ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- “Variant”
- 日時: 2009/11/23 09:20
- 名前: 犬野ミケ (ID: AHLqKRWO)
クリックありがとうございます。
久しぶりです。前のスレッドが消えてしまったので、その話は止めて別の話を書くことにします。
拙い文章ですが、楽しんでいただければ幸いです。
【目次】
En primavera
序章 >>3
一章 >>4 >>7 >>8 >>9
Por el verano
En otoño
En invierno
Y fecha atrás a una estación.
※一部の文字が表示できないので、記号となってしまっています。
- Re: “Variant” ( No.7 )
- 日時: 2009/11/08 13:25
- 名前: 犬野ミケ (ID: 4oMZT1gB)
男は、その日何度目かの溜息を吐いた。
目頭を右手の人差し指と中指で摘み、少しでも疲れを取り除こうと揉む。しかし効果は今一つだったようで、すぐに手を降ろし肘掛に置いた。
「まだ着かんのか」
「もうすぐ、もうすぐです!」
男の静かな怒りを含んだ声に、男の部下が上ずった声で叫び返した。
「無能め」
そう呟いて、ワイングラスを一気に呷る。温くなった葡萄酒は安物という事も相俟ってか、吐き気を催すほど不味かった。これでは悪酔いしたとしても不思議ではない。男の苛立ちが更に募る。
乱雑に手を振ると、怯えたように尻込みする女給史がグラスを下げていった。
男は頭痛を覚えてこめかみを押さえる。
「最近は何かとヴェリェントによる事件が多い」
さらに、と男は付け加える。
「それを『喰い物』にする奴らも、私の邪魔ばかりをする」
誰とでもなく、男は呟く。
「もうすぐだ」
もうすぐ、自分の野望が叶う。全てが、自分の物になる。もうすぐ、全てが始まり、全てが終わる時が来る。もうすぐ、もうすぐ……
「いそげ」
男はその日何度目かの溜息と共に、部下に命じた。
男の乗った乗り物——————飛行艇は進む。
- Re: “Variant” ( No.8 )
- 日時: 2009/11/14 09:27
- 名前: 犬野ミケ (ID: 9Bqwph5S)
腹の底に響いて振動する、それでいて耳障りな音を聞き、穴掘りの作業に没頭していたルネは頭上を仰いだ。そして、深緑の瞳を大きく見開く。瞳には抑えきれない好奇心が渦巻いていた。
それは、ルネにとって夢のような話だった。
「凄い……!」
村の上空に堂々と浮かんでいたのは、巨大な飛行艇だった。巨大な船体は日光を遮り、これまた大きな影を落とす。
飛行艇、という表現は正しくないのかもしれない。あくまで形がそれに類似している、といっただけだ。また、飛行機という言葉にも当てはまらない。プロペラなどは一切見受けられず、ガスも噴射されていない。
全体的な形としては、舟形である。しかし、帆や帆柱は無く、代わりに大砲が備え付けられている。軍艦、鉄を鎧う巨大な兵器だった。
そんなプロペラもエンジンも持たない重い鉄の塊が浮くのには訳がある。
それは、船の腹の部分に大きく印されていた。
巨大な飛行艇の丸みを帯びた腹には、大きく黒々とした複雑な紋様が描かれている。線が交わりあい、絡み合いできた優美かつ繊細なその紋様こそが、飛行艇の動力源であった。紋様が物質に力を与えているのである。
その紋様はベルヴェルグと呼ばれるもので、元を辿ればヴェリェントから発見された技術だ。彼らの体には、必ず似たような痣が見られる。ベルヴェルグは個々の扱う能力に影響し、ベルヴェルグが違えば能力も違う。
しかし、ルネはそのような経緯を知らない。辺境の村で育った彼は、最新技術と呼ばれるものに酷く疎かった。彼の記憶では、火を起こすような些細なものしか、実際に起動したものしかなかった。
理由は、村のせいだけではないかもしれないが。
兎に角、ルネは飛行艇というものと知らなかった。その為、感想は『凄い』としか言いようがない。彼は飛行艇を夢中で見上げ、瞳にその姿を焼き付けようと目を凝らしていた。
「えッ……?」
そして、見つけた。次々と飛行艇から飛び出してくる影を。
ルネが驚いたのはそれだけではなかった。飛行艇から飛び出してきたいくつかの影は、重力に従って真下にいるルネの下へと急降下を始める。
