コメディ・ライト小説(新)
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- 君はまるで狐の子
- 日時: 2025/05/06 14:39
- 名前: 翠 (ID: B9PxCLY9)
春の風が私の顔を撫でる。その風は優しく私を包み込んでくれている。
ツー…
自転車で坂道を下る。顔にあたる風が冷たくて気持ち良い。
私は高2の神谷優。ごく普通の女子高生だ。
優 「…っと。」
自転車を駐輪所に止めて歩き出す。
いつも少し早く学校に来て、外の庭園で本を読むことが日課だ。
あそこは誰もいなくて、しかも涼しい。最高の場所。
…でも今日は誰かいるようだ。しかも一つしかないベンチにちょこんと座っている。
優 (見ない顔だな)
そう思いながら少し間隔をあけて隣に座る。
何も言わないのは変かな、と思い優は声をかけてみることにした。
優 「こんにちは」
??「…こんにちは」
優 「私は神谷優です。よろしくお願いします」
守 「…金森守です。…よろしく」
優 「よろしくお願いします!」
挨拶は終わったので私は鞄から本を取り出して読み始めた。
- Re: 君はまるで狐の子 ( No.5 )
- 日時: 2025/05/09 16:29
- 名前: 翠 (ID: rRbNISg3)
ー放課後・掃除の時間ー
誰もいない静かな教室で守くんと二人きり。
教室に春の風がふき渡る。暑くもないが寒くもなく丁度良い風だった。
守 「…いつも、ああなの?」
守が心配するようにこっちを向いて話しかけてきた。
優 「うん。でももう慣れたから大丈夫!」
大丈夫なわけない。本当は辛いけれど、断ることが出来ないのだ。
守 「ねぇ…。優」
苗字呼びではなくなっている。私の事を見る目も、変わっている気がする。
優 「ん?どした?」
守 「本当は辛いでしょ?」
優 「ッ……」
否めない。だってそうだから。やっと気づいてくれた。
守 「昨日、あそこの庭園で叫んでたこと、本当でしょ。」
優 「……」
頷くことしかできなかった。嬉しさと、何故かわからないけど懐かしさがこみあげてくる。
守 「俺には、本音を言ってくれるんじゃないの?頼ってくれるんじゃないの?」
いつもの守くん…ではない。
優 「そんなの…、できっこない!」
優 「私は!ずっと誰にも本音を言わないで生きてきたの!それを会って2日目の人に話すわけない
でしょ!」
思わず口走ってしまった。
守 「っ…。まだ、気づいてくれてないんだ」
あまりにも声が小さくて口が動いているのと、悲しい顔をしていることしか分からなかった。
守 「いや、そう。優の言う通りだ。でも1つ違うことがある」
優 「なに?」
守 「俺は、ずっと前から優に出会っているからね」
守 「それだけ、伝えたい」
そういうと、テキパキと掃除を終わらせ帰ってしまった。
静かな教室にちょこんと残った私。
優 「守くんと、出会ってた…?」
疑問しかなくなった。
- Re: 君はまるで狐の子 ( No.6 )
- 日時: 2025/05/10 14:19
- 名前: 翠 (ID: B9PxCLY9)
いつものように毎朝庭園に行き、本を読む。これはずっと続けている。
昨日の出来事があってからは行くかどうか迷ったけれど、やっぱり行くことに決めた。
ー庭園ー
優 「ま、守くんっ…!」
か細い声で呼びかける。いないと思っていた人間がいたのだ。
守 「………優」
光のない眼でこちらを見る。
優 「あのっ、昨日はごめんね、私、何もわかってなかった…」
守 「いいんだよ、別に。分からせようと思った俺も悪かったし」
いつもの積極的な守はどこへ行ってしまったのか。
優 「…。それでね、一つ伝えたいことがあるの」
優 「私、12歳の時、記憶喪失になって、1部の記憶が戻ってないんだ」
親と妹にしか、言っていないことを初めて他人に伝えた。
守 「…っ!?」
守 「本当、なのか…?」
優 「うん…。ちょっと事故に遭っちゃって。頭を強く打ったのが原因らしい」
守 「そうか…。でも生きていてよかった」
