コメディ・ライト小説(新)
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- 神様の落とし物~機械少女と行くぶらり旅~
- 日時: 2022/11/19 15:15
- 名前: 鱈むすび (ID: pRqGJiiJ)
こんにちは!初投稿です!めっちゃめちゃ初心者です!もうなんかこれ変じゃねってなっても許してください。一話ごとに約1000~1500文字くらいです。
第一章〈レイルの町編〉←いまここ
第二章…かくつもり
第三章…かくつもり
- 神様の落とし物2話 ( No.2 )
- 日時: 2022/11/19 16:22
- 名前: 鱈むすび (ID: pRqGJiiJ)
昼下がり、ある一人の男が大通りを抜けていく。誰もが彼の近くによると思わず顔をしかめてしまう。周りの人間が鼻をつまみながら彼の横を通り抜けていく。
「おいッ!お前、止まりやがれ!」
だがそんな中にも彼の匂いに耐えて立ち向かってくる勇敢なものはいた。通り抜けていこうとするところで肩をつかみ引き留めたのだ。しかし、立ち向かってきた歳二十くらいの男は振り向いてきた匂いの発生源である男の顔を見た瞬間、急に背中をなにか冷たいものがつう、と通り落ちてゆくのを感じた。
――目の前にあった顔自体に別におかしいところはない。しかし、その男の眼はどうしようもないほど濁り切っていた。そこには光は無く、ただただ黒く、黒く、淀んでいた。
「ひいッ!?な、なんなんだよお前ぇ!?」
そしてついには恐怖のあまりか腰を抜かして後ろへ、後ろへと急ぐように後ずさっていった。この青年は特段こわがりというわけでも無かった。少し幽霊などその手のものが苦手な程度だ。しかし、男の濁っているとしか形容できない瞳を見た瞬間、少しの焦燥感と大きな不安感に襲われたのだ。
「なにか、俺に用か?」
ついに男が口を開いた。彼の声は、別に普通の声であった。やはりこの男は目だけが異質であった。そんな男に対して、青年は恐怖を抱きながらも、それでも立ち向かった。
「お、お前のその匂いのせいで周りのやつらが迷惑してんだッ!き、汚ねぇんだよ!」
「ん?ああ、確かに風呂にはもう数か月は入ってないな。だが、すまないな、如何せん今はあんまり金がないんだ。」
話してみると別に普通で、何の変哲もない男だ。しかしその声は話し始めてみると気づいたが、ひどく抑揚がない。まったく申し訳ないと思っていないようであった。いや、そもそも男はさっきから一度も感情を出していない。もしかしたら感情表現が苦手なだけなのかもしれないが。
とにかく、青年はまるで感情のない絡繰りと話している気分になった。
「で、でもその匂いをどうにかしろ!風呂じゃなくてもいいからッ!」
「だから言っただろう、今は金がない。とにかく無理なんだ。」
「…お、お前!俺についてこい!」
このままじゃ埒が明かないと思った青年は男に自分についてこいと言った。男は素直にその言葉に従い青年の後をつけていった。勿論、二人が歩いている間に人とすれ違うことはあり、そのたびに嫌な顔をされていた。そうして歩くこと十分。彼らの前には一つの大きな施設があった。
「…これは銭湯…?なんで俺をこんなところに連れてきたんだ?」
男が不思議そうに青年に対して問いかけると男は少し忌々しそうにしながら声を荒げて言った。
「お前が臭いから連れてきたんだよッ!」
「それはいい、だが今俺に金は無いと――」
「俺がおまえの分の料金も払ってやるんだよ!」
そう吐き捨てて青年は店の中へと入っていった。おそらくこの青年は少し口が悪いだけで根はやさしいのだろう。だから唯一男に話しかけることができたのだ。
「…じゃあ遠慮なく使わせてもらう」
そう言って男は青年のあとを追いかけるようにして店へと入っていった。
- 神様の落とし物 3話 ( No.3 )
- 日時: 2022/11/19 14:35
- 名前: 鱈むすび (ID: pRqGJiiJ)
カポーン…。
とある町の大きな大衆浴場に二人の男がいた。
片方はそれなりに顔が整っており、今は少し不機嫌そうな顔をしているが、普通にしていれば女性からなかなかにモテそうな青年。
もう片方は、こちらも顔はそれなりに整ってはいるがしかし、目が酷く濁っており、そこには一切の光を映していない青年とは言えないがおおよそ二十台後半であろう男。
青年はさっきからなにかと話そうとしては口を閉じて、男は一切としてそれらの行動に反応せず、ただただ黙って風呂に入っている。
