コメディ・ライト小説(新)

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スイーツ・カフェでのひとときを。
日時: 2023/05/26 17:57
名前: むぅにゃあ ◆Eoyr90iGck (ID: O.mDLNUw)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13732

こんにちは…!!
初めまして、むぅにゃあと申します…!
小説初心者ですが、よろしくお願いします!
長編小説を投稿できたらな、と思います…!!
感想は、雑談掲示板の自スレにもらいたいです…!!!!

   《登場人物紹介》
・宮花 飴彩(みやか あめい)
この小説の主人公。
【MOOSEラ・テ】というスイーツ・カフェの主。
おとなしい性格だが、いけないことをした人には厳しい。
美味しい手料理で客をもてなす。
カフェが繁盛したきっかけの、あの人を待っている。
音雄にある感情を抱いている。

・彩伏 音雄(いろふし ねお)
飴彩のカフェに入ってきたお客。
奇妙な格好をしている。
「っす」が語尾の、チャラ男……に見える。
飴彩と何か関係が…?

  【目次】<見たい話をクリックすると、見ることができますよ…!
第一話 甘い雰囲気に包まれて。
>>01-06
第二話 酸味と甘みと酸味と。
>>07-

Re: スイーツ・カフェでのひとときを。 ( No.2 )
日時: 2023/05/20 20:59
名前: むぅにゃあ ◆Eoyr90iGck (ID: O.mDLNUw)

飴彩は、階段を上っていた。
階段の壁には、面積いっぱいにハーブが生い茂っている。
ところどころに、花の写真やおしゃれな壁掛けなどが飾られているところも工夫だ。
このカフェは、二階建てである。
一階は主に客をもてなす階だ。
そして二階は、飴彩が生活する階となっている。
飴彩は二階の廊下を踏むと、奥へと進んだ。
そして、チョコレートブラウンの戸を開ける。
戸の向こうには、飴彩の自室が広がっていた。
壁にはグレープパープルカラーとソーダブルーカラーのタイダイカラーの壁紙が貼られている。
点々とした白い模様が、まるで夜空に輝く星屑のようだ。
壁紙は夜空をあしらっており、見るたびにうっとりとしてしまう。
飴彩は部屋の隅へ行くと、ベッドへ飛び込んだ。
ぼふっという音がし、カーテンから垣間見る日光に、ほこりが照らされる。
飴彩は、深いため息をついた。
そのため息には、お客が来ない悲しさと、あの人に会いたい気持ち。そして、いつまでこのカフェが残るのだろうかという将来への不安が混ざっていた。
飴彩は、ゆっくりとまぶたを閉じた。
朝まで、このまぶたは開けないつもりであった。
だが_

かろん♪と、軽やかな音が久しぶりにカフェ内に響いた。
前まで鳴るたびにうんざりとしていたこの音色も、今では心地よく感じる。
飴彩は急いでエプロンを身に着け、階段をドタドタとおりた。
久しぶりのお客が来たという嬉しさに満ちていたため、階段を静かにおりる余裕など無かったのだ。
戸をかちゃっと開けると、そこには奇妙な格好をした人が立っていた。
飴彩を見下ろせるくらいの高い身長。
色白な肌はとてもゴツい。
肩まで伸びているふわっふわな髪の毛は、虹色に染まっている。
片方の瞳は青く、もう1つの瞳は黄色のオッドアイ。
瞳の下に広がるくま。
中央にライオンが描かれている紫色のTシャツに、ボロボロのジーンズ。
赤色と白色のストライプの靴下に、汚れた靴。
どこからどう考えても、怪しい格好である。
飴彩が戸を閉めようとすると、その人は手を前に出し、ストップの合図をした。
「俺……このカフェに用があるんだが。」
低い声だ。
「えぇっと……どうぞ。」
飴彩は戸惑いながらも、その人をカフェの中へと案内した。
お客が全く来ていなかったため床や椅子は汚れているが、その人は構わずに椅子に座った。
アンティークなデザインの椅子は、多少汚れていても気に触らないのであろう。
飴彩は、メニュー表を広げて見せた。
「何をご注文なさりますか? 」
その人はしばらく考え込んだ後、メニューを指さして言った。
「……じゃあ、パンケーキとコーヒーで。」
「かしこまりました〜! 少々お待ち下さい。」
低い声の後に飴彩の高い声を聞くと、低い声がさらに低く聞こえてしまう。
その間、その人はぼやっと一点を見つめていた。

Re: スイーツ・カフェでのひとときを。 ( No.3 )
日時: 2023/05/20 21:10
名前: むぅにゃあ ◆Eoyr90iGck (ID: O.mDLNUw)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13732

俺は、壁を見つめていた。
なぜ、このカフェにいるのか自分でも詳しくはわからない。
ただ、表を歩いていて目に入った字にうっすらとした記憶があったからだ。

【MOOSEラ・テ]

