ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 俺と世界の夢戦争〜Mind war〜
- 日時: 2009/12/05 14:14
- 名前: 十六夜 葉月 ◆Gl6JohbFiw (ID: A8w5Zasw)
大半の方、初めまして。そしてHNは違いますが前作を知っている方はお久しぶりです。
敢えて前HNは名乗りません。作品を読んで「この人かな?」と思った場合は気兼ねなく訊いて下さい。
作品の感想や誤字や脱字の報告、アドバイスは有り難いのですが、ネットマナーを守って下さい。
特に、内容の薄いコメント(頑張って下さいや良いですね、等)や一行レス、顔文字やギャル文字の使用、許可をとらずに宣伝やタメで接する事等は禁止します。
それでは至らない所も多々ありますがお付き合い下さい。
war:-1 タイトル、無題>>1
war:0 忘却と言う名の舞台の上のニチジョウ>>2
war:1 思い出は鮮烈に(前編)>>3
war:2 思い出は鮮烈に(後編)>>4
war:3 小さな盤上の哀れな駒よ>>5
war:4 聖戦の裏は殺戮>>6
war:5 旅と戦争は道連れだらけ>>7
war:6 両手に花は別名、両手に危険物 I>>8
war:7 両手に花は別名、両手に危険物 II>>13
war:8 輝く星は暗雲に呑まれる、ただ虚しく>>16
war:9 白の正義、黒の正義>>17
war:10 cross×cross>>18
war:11 誰が為に彼等は死に急ぐ I>>19
- Re: 俺と世界の夢戦争〜Mind war〜 ( No.15 )
- 日時: 2009/11/20 22:23
- 名前: 十六夜 葉月 ◆Gl6JohbFiw (ID: A8w5Zasw)
ばんはー。葉月です☆
夜はテンション高いよ。
次回か次の次位にカノンの色々大放出!
ミケに渡した設定案に書いてないのも……
楽しみになっ☆
あー、楽しい文章を書く秘訣?カボパンとか?あれはノリだよwネタですよwラノベ読もうぜww
私は延々とシリアスを展開する事の出来ない人間、かも知れないねー。
寧ろ今後のシリアスな展開がちゃんと書けるかなぁと。
いやさ、多分気のせいだけど、展開とか設定とか用語とか微妙に似てるスレを見つけてさ。私的にはパクリだっ!!とか騒ぐよりも寧ろ私の設定、世界観ってそんなありきたりだったかなー、ってかなりテンションが下がった。
……もうこうなったら話数重ねて誰にも真似出来ない世界を創造してやる!!
今日中に更新するかもっ!
- Re: 俺と世界の夢戦争〜Mind war〜 ( No.16 )
- 日時: 2009/11/23 00:45
- 名前: 十六夜 葉月 ◆Gl6JohbFiw (ID: A8w5Zasw)
war:8 輝く星は暗雲に呑まれる、ただ虚しく
俺は他人のふりをする為にしばらく様子を見る事にした。
カノンの怒りを若手の役員では抑える事が出来ず、しまいに上の人間が冷や汗をかきながら説明したようで、カノンがこっちへと無言で戻って来た。
「あ、カノン! どしたの? 書籍館に行けないって……「警告する」
千歳の言葉はカノンの殺意のこもった低い呟きによって途切れた。
「警告する。法条 有希、森川 千歳、お前達を私情で傷付ける訳にはいかない。今直ぐリンクを断て。断つ方法を知らないなら私が強制的に切る」
千歳は少し驚いたが基本的には情に熱く、困っている奴を見捨てないタイプなので千歳らしい返事を返した。
「え、別にあたしは私情でも構わないけど。むしろあたしに出来る事ってないかな?」
「いいから断て!!」
その気迫に怯んだ千歳は目を見開いて何も言わなくなった。そのやり取りに俺は静かな怒りを感じた。
「……確かに、俺等は来たばかりの役に立たないクズ共だ。たがな、友達が手を差し伸べたら素直に有り難うって言うべきだろ!? お前は、お前は何を一人で抱え込んでいるんだよ。なぁ、旅のパートナーってのは互いの事を理解して、信頼をして、あらゆる困難を一緒に乗り切ってこそパートナーだろ? 熱くなって、すまん」
カノンは綺麗なアメジストのような紫色の瞳で睨んできたので勿論俺も睨み返した。鋭く見つめ合う事一分、ようやくカノンが折れたようだ。