…そんないたたまれない空気にしびれを切らした青年がついに男に向かって話しかけた。
「…俺の名前はアレク。アレク・スレフト。お前の名前はなんていうんだ。」
「…ん?ああ、俺か。俺の名前は…ジョン。ただのジョンだ」
「…どうにも嘘くさいが…。まあいい、ジョン。お前、これからはちゃんと風呂に入れ、いいな?」
そんな母親みたいな忠告をアレクはジョンと名乗った男に対してする。その言葉に男は少しだけうなずいた。その反応に少しだけ不服そうにしながらもアレクはなにか話題を続けようとした。が、しかし男がもう風呂を上がるといった。まだ入って十分も経ってねえぞ、そう思いながらもアレクはしかめっ面をしながら男の背中を見送った。
男は銭湯を出たあと、都市の北の方へと足を進めた。
この都市の名前はレイル。このレイルは三つの地区に分かれており、平民地区、商業地区、そして最後に貴族地区がある。
平民地区では名前の通り主に平民が暮らしており、この地区はこの都市の南東から北西にかけて広がっており、三つの中で最も大きい地区だ。
次に商業地区だがこちらでは主に商人や漁師などがここで商売をしている。この地区は北西から東南東あたりまで広がっている。この都市はなかなかに他所と比べても栄えているようで、ここに行けば古今東西のどんなものでもそれなりに手に入ると言われているとか言われていないとか。
最後の貴族地区。こちらは地区と呼べるのか怪しいほどに小さいが、まあ地区の一つとして数えられている。ここには領主の館やそこで働く者たちの家、騎士団詰所、牢獄などのあまり一般市民には馴染みのない施設が設置されている。
そして、今男が向かっているのは北。つまり彼は商業地区に行こうとしているのだ。この彼の行動から彼が商業地区で働きに行くのか?と思うかもしれないが、それも違う。
そんなこんなで目的地に男は着いた。
――『冒険者組合』
そう書いてある看板がついてるそれなりに大きい建物、『ギルド』が男の目的地であった。
- 神様の落とし物 4話 ( No.4 )
- 日時: 2022/11/20 11:50
- 名前: 鱈むすび (ID: pRqGJiiJ)
冒険者組合、所謂ギルドの中へ入ろうとドアに近づくと中からはバカ騒ぎの声が響いてくる。それなりに古めかしいドアが軋む音を聞きながらギルド内へと入る。そしたら案の定、こんな真っ昼間から酒を飲む者、賭け事に勤しむ者、雑談して騒ぐ者など多種多様な人種が集まっていた。こんな惨状にはわけがある。
本来、ギルドは冒険者をサポートするために掲示板に冒険者に対する依頼書をはって、その中から冒険者が受けたい依頼を受付嬢のもとへ持っていき、その内容を確認して、受領するだけの施設である。
そうであるはずなのに逆にサポートを言い訳に、建物内には様々な施設がごちゃ混ぜになっている。しかも、ギルドには冒険者しか入れないというような入場制限なんてものはない。これもこの混沌を形成している要因の一つであろう。
とりあえず、そんな軽くホラーな空間から瞬時に抜けたジョンは、依頼書の貼ってある掲示板へと一直線に向かった。そうしたら一つの依頼書が彼の目に留まった。
『キラーラビットの群れの討伐 難易度:C 場所:セリ村 報酬:最低100000G+一匹倒すごとに1000G追加』
「ふむ…」
男の目に留まった依頼書の内容はなかなかにいいものであった。キラーラビットというのはウサギの形をした魔物だ。一見弱そうに見えるが、侮ること無かれ。そのスピードには目を見張るものがあり、油断すれば簡単に命を刈り取られてしまう。まあ油断することさえなければ簡単に倒せるので冒険者なり立ての人にはお勧めの魔物だ。
さて、この依頼だが、まず最低でも100000Gは保証されているのがいい。また、セリ村という村もこの都市からあまり遠くない。割と近い部類だ。唯一の懸念点はキラーラビットなのに難易度の部分がCになっていることくらいだ。
この難易度というのは依頼を受ける冒険者の強さの指標のようなものだ。冒険者なり立ての人間は全員、冒険者ランクFから始まりそのあとも、条件をクリアしていくことで段々とE、D、C、B、A、Sと上がっていく仕組みになっている。冒険者ランクは最高でSまであり、そこまでくるともはや英雄クラスだ。
さて、この冒険者ランクが上がると何がよくなるのか。それは受けられる依頼の数が増えてくるのだ。今回の依頼で言うと、この依頼はランクC以上の人間じゃないと受けられない依頼だ。難易度Fの依頼ならFランク以上、難易度DならDランク以上…のように、ランクで依頼の幅が広がっていく。
