コメディ・ライト小説(新)
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- 爆走メトロノーム!
- 日時: 2025/04/05 21:19
- 名前: 美絢−Miharu− (ID: Ri2ciVSR)
♡内容♡
これは、人生のどん底にいる主人公、紅曽根 美玖が、世界一のアイドルを目指すお話である。
美玖が活動しているグループ『METORO ♪ NOMU』では、酷い嫌がらせが増えていた。
それは、美玖があるドラマの出演が決まってからだ。
共演相手は、超人気男性アイドルグループ『★HAMARU★』のセンター、金宮 奏。
嫌がらせは金宮ファンや、メンバーによるものだった。
美玖を嫌がらせから守ったのは、奏だった、、、
美玖の人生は、奏との出会いで大きく変わってゆく。
そして、東京ドームへの夢に向かって爆走を始める。
♡登場人物♡
名前:紅曽根 美玖(あかそね みく)
『METORO ♪ NOMU』のセンターを務めている。嫌がらせにより、人生のどん底に突き落とされる。
名前:金宮 奏(かなみや そう)
『★HAMARU★』のセンターを務めている。美玖を、ファンの嫌がらせから守り抜く。
名前:小宮山 苺(こみやま いちご)
『METORO ♪ NOMU』の一番人気メンバー。そして、美玖の事が嫌いで、嫌がらせをする。
名前:川南 裕翔(かわなみ ゆうと)
『★HAMARU★』のメインボーカルを務めている。お笑い担当とも言われていて、子供に人気。
♡『METORO ♪ NOMU』他のメンバー♡
名前:暁月 千夏(あかつき ちなつ)
名前:三嶋 朱里(みしま あかり)
名前:明星 未来(あけぼし みらい)
名前:畑中 結衣(はたなか ゆい)
♡『★HAMARU★』他のメンバー♡
名前:石黒 悠(いしぐろ ゆう)
名前:美濃又 亜門(みのまた あもん)
名前:髙石 蒼(たかいし あおい)
名前:小鳥遊 麗(たかなし れい)
♡他の登場人物♡
名前:田島 健二郎(たじま けんじろう)
〘プロデューサー〙
名前:百瀬 彩(ももせ あや)
〘美玖と仲良しなスタッフ〙
名前:花道 沙也加(はなみち さやか)
〘伝説のアイドル〙
♡追加キャラクター♡
名前:早乙女 亮子(さおとめ りょうこ)
〘STER☆DREAM社の社長〙
(STER☆DREAM社とは、『METORO♪NOMU』や、『★HAMARU★』をプロデュースした会社)
名前:美鈴 歌恋(みすず かれん)
〘『METORO♪NOMU』の新メンバー〙
名前:東川 愛里寿(ひがしかわ ありす)
〘『METORO♪NOMU』の新メンバー〙
♡ご忠告♡
投稿した作品には、打ち間違いがある可能性があります。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
ぜひ、美玖になった気分で読んでみて下さい!楽しんで読んでもらえると、私としても嬉しいです!
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
- 爆走メトロノーム!#7『おかゆ』 ( No.7 )
- 日時: 2025/04/03 15:20
- 名前: 美絢−Miharu− (ID: Ri2ciVSR)
「美玖ちゃんは、きっと、奏と出会ったせいで、前に進めなくなってるんじゃないかな?」
私が、、、『前進』出来てない、、、?
そんなわけないよね、、、?
だって、奏は、『出会えたから』って、言ってたよね、、、?
* * *
「あぁ〜!」
私は、仲良しのスタッフ百瀬 彩の前で、大きなため息をついた。
彩は、「どしたん?」って関西弁で心配そうに問いかけてきた。
「辛い事あったんなら、うち聞いたるで?」
「いやぁ?ちょっと暇でねぇ、、、」
彩は、『はて?』と首をかしげた。
「仕事は?」
「お休みぃ、、、」
忙しかったので、休憩を貰っている。
ドラマの撮影も終わったし。
「そういえばさぁ、、、『★HAMARU★』の石黒くんがねぇ、変な事言って来るんだよぉ?」
「変な事?」
夢の中の話だし、あまり気にしてないけど、やっぱおかしいよね?
