ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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痛覚
日時: 2009/11/05 17:28
名前: 仲矢真由乃 (ID: z9DnoDxA)

今度こそ消えんように頼んますぜ

仲矢真由乃と申します、以前書いてた小説が手違いかなんかで一覧表示されなくなったので復旧するまで違うのでも書こうかと
ちなみにかなり流血云々するかと思われます ご注意ください


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5 ( No.5 )
日時: 2009/11/07 22:44
名前: 仲矢真由乃 (ID: jYd9GNP4)

「それで? 晶ちゃんが天才に近いということは分かったが、それと収入増加の関係はなんだ?」
「『マルチムービー』というサイトは知ってるか?」
「ああ、あの動画サイトか」

マルチムービーとは、インターネット上で運営されている動画サイトの一種である。1か月ほど前にできたらしい。想像のつかない方は、Youtubeを思い浮かべていただければいい。それに様々な機能を取り入れた便利なサイトがマルチムービーに近いものになるだろう。その機能の便利さ、手軽さが功を奏し、アクセス数は爆発的に伸びに伸び、結果的には、最近Youtubeを上回ったとかなんとか。

「あれ、作ったのが晶なんだ」
「ぶっ」

再び液体を口から噴出してしまった。

「タオルいるか?」
「いや、いい……。それで?」

袖で口を拭い、話の続きを促す。

「基本的にあのサイトは無料らしいんだが、有料サービスを作ったらしくてな、それの収入が」
「それは……儲かるな。具体的にいくらぐらいだ?」

稲田がメモ用紙に数字を書いて見せた。私の通帳の最盛期でも並んだようのないような桁があった。
一瞬、本気で晶ちゃんを養子にしようか考えてしまった。だがそんな理由で迎えようとすると稲田が怒髪天をつくことが容易に想像できるため、その思いは即座に振り払っておいた。

6 ( No.6 )
日時: 2009/10/26 21:04
名前: 仲矢真由乃 (ID: N7y5mtYW)

「ところで、今日はそれを言いに来たのか?」
「いや、話が逸れてただけだ」

その割はえらく重大な事柄だったのだが。

「じゃあ、何だ? また手伝いに行けばいいのか?」
「いや、客として来てほしい」
「客?」

子供達の世話の手伝いとして招待されたことは幾度もあったが、客人としては初めてだ。

「昨日、貴博から電話があった」
「貴博君か、懐かしいな。今いくつだ?」
「もう21さ」

時の流れとは早いものだ。貴博君が入館した時はまだ8つだったのだが。もう13年も経ったのか。

「もうあれから13年か」
「本当だな。あの頃は右も左も分からずとにかく必死だった。初めての入館者が貴博だったのは、幸か不幸かどっちだったんだろうな」

難しいところである。稲田曰く、「13年やっているが、貴博ほど扱いの難しい子はいなかった」らしい。そんな子が初めてだったというのは、良い経験だったと喜ぶべきか、いきなり大変だったと嘆くべきか。

「どうだろうな。それで、貴博君がどうした?」
「遂に歌手のプロデビューが決まってな」
「ぶっ」

本日3回目である。今日は一体、稲田に何回驚かされば気が済むのだろうか。

7 ( No.7 )
日時: 2009/10/27 22:16
名前: 仲矢真由乃 (ID: 4kTDCa8M)

「どうした? 風邪か?」
「風邪に見えるのか?」

そうだとすると稲田の目が節穴だということが発覚するのだが。15年かけて初の欠点発見になるかもしれない。

「プロデビューか……。ようやくというか、もうというか」
「自分からしたらようやくだがな」

稲田が薄い笑みを浮かべる。嬉しいのを抑えきれないことが丸分かりだ。稲田は時々子供のような表情を見せる。

「それで、貴博が一度こっちへ帰ってくるらしい。それならということで、家でパーティーをしようということになったんだが、どうだ?」
「勿論行く」

稲田にとっても私にとっても息子のような貴博君の祝い事となれば、出かけなければならぬまい。幸いと言うべきか、私の帰りを待つ妻もいないことだしな。……いや、やはりそれは不幸だ。