ちなみにだが、この男のランクは上から三番目のBだ。Bまで来るとやっと皆、口をそろえて実力者であると認める。
とりあえず男は依頼書を掲示板から引っぺがし、受付へと持って行った。受注待ちの列へ並び、男の番が来た。
「受付嬢、この依頼を受注したい」
「ひッ!?あっ、い、いえ、すみません!え、えっと、レンジさん。お、お久しぶりです。一応ランク確認のために冒険者カードを見せてください…いえ、ランクは知っていますけど、規則ですので…」
受付嬢が男と目を合わせた瞬間、涙目になった。この男の暗い濁った瞳はやはりギルドでも猛威を振るうようだ。この受付嬢は未だにこのもうもとに戻りそうにない瞳が怖いようであった。
それと、この男の名前はやはりというべきかジョンでは無かった模様。レンジという名前のようであった。あのアレクという青年に偽名を使った理由はなんとなくであった。特に深い意味は無いようだ。
ちなみに冒険者カードというのはその者のランクを表すカードのことだ。
「…はい、確認できました。受注完了です」
「そうか、ありがとう」
かくしてレンジはこの依頼を受注したのだった。
- 神様の落とし物 5話 ( No.5 )
- 日時: 2022/11/19 19:16
- 名前: 鱈むすび (ID: pRqGJiiJ)
レンジ視点
俺は、幼いころに、別の人間の人生を体験した。そいつの名前は飯田 蓮司。奇しくも俺と同じ名前だった。その蓮司は、その異世界のなかでは別に何の変哲もないただの一般人だったらしい。何か特別な力もなく、ただのありふれた親から生まれ、ありふれた人生を歩んだ。最後の終わり方は交通事故というものであったが、それもまあ、あんまり特別な死因では無いらしい。
とにかく、俺はこの記憶が目覚めたとき、この世界の不思議さに気付いた。俺…というよりは俺の中に巣食っていた蓮司が本物の魔法を見て興奮したのだ。そして、自分も魔法が使えることを知った時はもっと喜んでいた。そして俺、いや蓮司は魔法を極めて最強の称号である『大魔導士』を手に入れることを目指した。
――俺には魔法の才能があんまり無かったみたいだ。
俺が使える魔法なんてせいぜい手の平に拳サイズの火の玉や水の球を浮かべられる程度。前世の知識を生かして電流を起こしたり、ソナーの真似事をしてみたりなんていうことは出来たが、おこせる電気も少し痛いと感じる程度。ソナーは俺の半径一メートルくらいしか出来なかった。
魔法を使うには、『魔力』というものがいる。その魔力は生まれたころから人によって総量が違う。俺は人並み程度…つまりあんまり多くなかった。
それでも工夫した。魔力の消費を限界まで抑えようと努力した――が、うまくいかなかった。
俺は、大魔導士の器では無かったのだ。
それでも必死に努力して魔法以外も磨いた。とっくに大魔導士の夢は諦めてしまったが、それでも最強を求め続けた。これは俺たちの蓮司ではなくレンジの方が、強さというものが欲しがったからだ。
レンジは5歳の頃に家を『八咫烏』を名乗る強盗団に襲われて、自分一人を残して家族が皆殺しにされたらしい。そのときから、あのときの自分に強さがあればと思い始めたという。
どうやら俺には剣の才能あったようで結構な腕前まで上達した。
そのおかげか、俺は冒険者ランクCになることができた。
つまり、熟練者であると認められたのだ。
ほかにもいいことがあった。彼女ができたのだ。笑うと可愛くて、抱きしめたくなる。活発だが、自分の恥ずかしい行動を見られると、顔を真っ赤にして照れる、女の子らしい一面もちゃんと持っていた。
彼女の家に住まわせてもらうことになった。彼女のお父さんは元Cランク冒険者で、俺より強くないと娘はやらん、なんて言って。それをお母さんが隣で微笑ましそうに見ていた。彼女は恥ずかしそうにやめてよー!なんて言いながらお父さんにとびかかって。
幸せだった。このまま幸せが続いてほしかった。
幸せの終わりは突然訪れる。
どうやら俺が依頼を受けに行ってる間に彼女の家が強盗団に襲われたらしかった。家族は全員殺害され、貴重品の類は全て無くなっていた。
しかも強盗団は自ら名乗ったらしい。
その名も――『八咫烏』
ふざ、ける、な…ふざけ、るな…ふざけるな…ふざけるなふざけるなふざけるなッ!
お前らは、お前らはどれだけ俺から幸せを奪えば気が済むんだ!