『奏と出会ったせいで、前に進めなくなってるんじゃないかな?』
この言葉が一体何を意味するのか。
私は全然理解出来なかった。
だって、奏と出会ったから嫌がらせも収まったんだよ?
「全く分からへんなぁ、、、もしかして、美玖、金宮くんと親しいんか?」
「まぁね、、、」
彩は知らない。
私が奏とお付き合いをしている事を。
「まぁ、でも、『金宮くんと出会ったせいで、起こらなくてもいい問題が起きてる』からとかちゃうか?」
確かに、この前の監禁事件なんて、元は奏から始まってるわけか。
このままじゃ、伝説のアイドルへの花道は、全然進めないじゃないか。
「彩、相談のってくれてありがとー!私先行くね!」
「じゃ、気をつけーよ!」
私は、カバンを持ち、あそこへと向かった。
走って行くけど、周りがざわざわしてうるさい。
『あれって、紅曽根 美玖じゃね?』とか、『可愛すぎね?』とか、まじうるさい。
言われても嬉しくなんかない。
私は、奏に言われたいんだ。
ピンポーン
私は、あの人の家を訪ねた。
あの人とは、金宮 奏の事だ。
確か、奏も休みを貰っていたはず。
「あら、どちら様でしょうか?」
いきなり声が聞こえて、声が聞こえた左側を見た。
そこには、奏のお隣さんだろうか。
お年寄りの女性がいた。
買い物帰りなのか、ビニール袋を持っている。
「奏ちゃんのお友達かい?もしかして、芸能人だったりする?」
「えっとぉ、、、まぁ、そうですね、、、」
お年寄りは、『まぁ凄い!』と大はしゃぎをしている。
「通りで綺麗な方だなぁって思ってたのよぉ、、、」
お年寄りは、お喋り上手のようで、奏の事も、『奏ちゃん』と呼んでいるみたい。
「もしかして、彼女さん?奏ちゃんも幸せ者ねぇ。」
『あはは、、、』と苦笑いでごまかしながら、前を向いた。
奏が中々出てこない。
「そういえば、奏ちゃん、体調不良らしいわよぉ?もしかしたら、寝込んでるのかね?」
せっかく美味しい食べ物を買ってきたんだ。
食べてもらいたいし。
そうだ、おかゆの材料買ってこよう!
そう思い、スーパーへ駆け出した。
ピンポーン
スーパーから帰って来て、もう一度チャイムを鳴らす。
しばらくして、扉が開いた。
「はーい、、、美玖?」
「体調不良なんでしょ?おかゆ作るよ?」
私は、許可がおりていないのにも関わらず、奏の家に入る。
奏は慌てて止めようとする。
「私、奏の彼女だよ?これくらいさせて。」
奏は、『ありがと』と言ってくれた。
私は嬉しくて、奏につい抱きついてしまう。
慌ててベットに寝かせる。
「出来たよぉ〜!」
私は、机の上におかゆを置いた。
奏は、『いただきます』と言って、黙々と食べ始めた。
ここで、私が言いたかった事を言った。
「あのね、、、私、、、アイドル辞めようと思うんだよね、、、」
「、、、は?」
奏は、黙々と食べていたのに、急にピタッと固まってしまった。
私は話を続けた。
「夢の中でね、石黒くんが言ったの、、、『奏に出会ったせいで、前に進めなくなってるんじゃないかな』って。」
私は、涙が溢れているのが分かっていたけれど、何故か、拭こうとは思わなかった。
「それに納得出来ちゃって、、、でも、奏と一緒にいたいから、アイドル辞めようかなって、、、思ったの、、、」
私は、怖くて、奏の方を見ることが出来ない。
きっと、怒るだろう。
「違うよ、、、」
「、、、え?」
思わず、奏の方を向いてしまう。
奏は、うつむいたまま、私に言った。
「『伝説のアイドル』になるんじゃなかったのかよっ!なれたら、結婚するんだろっ!そんなに簡単に夢諦める様じゃ、一生なりたいものになんかなれねーよっ!」
奏は、そう言うと、ベットに寝込んでしまった。
おかゆも残ったまま。
「そう、、、だよね、、、奏ならそう言ってくれるって信じてた!」
「っ!?」
きっと、私達は『前進』出来てるよね!