「そう言うと思ったよ、明日の午後7時からだ。貴博は5時ぐらいに顔を出すと言っていた」
「了解だ」
「じゃあな」
「おお」

稲田が軽く手を振りながら店を去る。
私は再び新聞を手に取りながら、明日持っていくプレゼントをどうするかの思考に没頭し始めた。

8 ( No.8 )
日時: 2009/11/05 16:43
名前: 仲矢真由乃 (ID: z9DnoDxA)

あっという間に日は沈み、再び太陽が昇ってくる頃合い。私は、我が店のシャッターを開ける。まだプレゼントが決まっていないせいで、私は軽く上の空であった。そんな私の耳に、涼やかな声が入ってきた。

「店長さん、お久しぶりです」
「……お、おお! 晶ちゃん」
「どうも」

私に声をかけてきたのは、先日話題に出ていた晶ちゃん本人だった。

「いや、見ないうちに美人になったね」
「いきなりお世辞ですか」
「そんなことはないよ」

そもそも中学生にお世辞を使うというのもどうなのか。
しかし、非常に綺麗になったものだと感心する。一目見ただけでは、直ぐに晶ちゃんと判断できなかったほど艶っぽくなっていた。長く真っ直ぐな黒髪に、触れると血が出そうなほど切れ長の瞳、身長も随分伸びている。すらりとした体系も相まって、どこかのモデルが制服を着ているようにさえ見えてくる。

「店長さんは知ってました? 貴博に……貴博さんが今日帰ってくること」

わざわざ言いなおさなくてもよかろうに。

「ああ、昨日稲田から聞いたよ。ただ、何かプレゼントでもと思ったんだが中々思い付かなくてね」
「プレゼントですか? ……ショートケーキとかで良いんじゃないですか、貴博さんケーキ好きでしたし」
「なるほど……ケーキね」

そういえば昔、貴博君はケーキ屋の前を通りかかるとこちらをじっと見つめてきたな。結局「皆には内緒だぞ」と言いつつ買ってしまっていた記憶が蘇る。

「うん、そうするよ。ありがとう、晶ちゃん」
「どういたしまして。じゃあ、学校遅れるんで」
「行ってらっしゃい」

軽く会釈して、晶ちゃんは早朝の街へと歩いて行った。
余談だが、ショートケーキを買う際に人数のことを考えておらず、予想以上の出費を被ってしまった。ショーケースの中のショートケーキだけでは足りず、追加でチーズケーキを買い足した。その時の店員さんの不審な目が忘れられない。もう1人ではケーキ屋に入ると不釣り合いな年頃になってしまったのだろうか。稲田についてきてもらえば良かった。

9 ( No.9 )
日時: 2009/11/07 22:42
名前: 仲矢真由乃 (ID: jYd9GNP4)

さて、その日の夕方である。
私は買い込んだケーキを手に、店を閉めて家を出た。
徒歩で5分ほどで、桜の蕾に到着する。
小さな幼稚園ほどの敷地を持つその家には、現在約15人程度の子供たちが住んでいる。今、一番年上の子は晶ちゃんだったと記憶しているが、どうだったか。
何はともあれ、小さな看板の横にあるチャイムを押す。しばらく待つと、幼い子供の声がスピーカーから聞こえてきた。

「はいー、どちらさまですか?」

名を名乗る前に、その子とはまた違う声が響いてくる。

「あ、店長さん。今開けます」
「どうも」

扉を開けてくれたのは晶ちゃんだった。

「まだ貴博さん来てないですけど、あがってください」
「ありがとう」
「ケーキ、持ちますよ」

いくつか持っていた箱の1つを渡す。晶ちゃんが少し鼻を箱に近付けて、中身を確かめようとしていることに気づき、若干和んだ。可愛らしい。

「館長さん、店長さんいらっしゃったよ」
「お、来てくれたか」
「当然だろう」

中に入ると、折り紙の鎖がリビングを彩っていた。いかにもな手作り感が暖かい。ただ、その中にいる稲田は微妙に浮いているた。子供たちだとぴったりなのだが。


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