それからはずっとずっと何かにとりつかれたように一心不乱に『八咫烏』について調べた。
だが手掛かりという手掛かりは一切得ることができなかった。
眼が、濁り濁り淀み、黒で塗りつぶされていった。どうしようもないくらいに目の奥に漆黒がたまっていった。
冒険者ランクがBに上がったらしい。どうでもいい。
俺は何か月も風呂にも入らずただただ情報を求めた。
が、もうあきらめて、いっそ静かに暮らした方がいいんじゃないかとも思い始めてしまった。もう俺の心は折れかけていたのだ。
まず手始めに風呂にでも入ろう。しかし今は金がない。依頼だ、久しぶりに依頼を受けに行こう。
そんなふうに考えているときに、ある一人の男に俺は呼び止められた。
- 神様の落とし物 6話 ( No.6 )
- 日時: 2022/11/23 16:12
- 名前: 鱈むすび (ID: pRqGJiiJ)
とりあえず、もともとの予定であった風呂に行くことはすでに心の優しい青年によって果たされてしまった。
そして、先ほどセリ村行きの相乗り馬車への予約を済ませたようで、馬車が出るのは午後三時ごろらしいので、必然的にあと二時間ほどやることのなくなったレンジはなんとなくぼーっとしながら街をぶらぶらと歩いていた。
時々だが、レンジの横を動物の耳がついた人間が通っていくことがある。彼らは一般的には獣人と呼ばれる種族であり、その特徴として動物の耳や尻尾がついているのだ。彼らは総じて魔法やそれに連なるものが一切使用できない。しかし、その代わりに高い身体能力を有しており、ただの人間が十人同時に襲い掛かってやっと互角になるクラスの屈強さだ。その上、彼らの種族には時々、『我壊』なるものを使えるものも混じっているようで、それなりの代償を支払うものの、それを使えば一時的に物理限界を突破することが可能だとか。
そんなことを思い出しながら無意味な散策をしていたレンジは突然後ろに嫌な気配を感じて、剣を構えながら振り向いた。しかし、そこには誰もおらず、周りの人間はレンジに変なものを見るような目を向けていた。
…いつまでたっても来ない襲撃に対して、レンジはそろそろ剣を収めようかと思い、警戒は解かずに前に向き直す。
「…勘が鈍ったか。あるいは――ッ」
その瞬間、金属と金属のぶつかり合う音が通りの中で響いた。周囲の人間はその音に一瞬硬直したが、誰と誰が剣戟をしているのか理解した途端に出来るだけ近づかないようにしながら、まるでなんてことないようにまた歩き出した。どうやらこの町では日常茶飯事のようだ。
「ははっ!久しぶり!気分はどうだい!?」
「今はてめえのせいで最悪の気分だよ!くそがッ!」
笑いながら剣で襲撃してきた男に対して、レンジは即座に反応してその一撃を受け止める。
そしてその勢いのまま暴言を吐き散らしながらも、相手の剣をするりと横へと逸らし、カウンターを仕掛ける。が、ひらりと簡単に避けられてしまう。
仕切りなおすためか、両者ともに一度距離をとった。
「ちっ…呼びかけも無しに切りかかってくるとかどんな精神構造してやがんだ、カミル。」
「えー、別に殺す気で襲ったわけじゃないし良くない?挨拶だよ、挨拶。」
そんな風に悪びれた様子も無く、先の襲撃を挨拶などと狂ったことを平然と言い放つこの男の名前はカミル。冒険者の間ではその狂った性格と卓越した剣技から、『狂刃』なんて二つ名で呼ばれている男だ。
二つ名というのは冒険者ランクがA以上の者と、一部の優れたBランク冒険者にギルドから送られるものでありその者の戦闘スタイルなどからつけられる、称号のようなものだ。時々、ランクが低くてもつけられるものもいるが、そんな事はほとんどない。
とりあえずレンジは苛立ちを隠そうともせずにカミルを睨みつけながら質問を一つ投げかける。
「で、冒険者組合レイル支部最強のAランク冒険者、『狂刃』様が俺に何の用だってんだ。」
「なにって、そりゃあ偶々見かけたから切りかかっただけだよ。」
「…そうだったな、てめえはそういうやつだ…、はあ…」
「レンジ君、ため息をすると幸せが逃げるよ?」
「誰のせいだと思ってんだ!」
レンジは痛くなる頭を抑えながら、心底嫌そうな顔をする。
「まあとりあえず見かけて挨拶したくなっただけだからね。僕はもう依頼に言ってくるよ、じゃあね!今度は出来るだけ人がいないところで切りあおうね!」
「誰がやるか!…あーくそ、なんだか一気に疲れたな。」
カミルが建物の上をぴょいぴょいと跳んで去っていく姿を視界に収めながら、まるで風だな、なんてことを考えながらレンジは心の底から疲れたように声を出す。どうやらAランク冒険者は身体能力も化け物らしい。しかし、本気ではないとはいえ、そんなAランク冒険者の一撃を事もなげに受け止めたレンジも相当に実力者のようだ。
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