石黒くんの言う事なんか、信じるもんか!
だって、石黒くんは川南くんをいじめてた犯人のリーダーだぞ?
私は、残ったおかゆを捨てようと、キッチンに向かう。
すると、奏が、、、
「おかゆは冷蔵保存なら、二日間保つ、、、後で食べっから、、、捨てるな、、、」
「うん、分かった。」
私は、冷蔵庫におかゆを入れた。
美味しかったかな?
私、おかゆは特に得意なんだよね。
だって、弟の看病とか、よくしてたし。
今はあまりないけど。
おかゆ作ったの久し振りだったな。
また作りたいな。
「案外、奏って料理好き?」
「、、、まぁね。」
その翌日、『So.Kanamiya』のメールから、おかゆと奏の写真と、『おかゆ完食しました!』と、送られてきた。
私は、嬉しくって、飛び跳ねていた。
その時。
ピンポーン
家のチャイムがなった。
私は、不思議に思い、ドアの穴から、覗いてみた。
すると、黒いフードをかぶった男性らしき人物が、家の前に立っていた。
顔が少しだけ見えるが、心当たりがない為、不審者だと、直ぐに理解した。
「いるんだろぉー?紅曽根 美玖ぅー!出てこいよぉー!何もしねーからぁ!」
私は、尻もちをついた。
慌てて、『So.Kanamiya』に助けを求めるメールを送った。
そして、バレない様に、自分の部屋のクローゼットの中に隠れた。
自然と、涙が溢れた。
- 爆走メトロノーム!#8『恋愛禁止』 ( No.8 )
- 日時: 2025/04/04 10:13
- 名前: 美絢−Miharu− (ID: Ri2ciVSR)
ぶるぶる、、、
私は、クローゼットの中で身体を震わせた。
玄関で、扉がガンガン叩かれている音がここでもよく聞こえる。
その時、スマホが鳴り、見てみると、『So.Kanamiya』の既読がついた事に気がついた。
これで助かる、そう思った。
「いるんだろぉ〜?隠れても無駄だぜぇ?」
すぐ近くに、不審者がいるみたいだ。
どこから入って来たかは知らないが、とにかく、口をふさいでバレない様にする。
その状況が、三十分程続く。
ピコンッ
スマホが鳴った。
私は、絶望した、、、
だって、すぐそこに不審者がいたんだから。
「ん〜?今なんか聞こえたなぁ〜?」
クローゼットを開けられてしまう。
完全に頭が真っ白になった、その時。
「何してんだよぉ〜!」
奏だ。
奏が、メールを見て、助けに来てくれた。
私は、さっきまでの『恐怖』がなくなり、『安心』した。
「いたっ!何しやがるっ!金宮 奏っ!」
「俺の事知ってたの?じゃあ、俺と美玖が付き合ってんのは知ってるか?」
「は!?知ってるよっ!」
知っている。
どうゆう事だろうか。
私達は、ずっと秘密にしてきたはず。
何故知っている?
