コメディ・ライト小説(新)
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- 君はまるで狐の子
- 日時: 2025/05/06 14:39
- 名前: 翠 (ID: B9PxCLY9)
春の風が私の顔を撫でる。その風は優しく私を包み込んでくれている。
ツー…
自転車で坂道を下る。顔にあたる風が冷たくて気持ち良い。
私は高2の神谷優。ごく普通の女子高生だ。
優 「…っと。」
自転車を駐輪所に止めて歩き出す。
いつも少し早く学校に来て、外の庭園で本を読むことが日課だ。
あそこは誰もいなくて、しかも涼しい。最高の場所。
…でも今日は誰かいるようだ。しかも一つしかないベンチにちょこんと座っている。
優 (見ない顔だな)
そう思いながら少し間隔をあけて隣に座る。
何も言わないのは変かな、と思い優は声をかけてみることにした。
優 「こんにちは」
??「…こんにちは」
優 「私は神谷優です。よろしくお願いします」
守 「…金森守です。…よろしく」
優 「よろしくお願いします!」
挨拶は終わったので私は鞄から本を取り出して読み始めた。
- Re: 愛の告白 ( No.1 )
- 日時: 2025/05/06 14:34
- 名前: 翠 (ID: B9PxCLY9)
キーンコーンカーンコーン…
学校にチャイムが鳴り響く。それと同時に教室のドアが開き、新しい担任が入ってきた。
先生「皆さん、おはようございます」
全員「おはようございます」
少し緊張気味の声。新学期最初の登校日だから無理もない。
先生「今日から、このクラスの担任を任されました、伊藤柚希です」
柚希先生が微笑む。細淵の丸眼鏡をかけていて、髪は短い。
先生「そして、今日から皆さんの仲間が増えます!」
先生が嬉しそうに言うと、教室のドアが開き、見覚えのある顔の男の子が入ってきた。
先生「金森守さんです、皆さん、仲良くして下さいね」
守 「…よろしくお願いします」
か細い声で守君は言った。
そう、新しく入ってきた転校生は今朝、同じベンチに座った守くんだった。
守くんは美男子と言って良い顔立ちなので、女子たちがざわざわし始めた。
先生「えっと…守くんの席は、優さんの隣ね」
守 「分かりました」
驚いて声も出ない私の方へと向かってきた守くん。
守 「君、今朝会った子だよね?」
優 「そうだよ」
守 「良かった、君が隣で。」
え、それってどういう意味…。と思ったのも束の間、皆からの視線に気づく。
守くんの声は教室の皆に聞こえたようで、特に女子たちが一斉に私の方を見る。
先生「ま、まぁ、もう仲良くなっていたようですね、!」
先生「それでは、授業を始めましょう」
先生、ありがとうございます。お陰でこの視線から逃れられました。
- Re: 君はまるで狐の子 ( No.2 )
- 日時: 2025/05/07 17:00
- 名前: 翠 (ID: rRbNISg3)
優 「……………(´-∀-`;)」
最近、困っていることがあります。
それは、ずっと守くんがついてくること。
嫌…とかではないんだけど、「付き合ったの!?」とか、そういう目で見られるから困ってます。
このイケメンくんのお相手は絶対に私じゃないってことは分かってるから尚更辛い。
でも、思い切って言わなきゃ。もしかしたらただ単に行く方向が同じだけかも。
優 「あの…。守くん?」
守 「なに?」
優 「なんで…ついてくるの?」
守の視線が険しくなる。
守 「俺につけられるの嫌?」
否定はしないんだ((
優 「嫌じゃないけど…。明らかに住む世界が違うんじゃないかな…?」
そう。私は陰キャだ。昔、いじめられていたこともあって人を避けてしまう。
それに比べて、守くんはその顔立ちの良さから女子皆から好かれている。
昨日はご飯一緒にどう?って誘われてたっけ。即答で断ってたけど…。
守 「なんだ、そんなこと?」
優 「そ、そんなこと?」
守 「皆、住む世界は同じだよ。同じ地球で同じ空気を吸っているんだよ」
守 「住む世界が違う、なんてこと、神谷さんの思い違いだよ」
…なんか心に響く。
優 「そう…かな。」
優 「守くんはさ、笑顔が可愛くて、勉強もスポーツも出来て、皆から好かれてるけど」
優の目が悲しい目になった。
優 「それに比べて、私はあんま笑わないし、勉強もスポーツも出来ないし…」
守 「そんなこと…ない」
優 「…とにかく!私に近寄らない方がいい。この際はっきり言うね。さようなら」
早歩きで歩き出す。住む世界が同じわけないんだよ。そんなに甘くないんだよ、守くん。
守 「神谷さんっ…」
モブ「なにあれ、感じ悪~」
モブ「そんなことより、守くん、今日一緒にご飯食べない?」
守 「ごめん、今日はそんな気分じゃない」
守の目から光が消えた。
- Re: 君はまるで狐の子 ( No.3 )
- 日時: 2025/05/07 17:24
- 名前: 翠 (ID: rRbNISg3)
誰も来ない、静かなあの場所へと向かう。
ここで守くんと出会ったんだっけか。なんであんま仲良くもないのにつけてきたんだろう?
