こした方が悔いは残らない』
綾瀬先生とスーパーで出会った男性の言葉が頭の中を駆け巡る。
駅に着き、イルミネーションの近くのベンチに座っている男を見つけた。
猫っぽい髪の毛をふわふわと揺らしてカメラで写真を撮っていた。
私はその後ろ姿に目を潤ませながら、零れてきそうな涙を拭い息を大きく吸い込む。
「真宮ッ!!!」
真宮は驚くように振り向き、
「…………ぇ?」
と声を漏らした。
「あのッ!!」
戸惑って息を呑んだ。
そんな私をまじまじと見ていた真宮は次の瞬間、柔らかく微笑み、首にマフラーを掛ける。
「―――葉桐さんってば、雪が降っているのにこんな格好で走って来たんですか?」
と言う。
私は鞄からチョコを取り出し、
「こ、これ…………。」
と差し出すとみるみる頬が赤く染まる。
「これを僕の為に?」
と震えた声で訊かれ、私が頷くと真宮の目からポトッと涙が零れた。
「す、みませ…………嬉しくて。」
涙を拭って、私の手を掴んだ。
「これ―――……僕から。」
そこにはお花がプリントされて小さく包んであるチョコレートだった。
両想いだったってこと?
嬉しくなって私の目から涙が零れそうになる。
息を大きく吸い込み
「「真宮の事が、葉桐さんの事がずっと前から好きでした。」」
と言うと、真宮が私の手を掬い取った。
「ハッピーバレンタイン……。」
と言った。
雪が降り積もる中、私達は好きな人に想いを告げたのであった。
fin