ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 明日見た夢
- 日時: 2009/11/01 22:54
- 名前: 黒羽 (ID: KgobaFNd)
初めて投稿させてもらいます。
まだ未熟者ですが、読んでもらえたら嬉しいです。
また、更新速度が非常に遅いので、ご勘弁してください。
「ねぇ、止まりたいとき、本当に前に行くのをやめることができるの?」
子どもの頃の夢のように、あやふやで不確か、泡のように消えていくものの中で、その言葉だけが形を持っていつも心の中に座っていた。
悪夢のようで、しかし幼稚園生の遠足を待ち望むような期待感を持たせる言葉を、忘れるはずもなかった。
そう、あの時もそうだった。
「お前、バスケの試合でくれね? 1人インフルエンザで休んでんだよ」
答えるのに、何の悩むことはない。
「いいよ」
機械的な答え。自分で『人間の様に』考えると破たんしてしまうから、いつもすべての答えに肯定で答えるようにしていた。
いつもと同じ、ねじを巻いたらその通りに動くことしかできない自分。
いつしか僕は、「何でもできるけど鼻にかけないいい奴」というキャラクターになっていたらしい。
そう、僕はいつも「僕」を演じていただけなのかもしれない。
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- Re: 明日見た夢 ( No.4 )
- 日時: 2009/11/05 23:24
- 名前: 黒羽 (ID: m7RL/.Cf)
命を支えるものが外れる感触……。
防具が取られてあらわとなった口で、大きく息をする。
自分ですった空気のほうが、やはり「動いている」感じがする。
自分が死んでいく感覚がしても、死んでいく感覚により研ぎ澄まされていく「生きている」感覚が心地いい。
「ありがとう」
唇を上につりあがるように、目を細めるように、うまく注意しながら言った。
こんな風にすると、看護婦も同じ形に顔を動かした。意味はよくわからないけれど、看護婦は患者のこういう顔を見るために、その職業に就いたっていう話をよく聞く。
だから、無理なお願いをするときにこれを使うということにしている。
「あの、もう歩きまわっていいですか?」
「え、そんなのダメですよ……」
でも返事は聞かない。僕はスリッパに足を入れ、歩き始めた。
動いてなかったからだが軋む。痛みが身体を支配し、波が身体に押し寄せる。
「では、あとお願いしますね」
ああ、やっぱり病室の外のほうがまだいい。外にもたくさん弱っている人があふれていて、気持ち悪いけれども。
新聞が読みたい……。
いきなり、なぜかそんな衝動に駆られた。今まで僕は新聞なんてあまり読まなかったのに。
その気持ちの理由に気づいたのは、それはもう少しあとの事である。
そして、知ったころには、もう取り返しのつかないことになっていたけれども、もうそれは「僕」には関係のないことだった。
- Re: 明日見た夢 ( No.6 )
- 日時: 2009/12/28 16:10
- 名前: 黒羽 (ID: fsu3Q4nP)
頭の中で変な声が聞こえた気がした。でも、忘れてしまった。大事なことだったっけ? まぁ、いいや。もう僕に関係のあることなんてかけらすらないんだから。自分の命だって、必要だとすら感じない。
「おーっす、サボリ魔くん! やっとの復活かい?」
聞いたことのある声がした。待合室のほうからだ。待合室は病室に比べると「生きている」人達の動きがあるから、不思議な感じがする。僕も、昔はここの住人だったのに……。
「何感慨深げに黙ってんだよ、悲しくなっちゃうな—もう。」
「あぁ、そうだ、ごめん、存在忘れてた。……で、きみ誰だっけ? 名前は言わなくていいよ。どうせ覚えられないから。どういう人物か、またはその役職でいいから教えてよ」
がくっと、相手は肩を落とした。
「なに、そのいきなりのダブルパンチ、まったく、サボリ魔くんだったらもう少し明るくて楽しそうな性格でもいいだろ? そうだろ?」
なんだ、このマシンガントーク。誰だっけ?
