ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- LOVE SEED!
- 日時: 2010/01/07 16:22
- 名前: のんびり (ID: W8aSPOGo)
初めましてです。
のんびりです。動詞ではなく名詞です。
まだまだ未熟な私ですが、頑張るのでよろしくお願いします!
コメディ・ライトかシリアス・ダークのどっちに入れるか迷いました。だってどっちも入ってる感じになりそうだし・・・結局シリアスの方に入れましたが。
登場人物
「逢梨明ユウ(ありあ・ゆう)」
記憶喪失の少年。魔法と魔術が使えない魔導拒絶体質である。綺麗な銀髪は、右目で分けてありちょっと跳ねている感じ。印象的なその琥珀色の瞳はまさに宝石のようとまでどこかで言われているとかいないとか。
「真宮愛佳(まみや・あいか)」
ユウの第一発見者。修三の娘。銃器なら大体扱う事が出来る。茶髪の肩まであるセミロング髪。頭に黒いリボンをつけていて、後ろから先端が出ている。そこにフリルがあしらってある。
「冬樹白馬(ふゆき・はくま)」
名門校フレイヤ学園に通っている少年。無口でかなり真面目。特別所為のグローブをつけて相手を殴る蹴るが主な攻撃方法。綺麗な黒髪で、丸フレームの眼鏡をかけている。唯一その透き通ったブルーサファイアのような瞳が明るく見える。EX,s所属。
「真宮修三(まみや・しゅうぞう)」
愛佳の父。実は教師だったり。主にハルバードという戦闘用の槍のような斧を使用しており、家にある道場に3本ほど飾ってあるとか。
「冬樹先生」
防人学園生物学教師。
「葛木先生」
防人学園魔術科教師。
登場キャラ、及びそのキャラの説明は更新されて行きます!
- LOVE SEED! ( No.1 )
- 日時: 2009/12/13 11:16
- 名前: のんびり (ID: W8aSPOGo)
太陽系第三惑星、地球。
多くの生物が産まれ、生き、死んで行くこの星の遥か彼方。
何百光年や何千光年程度のものではなく、本当にかけ離れた宇宙の果てにその星は存在していた。夢と幻想の星『ドリーム・ファンタジー』。地球に似て地球とは異なり、地球には存在しない魔法と魔術が存在し、魔獣という化け物もいるこの星で人々は必死に生きていた。
この星の人々は「都市国セイヴァー」、「元帝国、共和国マルシェーリ」、「中立国リジェネ」の三つの国をつくり、ある者は貿易のため他国へ渡り、ある者は新たな発見を求めて旅に出たり、またある者は愛する者と幸せな生活を送っていた。
この物語は、都市国セイヴァーの三都市の一つ、「学園都市アシュセイヴァー」のとある少年と少女の出会いから始まる愛と正義と友情の物語である。
プロローグ
学園都市アシュセイヴァーは、都市の半分以上を多数の学校が埋め尽くし、残った部分を生徒達の生活の場所とした場である。学校の大半の学校は技術専門や武術専門などの専門学校が多く、自分の学びたい事が学べる良い環境を整えられるよう国自体が支援する巨大な学校の塊だ。生徒達は主に都市の居住区画に建てられた寮に一人暮らしをしているが、教師などが親の場合居住区画に建てられた親の家に住む事も出来る。
それは彼女、真宮愛佳も同じ事だ。
彼女の父は教師であり、後者の生活をしている。愛佳は17歳、今年の8月で18歳だがアシュセイヴァーでは危険な授業もする事が中学からあるため15歳からが中学生なのだ。なので今年から愛佳は高校生だった。
彼女が入学するのは武術専門学校、防人学園。名門という訳ではないが、有名ではある学校だ。この時代、女子が武術専門の学校に行くのは珍しくはなくなってきた。親の影響であったり、過去の事件か何かが理由であったりと。愛佳の場合、父親と母親の両方がこの道を選んだというのもあるが、理由は他にもある。
「今日から高校生だな」
朝食を食べ終えて、フリルをあしらったリボンをいつも通りつけていると父親の修三が後ろから話しかけてきた。
「うん」
「大丈夫さ、俺と母さんの娘なんだ。EX,s(イクセス)だって行けるさ」
「そこまで高望みはしてないってば」
母さんも同じ事を言うさ、そう言って修三はまだ食べ終えていない焼き魚に向かった。
