コメディ・ライト小説(新)
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- もう一度。
- 日時: 2021/03/22 12:51
- 名前: ∴夏みかんの妖精 (ID: f.iAZwEP)
「神様。」
「もしも、願いが叶うのなら。」
「もう一度、もう一度だけ____」
✎︎________________________
文章に変な部分が多くあると思いますが、暖かく見守ってくださったら嬉しいです。
≪目次≫
登場人物紹介 >>1
プロローグ >>2-3
『中学2年生』
1話 >>4 2話 >>5 3話 >>6 4話 >>7 5話 >>8
6話 >>9
- Re: もう一度。 ( No.5 )
- 日時: 2021/01/16 18:00
- 名前: ∴夏みかんの妖精 (ID: f.iAZwEP)
2話『明晰夢…?』
___これは夢だ。
まずそう思った。時が戻るなんて、SFじゃないんだしあり得ない。ましてや、願った日__この夢の中の『今日』…になるのかな__に戻るなんてあからさまに都合がよすぎる。
早く起きないといけないなあと呑気に考えていると、ふと頭にある単語がよぎった。
____明晰夢。
いつだか、人間の見る夢について調べていたときにこんな言葉を見つけた。夢という自覚を持ちつつ、自分の意思で何でもできる夢、だったと思う。
これが、もし明晰夢だったとしたら、なんでもできるのでは?と考え、私は食べたいものを想像した。
だけど、出てこない。
出てくる気配もしない。
さすがにおかしいと思い、急いでリビングのある一階にかけ降りる。
___________
『1階 リビング』
「お、お母さんおはよう」
「あら、おはよう香澄。どうしてそんなに急いでいるの?」
朝から急いだ様子の私を見て、お母さんは少しびっくりしている。そんな様子もお構い無しに私はお母さんに詰め寄る。
「ねえ、私昨日制服のままで寝てなかった?お母さんが着替えさせてくれたの?それに、なんで切ったはずの髪が…長いの?」
聞きたいことがありすぎて、つい質問責めになってしまった。するとお母さんは急に笑いだして、
「あははは、変な子ね。制服はちゃんと掛けておいてあったし、寝るときもパジャマ姿だったじゃない。それに、私の髪は元々この長さよ。」
と答えた。……最後の質問の意味は勘違いされたけど、嘘をついてる感じはない。むしろ、このままだと私が嘘ついてるみたいになってるし…。
「そっかあ…私、夢見ちゃってたみたい。へ、変な夢だよね。あは、あはははは…。」
『変な夢』っていう言い訳で乗り越えて、ちょうど出てきた朝食の前の席に座る。「いただきます」と挨拶をしてから朝食を食べ始める。
これは…夢じゃないのかもしれない。
だとすると___1時間後…いや、数十分後には…
南くんと会う…!?
その事実に気づいたとたん緊張して、むせてしまった。
はぁ……こんなんで私、大丈夫なのだろうか…?
- Re: もう一度。 ( No.6 )
- 日時: 2021/02/01 19:25
- 名前: ∴夏みかんの妖精 (ID: f.iAZwEP)
3話「出会いは、未来は、変えられる」
朝ごはんを食べ終えて、部屋に戻った私は、今分かっていることをノートに書き出すことにした。
まず、今私は、中学2年生ということ。
今日は、南くんが転校してくる日ということ。
学校の案内を、先生が華蓮に任せるということ。
そして____華蓮が、南くんと付き合うということ。
今は、これくらいしか思い出せない。私が、また『中学2年生』として生きていけば思い出していくであろう。___正直、ここが現実であるとは思わない。だけど、夢であるという証拠なんて何ひとつ無い。それなら、なんのチャンスか分からないけど、この世界で生きて、未熟だった私が出来なかったことをやってやろうじゃないか、そう思った。
未来は、自分自身で変えられる__気がする。今の私なら。
「絶対、変えてみせるんだからッ!」
今までの私に別れを告げ、喝を入れるように叫んだ。すると、それに負けないくらいの大声が下の方から聞こえてきた。
「香澄ーー?起きてるのーー?遅刻するよー?」
間違いなく華蓮の声だ。耳にタコができるくらい聞いた、親友の声。時計を見てみると、家を出ないと遅刻寸前。急いで準備をして親友の元へ向かった。
________________
「香澄が遅刻しそうになるなんて、珍しい。何かあったの?」
転校生のこと考えてて寝坊したとか〜?と華蓮は続けるが、私にはそんなことは重要じゃない。
いつもは私が早く華蓮の家に行って、彼女を起こす役目をしていた。ぴょこんと寝癖の立った彼女は、しっかりしている学級委員とは程遠く、可愛らしく思ってた。