優 「ありがとう。それと、記憶を戻すことはできるみたい」
守の目が輝く。
守 「そうなのか!」
優 「そうなの!」
守 「その、記憶が戻った時、優からの返事が聞けるんだな」
守の顔が赤くなった。
優 「返事?」
守 「いや、まだ分からなくていい。ちょっとずつ思い出していこう」
優 「うん。」
- Re: 君はまるで狐の子 ( No.7 )
- 日時: 2025/05/14 16:13
- 名前: 翠 (ID: rRbNISg3)
記憶って、どうやったら思い出せるのかな。
って考えるけれど分からない。
優 「(´Д`)ハァ…」
思わずため息が出てしまった。授業中なのに。
守 「どうした?溜息なんかして」
こそっと話しかけてきた守。
優 「あ、いや、なんでもない」
守 「そうか」
といって元の視線に戻す。
本当はなんでもなくない。早く記憶が戻って守くんが言う〝あの返事″のことが早く知りたいのだ。
先生「はい、では優さん、ここを読んでください」
急に言われたので固まっていると、守が「ここ」と教えてくれた。
優 「おじいさんは山へ鉄砲を持って登っていきました……」
よく考えたら普通これ幼稚園とかで読むやつだよね。と思いながら席に座る。
そして教えてくれた守くんにもお礼を言った。
そうすると、殺人的な笑みでこちらを見た。眩しい。かっこいい。
- Re: 君はまるで狐の子 ( No.8 )
- 日時: 2025/05/16 16:52
- 名前: 翠 (ID: Fbf8udBF)
授業が終わり、後は帰るだけ。
守くんにさっきのお礼、もう一回しないとな、と思って守くんの方を見たら
女子がたくさんいるのが分かった。
……そりゃそうだよね。私とは住んでる世界が違うんだ。
そう思って、守の横を過ぎ去る。
守 「あ、まって優!」
優 「…え?」
守 「今日、一緒に帰ろ!」
優 「え、あ、うん」
女子からの目が……。
ー帰り道ー
守 「優、助かった」
優 「どう、いたしまして。でもなんで?」
守 「あ、いや、他の女子が『一緒に帰らなーい?』って言ってきたから…」
守の女子の声マネが面白くて、ふふっと笑ったあと、
優 「私だって女子なんだけどな」
と、皮肉っぽく言った。
守 「いや、なんつーか優は特別、みたいな…」
守がくぐもった声で言った。
優 「え?」
思わず聞き返した。何を言っているのか聞き取れなかったのだ。
守 「いや、なんでもない…」
とだけ言って顔を赤らめて帰ってしまった。
- Re: 君はまるで狐の子 ( No.9 )
- 日時: 2025/05/19 14:37
- 名前: 翠 (ID: B9PxCLY9)
お礼…言い忘れちゃったな。
自分のベッドに入った途端、そのことが頭をよぎる。
明日、明日必ず言おう。日にちは違うけれど、言わない方がマシだ。
―次の日―
優 (やっばーい…!)
昨日、布団かけないで寝ちゃったから寒気が止まらない…!
なんか熱っぽいし…。でも、お礼!お礼を言わないと!
母 「優~?遅刻するわよー!」
優 「い、今行く!」
ふらつく体を起こして、リビングへ向かう。
母 「ご飯、そこに置いてるから!んじゃ、いってくるわね」
優 「いってらっしゃーい」
急いでご飯を食べ、学校の準備をする。時間がいつもより遅い。
鍵を閉め、自転車置き場へ向かう。
その間も頭がぼーっとしているが気にしない。
―学校―
やばい、さっきよりもっとふらつく。
神奈「あ、優!おはよー!」
優 「おはよぉってえ!?」
ずっと休んでた私の友達……。
神奈「今日は掃除手伝えるからね!」
優 「ありがとう!」
神奈「ホント…。皆、優をこき使うんだから」
神奈「優が誰よりも辛いのに」
神奈「ずっと休んでてごめん。これからはずっと一緒だよ」
な、なにこの子!女神???
優 「うん!戻ってきてくれてよかった!」
神奈「ねぇ、優。顔悪いけど大丈夫?」
昼飯の途中、神奈が私の目をのぞき込んで言った。
優 「え、え!?大丈夫だよ」
まだ、帰るわけにはいかない。まだお礼を言っていない。
そう思いながら、自分を奮い立たせてご飯をかきこんだ。