「小宮山 苺のSNSに投稿されてたよっ!」
不審者は、苺のSNSを見せてきた。
それには、昨日のキスが、映し出されていた。
『紅曽根 美玖は、金宮 奏とキスしてました〜!アイドルは、恋愛禁止ってルール、破ってました〜!』
そう、アイドルは恋愛をしてはいけない。
私はそのルールを知っておきながら、破ってしまっている。
「俺はなぁ、、、紅曽根 美玖の大ファンだった、、、恋愛禁止条例があったから、沢山応援出来たんだ、、、なのに、、、なのに!どうしてっ!」
不審者は、崩れ落ちる。
私、その雰囲気に我慢できなくなり、クローゼットから出てくる。
「、、、ごめんなさい、、、最初は、恋するつもりなんて、なかったんです、、、でも、彼が、嫌がらせを受けていた私を、、、救ってくれたんです、、、私には、彼が必要な存在になってしまった、、、それなのに、恋愛禁止なんて、、、酷いじゃないですか、、、」
「いや、、、がらせ、、、?」
不審者の男は、私が嫌がらせを受けていた事を知らない。
だからこんな事をしてしまう。
「私、嫌がらせがあった事、全て世に広めますっ!」
「「は?」」
* * *
『続いてのニュースです、、、「METORO♪NOMU」の紅曽根 美玖さんが嫌がらせを受けていた事が分かりました、、、嫌がらせは、メンバーの小宮山 苺さん、暁月 千夏さんや、「★HAMARU★」の金宮 奏さんのファンの皆さんから受けていました、、、え〜、、、また、紅曽根 美玖さんが、金宮 奏さんと、付き合いをしていると明かしました、、、現在、アイドルは恋愛禁止条例がありますが、え〜、、、』
私と奏は、全ての真実を明かした。
そのニュースは、直ぐに世に知れ渡り、気になるニュースランキング一位を記録した。
『美玖さんは、「恋愛をせざるを得ない状態になってしまいました、、、最初は、苺と、千夏からの嫌がらせから始まり、奏とのドラマの共演が決まってから、奏のファンからの嫌がらせも増え、嫌がらせの手紙も家に大量にあります、、、そんなある日、奏が、嫌がらせから守ってくれました、、、私の様な状態に陥るアイドルは、これから沢山増えてくると思います、、、なので、十分気をつけてほしいです、、、私は、このどん底から、世界の頂点に駆け上がります、、、皆さん、どうか、こんな私ですが、応援してほしいです。」と語っております。』
全てを明かせば、楽になれる。
そう思った。
『また、奏さんは、「美玖は、嫌がらせから、ずっと、耐えてきました、、、私は、その嫌がらせが、自分がきっかけで始まっていると、感じていました、、、それを謝ると、『大丈夫、奏は悪くない』と、慰めてくれた事もありました、、、こんな状態のアイドルがいるのに、恋愛禁止条例は、あまりにも虚しいと思います、、、私は、恋愛禁止条例を解消する事を提案致します。」と言っています。』
楽になれば、奏と一緒にいられると思った。
奏に頼らなくても、頂点へ駆け上がれる人間になれると思った。
『これから、「STAR☆DREAM社」の社長、早乙女 亮子氏は、「恋愛禁止条例を解消する」と発表しました。』
『STER☆DREAM社』の発表で、その後、私と奏以外にも、少し違うが、嫌がらせや、仲間はずれを受けていると発表した人は何人か現れた。
その中に一人、川南 裕翔も。
また、『METORO♪NOMU』の畑中 結衣も。
結衣は、『METORO♪NOMU』の中でも、美玖が一番仲がいい存在だ。
嫌がらせを受けていたなんて全く知らない。
もしかしたら、結衣は、メンバー人気投票で、ビリだったので、それから嫌がらせが始まったのかもしれない。
私は心配になり、すぐに結衣のもとへ向かった。
結衣は、暗い顔などせず、明るい顔で、『どうしたの?』と言ってくる。
「嫌がらせ、受けてたんだよね、、、?」
「、、、うん、、、」
結衣は、少し暗い顔になった。
私は、結衣に抱きついた。
「ごめんね、、、気づけなくて、、、」
「しょうがないよ、、、美玖ちゃんがいないとこでされてたんだもん、、、」
結衣は、大粒の涙を流した。
本当に、気づいてあげられなかった事を悔やむ事しか出来ない。
「それに、美玖ちゃんだって、、、嫌がらせ、受けてたんでしょ、、、?そっちこそ大変だったんだよね、、、?」
「でも結衣は、一年間も我慢してきたんでしょ、、、?」
結衣は、一年間我慢してきたと発表している。
私の倍以上は我慢しているんだ。
「美玖ちゃん、苺ちゃん達だけじゃなくて、金宮くんのファンからも受けてたんでしょ、、、?」
「そうだけど、、、」
結衣は、他の人を心配したがる癖がある。
私は、結衣のそうゆう性格に寄せ付けられたんだ。
こんなに優しい結衣がいじめられるなんて、この世界は無様だ。
私は許さない。
何より自分を許さない。
奏まで巻き込んで、結衣が嫌がらせを受けていた事も気づけなかった。
今すぐにでも、罪を償いたい。
でも、一度『頂点』に立つと決めた。
一度決めた夢は諦めるわけにはいかない。
絶対に、私がみんなの夢を背中に背負って、花道を駆け上がってみせる。
そして、この無様な世界を見下ろす。
もし償うのであれば、私は『頂点』に立ってから償う。
この無様な世界を見返してみせる!