そんな、いつも通りのような、遠い昔のようなことを思い出していた私は、いつもの彼女に現実に帰される。
「本当に今日はどうしちゃったの?朝から大声出すし、ぼーっとしてたし…。本当に寝不足?」
心配する彼女を安心させる為に、大丈夫だよ。と爽やかな声を出した。数分前まで現実味離れたことを考えてたとは思われないだろう。
「なぁんだ。それよりもさ、遂に今日だよ転校生!!男の子かな?女の子かな?どっちにしても楽しみぃ〜〜!」
過ぎたことに詮索してこない彼女に安心する。関心は転校生に向いてるし、本当に楽しそうだ。
「そうだね。私も楽しみ!」
半分本気、半分冗談のような気持ちで答えた。前髪がじっとり汗で濡れる。5月上旬の暖かすぎる__暑いと言った方が正しいかもしれない__気温のせいにして、学校に近づく度に大きくなっていく緊張を隠した。
ほら____出会いはもうすぐ。
- Re: もう一度。 ( No.7 )
- 日時: 2021/02/02 18:14
- 名前: ∴夏みかんの妖精 (ID: f.iAZwEP)
4話「転校生」
『2年1組 教室』
教室に入ると、見慣れたような、安心できるようないつかのクラスメイト達が見えた。緊張も少しほぐれ、あぁ、あの子雰囲気変わってたんだなぁ、だの、アイツは昔の方が良かったな、だの、自分にしか分からない思い出話を脳内で展開していた。いつも一緒に居たからこそ、雰囲気の違いは全然わからなくて、時間が遡ったからこそ味わえる喜びのようなもの。そんなことを噛み締めながら、私は席に着く。
いつまでも空いていた、隣の席_____。
最初は、自分だけ1人席でラッキー!とか思っていたけれど、次第に寂しくなっていって、転校生でも来てマンガみたいな恋でも出来たらなぁ!と華蓮に話していたっけ。だからこそ、転校生が来ると聞いた時は嬉しくて嬉しくて、絶対仲良くなってやろう、最高の友達だ、って笑い合おう。そう決めていたんだ。___まさか、あんなに苦しくて辛い思いをするなんて、その時の私は思っていなかったけれど。
でも、これからは絶対に大丈夫だ。そう信じていた。また、あなたともう1回恋をしたい。友達でもいい。また会いたいんだ。淡い恋心はいつだか、友愛に変わったのか変わっていないのか分からなかったけど、今の私なら大丈夫だ。心の中でそう言い聞かせていた。不安のある『私』に洗脳をかけるように。
「はぁーい、おはようございます。」
気だるげな担任が来た。ざわざわと他愛のない話を各々していたが、担任が来た瞬間水を打ったように静かになる。緊張が広がる。いつもダルそうに授業をする担任だが、ホームルームのときは皆が静かにならないと話を始めない。周知の事実だ。いつもはちょっと時間のかかるそれだが、今日は違う。転校生が来るからソワソワしていたのだろう。早く紹介して欲しい、誰だか気になる。そんな心がひとつになってこの場を作り出したのだろう。
「おぉ、みんないつもより静かだねぇ。んで、今日は待ちに待った転校生が来ましたよ…っと。入ってきていいですよ。」
中学生だからとバカにしているのだろうか、少し笑いを含ませた声で主役を呼び出す。私だけが知っている、今日の主役。ガラガラと教室のドアを開け、彼は入ってきた。
「こんにちは、南昴です。この学校は分からないことだらけですが、よろしくお願いします。」
パチパチと拍手が起こる。教室中に響くが、私は聞こえないふりをする。
___やっと、会えた。ミルクたっぷり、生クリームたっぷりのミルクココアやパフェなどを飲食したときよりも、ずっとずっと甘い。そんな感覚が私を包む。友愛に変わっているかもしれない、そんなことは全然無かった。だって、顔を見ただけで嬉しくて嬉しくて!規則的に刻んでいた心臓が、どんどん早くなる。今、私の顔はどんな顔をしているのだろうか。泣き出しそうな顔?真っ赤になって風邪を引いたみたいな顔?何にしても、誰かに見られたら心配されるだろう。1番後ろの席で良かった。拍手してなくて、歓迎してないと誤解されることもない。持ってるな、私。
いつの間にか止んでいる拍手の様子を見て、担任は話し始めた。
「みんな仲良くしてやるんだぞ。席は……えーっと、北野の隣な。北野なら大丈夫でしょ?」
「もっちろん!大丈夫ですよぉ。」
と先生に返した。ちょっとだけ気持ちが落ち着いた。ありがとう、先生。向かってくる彼にもいつも通りの対応が出来そうだ。彼が席に座った途端、先生は私に話しかける間も与えずに話を続けた。
「北野と東雲、放課後に南に学校案内お願いしますよ、ってことで、今日のホームルーム以上!諸連絡無し!」
…え?