猛スピードで落下してきた影達が地面にぶつかる、と思った瞬間、ルネは思わず目を強く瞑っていた。
だが、いつまでたっても肉と骨の潰れる音は聞こえてこない。何の音も、ルネの耳には入ってこなかった。
恐る恐る目を開くと、まず目に入ったのは黒い人型、頭から足先までを黒く統一した集団だった。黒尽くめの集団はルネの周りを輪を描くようにして囲んでおり、それぞれ黒く細長い円筒状のものを携えていた。皆一様に、円筒の先を真っ直ぐルネに向かって突きつけている。
ルネは世間知らずで、無知だ。今まで常に周りから隔絶された生活を送ってきた。その為、世情に著しく疎い。
故に、自分に向けられている物が銃であるという事も、そこから噴出された白い煙が催眠ガスだという事も、知る由が無かった。
- Re: “Variant” ( No.9 )
- 日時: 2009/11/21 09:50
- 名前: 犬野ミケ (ID: LUfIn2Ky)
或いは1時間前
初春のまだ肌寒い風を僅かに感じる、暗い森の中。昼間だというのに足下が曖昧になるほど日光を遮る、新芽の出た木の枝を見上げ、男が呆れて呟く。
「うげぇ。参るな、これは。こんだけ暗けりゃテンションもガタ落ちだっての……なぁ、イオリ?」
悪態を吐く男がイオリと呼んだ傍らの男は、憮然とした面を見せて男を無視する。そして、話しかけてきた男を置いていこうと、騎乗した動物に拍車をかけ足を速める。
「だっ!?酷っ酷いぞッ人を無視するな!」
「煩い、フィル。喧しい黙れ口を閉じろ。そこら辺の枝にでも突き刺さって死んでおけ」
人差し指を勢い良く突きつけ、罵声を上げる男——————フィルに激烈な言葉を重ねに重ねるイオリ。
奇妙で珍妙な2人組、フィルとイオリ。
2人の纏う服は、揃いの物だった。黒に近い藍色を基調とした、軍服。右上腕部には鳥が大きく翼を広げる図柄の刺繍が施されており、その下には同じく刺繍で文字が刻まれていた。
<ローダ騎士団>
それは小規模ながらも、広く名を轟かせている一団だった。実力は元より、別の意味でも有名なローダ騎士団。
羽觴のローダの二つ名を拝し、騎士団の名を冠すローダ騎士団だが、その本質は他の騎士団と大きく異なるといっても良い。寧ろ、賞金稼ぎの集まりに近い。
まず、本部というものが存在しない。彼らには、帰る地はどこにも無い。その分、施設の維持費が必要なく、あちこちを自由に動き回れることが利点である。
次に、非常に少人数であること。その数——————8人。少ないが、個々の能力は高い。実力だけなら、どの実在する騎士団にも勝るだろう。少数ゆえに、消耗戦には耐えられないのが弱点ではあるが。
そのローダ騎士団が2人、フィル・カーソンと長沢イオリは迷うことなく森を進む。おる男に止めを刺すこと、その為に。
たわいない会話をしながら進む2人をしながら進む2人を、瞬きすらせずに木の上から凝視する瞳があった。
2人が視界から消えうせると、瞳の持ち主は大きく鮮やかに目に映る黄色の翼を広げ上空へと羽ばたいていった。そして煌々と地を照らす太陽に向かって一声甲高くしゃがれた鳴き声を上げた。
まるで挑戦を叩きつけるかのような鳴き声は、言葉の羅列にも聞こえた。
- Re: “Variant” ( No.10 )
- 日時: 2009/11/21 15:40
- 名前: 十六夜 葉月 ◆Gl6JohbFiw (ID: A8w5Zasw)
最新話更新したようなのでおじゃまします。
ミケも文としては所々はっちゃけてるよな。イオリの毒舌っぷりには笑うしかなかったw
ミケは更新遅くても文章の質が良いからねー。どこぞのカボパン馬鹿とは違う(お前だ
さてはて今日も更新しようかなー?
と言う訳で葉月でした。
- Re: “Variant” ( No.11 )
- 日時: 2009/11/23 13:15
- 名前: 犬野ミケ (ID: AHLqKRWO)
コメントありがとうございます。
はっちゃけてるというか……イオリも最初は寡黙な人の設定だったんだよ……なんか違っちゃったけど。
いいじゃないかおいしいよカボパン。ギャグが入れれるようになりたいよ、あたしも。
更新がんばって〜楽しみにしてる(あたしはもう……
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