と黒い字でくっきりと描かれているプレートが、戸に吊るしてあった。
MOOSEラ・テ……どこかで聞いたことがあるような気がする。
だが、俺の記憶は決して当てにならない。
今まで記憶のせいで職業を失ったり、落とし物をしてしまったりしたことがあったからだ。
どうも2ヶ月前くらいから、記憶が悪くなってしまったようなのだ。
それまでは、きちんと職業にもついていたし、落とし物などましてやすることがなかった。
何が原因なのだろう。
医者に相談しても、原因不明だと言う。
もしも面倒な精神的な病気だったりしたらどうしよう、と考えるたびに震えが止まらない。
さらに、震えの原因もわからないのだ。
俺は何か……将来的な目的があったのだろうか。
別に、何かの職業につきたかったわけでもなし。
いや……待て。
俺の記憶は今、当てにならない。
何を考えても無駄だ。

_では、なぜこのカフェに入ったのであろうか。
俺は、白い壁を見つめていた。
ブラウンの縁取りがおしゃれだ。
この壁……懐かしい雰囲気が漂っている。
実家の壁紙だったのだろうか。
いや……俺の両親はおしゃれには敏感ではなかった……はずだ。
もう、どの記憶を信じて良いのやらわからない。
何も見ないほうが良いと感じて、うつむいた。
ほこりっぽい床だ。
どれくらい掃除をしていなかったのだろう。
また癖で何かしら考えてしまう。
ふと、視界に服が入った。
今日の俺の格好は、いつにもまして派手だ。
おしゃれなどわからないという思考は親譲り……であっていただろうか。
記憶が当てにならないのが辛く、頭が痛くなった。
とりあえず、寝ていよう。
アンティーク調の丸いテーブルに突っ伏し、柔らかい香りに包まれながら俺は夢へと運ばれた。

Re: スイーツ・カフェでのひとときを。 ( No.4 )
日時: 2023/05/21 09:46
名前: むぅにゃあ ◆Eoyr90iGck (ID: O.mDLNUw)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

飴彩は、キッチンにいた。
それにしても、怪しげだったなぁと心の中で思う。
事実、逃げるようにしてキッチンに来たのだ。
もちろん、お客の手前で逃げるような素振りを見せてはいけない。
きちんと昔通りに愛想よく振る舞ったつもりだ。
ふっと息を吐き、注文をメモした紙に目線を移動させる。
そこには、細くて焦ったような字で

パンケーキ
コーヒー

と書いてあった。
パンケーキは、このカフェ【MOOSEラ・テ】の名物だ。
あの人が頼んだこのメニューは当たりであろう。
飴彩はボウルを取り出し、中に材料を入れてホイッパーで混ぜ始めた。
お客がいくら来なくても掃除はやっていなかったはずだが道具だけはぴかぴかにしていたため、ほこりをはらう必要はない。
飴彩は、懐かしの歌を微かな声で歌い始めた。

♪君と共に……〜
♪歩き出そう……〜
♪例え、誰もいなかったとしても……〜
♪リズムに乗って……〜

この歌は、あの人から教えてもらった歌だ。
最初はテンポがズレることが多くあり、歌うことが困難であった。
だが、次第にあの人と歌っているうちに上達してきた。
そして、今はすらすらと何の間違いもなく歌えるようになってきたのだ。
キッチンの窓が少し開いている。
飴彩の歌声は、風と共に空気へと溶け込んでいった。
歌っている間に、手は休まず動いていた。
これが「二刀流」ということだろうか。
違う気もするが。
フライパンに生地のもとを流し入れ、丸く広がっていた。
飴彩はそのパンケーキが十分に焼けたことを確認すると、お皿に盛り付けた。
2枚のパンケーキを、薔薇柄のお皿に盛り付け、上からメープルシロップをかける。
バターを乗せると、とろ〜りと溶けていった。
そして、お皿の端にオレンジといちごを飾って完成。

次に、コーヒーを淹れる。
お湯を沸かし、ペーパーフィルターをセットする。
そしてフィルターにコーヒー粉を入れる。
コーヒー豆からコーヒーを作ることは流石に大変だという時だったため、コーヒー粉だ。
だが、今はコーヒー豆から作っても良いくらい暇だが。
ただ、長らくコーヒー粉から作っていたため、変わらない方法にすることにした。
その次に、コーヒーを蒸らす。
お湯を注ぎ、カップに注いだ。
カップはパンケーキのお皿とセットの、薔薇柄。

これで、注文の品が完成した。
飴彩は嬉しさでまた歌を歌いだした。
あの人と歌ったメロディーを……。



_曲名は、「2人の未来」

Re: スイーツ・カフェでのひとときを。 ( No.5 )
日時: 2023/05/24 17:33
名前: むぅにゃあ ◆Eoyr90iGck (ID: O.mDLNUw)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

