コメディ・ライト小説(新)
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- ちいさないのち
- 日時: 2022/05/20 13:17
- 名前: 月雲 瑠依 (ID: K/8AiQzo)
目次
注意喚起&1話はこちら!目次の下
1話→「やっと、ままにあえたね」
>>1「ぼくの宝物」
>>3 巫の少女
>>4「ゆうきの おにいちゃん」
>>5「ミライ導くキーボード」
>>6「狂い狂われmarionnette」前編
>>7「狂い狂われmarionnette」後編
>>8「あなたの宝物」
>>9「きずな 十人十色」
>>10「愛らしい 少女」
>>11「凛々しい 少年」
>>12「また あした」
※まだ投稿されておりません、暫しお待ちくださいませ
・誤字脱字ある、かも?
・台詞は殆どありません
・心が温まる!を目指してますが、そうならなくてもごめんね!
・更新頻度は速かったり遅かったり…生活に負担にならない程度に進めていきます
・3話辺りから暗い悲しい、黒めなシーンが出ます。苦手な方はバックをお願いします
「やっと、ままにあえたね」
わたしはもうすぐうまれる。もうすぐ、もうすぐ、ままに会えるんだ。はやくままに会いたいな。
わたしは早くままに会えるのを楽しみにうまれる為の準備をしています。いますぐにでもいいんだけれど、もう少しまっていてほしいから、わたしたちはその存在に気づいてもらうには「ちいさないのち」
けれど見えていないだけでほら、貴方にもいる、そのいのち。わたしがままの元へ行くための準備をしているあいだに、キミには、この日記を読んでるキミには、お兄ちゃんがうまれたときの様子をみせるよ。
ままのお兄ちゃん、それが今回のもちぬしさん。だからわたしのお兄ちゃんにもなるんだね。お兄ちゃんはキーボード。ままのお兄ちゃんが大切にしてるキーボード。
昔、その昔、ままのお兄ちゃんが5歳のころ、お誕生日にもらった、キーボード。ままのお兄ちゃんは今年20歳になるんだけどね、今でも大切にしてるんだ。この子供用の音の鳴らなくなってしまったおもちゃのキーボード。ままもそのキーボードで遊んだ事があるって言ってたけど、あまりおぼえてないみたい。そんなキーボードがわたしのお兄ちゃん、大好きなお兄ちゃん、お兄ちゃんがうまれたとき、その時はキーボードの音が鳴らなくなったその瞬間。
音が鳴らなくなったって、ままのお兄ちゃんはそのキーボードをもちつづけた。そもそも音の鳴らないキーボードって、楽器としてダメダメだよね。そのせいなのかお兄ちゃんもダメダメな時がある。でも、ままのお兄ちゃんを支えていただけあって、お兄ちゃんは強いんだ。そんなお兄ちゃんを私は大好きです。ままと同じくらいに。はやくままに会いたい。
ーねぇ、キーボードくん、君は音が鳴らなくたってずっと『なかよし』だよ?ー
お兄ちゃんはままのお兄ちゃんのこの言葉に涙を流した。そこからこの2人は、時々、たまに、ほんの少し、ちょっぴりだけ、意思疎通ができるようになりました。
そう、自分が大切にしてたキーボードに「ちいさないのち」が宿っていた事に気が付いたのです。ままと私もこんな風になれたらいいな。さぁ、うまれる準備ができました。会いに行こう、ままに。はじめまして、まま!
ー私はパスケースのつくもがみー
もちぬしの名前はるい。
るいちゃんは遠くに出かけるのが好きだから、パスケースの私も大事に大事に扱ってくれたんだね。バスに乗る時、電車に乗る時、ピッてすると私の中のカードにあるICチップが動く。すると私の心もゆれ動いて私を使ってくれてると、少し心が温まってきもちいい。るいちゃんと出会い会うことが出来たのは彼女が中学生の時。そこからは高校に上がっても毎日いっしょ。塾へ登塾する時もそう。
こころ、ゆれうごく。
でも学校でも塾でも旅行でも、ずっと一緒だったけど、仕事を見つけて暫くしてから忙しくなって旅行へ行かなくなりました。
恋人と結婚して、子どもができて、本当のママになったんだ。私のこころはゆれ動く、不安、ふわふわふあん、安心の中で不安。
でもでもままは、その旦那さんと幸せいっぱい。だからやっぱり安心です。これからも、ままを、いいえ、るいちゃんをしあわせにしてあげてね。彼女は照れ屋だから言わないけど、本当はいっぱいかまって欲しいと思ってるの。心から愛しているの。私がままを好きなように。
ままの中からは「パスケースの私」は消えていってる。だから私も消えゆく。
私のこと、無くしてしまうのかな。捨ててしまうのかな。けど、けどけど忘れないで私はずっとそばで、るいちゃんを見守っています。るいちゃん、今までありがとう。
さようなら。
つくもがみは大切なものの愛のあかし。
証だから、見えなくてもそばにいる。この日記は沢山の人の心。あなたの物語もあるかもしれない…それではまた会える日を願って。
- Re: ちいさないのち ( No.7 )
- 日時: 2022/03/11 11:21
- 名前: 月雲 瑠依 (ID: Ryt8vfyf)
「狂い狂わされ marionnette」
後編 覚醒の巫女が狂う、舞い踊る時
付喪神による贖罪。
そうは言えども何処から始めたら良いかなんて解らない。だから神様、私の家の神様に頼る事にした。
神様はこの話を、贖罪の話を聞くと、豪快に笑った。この声に、この笑顔に、ドキッとした。筆の付喪神と出逢った時とは違う。…このドキドキは何?