- 爆走メトロノーム!#9『夢を届けるお仕事』 ( No.9 )
- 日時: 2025/04/07 15:39
- 名前: 美絢−Miharu− (ID: Ri2ciVSR)
嫌がらせの事件が世に知れ渡ってから、約半年の時が経った。
私は今も、アイドルの仕事を続けている。
今は、初期メンバーの苺と千夏が卒業する事になったので、卒業記念ライブをしている最中だ。
二人卒業したので、二人新メンバーが加わる事になった。
加わったのは、オーディションの結果、最終順位二位以内に入った、美鈴 歌恋、東川 愛里寿の二人だ。
センターの苺が卒業した為、新たなセンターを決めた。
速攻で手を挙げたのは、新メンバーの美鈴 歌恋だった。
私も二番目に手を挙げたものの、遠慮しがちの性格な私は、歌恋にセンターを譲ってしまった。
そして、新体制『METORO♪NOMU』の初ライブの日がやって来た。
その日は、生憎の大雨で中止になってしまった。
新センターに抜擢された歌恋は、事務所で一人、うつむきながら椅子に座っていた。
私は、あまり話した事がなかったが、話しかけてみる事にした。
「あの、、、歌恋さん、、、?大丈夫、、、ですか、、、?」
「、、、え?」
歌恋は、驚いたように私を見つめた。
私は、『うつむいていたから、何かあったんじゃないか』って言う。
すると、歌恋は『心配してくれてありがとうございます』と優しく微笑んだ。
その笑みは、今までに見たことのない、輝きを放っていた。
「私、ずっとアイドルが夢だったんです。」
そして、歌恋は過去の話をし始めた。
でも嫌じゃない。
歌恋は、私の事を信頼してくれている。
だから、私に過去の話を出来るんだ。
「それで、最初は、『きらめき☆宣伝部』って言うグループで活動して来ました、、、そのグループのセンターの子が言ったんです、、、『アイドルは、夢を届けるお仕事』なんだって、、、」
『きらめき☆宣伝部』は、人気アイドル会社のアイドルグループの一つだが、その会社の中でも一番売れなかったグループだ。
でもそのグループのセンターは、その後、『きらめき☆宣伝部』が解散し、新たなグループに加入した。
そのグループは、後々、人気が爆発し、センターも『きらめき☆宣伝部』の元センターが抜擢された。
このようにして彼女は、若者から一気に人気になった。
彼女は売れる運命だったのかもしれない。
『アイドルは、夢を届けるお仕事』。
そんな発想、私には思い浮かばない。
この世の中、色々疲れた人達に贈る夢。
それは、その人達にとって、かけがえのないものになり、その想いは引き継がれていく。
そうなる為にアイドルは存在する。
そして、アイドル側も、沢山のファンに夢も貰う事が出来る。
「その時思ったんです、、、『この人は必ず売れる』って、、、なんとなく、自分が売れない理由が分かった気がしたんですよね、、、今でもあの人には感謝しています。」
私も夢を届けなくてはいけない。
そう思えた。
「だから、少しでもファンの方々に夢を届けられなくて、、、悔しいだけなんです。」
あぁ、、、
この子は売れる。
私よりもずっと、ずっと、、、
少し悔しい。
私に足りないのは、そうゆう気持ちだ。
もっと、自信をもって、手を挙げられるようになりたい。
はっきり悔しめるようになりたい。
それが、私の新たな目標である。