「目的地は書籍館。ここから数メートル先だから。急いで」
やっぱりカノンちゃんはツンデレなんだねしかも時々クーデレだよ。もう最高!! と思っていたら以外と足が速く、気がつけば千歳にも置いていかれそうになった。
※ ※ ※
「着いた。これ以上はもうお前達のする事は無い」
とカノンがあれだけ速く走ったにも関わらず、息一つ荒らげずに冷淡に告げた。
目の前の建物、書籍館は周りを水を溜めた深そうな池の中心に建ち、建物へ入るには正面口前の石橋を渡るしかない構造になっていた。
「なんだか、周りの空気が冷たく重いって言うか、張り詰めてるね……カノン、ここって普段からこんな感じなの?」
カノンは千歳の問いに対して首を横に振り、一息置いた後、深く息を吸って女の子が出せる声ではない低い声で呟いた。
「……出て来い。黒月乃千年狐、いや、化け物!! 貴様だろう? 法条 優希さえ世界の存在に気付けば必ず誰かと共に書籍館に来ると思ってここを閉鎖したのは。確かに貴様程の腕前と裏政府軍の力さえあれば書籍館を占領する事なんか造作もないしな」
カノンが叫んだ方の奥の方、つまり書籍館の入り口の所に一瞬前までしなかった人の気配がしたかと思うと、どこかモダンな黒い着物を身に纏い、同じ色の髪を銀色の紐で後ろで一筋に纏めてようやく地面に着かない位長い髪を静かになびかせた、長身の男か女か分からない者が佇んでいた。
そして今まで閉じていた瞼を開けると左手を背中に回してゆっくりと何かを引き抜きながら口を開いた。
「ほう、我が犯人だと良く分かったな。誰かと思えば、我は知っているぞ、ゲームの参加者だろう? 主は狩猟動物としてはなかなか優秀そうだ。だが、狩り出来なくては狩猟動物とは呼べぬぞ!!」
言い終わるか終わらないかの時に金属がこすれる音が小さく鳴ったかと思うと、次の瞬間には目の前にあった丈夫そうな石橋はなだらかなアーチ状だった形が崩れて、その残骸が池に張られた水に叩きつけられた音が響いた。
「来い、妹。いや、本来は違うか? まあ名称などどうでも良い。主の力なら周りの創造者ともう一人を連れて来る事は不可能でも主単独でなら、ここまでその妙な妖術の類で来る事が出来るだろう? どちらが正しい道か、決着をつけるぞ」
カノンは無言のまま去ってしまうと思っていたが、俺と千歳の方を少しだけ振り返った。
「行って来る」
俺はそんな不器用な彼女の気持ちを受け止め、しっかり最後までこの戦いを目に焼き付ける事にした。
「しっかり俺の元へ帰って来いよ! また可愛いカボチャパンツ、見してくれよな!!」
「……ばーか。誰が見せるか」
- Re: 俺と世界の夢戦争〜Mind war〜 ( No.17 )
- 日時: 2009/12/02 17:06
- 名前: 十六夜 葉月 ◆Gl6JohbFiw (ID: A8w5Zasw)
war:9 白の正義、黒の正義
俺と軽い挨拶を交わした後、またカノンは真剣な眼差しに戻り、足元にブーツの踵で地面に小さな模様を書くと、目を閉じた。そして英語でも、日本語でもない謎の言語をアナウンサーでも言えなさそうな早口で告げ終わるとカノンは元の位置にはもう居なくて書籍館が建つ、池の中央の島に居た。
「貴様、私が移動魔法の呪文を詠むの苦手と知っておいて。体力、魔力共々削ろうって作戦? 流石は狐だ。小賢しい。」
それに対し黒ずくめの身なりの人は答えようとする気はなく、黙っていた。それがカノンの怒りに触れたのか、仕舞には俺達には全く分からない事への怒りを露わにした。
「貴様もゲーム参加者なのだろう!? 何であんな奴の元に就く!? 貴様も奴に奪われたのだろう? それなのに何故!?」
その言葉が鍵となったのか、黒ずくめの人は再び背中に手を回すと刀を一気に引き抜いた。
「黒月流新月刀式闘剣術捌形……瞬月」
その掛け声と共に隙の少ない動きでカノンへと斬りかかった。鞘が背中の中に収まっていたので刀身の長さが分からなかったが、黒ずくめの人の身長と同じ位長くてカノンの圧倒的不利かと思われた。が、カノンは軽快に踊るようなステップ捌きで刀をかわした。
「表面には出さないけど、そんなに怒って気持ち任せの単調な斬り方なら私を斬るなんて無理だけど」