リボンをつけ終え、制服のブレザーに袖を通す。愛佳としてはこの左肩から袖までの大きな十字架が気に入っている。防人学園に入った理由の一つでもあった。
「じゃあ、行ってくるね」
「はぁ、ひっれらっひゃい(あぁ、いってらっしゃい)」
口に焼き魚をくわえたまま見送りに来たものだから、ちゃんと言えていない。さっさと食べるよう注意してドアに手をかける。
中学の時の友達は武術専門は選ばなかった。だから知らない人だらけだろう。だが、それも良いかもしれないと思う。新たな友達を作る事が出来るのだから。愛佳に見えている高校生活は明るいものだった。ドアを開け、一歩踏み出す。真っ青に空は晴れている。入学式日和だ。一度深呼吸してもう一歩踏み出す。開けた光景は学園都市の広大な泥だった
(そういえば昨日雨降ってたっけ)
その一瞬は特に気にはしなかった。今どうなっているか気付くまでは。
泥が近づいてくる。今更気付けば、体重のかかり方がどう考えても頭に行っていて身体は浮遊感を感じていた。
今まさに泥の中に転ぼうとしていたのであった。
瞬間的に制服を守る事に頭が働き、手をつこうとしたのだが手をついた場所もぬめっていて服は守れても顔が泥に浸かるのは防げなかった。
「ぶふぐぅ!」
後ろでその光景をただ呆然と眺めていた修三は、娘の安否を確かめるため駆け寄って行った。が、
「ぬおわぁぁぁ!!」
自分も思いきり転んで泥の中へダイブ。立ち上がった愛佳はそれを受け止めもせずにただ遠くに逃げ去って行き、はねた泥がかかるのを防ぐ。修三は手もつけられずに顔から泥に突っ込んで行く。昨日クリーニングから持ってきたばかりのスーツも丸ごとだ。
「うぅ……何で明るい高校生活の最初からこんな……」
鞄に入れてあったタオルを取り出し顔を拭きながら呟いた。
明るいはずのものが泥沼だったのだから仕様がない。
「そういえば何かにつまづいたような……」
「ああ、確かに……って、はいぃ?」
修三が見つめる玄関前。つまりドアを開けたすぐ目の前に、綺麗な銀髪の誰か倒れていた。そりゃあもう黒い服の上から分かるくらいに血まみれで。
「「ぎ……」」
誰しもこんなものを見つけてしまったら、同じ事を叫んだだろう。死んでいるかどうかは分からずとも、血に塗れた人が倒れているのだ。殺人事件で死体を見つけた第一発見者よろしく、条件反射的に思い切り叫ぶ。
「「ぎゃああぁぁーーーー!!」」
こうして始まる一つの物語。
- LOVE SEED! ( No.2 )
- 日時: 2009/12/14 23:46
- 名前: のんびり (ID: W8aSPOGo)
目覚めて初めて視界に入ったのは真っ白な天井だった。ただただ見つめ、意識が完全に覚醒するのを待つ。まだ眠気のようなものは完全には抜けない。
「気がついた?」
声の聞こえる方にゆっくり目線をずらす。そこには一人の少女がいた。年齢は17、8くらい。肩の辺りまである茶色がかった髪に、フリルのあしらってあるリボンをつけ、印象に残りそうなガーネットのように赤い瞳。左肩から袖にかけて大きな十字の入った藍色のブレザーを着て赤いリボンを胸元にしている。女子高生っぽい感じだ。
「……誰?」
「それはこっちの台詞でもあるんだけど?」
「……相手に名前聞くなら自分から名乗るのが礼儀だろ」
口を尖らせて不機嫌そうな顔をする。間違った事は言ってはいないが、先に聞いたのは自分自身だった事にも気付かずにただボーッと相手の返答を待つ。
「私は真宮愛佳。で、君は?」
「逢梨明ユウ」
「逢梨明? 珍しい名字だね。どこから来たの?」
逢梨明ユウと名乗った少年はしばらく目を閉じて考え込む。ちょうど5秒ほどたった頃に再び目を開け、愛佳の目を見つめる。ただただ見つめる。何も言わずに。
じっと見られてつい赤面してしまった。ユウの顔立ちは悪くない。というか、カッコいいっていう部類に入ると思う。綺麗な銀髪で、ちょっと跳ねた髪型がまた無駄に似合っている。肌色は男子にしては白めで、宝石のような琥珀色の瞳はつい見入ってしまいそうになる。そんな男に見つめられていたら、愛佳も女の子。赤くなってしまうかもしれない。が、
「分からない」
「は?」