「歌恋さん、ありがとうございます、、、良い事を学べました!」
私はそう言って、その場から去って行った。
歌恋は首をかしげているように見えた。
でもその後、にっこりと笑った。
* * *
「『METORO♪NOMU』の新曲聴いた?」
「聴いたよ!『オトドケモノ』でしょ?『METORO♪NOMU』の歌、めっちゃ良いよね〜!」
『METORO♪NOMU』は、圧倒的な人気を誇った。
『★HAMARU★』よりも。
その中でも特に、新メンバーである、美鈴 歌恋は、、、
「あっという間に、抜かれちゃったなぁ、、、」
「ま、良いんじゃないの?」
「良くないよ!」
奏は、まだ人気メンバーランキング一位をキープしているらしい。
私は、歌恋に抜かれたけど、、、
「『METORO♪NOMU』も売れてんだから。」
奏は、他人事のように言う。
まぁ、他人っちゃ、他人かもだけど。
「でも、、、前まで一位だったんだよ?それをたった二カ月で抜かれるこっちの身にもなってよ、、、」
* * *
最近、よく結衣が歌恋と仲良く話しているのを見かける。
安心の気持ちもあったが、寂しい気持ちもあった。
だって、結衣に友達が出切る事は嬉しい事なんだけど、置いて行かれてる気もする。
「あ!美玖ちゃん!ちょっと来て!」
結衣に呼ばれて、二人のそばに寄っていく。
すると、結衣が言った。
「私、友達出来たの!だから、美玖ちゃんは、私の事、あんまり無理して関わろうとか、思わなくて良いからね?」
無理してなんかいなかった。
結衣は、私が唯一仲のいい存在だった。
それなのに、、、
『無理して関わろうとか、思わなくて良いからね?』
信じてた。
結衣だけは、そんな事言わないと思ってた。
「結衣にはもう、、、私なんて、どうでもいいんだね、、、結衣にはがっかりだよ、、、」
「え、、、?」
私は走って逃げ出した。
結衣は、慌てて私を止めようとする。
でもそんなの気にせず、走り続ける。
思わず、涙が溢れ出していた。
そりゃそうだ。
一番大切な人を失うのと同じ事だもん。
涙が止まらない。
止まれ、、、止まれ、、、
「ボフッ」
「いだっ!」
私は誰かにぶつかったようだ。
誰に当たったのか見ようと、上を見上げる。
すると、そこにいたのは、奏だった。
「え?泣いてる?どうしたの!?」
「奏には、、、関係ないよ、、、」
そう言って、通り過ぎようとするが、腕を掴まれて、前に進めない。
「教えてよ、、、俺だって美玖の役に立ちたいんだよ、、、」
「、、、」
奏はもっと強い力で掴んでくる。
私は逃げ出せないと諦め、正直に話した。
「結衣さんのとこ、戻れば?美玖が感じた事を正直に話せば、きっと仲直り出来る。」
「、、、そんなの、、、分かってるよ、、、でも、結衣には、私なんかいらないんだってば、、、」
私は、奏の手を振り払う。
すると、逃げ出そうとした、その時、、、
「美玖ちゃんっ!」
後ろから、結衣の声が聞こえたので、振り返ろうと思ったが、気持ちをおさえた。
振り返らず、うつむいたまま。
「ごめん、、、全部聞いてた、、、まさか、美玖ちゃんがそう思ってるなんて知らなかったんだ、、、」
結衣の後を、歌恋が追ってくる。
結衣は、話を続けた。
「だから、、、まだ友達でいて、、、?私には、美玖ちゃんが必要なの、、、」
私は、結衣といてはいけないのかな?