「主を、我が新月刀で直接斬り殺すなんて誰が言った? 主こそ、心の内が荒れていては致命傷を負うぞ」
と、黒ずくめの人が後ろへ引いた時だった。カノンの白くて艶やかな肌や黒い布地が裂けた。そこから鮮やかな赤色が流れて地面、黒の布地、そして頬の薄い肌色の単色のキャンパスを水玉模様に染め上げた。
「黒月流新月刀式闘剣術捌形、瞬月は刀で直接斬る事を目的とせず、空気を切り裂き空気を刃とする技だ」
「フ、ハハ、フハハ、フハハハハハ!! 面白いねえ。楽しいねえ。痛いわあ。マジ痛いわあ。あたしの大切な故国も馬鹿にされたみたいだしさあ。ねえ、ちょっと本気で……苛めて良い?」
カノンは壊れたように笑って頬から垂れた一筋の己の血を舐めるとケープのような短いマントの内側から俺を殺しかけたステッキを取り出した。
「イッツショータイム! 覚悟してね?」
※ ※ ※
カノン逹が戦い始めてから、俺と千歳は正直言って何もする事がなかったので、互いの情報を交換していた。千歳の話が正しいと仮定すると、ある程度この世界の仕組みが分かった気もする。例えば、精神世界に繋がるのは俺の意識が無い時であることや、現実世界に実体を持つ者でも、何らかの条件さえ揃えば俺のフィールドにリンクさせれる事。そこで俺はある疑問を持った。
「なあ、千歳。カノンちゃんってさ、現実世界に存在すると思うか? 俺はそうは思わない。もしアイツみたいな魔女が存在するなら世界はもっと変わっていると思う」
千歳は一度カノンの方に視線を送ってまた俺の方を見ると、首を傾げながら答えた。
「うーん、あたしに言われてもなぁ。でも、多分居ない、とあたしは思うな」
「やっぱりか? じゃあ何でわざわざこんな世界に居るんだろな。てか、アイツの説明だと、カノンの故郷は俺のフィールド内に存在するんだろ? ますます訳分かんねえ」
そんな事無いと思うな、と千歳が独り言のように呟くと、眉間に皺を寄せて少し乾いた、薄くて形の良い唇を舐めた。千歳が趣味の推理小説の犯人を特定する時とかに見掛ける、通常よりもより集中して考え事をする時の癖だ。どうやら千歳なりに何か仮説を立てたみたいだ。
「カノンが前にあたし達に言った正史の人間、って事が正しいとすると、あたし逹が生きている世界とカノンが生きている世界、つまり世界その物が二つ以上存在する事になる。つまりパラレルワールドってところね。カノンの方の世界は何らかの要因で途切れてしまって、それが私達の住む世界の人間の仕業である……まだ証明にはならないけど、説明としては充分じゃない?」
普段、こんな説明をされたら誰だって頭がおかしい、と鼻で笑われるだろう。だがここは常識とかけ離れた世界だ。俺はその推理は間違っていないと思う。
「今さ、カノンが戦っているあの黒ずくめの人、あの人もきっとカノンと同じく何かの為に戦っているんだと思う。……何かあの二人って決して互いを相容れないけど、目指す先は同じ、そんな感じだと思うんだ」
と千歳が言った時に、今までに無い程の爆音が轟くと、砂埃が舞ってカノン達の戦いに終わりを告げる幕のように辺りを包んだ。どうやら決着が着いたようだ。
- Re: 俺と世界の夢戦争〜Mind war〜 ( No.18 )
- 日時: 2009/12/03 17:50
- 名前: 十六夜 葉月 ◆Gl6JohbFiw (ID: A8w5Zasw)
war:10 cross×cross
辺りを覆っていた砂埃が晴れると、そこには俺達が話し合っている間に激戦をしたのか、お互い赤色に塗れた二人の姿が在った。どうやら戦いは引き分けのようだ。
「はん、結局昔から相変わらず冷静そうに見えて心中穏やかじゃない剣撃だったな。貴様に裏切りは無理そうだ。直ぐバレる」
「主こそ。主は確実性を求め過ぎて隙が多過ぎるぞ。もし、神の能力者が現れなかったらいつまでも何をしていた? 主は我のように不老不死ではないのだぞ、限り有る命を有効に使おうとは思わんのか? ……まあ良い、神の能力者が居るなら色々使い道はあるしな、主がどうしても、我の存在を乞うのなら仕方なくついて行ってやろう」
この様子だとお互い元気なんだろう。でも、思うんだ。何かまた厄介な奴が増えそうじゃない? え、気のせい? 気のせいだよね?