この神様の為に頑張りたい、この神様の言う事なら何でもしたい。この身を捧ぐ神様は彼が良い。そう、思ったの。
愛しく感じた神様に、私は聞いた。どうしたら付喪神たちの贖罪を手伝えるのかを。
聞いた。この身を捧げ、契りを交わす事を条件に…。
そういうことをするのは初めてだからとても恥ずかしかったけど、愛しい神様となら構わない。
付喪神の贖罪を手伝う。それは神様のチカラを借りて、誰がもちぬしか、判別をする、更に必要とあらば、チカラでもちぬしと付喪神の仲を良く無い方へ導くキッカケをつくる。
そこからは少しずつ私が関わり仲を引き裂いてゆく。
関わる方法は、日記を書く為の取材という事にした。取材ならば、付喪神の話を聞けるし、言っても何ら問題はない。
更に、日記を付喪神を広める為と言う。
付喪神がどれほど悪いモノなのか、知らしめる為に使いたいから偽りなど無い。
こうする事で私も。付喪神も。神様も。
みんな幸せになる。そう思ってはじめたのがこの日記を書き上げると言うものだ。
書き始めて2日ほど経った頃だろうか。
見つけたのが「るい」という名前の少女。
もうひとりが「悠輝」という名前の青年。
彼女は、彼は、兄妹。
るいという少女はパスケースを。
悠輝という青年はキーボードを。
付喪神をそのモノに宿し、少女は「なかよし」として青年は「こいびと」として親しみを込め大事に扱っていた。
特にるいちゃんは私と年齢があまり変わらない。そう、るいちゃんも中学2年生。
兄はたしか…大学2年生だ。20歳になる。
るいちゃんは今年からもちぬしになった。
…兄はもちぬしになって、10年近く経つ。確か小学5年生の時、付喪神の存在について気付いたという。
私の神様は言う。
付喪神の存在について気づく人間は少ない。だから兄妹揃って気づいたという事は何かしらのチカラがあるという事。
特に妹はチカラを強く宿している。
……どんなチカラかは、神様にも分からないようだ。
るいちゃん本人もその自分のチカラについて気づいて居ないようだ。だが、悠輝お兄様は気付いているように見える。
どうやってこの兄妹の付喪神の贖罪を手伝おうか。神様と繋がり、チカラを注いでもらう事にした。
私のこのチカラと神様のチカラできっと平和に導いてみせるわ。私ならできる。
この私が、付喪神への憎しみと愛がある私が。
…いいえ、私だからこそ、やってみせるの!愛しい付喪神への…愛しい付喪神への私からのプレゼント…。
だって、確かに楽しくて幸せな時間を届けてくれたのだって、確かに悔しくて辛い時間を届けてくれたのだって。
全て全て付喪神。
ふわふわ。
ふわふわゆれる…こころゆれる。
ふわふわふあん…。
このミッションを完遂させられるのだろうか。不安だ…ふわふわ不安。
私が私じゃなくなってゆく。
華道やら琴やらに精を出していた時代はどこ?筆の付喪神と一緒にバカな事を言って笑い合ってた時間はどこ?
私何処からこんな壊れたの?
私何処からこんな狂ったの?