私はビックリしてそんな声を出してしまった。
- Re: もう一度。 ( No.8 )
- 日時: 2021/05/23 18:18
- 名前: ∴夏みかんの妖精 (ID: f.iAZwEP)
5話「親友」
……え?
素っ頓狂な声が出た。先生が勝手に決めて話を終わらせたせいで、誰も聞いていなかったみたいだけど。
華蓮だけのはずだったのに。どうして私が…?
________
ホームルーム後の教室は、大抵がやがやとしていた。でも今日は空気が違う。遂に来た、転校生。彼に目線が行くと、人の塊がこっちまで駆け寄ってきた。
「南くんよろしくね!」
「好きな食べ物とかある?どんな事が好きなの?」
「前の学校でのあだ名とかある?それか呼んで欲しいあだ名とか…」
南くんに対して、質問が飛び交っていた。そんなに質問しても、南くんはすぐに答えられないんじゃない?___そう思ったけれど、こんなにうるさい中じゃ、私の声なんて揉み消されてしまいそうだ。隣に広がる人の壁が落ち着かなくて、私は親友の元へ向かった。
「あー…これは凄いね。まさに人の壁。」
「そうだよね?あれだけ居ると落ち着かなくて…。」
華蓮が窓際の私の隣の席を見て言った。声色からは嫌な感じはしなかったし、口角が上がっているような気がしたから、多分楽しんでいる。あれを見て。
思えば華蓮はいつもそうだった。皆より茶色強めのショートボブを触りながら、笑みを含ませて話している時は、何かに対して喜んでいる_のだと思う。存在感を放つツリ目のせいで、キツい性格だと思われがちだが、快活な少女だ。ズバッと意見を言えるし、それでいて嫌味ったらしくない。テレビの特集とかの『サバサバ系女子』って、こういうことを言うんだろうな、と思う。
そんな彼女だから私は好きになれたし、憧れた。___ずっと私が弱虫だったから、本音は言えないままだったけど。今度こそ、本当の親友になろう。本音を伝える。
彼女の楽しそうな顔を見て、そんなことを決意し直した。
「そういえばさ、なんで私なんだろうね、学校紹介。学級委員ならもう1人いたのに。」
話題を変えたかったという気持ちと純粋な疑問が6:4くらいの感じを含ませて言った。学級委員なら、華蓮の他にもう1人男子がいたはずだ。なのに、指名されたのは私。女子2人と男子1人。何も知らない人がいたら噂されそうだ。なんにもないだろ、って思う人もいると思う。というか過半数がそうだと思う(私も過半数側だ)。__生憎、ここは恋愛関係とかにはすぐに噂が立って、授業が終わらない間にはもうみんな知っているような学校だ。だからこそあの2人は卒業式まで隠していた訳だし、少しだけ気を付けて行動しなければならない。
先生達はそんなことを知っているのだろうか?と思いながら華蓮の返答を待つ。
「私と香澄が仲良いからとか?それとも…転校生と隣だから、とか?」
ちらりとあの席を見る。さっきよりは少なくなった人だかりは、私に彼の姿を少しだけ見せてくれる。カーテンに包まれて、囚われの王子様みたい。少し笑顔がこぼれた私を見つけた南くんは目を細めて笑い返してくれる。まだ自己紹介してないはずの、分からないことだらけの私に対して。
「まあ、そうだよね。隣の席だし、仲良くしないとね。」
かなり適当な返事をして、私は授業中にこっそり自己紹介をする練習、学校をどこから案内するか、脳内で練習を始めた。きっと今日の授業の内容は入らないんだろうなと諦めて席に戻った。
- Re: もう一度。 ( No.9 )
- 日時: 2021/02/20 13:23
- 名前: ∴夏みかんの妖精 (ID: f.iAZwEP)
6話「欠片」