「チッ。コイツムカつく。絶対いつか星落としてやる……お願いします、彩人兄様。これで良いでしょ!?」
(え、マジ!? この人何者よ? あのカノンが兄様っていったぞ!? 人をゴミ同然に扱うあの、カノンが!!)
と驚いていたら、俺が感じていた嫌な予感は的中した。ああ、またトラブルメーカーが一人、二人と増えて来ます。もうこの際一人も二人も変わりません、ええ。傷付くのはいつも俺ですけど。
「ふむ。今の言葉、確と聞き受けたぞ。では主等、我は黒月 彩人(クロツキ アヤト)だ。詳しくはこの書籍館で分かる。以後、よしなに」
宜しくお願いしますね、彩人さん。くれぐれも、くれぐれもトラブルだけは慎んで下さいね。
「あ、新しいメンバーが加わった所悪いんだけど、多分もう少ししたらあたし逹授業始まるから、カノン、さっき言ってたリンクを経つ方法、出来る?」
カノンは頷いて俺達を元の世界に返した。俺の時だけ、明らかに手荒な方法で返されたのは言うまでもない。
※ ※ ※
「あ、優希君。おはよう。具合、大丈夫?」
目を覚ました時、俺の隣に天使のように柔らかく微笑む女生徒が丸椅子に座っていた。普通ならこの状態を天国と言うのだが、相手が悪かった。千歳の話はどうやら冗談でなかった事が、目の前の存在によって示される。
「杏樹、さん。ええと、貴方こそどうしたのですか。俺の事をわざわざ見守ってくれたのは感謝するから早くしないと授業に間に合いませんよ」
杏樹は小さく笑い、ゆっくりと首を横に振った。
「やだな、杏樹さんなんて。よそよそしいなあ。昔みたいに、杏樹で良いんだよ? 私ね、張り切って今日登校してみたんだけど、具合が悪くなって倒れちゃった。だから次の授業ってマラソンでしょ? 私はここで見学なんだ」
杏樹はまだ神月の「物」なんだよな、と一瞬本気で心配してしまったが、アイツが何を隠し持っているのかは分からない。気を引き締めなければ。
「そっか。じゃ、俺は着替えなきゃなんねーから行くわ」
「うん、またね」
杏樹に別れを告げ、保健室のドアを閉めた瞬間に、また別の厄介人が現れた。
「おいユキ!! なあ、あの子って昨日急に転校が決まって入って来た、あの神月グループの令嬢、神月 杏樹ちゃんだろ!? お前、あの子とどんな関係だよ!? 俺とお前の仲だろ!? 紹介してくれよ!!」
とやたら早口で唾を飛ばしまくったコイツは相川 愁(アイカワ シュウ)。俺の親友の部類に入れたくないが一応、親友だ。コイツは身長も高いし見た目も良く、おまけにバスケ部のエースで一見モテそうな感じだが、俺が言うのもなんだが極度のバカで、その上女の子を見たら水着姿を想像してスリーサイズを見極める、超ド級の変態だ。俺は偶然や独りで妄想するのが好きで、まるっきりタイプが違うのに、何故か気が合うから不思議だ。
「バーカ。違うっての。そんな仲じゃないし。ってか付き合って欲しいなら堂々と告白しろよ」
「ハァ!? お前、馬鹿? 馬鹿なの? ああいうタイプはな、一歩一歩小さな事の積み重ねが大事でな……」
そうこうしている内に予鈴が鳴り、俺は目の前の饒舌馬鹿を放置して更衣室へ走った。
「それでは、始め!! 女子は男子がグラウンドから出た時にスタートだ」
体育教師の野太い声を合図に、一斉に走り出した。俺はマラソンなんて大嫌いだから後の方を適当に走る事にした。
走っていたら、妙な違和感がした。まるで、俺だけが動いていて、周りは止まって「ご名答。よくここが精神世界との境界線って分かったわね」
と、目の前にまた、どんな時でも裸足で、白地に赤いシミが沢山付着したワンピースを着た殺人少女が現れた。
- Re: 俺と世界の夢戦争〜Mind war〜 ( No.19 )
- 日時: 2009/12/05 14:10
- 名前: 十六夜 葉月 ◆Gl6JohbFiw (ID: A8w5Zasw)
war:11 誰が為に彼等は死に急ぐ I