こんなに辛い思いをするって事は、ここにいてはいけない証拠?
「ありがと、結衣、、、でも私、アイドル辞めるね、、、」
「え、、、?美玖ちゃん、、、?」
私は、そのまま駆け出した。
- 爆走メトロノーム!#10『美玖の過去』 ( No.10 )
- 日時: 2025/04/09 16:40
- 名前: 美絢−Miharu− (ID: Ri2ciVSR)
「はぁっ、、、はぁっ、、、はぁっ、、、」
私は、ひたすら走り続けた。
誰も追いつけない場所を目指して。
でも、誰も追いつけない場所なんてこの世に存在しない。
だって、もう既に、追いつかれてしまっているんだから。
「はぁっ、、、美玖っ、、、なんで、、、逃げたり、、、するんだよっ、、、!」
奏に。
奏はどうやら、足が速いらしい。
私が逃げようとしても、すぐに追いつかれて、腕を掴まれてしまう。
「もうっ、、、私の居場所なんて、、、ないんだよ、、、?」
「居場所、、、?」
紅い夕焼けの空。
空が私達を紅く染めた。
その頃結衣は、、、
「行っちゃったね?いいの?行かなくて。」
歌恋が、結衣に問いかけた。
結衣は、動こうとなんてしない。
いや、身体が震えて動けない。
本当は行くべき。
「本当は行きたいんでしょ?」
「、、、い、、、行きたい、、、」
歌恋は、ニコッと笑う。
そして、結衣に優しく言った。
「じゃあ、行ってきな?」
「、、、でも、、、」
結衣の身体は益々震えた。
踏み出そうとしているのか、右足が一歩前に出ている。
でもやはり怖いのか、その右足を引く。
「本当は、どうゆう思いで、『無理して関わらなくていい』って言ったの?」
「、、、心配、、、かけたくなくて、、、」
歌恋は、納得したように頷いた。
そして、結衣の頭をなでた。
「そっか、、、じゃあ、なおさら伝えなきゃね?友達でいたいのなら、話しかけることが一番なんだよ?結衣ちゃん、最近私とばっか話してるじゃん?きっと、、、美玖さんはそこに混ざりたかったんだよ。」
その言葉が響いたのか、結衣が急に走り出した。
歌恋は、安心のため息をついた。
「私も、、、いい仕事は出来たかな?」
そして、元の場所へと戻っていった。
結衣は、美玖と奏の場所までたどり着く。
結衣に気づいていない二人に向かって、大きな声で言った。
「美玖ちゃんっ!」
「「っ!」」
美玖と奏は、結衣の方を見た。
結衣は、大きく息を吸って、言う。
「私ねっ!傷つけるつもりはなかったのっ!ただ、『心配かけたくない』だけなのっ!最近、美玖ちゃんと話すこと減っちゃって、美玖ちゃんがずっと一人で苦しんでるの、本当は知ってたんだ、、、でも、、、勇気出せなくて、、、それで、歌恋ちゃんに友達に上手く話しかける方法教わってたんだ、、、気づいてたのに、気づいてないふりなんかしてごめんなさいっ!」
結衣は、深く頭を下げた。
結衣の目からは、涙が溢れ出していた。
雨、というよりも、小雨と言った方がいいだろう。
少しずつ流れていくのだ。
「えっ!?結衣!?頭上げてっ!?」
「、、、ごめん、、、なさい、、、」
結衣は謝るだけで、頭を上げようとはしなかった。
きっと、ものすごく反省しているんだ。
でも、結衣は悪くない。
勝手に勘違いした私が悪いんだ。
「違うよっ!?結衣は悪くないって!」
「ごめんなさいっ、、、ごめんなさいっ、、、」
まだ結衣は頭を、上げようとしない。
私は慌てて、結衣を励ます。
でも頭を上げようとしなかった。
「結衣っ!」
私は、結衣に抱きついた。
抱きつける人は、奏以外にもいたんだ。
私は、小さい頃から芸能界入りし、忙しかったので、親に会う事はほとんどなかった。