神様と交わる前なら戻れたけど今更は無理だから。
…だから。だから。
やっぱり…この日記を完成させる事。付喪神の贖罪を手伝う事。
この2つが私のやり遂げ無ければいけない事だって思ってる。
だから、見守っていてね。この物語を見守るあなたなら、私の事、分かっててくれるって、そう信じてるから。
- Re: ちいさないのち ( No.8 )
- 日時: 2022/03/30 11:32
- 名前: 月雲 瑠依 (ID: Ryt8vfyf)
7話「あなたの宝物」
るい、という名の少女。
彼女の宝物は翠彩のパスポートケース。
そのパスケースには宿るモノがある。それは付喪神と呼ばれる、とてもとても「ちいさな神様」…「ちいさないのち」
翠彩のパスケースの付喪神はお兄ちゃんが1人、いる。
…とはいえどもお兄ちゃんみたいなお姉ちゃんなのだ。姉を兄だと思い親しくしていたのは、ただの彼女の勘違い。
と同時に少し納得もいった。
髪の毛ベリーショートだし。胸、無いし。
そのお姉ちゃんはキーボードの付喪神だった。過去形なのは私のせい。
この日記が完成したこの今はただ、ただ、後悔だけが募っていた。あの、あの頃にただ、あの時の私に、一言でも伝えることが出来たなら。
あなたが信じてる、その神様を信じるな。
付喪神を、私の筆の付喪神を信じて。
そう言いたい。二言あるけど…。
そもそもそのパスケースの子の勘違いを何故知っていたのか。
日記を作るにあたって、何故るい、悠輝の兄妹を狙ったのか、それは…。
昔から彼女たちを知っていた。
羨ましいと、そう思っていた。
だって、だって、付喪神と仲が良くて。
羨ましい、一心同体かのように、意思疎通していて…羨ましい。妬ましい。
その心が隙を…作ったんだと思う。
魔が刺す原因になったんだと思う。
彼女たちは私を…多分知らない。
でも、私は知っている。
この境内から。河川敷から。
見えていた、遊んでいるあなたたちの事。
習い事に明け暮れ、きょうだいも…誰もいない中でふと、目にする時があった。
羨ましい。だから単純にあなた達の邪魔をしたかったのかもしれない。その為に付喪神を裏切ってしまった。
私は私の贖罪が必要だ。
付喪神などではなく、私の。
………
ああ、生きる意味なんて。
私には無いのかしら?…
生きたい。
生きたい。いきたい
死にたく無い
しにたくない
でも、贖罪の為には…私の過ちを正す為には…
…こう、するしかないの。
ごめんね、大切な宝物。
ごめんね、私の付喪神。
ごめんね、るいちゃん、悠輝くん。
ごめんね、あなたの宝物…。
さようなら。
- Re: ちいさないのち ( No.9 )
- 日時: 2022/05/12 08:16
- 名前: 月雲 瑠依 (ID: dzc33jqI)
8話「きずな 十人十色」
毎日楽しく過ごす。
私たちは「きょうだい」なのだ。
4人で2人、の「兄妹」。
兄、悠輝…愛方はキーボードの女の子。
妹、るい…相方はパスケースの女の子。
一方で。
縁側に佇む少女の名を麗華と言う。
彼女には「きょうだい」と呼べる者は居りません。しかし、親友と呼べた者は居りました。
愛方さん、相方さん…そして親友さん。
皆には共通点がありました。
それを、付喪神と呼ぶそうです。
でも世間ではもう一つ、名前がありました。
その名を「ちいさないのち」
丸で赤ん坊の様なその名前らしく。
付喪神は「もちぬし」と認知した人間に対して、母親、父親、と思う傾向がある、と最近わかってきました。
だけど、一緒に過ごすうち「親子」以外の絆が芽生えてきます。
それが、愛方さんや相方さん、親友さんの絆です。
人間に沢山の人々がいる様に、付喪神との関係も様々です。
きずな、十人十色。
沢山の、光が。
沢山の、愛が。
見えてくる。
私の贖罪はただ、ただ、1つ。
それは小さくて、大きな罪。
いいえ、ただ、ただ、大きな…
酷く、悲しい罪。
言い訳はしません。神様に騙されていた、そんな部分もありますが、私が悪いのだから。
_____
ごめんなさい
沢山の人へ。
ごめんなさい
るいちゃん、悠輝くん…
ごめんなさい
アイラ…
ごめんなさい
全てのもちぬしと、付喪神に。
- Re: ちいさないのち ( No.10 )
- 日時: 2022/05/13 16:45
- 名前: 月雲 瑠依 (ID: dzc33jqI)
「愛らしい 少女」
私には親友と呼べる者がふたり、おりましたの。
1人は麗華という一つ歳下の少女。
もう一つは、昔母から頂いた日傘。
きっと麗華はともかく、日傘とは?と思うでしょうね。日傘に宿る魂と、仲が良かったのです。
一般論で言う、付喪神…と呼ばれる者たち。大切に物を扱うと現れるとても、ちいさな神様。
___ちいさないのち
月がいつにも増して綺麗に輝きを放っていました。少し肌寒く、少し疲れていて…
それで、風邪を引いていたあの日。
日傘の付喪神と出逢いました。
…まま
と、言う声を聞いた時には驚きでいっぱいでした。まさかこの歳で「ママ」と呼ばれる日が来るとは思わなかったので。