「だから、どこから来たのかなんて覚えてないって。名前だけだよ、覚えてたの。あー、こういうの何て言うんだっけ」
頭が痛くなってくるとはこの事なのだろうかと思う。
「記憶喪失……?」
「あー、それそれ」
一瞬面倒な人拾ったな、と感じた愛佳だった。
第1話「記憶と不幸の連鎖」(1)
ユウは今、診察室にいる。特に外傷はなく、血まみれだったのは服だけだった彼がこんな所にいるのは記憶がないらしいからだ。だが、一口に記憶が無いと言っても、あくまで『記憶』が無いだけで、何もかも忘れ去った訳ではなく、昔の事は覚えていないがハサミは紙などを切る物といった『知識』はある。
愛佳は学校に行ってしまい、代わりに愛佳の父と名乗る修三が残った。
「さて、では基本的知識がある事は分かりました。今度は魔術についてお聞きします。魔術についての知識はありますか?」
魔術。
魔法と共に存在する2つの力のうちの一つだ。魔法は生命力の片割れの魔力を消費し使う。攻撃系が多く補助系や治療、生活に便利なものが少ない。魔術は自然の力などの周りにある力を魔法陣や道具、呪文を使い引き出して、発動する。主に魔術が使われる事が多い。何故なら魔力を消費しすぎると、死んでしまう事や、かなり重い病気にかかってしまったりする事もある。だから魔法は使われる事があまり無い。
「……多分」
「じゃあ、基本中の基本。光の玉を出してみてください」
光の玉は、円に星を書いて発動する一番簡単な魔術だ。渡された紙に円を書き、その中に星を書く。
「光の玉」
瞬間、魔法陣の少し上に光が集まってきて光の玉が出来上がった。のだが、
「なるほど、魔術は使えますねあぎゃあああぁぁぁぁぁ!!!」
「ぬおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!?」
「うおわあああああぁぁぁ!」
発動3秒後、光の玉が大爆発した。目の前にいたユウは診療室の窓を突き破り、中庭の木に思いきり突撃した。グキっという音が聞こえたような気がするし、身体が真っ二つにでもなるんじゃないんかと思うくらい滅茶苦茶痛い。
「ま、魔導、拒絶体質、だったとは・・・・・・迂闊。あイタぁ!?」
「先にそれを言いやがれバカやろう!何だって俺までぶっ飛ばされなきゃならねぇんだよ!?」
言いながら思いきり医者の頭をはたく。
腰をさすりながら修三の方を見てみると、頬に赤い手形がついていて、後ろには壁を突き破った跡があり看護士が走り去って行く姿が。後は想像に任せよう。
修三がこちらにやってきて、手を差し伸べる。
「大丈夫か?」
「超痛い」
「だろうな、俺も超痛い」
突き破った窓から部屋に入り、ベッドの上に腰掛ける。
よろよろと起き上がった医者は、壊れかけた椅子に座る。
「魔導拒絶体質を治すんだったら『アレ』が一番効果的ですよ。ちょっと痛いですけど」
「そうっすね」
「おい、『アレ』って何だ?」
「来れば分かる」
* * *
連れてこられたのはやけに広い広間だった。病院だけあって広いもんだ、と感心していると、
「じゃ、始めるぞ」
「……って、何をだって聞いてんだろさっきから」
修三はニヤリと笑う。どう考えても面白がっている笑みだった。さっきの医者が電気をつけると、床にあるものがあった。
巨大な魔法陣だ。
魔法陣の円の部分には、何本もの蝋燭が立てられ火がつけられていく。
「じゃ、頼むぜセンセ」
「了解です修三さん」
医者がバンッ!と両手で床を叩くと、魔法陣が光ると同時周りの蝋燭の火がバチバチと音を立て始める。よく見ればそれは火花が散る音ではなく、静電気のような物の音だった。
「で、何する訳?」
「これからその周りの静電気を中心に集める。お前はそこから動くな」
「は?」
ちなみに今ユウは魔法陣の中心にいる。修三に立ってろと言われずっと立ち尽くしていたのだが。このままここにいれば——
「じゃ、いっちょ感電してきやがれ」
瞬間、もう静電気とは呼べないほどの電気がバリバリバリ!と音を立てながら大きくなってきた。その姿はまるで雷の様。ユウは逃げたかった。逃げたかったのだが周りには電気の壁が立ちふさがっている。どうすれば良いか分からず悩みだした刹那。
「あぁぎゃぁぁあぁぁぁーーーーーーーーーーッッッッ!!