というか、母親は昔に病死し、父親はストレスで前が見えず、交通事故で死んだ。
私は可哀想な子役と言われてきた。
ちなみに私は、元々アイドルじゃなくて、子役をしていた。
でも、花道 沙也加の事を知ってから、人生が大きく変わった。
* * *
『皆さん!花道 沙也加のライブに来て頂き、ありがとうございま〜す!』
初めて見たのは、花道 沙也加の、デビュー五周年を記念したライブの日だった。
お父さんが沙也加ファンだったのもあり、テレビを横で見ることになった。
最初は、アイドルなんて、つまらないものだと思っていたけど、違った。
沙也加のライブは、どのアイドルよりも、どのアイドルグループよりも輝いていた。
沙也加だけ、何かが違うような気がした。
「お父さん、この人好きなの?」
お父さんは『そうだよ』と答えた。
確かにこの花道 沙也加というアイドルは、誰よりも輝きを放っていた。
でも、一つだけ、許せない事があった。
「お母さんはっ!?なんで、、、なんで、お母さん以外の人を好きになるのっ!?」
お父さんは、顔を歪ませた。
その時の私は、幼かったので、お父さんの気持ちなんて、一切考えられなかった。
「こ、、、これは、、、『恋』じゃないよ、、、た、、、ただ、、、沙也加が李玖に似ていたから、、、」
お父さんは、気弱な性格だったのもあり、怯えながらそう話した。
私は許さなかった。
だって、お父さんにはお母さんしか、いないんじゃなかったの?
お父さんはそう言ってたのに。
お母さんを裏切るの、、、?
「お父さんなんて、大っきらいっ!」
お父さんは、きっとこれがきっかけで、ストレスが溜まり始めたんだと思う。
お父さんを殺したのは、私だったんだ。
お母さん、、、怒るよね、、、
「アイドル、目指してみない?」
既に芸能界入りしていた私は、その声が聞こえた時、断ろうと思った。
アイドルなんて、やりたくない、そう思ったからだ。
雨が降っている歩道で、話しかけられた私。
上を見上げると、花道 沙也加がいた。
沙也加は、傘を私に渡してくれた。
その沙也加の優しさが、あの輝きを生み出しているのではないかと思った。
「もしかして、子役の美玖ちゃんだよね?李玖にはお世話になっていたわ。」
私の事は知っていたらしい。
そして、私の親が死んだ事も知っていた。
私の母親、李玖は、人気俳優だった。
もう既に病死しているが、病死したというニュースはすぐに世に知れ渡った。
だが、そのニュースが注目されたのはほんの少し間だけで、すぐに忘れ去られた。
でも、沙也加は覚えていた。
共演をしていたところは見た事がない。
きっと、他の仕事で会っていたんだ。
「私でも、、、アイドルになれる、、、?」
「えぇ、なれるわ。」
その日、私はアイドルを目指す事を決意した。
沙也加は私がアイドルを目指すきっかけをくれた人物だった。
* * *
「結衣は姉妹みたいな存在なんだよ、、、家族がいない私にとって、欠かせない存在なの、、、だから、結衣は私のそばにいて?そしたら、結衣の事、守るから。」
結衣は、益々涙を流した。
私はもっと辛い思いをさせたかと思い、慰めようとする。
俯いているように見えるが、よく見ると、笑っていた。
「ありがと!美玖ちゃんは私にとっても、欠かせない存在だよ!」
- Re: 爆走メトロノーム! ( No.11 )
- 日時: 2025/04/20 15:03
- 名前: ケツ都代 (ID: lCrzzWFh)
この小説は、小説新人賞を受賞いたしました。
おめでとうございます。
詳しくは、リクエスト依頼・相談掲示板にある「小説新人賞について」をご確認いただければと思います。
それでは、失礼いたします。