「用がないなら行くよ、じゃ」
「ちょっとまってよ。思い出せって、俺、この病院に入院してるし、サボリ魔君の隣の病室にいるんだよ、名前は———」
なんて言われたか、聞き取れなかった。というよりもしかしたら聞きとる気も無いから、耳から通り抜けたのかもしれない。
「まぁいい。君を仮にF君とする。何で僕に話しかける?」
「ちぇ、そんな反応するんだ。じゃ、教えてやんない、せっかく面白いことあるのに……」
なんだこいつ。何が面白いかなんて自分が考えることじゃないし、客観的に面白いなんてもの存在するわけもないから、
その人にとって面白いこと=僕にとって面白いこと
ではないのに。
そう思って、僕はその場を去ることにした。
「ちょ、ちょっと待ってよ! 聞いてくれよ〜」
「三十秒待つ」
「えっ、え〜」
「2秒経過」
我ながら残酷な言葉に、彼女はショックを受けたようだ。
「君が眠っている間に、面白いニュースがあったんだぜ」
「十秒経過」
「いいにくいなぁ、もう。だから、殺人事件があったんだよ、この近くで!」
「……殺人事件? 三十秒経過。でも面白いから時間無制限にする。それ、新聞ある?」
「あっちにあったぜ、この辺の中学校で、十人が殺されたって」
- Re: 明日見た夢 ( No.7 )
- 日時: 2009/12/28 16:07
- 名前: 黒羽 (ID: fsu3Q4nP)
「……殺人事件か。でも、思ったより面白くはないね」
ほんの少し興味を持ったが、無かったことにした。何かが疼く。夢、体育館、殺人、十人……。
「ふーん、君、そーいうの全部OKじゃなかった? 一週間前、君は確かにそう言ってたんだけど。あれ? そういえば君、本当に俺が知っている君かい?」
「そうだ、そういえば、ひとつ聞きたい。君は、僕に会ったことがあるの?」
そうだ、僕はその人の顔と名前は覚えないが、雰囲気だけは絶対に忘れない。なのに、なのになんで、この人を僕は「知らない」んだ? あまりにも単純でよく気付けなかったこと。
「え、何度もあってたじゃないか。俺の名前もしっかり覚えてくれて、仲もよかったし」
「それは、それは本当に僕だったの?」
「うん、しいて言えば、君はそんな口調じゃなかったよね。もっと明るくて、人づきあいがうまくて、なんていうより、うーん。無理やり女の子が男の子のふりしているようだった」
うそだろ……?
「なんだよ、それ……」
「あ、君が男の事は俺もわかってる。でも、君は一度心療内科にいったほうがいいかもね、本当にそうなら。この総合病院にもあったはずだし、一緒に行こうか?」
うそ、うそだ。
「僕は、狂ってなんかない。僕は、僕は……」
ズキン……
「ねぇ、止まりたいとき、本当に前に行くのをやめることができるの?」
甘酸っぱいのに、苦しくて胸が張り裂けそうになる声。
「ククク……。君はまだ気づいてないんだよ。本当の事に。あたしのおかげなんだ、よ。君が生きてるのはね♪」
僕は、クルッテナンカ……………………ナイノニ。
- Re: 明日見た夢 ( No.8 )
- 日時: 2009/12/25 22:12
- 名前: 黒羽 (ID: B.wdZiuI)
「たはははは。冗談だよ。俺、君に会うの本当は初めてだし」
正直言って、ほっとした。ほっとした後に、怒りが込み上げてきた。
「なんなんだよ、その冗談。たちが悪いにもほどがある。二度と話しかけてくんな。このアマ!」
「おいおい、そんなんじゃ友達一人もいなくなるよ。気を付けなよー。一応病院内にも危ない中高生いっぱいいるんだし」
不思議なことに、この女は自分の事を「心配」しているようだ。おせっかいとしか感じられないが、邪険にするべきかどうか。いっそのこと、いやがらせ程度に本当の事を言ってしまうのもどうだろうか?
「友達なんていらないよ」
すると女は驚いたように口をあけた。
「なんで?」
「理由? 別に必要無いし、それに、僕の寿命はあと3カ月だから」
しばし変な時間が流れた。
女は僕がそんな大した病気だとは思っていなかったようだ。当たり前だ。そんな病気の人がこうも元気に院内を歩きまわっているはずがない。
それより僕が驚いたのは、女がかすかに何かを言ったことだった。僕には聞こえない風に、でも、僕を上目遣いに見ながら。なんだろうか?
「じゃ、最後の友達になろうぜ。俺の名は安和。君の名は?」
「僕の名前は———」
「そっか。じゃあ、また会えるといいな」
それだけ言うと、安和は去って行った。
さて、当初の目的に戻って、新聞でも読みに行くか。
- Re: 明日見た夢 ( No.9 )
- 日時: 2009/12/28 16:05
- 名前: 黒羽 (ID: fsu3Q4nP)
○○中学 生徒十人死亡
昨日午後一時ごろ、○○中学の体育館内で生徒十人が死亡しているのが発見された。
第一発見者はその学校の先生で、授業に来ない十人を探して目撃したようだ。
また、発見者の話によると、体育館の床全体が赤く染まっていて、死体はどれがだれだかわからない状態になっていた。とのこと。また、この目撃者は現在精神不安定のため休職中である。
犯人はいまだ見つかっておらず、またその日学校に侵入した者はいない。しかし生徒Aは、「この間までクラスにもう一人いたはずなのに、いなくなってしまった」とのこと。
しかし、いなくなった生徒など死亡者以外に存在せず、原因の究明を警察は急いでいる。
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