まるで漫画のように骸骨が透けていた。
そして終わった頃、彼は当然の様に気絶していた。
- LOVE SEED! ( No.3 )
- 日時: 2009/12/16 00:47
- 名前: のんびり (ID: W8aSPOGo)
不幸なんて言葉があてはまらない程に。
絶望すらする事も許されず。
愛を求め、居場所を探す事さえ出来ない。
そんな自分は何故産まれたのか、その理由が知りたくて。
ただ、差し伸べられた手に希望を見出したからその手を握った。
一体どこから間違いだったのか。どうすれば良かったのか。まだ知らない。知る術も無い。そんな事今更だ。大切な物は全て壊れた。もう手に入る訳も無い。それは確実に自分の所為で。でも何故自分の所為なのか分からなくて。
だからいつものように呟く。
「俺って……一体なんだ?」
第1話「記憶と不幸の連鎖」(2)
「くはっ……!」
変な夢を見た。
滅茶苦茶シリアスな夢。記憶が無いとこんな夢も見るのか、と少し嫌になる。
ゆっくり起き上がると、負のオーラを出している修三と医者がいた。なんだか資料のようなもの、カルテだろうか。それを見ながら項垂れている2人がいた。
「……まさか治らんとは」
「原因不明、って出てる時点でもう今の所手だては無いです。それに何ですかこれは。家にある最新型魔力計測器が一瞬でドカンですよ?あの子一体何者……」
「それが分かりゃあいつだって記憶喪失なんて面倒なもんにはなってねぇよ」
「そうですね、今度技術都市シュヴェーデにでも特注品頼んでみます」
「おう、頼むわ。……って、起きたかよ」
今頃起き上がっていたユウに気付いた修三が振り向き様に言った。医者も驚いたような顔をしたあと、軽く頭を下げてくる。
とりあえず気になった事を聞く事にする。治らなかったとはどういう事か。
「ああ、一番治ると言うかほぼ確実にどんな原因でも治るはずの電撃だったんだが治らなかったって話だ」
「……あれだけの思いをしてか」
「すまん、だが俺達にはどうする事も出来んのだよ。クフフ……」
軽く面白がっているように見えるのは気のせいだろうか。
「そういや、さっきお気絶した時にお前の内ポケットを漁ってみたらこんな物が入ってたぞ」
勝手に漁るなとツッコミたくなったがそこは我慢する。とりあえずそれを受け取ってみる。カード位の大きさのそれは厚さ3〜5ミリくらい。小さな手帳のようになっており、カバーには『防人学園生徒手帳』と書かれている。
「生徒手帳?何でこんなもんが?」
「入学(はい)るつもりだったんじゃないか?名前も逢梨明ユウって書いてあるし」ついでに、と続けて「もう一個、超圧縮ボックスがあって開けてみたら防人学園の制服が入ってた。これに着替えて一回学校行ってみろ。何か記憶の手がかりがあるかもしれねぇぞ?」
まあ分からないでも無い。結局、魔導拒絶体質は治らず治し方も分からずという状況だ。なら記憶の手がかり探せば良いじゃない?って言う事だろう。
「……ん、じゃあ言ってくる事にするわ」
「おう、着替えて行けよ」
* * *
制服を着た時に気付いたのは、今朝の少女、真宮愛佳の制服と似ている事だった。彼女のブレザーには左肩から袖に十字だったが、ユウのには右肩から袖までに十字がある。色は同じだが、男子と女子で微妙に違うのかもしれない。襟は愛佳のと同様赤く縁取られ、ネクタイは赤。ワイシャツの襟には黄色く縁取られている。ズボンは黒色だ。ユウはネクタイを完全に締めたら何だか苦しかったので、軽く緩めて締めておいた。
「──ここ、か」
大きめの門の奥にはかなりでかい校舎が見える。グラウンドなども結構広そうな印象を受ける。
門を開き、中に入る。記憶喪失で、入学式に来るって言うのも何だか新鮮な気がした。
昇降口前に立ち、深呼吸。
実は今松葉杖をつくほど怪我しているから周りからどう思われるか心配だ。だがそんな事を気にしていたら一生記憶など戻らない。記憶の手がかりを求め、校内に入って行く。
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