飴彩は、
「ご注文の品が完成しました〜……! 」
と言って、お客のテーブルにことんと置いた。
「……どうも。」
虹色の髪の毛に埋もれた青い瞳が反射してサファイアのように光る。
飴彩は、一旦呼吸をおいた。
青い瞳……どうしても、あの人の瞳を思い出してしまう。
あの人もオッドアイであり、とても綺麗な瞳の持ち主であった。
その瞳にとてもそっくりであったのだ。
しばらく、お客の瞳をじぃっと見てしまった。
お客は眉をひそめ、怪訝な顔をした。
「……どうしたんすか。」
飴彩は、必死にごまかした。
まさかとは思うが、名前を聞いてみる。
もし名前が同じであったら間違いなく、あの人だろう。
「ぁの…お名前は何と言いますか……?」
当然、店員から名前を聞くということなど珍しいだろう。
というより、よっぽどなことがなければ聞くはずはない。
お客は、また眉をひそめた。
そして、頬杖をついた。
いろふし 。」
聞いたことのない名前だ。
やはり、あの人ではない。
「そうですか……ありがとうございます。」
飴彩は、さっとカウンターの奥へ逃げるように駆け込んだ。
少しでも期待してしまった自分が恥ずかしく思える。
彩伏 音雄。
響でさえも全く違う。
あの人の名前は_

かんちょう ふう

彩伏の、「い」の字も入っていない。
飴彩が1人でもんもんと考えている間、お客はテーブルに置かれたパンケーキをじぃっと見ていた。
このパンケーキに見覚えがある。と瞳が語っているようだ。
飴彩は、そぉっとカウンターから出た。
そして、じっとお客の様子を見ていた。
別に観察しているわけではないということをアピールするかのようにレシピのページをめくる。
だが、実際はレシピではなくお客の行為に集中していた。
お客のことを、ちらっちらっと見る。
お客はしばらくして、ナイフとフォークを手に取った。
ナイフとフォークの銀色が映えている。
一切れナイフで切り、フォークで刺して口へと運ぶ。
パンケーキはお客の口の中で動いている。
そうこうしてパンケーキが跡形もなくなると、お客はコーヒーを飲みほした。
ぷはぁ……と息を吐く。
まるで、ビールを飲んだ人かのようだ。
飴彩がまたちらっと目線をお客にやると、お客と目があってしまった。
びくっとした飴彩は、急いでレシピに目を移す。
お客は、じっとこちらを見ていた。
飴彩の背中にじとっとした汗を感じる。

Re: スイーツ・カフェでのひとときを。 ( No.6 )
日時: 2023/05/26 17:53
名前: むぅにゃあ ◆Eoyr90iGck (ID: O.mDLNUw)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

しばらく、沈黙が続いた。
飴彩の汗を乾かそうと、生ぬるい風が吹きすぎていく。
じめじめとした梅雨のような感覚だ。
飴彩は、焦る声を懸命にしぼり出した。
「ええぇぇと……。片付けますね……! 」
「ぁ……どぉも。」
そっけない口調で話、お客は軽く会釈をした。
飴彩は、お客の前から一刻も早く姿を消したく早足でカウンターの奥へとお皿を運んだ。
あと少しで隠れることができる_
と思ったが速かったか、この音が響いたが速かったか。
ぱりーん!
カフェ内に、細くて鋭い音がエコーした。
隠れることができなかった恥ずかしさとお皿を割ってしまった恥ずかしさで、飴彩の顔が火照った。
自分でもわかるくらいに熱い。
急いでカウンターの奥へ入り、ちりとりを持ってきた。
そして破片を集めようとちりとりをセットした時……。
ちょん、とふにふにしたものが手に当たった。
何かと思って、すっかり冷めてしまった顔をあげた。
そこには、お客……音雄がしゃがんでいたのだ。
「……そのちりとり、ちょっと貸してみ。」
驚きで声が出ない飴彩をまるで視界に入れないかのように、ちりとりを受け取る。
そして、さっさっと破片を集めると、ゴミ袋に入れた。
飴彩は予想外の出来事にびっくりし、音雄の虹色の髪の毛を見つめることしかできなかった。
カラフルな塊に視線を送る飴彩の心には、新たな感情が抱かれていた。
音雄は、カフェの扉を片手で開ける。
外の空気が、待ち構えていたかのように入り込んできた。
音雄は、外に足を踏み出すと、飴彩の方を振り返った。
「……俺……。自分の名前とか住所とか、たまに間違えるんす。で……いつもメモと鉛筆、持ってるんすよね。大事なことはメモに書くと、見返して思い出すことができるんす。あなたの名前……教えてくれないすか。」
「えっ? 」
突然の要求に飴彩はたじろいだが、答えた。
「えと……宮花 飴彩で、みやか あめいって読みます。」
音雄は、メモに鉛筆で書き加えた。
「ありがとっす。また来るかもっす。この店……良い店っすよね。絶対繁盛するっすよ。」
「あ……ありがとうございます……! またのお越しをお待ちしております! 」
飴彩は、さっきまでの恥ずかしさなどなかったように明るさに満ちた声で言った。
音雄は振り返らずに、スタスタと道沿いに歩いていった。

「……飴彩さんっすか。覚えていないわけ、ないっすよ。俺の頭でさえも。」
カツカツと歩く男の独り言を、道のわきに生えている植物たちがじっと聞いていた。


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