いつしか「ママ」と呼ばれる日は無くなりました。私たちが親友と呼べるような友情を育んだからです。
…アイラ
私の名前は呼び捨てで呼ぶのです。
それに少しはしたない。男の子だから仕方ないのかな?…とは思いますが…それでは差別になってしまいますね…
もう少し上品になってくださらないと私…いいえ、それはやはり良いのです。
とても、頼りにはなりますから。
朝、私の名を呼ぶ声がしました。
アイラ、アイラと、何度も。
私は目覚めが悪いので彼にはすごく迷惑をかけておりますが、朝に大切で大好きな友人に起こされるというものは私に1日頑張る為のチカラをくれるので、私的には…嬉しい事です。
それに、目覚めた時に彼は枯れた大地に咲く一輪の花のように美しく、凛々しい笑顔を魅せるのです。
そうして、おはよ…と一言申し、私の頬へとキスをするのです。
そのちいさな身体で、そのちいさな唇で
その…ちいさくて、おおきなこころで。
そうして静かに始まる1日。
朝ご飯をいただいて、午前中は勉強。
昼食後、日傘の彼を連れて麗華の元へ行く。
麗華は巫の少女。
仲良くなったのは彼女の筆の付喪神、
仲良くなったのは私の日傘の付喪神、
2人の男女の付喪神が、私たちを引き合わせました。
付喪神のもちぬしは、他の付喪神を視る事は叶いません。
麗華は巫だもの。特別なチカラで視えるのでしょう。私は…何故でしょうか。
視えてしまいました。
そして麗華が、付喪神に執着してきているのも…わかっています。
ある日、突然付喪神は悪魔だと言い出しました。
彼女の家で何かがあった事は察しがつきましたが、何があったのかは訊いても黙秘ばかりでわかりません。
ーねぇ、ねぇっ…麗華!?ー
彼女は変わる。
明るい性格は冷たく凍り、
華やかな心は悲しく叫ぶ。
付喪神は本当は悪魔などではありません。
私にはわかります。私と共にした日傘の彼は、だって、だって…
美しい心ですから!
とはいえども麗華…あの子があんな事言うなんて信じられないの…。
私は取り敢えず彼女に従う事にしました。
この子がどうしてこうなったのか、探るため。助ける為に。
私は…あなたを信じてる。
あなたは、日傘の付喪神の様に、綺麗で華やかな人だから。
付喪神の事を人と言って良いのかわからないですが…。
ねぇ、お願い…お願いです…!
麗華っ…元のあなたに、戻って!!
- Re: ちいさないのち ( No.11 )
- 日時: 2022/05/20 13:17
- 名前: 月雲 瑠依 (ID: K/8AiQzo)
第10話「凛々しい 少年」
俺のもちぬしは少女、アイラ。
俺は、彼女の母が彼女に贈った日傘の付喪神。
付喪神というのは、とても「ちいさなもの」だ。
付喪「神」なんだから、それはそれは大層な存在…と思われがちだか、実はそんなことは無い。
一般人には見えず、もちぬしも自分の「ちいさないのち」しか視えないのが普通だから、伝承、御伽噺、それから都市伝説に、ファンタジー系の物語り…その程度で語られる付喪神が一般的に認知される「俺ら」という存在だろう。
・大切に扱う物から生まれし者
・悪戯好き…まるでそう、座敷童子のような。
そんなモノとしての認知が高い…と思う。
さて、2つ、一般的に知られた「付喪神」としてのイメージを挙げたが、二つ目は当てはまらない。
…一部例外というものはあるが…
悪戯好きな性格の付喪神もいるからな。
アイラの事だが…。
アイラはお嬢様だ。口調から見ても分かる通りの古典的お嬢様だ。
両親は家という名の箱庭で彼女を囲うが、意外とアイラ本人は家の外に抜け出す頻度が高いので囲えてはいない。
アイラが家の外でする事といえば、麗華という少女と、彼女の付喪神である、筆の付喪神に会いに行く事。
基本的に他の付喪神は、もちぬしでさえ、見えないと言ったが、アイラにはどうやら視えるらしい。
そこで、同じく視える麗華と友人になったというワケだ。
麗華は、巫の少女であり、特別なチカラを宿す身であるわけだから、視えていても、可笑しくは無い。
だが、アイラには何故視えているのか、それは俺にもわからない。
そうこうしてるうちに、アイラが目醒める時間だ。
「おはよ…」
そういって彼女の頬にそっと、キスをした。
毎朝起こす度に、そうする理由は主に二つある。
一つ目は、アイラがちゃんと存在してるのを確かめる為だ。
アイラが居ないと、その付喪神である俺も消える。付喪神ともちぬしは、一心同体なんだ。
もちぬしが死んでしまう、だなんて事があれば、俺ら付喪神を認知して接する人が居なくなる。必要性を感じられなくなる。
だから、消えてしまうんだ。
だから、一心同体なんだよ。
二つ目は、ただ単にアイラに触れたいから。
付喪神ともちぬしは、色々な関係性で結ばれる。
ある者は親友となり。
ある者は恋人となり。
ある者は悪友となる。
ほんとに様々な関係性がある。
俺の場合、アイラが好きだ。
アイラは俺の事、異性として気にしている様子が無いから、完全片想い…となるが。
それでもアイラを愛してる。
好きな女の子には触れたいだろう?