1時間目の国語の授業が始まった。カッカッカッ、と黒板に字が書かれていく。国語の担当の教師が話を始める。それらは子守歌のように、私達の睡魔との闘いを促す。どこからか、小さな欠伸がしたと思えばすぐに波がやってきた。あーねむ…と小さな声がしたり、もう我慢しないと諦めたように眠る人もいた。
私も例外じゃなくて、寝るか寝ないかのギリギリのところで戦っていた。学校案内の練習をして気を紛らわそうと思ったが、それもできそうにない。こっちに目を向けて、「寝るな」とでも怒ってくれたら集中して授業に__いや、授業を受けてるふりくらいならできるのに…と、そんな事を思いながらうつらうつらする。
もうダメだ…諦めて寝よう。そう思ったとき。
パチッ____!
静電気が起きるような痛そうな音がしたと思ったら、ぐわんと浮遊するような感覚が私を襲った。
「な、なにこれ!助けて!」
精一杯の大きな声で助けを呼んだつもりだったが、どうやら誰も聞こえていないみたいだ。誰も何も反応してくれない。いつの間にか、色の着いていた日常が色彩を無くしている。なんだか自分だけが生きている世界のみたいだ。これは、私にしか見えていないのだろうか…?
不気味さが私を襲うと、また浮遊感がきた。
「い…いやだ…いやあああああああああ!!!!」
____________
_______
__
「2年1組 教室」
『えーっと、次の授業は国語かぁ…。』
時間割を確認してから準備を始めると、私の隣の席に、人だかりができた。
『南くん_ろ__ね!』
『LINEやっ_る?』
『好き__なに?』
遂に来た転校生にみんな興味津々だ。もちろん私もなんだけどね。質問したいことは沢山あるけど、こんな人ばっかりじゃ、私の小さめな声は掻き消されちゃう。後で自己紹介しよう!そう思って、華蓮のところに行くことにした。
『華蓮、おはよう!』
『香__の隣のせ_なの?転__生くん。羨_しいなぁ。』
なんだかキラキラした(ような)目を私に向けて羨ましがる。そんな目で見つめられると、恥ずかしかったりする。
『うふふ!このときだけは自分の席を神だと思ったよ!
あ、そいえばさ、放課後に学校案内するんだよね?』
『うん!私_転校__く_と仲_くな_ちゃ_んだ__!』
華蓮は気合いを入れたみたいに鼻息をフン!と吐いた。そんな様子を見ると、私も案内したいな!とは言えなくなってしまった。自分の席の様子をチラリと見ると、さっきより人が少なくなっていた。もう座れそうだ。
『うん!放課後頑張ってね!』
小さく手を振って席に戻ると、転校生くん_って、呼んでいいのかな?_は話し掛けてくれた。今こそ自己紹介のチャンスだ!
『_______南昴。_____、_____。』
『う、うん!よろしくね!私の名前は__』
_________
_____
__
「__さん!聞こえてますか?」
「__野さん!!」
「北野さん、先生が呼んでるよ。」
「ハッ、はい!__って、え?」
気づいたら、私は教室に戻っていた。状況が理解出来ずにいると、先生が言った。
「北野さん。どうしたんですか?急にボーッとして…。あなたらしくない__。」
アハハハと皆が笑うが、私はそんな場合じゃなかった。今のは何だったのだろうか。夢_かと思ったが、妙に生々しい_だとしたら、記憶の欠片のようなものだろうか。所々抜け落ちていたし、ぼやけた景色だったが、あれは私だ。
ズキン
頭が痛み出したら、ふと朝見た夢のことを思い出した。忘れていたような気がしていたのに。何故だろうか__とても、気持ちが悪い。
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