ただの嫌がらせ…?
優 「…ッ…」
なぜかわからないけど涙が溢れだす。
優 「私だって…!私だって人間なんだよ!」
自分に言うように叫ぶ。ここは誰もいないから、聞かれる心配もない。
優 「なんでこんなに優劣があるの!?」
優 「もうこんな世界なんて大嫌いだ!」
自分の想いを叫ぶ。ここは誰もいない…と思っていたのだが。
ギュッ…
優 「…え?」
自分の体の周りが暖かくなる。誰かに抱きしめられている。
振り向くと、そこには守くんがいた。髪で顔がよく見れない。
守 「…さようなら、って酷い」
走ってきたのだろうか。少し息が切れている。
守 「俺、なんか悪いことした?」
私は驚いて声も出ない。でも守くんは続けた。
守 「この世界が嫌いなら、俺が好きにしてやるから」
何か聞いたことがある言葉。
??「優をいじめる人は嫌いになってもいい。だけどこの世界は嫌いにならないで」
誰の言葉だっけ…?思い出せない。でもなんか似てる…。
私の声の代わりに私の泣き声が響き渡る。
守 「泣くな。もう優は泣かせないって決めたんだ」
また…。似てる。
??「優は俺が守る。もう絶対に泣かせないからな」
優 「私ッに関わってもいいことなんてない…っ」
やっと話した。話せた。
守 「俺にとっては優の存在全てが生きる意味、なんだけどな」
優 「どう、いうこと…?」
守 「…優。はっきり言うぞ。今、優はいじめにあっているだろ??」
守の目が怒っているような目に見えた。
優 「な、んでそれを…?」
守 「そんなの、見てわかるさ。いつも放課後の掃除とか優が全てやらされているだろ」
図星。なんで分かったんだ…。
守 「これからは俺がいる。俺を頼ってほしい。」
優 「頼ってい、い…?」
守 「当たり前だ。もうずっと俺のそばから離れないで」
優を抱きしめる腕の力が強くなった。
- Re: 君はまるで狐の子 ( No.4 )
- 日時: 2025/05/08 16:55
- 名前: 翠 (ID: rRbNISg3)
私、霊に憑りつかれましたっけ?
学校に行く足取りが重すぎるんです。いつもより。
きっと昨日、あんなことがあったことと、守くんとなんかいい感じになったからかな。
モブ「優ーちゃん!」
あー。この言い方は分かってる。なんか押し付けられるんだ。
優 「な、なに?」
モブ「今日ね、私、家の用事があって放課後残れないんだ~」
優 「あ、うん。分かった。掃除、私がやっとくね」
また、だ…。もう慣れてるけれど。
いつものように同じ返事をする。「ありがと!」という声の後に聞こえるのは「チョロいわ~」だ。
守 「俺、今日用事ないし、手伝うわ」
優 「!?」
私なのか分からず、あたりを見渡す。
すると、守がふっと笑う。
守 「あなたですよ、優さん?」
はい、その笑顔反則です。
優 「わ、私?」
守 「うん。今日何もないし暇だから手伝うよ?」
優 「そんな、悪いよ~」
無理に笑う。守くんにも本当の笑顔を見せられない自分に腹が立つ。
守 「…昨日、俺に頼るって言ってくれたじゃん」
拗ねたような言い方と顔。
私はそんな守くんを断ることも出来ず、「そんなに言うなら…。よろしく!」と言った。
「ずっと一緒に居たいんだよ、気づけ…」
と守が呟いた。