男なら誰であって分かるはず。
だから、モーニングコールと同時にキスをする。キスと共に見えるはにかむ笑顔は俺の宝物だ。
「おはよ…」と返すその眠そうな声、表情、その全てが宝物だ。
これが、俺とアイラの1日のはじまり。
これが、俺とアイラのいつもの日々だ。
身体がこんなちみっちゃいモノじゃなければ…付喪神というモノではなく、人間というモノとして、うまれていれば…
そうしたら…そうしたら…
俺は、俺は…
いや、でも良い。これだけであれ、側に居られるから俺は幸せ者なんだ。
好きな人と共に居られる事。愛してる人が、別の意味であれ好いてくれる事が幸せなんだ。
だからこのままでも良いかもしれない…。
こうして静かにはじまる1日……
アイラは午前中は勉強をする。
お嬢様だから、マナーやらなんやら…
俺には全く理解のできない事。だから、凄いと思う…いや、俺が馬鹿なだけなのかな?
こうしてお昼を食べる。
今日の昼飯は明太子とバターのパスタだ。
上には海苔が飾られていて、とても映える。
バターの芳ばしい香りがして、とても美味しそうだ。
デザートは少し小さめのプリンアラモード。
小さなプリンの中央に生クリーム、周りにに、蜜柑、さくらんぼが乗っている。
そして、生クリームの上にはチョコレートソースがかかっており、これまた映える。
パスタも少し少なめなので、女の子でも食べやすいようになっているようだ。
一口一口、綺麗に優雅に食べている。
いや、そういうとこも、アイラめちゃかわいいな!?
恥ずかしいのでそんなに見つめないでくれませんか?というアイラもまた可愛い。
こうしてデザートまで完食したアイラの午後は自由時間だ。
自由といえど、このお屋敷の中で、という話だが。
だが、今日のアイラの両親はお屋敷に居ない。家政婦も両親に付き添うのでお屋敷には俺とアイラのみだ。
そういう日に俺たちはこっそりと屋敷を抜け出す。
着替えて日焼け止めを塗ったら準備万端!
俺という名の日傘を持ち、向かうは麗華の家。
麗華というのは、アイラの友人。
…そうしてアイラと同じく「もちぬし」だ。
仲良くなった理由は、俺と麗華の筆の付喪神だ。アイラが家政婦と、俺と、散歩をしている時に話しかけてきた。
ーあなたにわたしはみえますかー
そう、話しかけてきた。
それがきっかけ。
そうして出かけ、もう麗華の家には何度も足を運んでいる。
彼女は「巫」の少女。
彼女は「チカラ」の持ち主。
突然俺ら付喪神を悪魔だと罵った。
もしかしたらそんな付喪神も居るかもしれないが、全員が全員、そういうわけではない。
彼女は変わる。
明るい性格は冷たく凍り、
華やかな心は悲しく叫ぶ。
麗華はどこから狂った。
どこから入れ知恵された。
悲しい。付喪神として、護りその命を枯らした筆の付喪神は報われなくなるのでは無いか。
いいや、厳密に言うとまだ筆の付喪神は生きている。だが、意識が無いのだ。
だから何故か他の付喪神が見えるアイラが、保護している。
…麗華は、アイラは、付喪神は……どうなるんだ?
どうか、この少女たちを救う者が…
1日でも早く現れますように。
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