「今回は単なる報告とヒントを与えに来ただけよ。無知故に死なれたら困るし、何よりもゲームは難しい方が面白いじゃない」
殺人少女は余裕たっぷりに告げて、自身の少し傷んだ腰まで届く長い白髪を手でかきあげた。
「殺人少女殺人少女言われるのは癪に障るわね。説明ついでにヒントをあげるわ。私だって貴方の知っている神月 杏樹よ。だけど私は彼女を上回り、そして下回る。原点であり、模造品。意味分からないでしょ? 更に難しい事を言うと、彼女と私は共に存在しないといけないけど、私は彼女をそれ程必要としない。つまり、現実世界のひ弱な神月 杏樹に手を加えようが私には関係無いのよ。だから私を消去したいなら直接消してみなさいな。無理だと思うけどね?」
俺は何が何だか良く分からないが、とにかく馬鹿にされていると思ったら、自称杏樹は重い溜め息をついて、早口で説明を続けた。
「さて、コイツ物分かり悪いし、私だってフィールドや実験場の調整とか忙しいから手早く色々教えるわね。まずはパーティーメンバーが揃ったそうね。人の持ち物奪って自分の物にするなんてなかなか面白い事するわね。まあそれは置いといて。これからは容赦なく貴方の方へ刺客を送り込むから、力を合わせて彼等を倒して私の元へ来て、王手の宣言をしてみなさい? 今から楽しみね。それと、これからは自由に貴方は精神世界にリンク出来るようになったから。目を閉じて意識を集中させれば飛ぶ筈よ。以上でヒントは終わりよ。せいぜい悪あがきしなさいな」
そして自称杏樹はまた俺に考える時間を与えずに消え去った。いつもいつも、アイツは何の為に俺の前に姿を現すんだ?
そしてまた一瞬の内に景色はいつも通りに戻った。だが問題が一つ。精神世界にいる間も、現実世界では若干進んでいる事だ。もう少ししたら女子が来てしまう。いや、別に走る姿を後ろから想像するのも楽しいんだけどね、もし女子に抜かされたら男としての威厳が無くなっちゃうじゃん?
「ユキちゃんってば遅いねー! あははは!!」
ほらもう後ろから音も無く千歳に追い抜かされちゃいました。私めの威厳はいずこ? 千歳なら理由を話せば一発で分かって下さいますよね? でも彼女、もう私めの隣になんかおりません。遥か遠くの、私めの前の方、六名先におられます。こうしている内にもどんどん先へ疾走してしまう。私めは特に遅いって訳ではなく、普通なんでございますよ?
と俺はどんどん怪しくなってゆく敬語で脳内説明をしていた。千歳が見えなくなる頃には目から、汗とは別のしょっぱい液体が僅かに流れたのは俺だけの秘密だ。
※ ※ ※
先生のくだらない話をうとうとしながら聞き流す事約十五分。ようやくホームルーム、いや、学校から解放された。そして今はまた恒例の如く千歳と一緒に下校していた。相川曰わく、美少女と登下校出来るのがどれだけ幸せなのか、その有り難みについて一度深く考えてみろ。なんて言われた。俺もその意見には激しく同意だが、何故か俺の周りに集まる美少女はロクな奴が居ない。美少女ってのは、性格も可愛くて初めて美少女って呼ぶんだろ?
「あ、ユキちゃん、さっきさ、頭の中で女の子の声が聞こえてねー、法条 優希のフィールドにいつでもリンク出来るようになった、とか聞こえてさ。それってさっきの不思議体験の事だよね!? カノン達もきっと待ってるだろうし、ね?」
ね? じゃねーよ。本音を言うと断りたい。でも断ったら確実に千歳に粉砕されてしまう。俺ってなんか哀れだな……
「ああ、カノンちゃん逹も待ってるしな。俺もなんか似たような事があってよ、えっと確か、目を閉じて意識を集中させれば良いんだっけ?」
「そ。じゃあ、せーの!」
千歳の合図で俺達は共に瞼を閉じて意識を集中させた。一瞬、エレベーターが上昇する時に体が浮くような感覚がして、再び瞼を開けると、今回はちゃんと俺達は書籍館前に立っていた。
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