ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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黒の惨状
日時: 2009/12/22 22:17
名前: たきばね ◆rvP2OfR3pc (ID: AzSkpKat)

現在 9 話までアップしています。



こんにちは。たきばねです。
好きなものはELLEとBUMPとYUIと本とふとん。
現在中学二年生のグダグダ人間です。


【軽く内容解説☆】※どうでもいいんで飛ばしてもおk!☆
えーと。この物語は、「日本内乱」です。ジャパンクーデタ!
日本が警察派と政府派に分かれてしまいます。(タイヘン☆タイヘン☆)
そんな感じの話です。…ハイ。
楽しんで頂ければ幸いです。


【目次】

第一話>>1>>2
第二話>>3>>4
第三話>>5
第四話>>6>>7
第五話>>8>>9>>10
第六話>>11
第七話>>12>>13
第八話>>14
第九話>>15


※消えたので一回書き直しました。
その間に、内容も少々修正させて頂きました。まあ、修正後を読まなくても支障は無いと思われます。



【たきばね いろいろ】

最近はひたすら絵を描いています。
なぜかというと、ペンタブレットを購入したからです!
んで調子乗ってリクエスト掲示板でこんなスレを作成しちゃいました★
たきばねの絵柄を少しでも好いて頂けたならば気軽にリクしてくださいな。うん。
http://www.kakiko.cc/bbs2/index.cgi?mode=view&no=3481

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Re: 黒の惨状 ( No.3 )
日時: 2009/12/13 18:19
名前: たきばね ◆rvP2OfR3pc (ID: AzSkpKat)

第二話



 訓練はそう苦しいものではなかった。
 自衛隊が行うような血反吐吐くような訓練を当然、素人の一般市民にやらせる訳がないとは思ってはいたが、それなりの覚悟はしていた。ただ毎日長距離を走り、腹筋、背筋、腕立て伏せなどの筋力運動、射撃訓練など、普通のジムや、射撃ゲームなどでできるようなものばかりだった。

 しかし一番辛かったのは、精神訓練だった。
 人を殺すということはどういう事なのか、政府派はいかに愚かか、警視庁の名誉がいかなるものなのか、などと、洗脳するように叩き込まれた事だった。

 それでも秋久は人を殺すまいと、自分の意志をしっかりと胸に刻み込んでいた。

 訓練中にも浅い関係だが、友人と呼べるような人もできた。しかし、どの人も年上であり、秋久を見るなり、一体どれだけ優れているのだろうと誰もが注目した。それが秋久にとっては、小さな苦痛であり、訳の分からない罪悪感を生み出した。

 そして一ヵ月後。
 世の中は更に状況を変化させた。政府派が、一般市民への——警察派への攻撃を図ると通告してきたのだ。が、政府派に加担すれば、身の保証はするという脅迫的な情報が流された。
 これに従順な人もいれば、まったく無視する人もいる、多種多様な考えが入り混じる中、警察派も攻撃の準備に取り掛かった。
 やがて人々は気付いていく。
 センソウが始まったのだ、と。

 
 人間は同じ事を繰り返す馬鹿な動物さ。
 繰り返して繰り返して、それでも繰り返す。
 繰り返してばかりのくせに、同じ毎日に飽き飽きする。本当に阿呆だよな。


 智久はよくそう言っていた。でも本気で呆れている口調ではないとわかっていた。智久は人が好きだった。表情があるし、何より叡智であるからだという。
 しかし叡智であるからこそ阿呆なのだ。それはどうにもならない事であるから、悲しかった。

 「兄ちゃん…どこに居るんだ…。どこかに…居るのか?」

Re: 黒の惨状 ( No.4 )
日時: 2009/12/13 18:22
名前: たきばね ◆rvP2OfR3pc (ID: AzSkpKat)

 血、悲鳴、爆音…。この記憶だけが頭の中でスパイラルする。秋久は、今にも狂ってしまいそうだった。

 見渡す限り、動かなくなった人間しかいなかった。もうこの地帯も全滅に近い。警察派も政府派も、死ぬ姿は同じ人間なのだ。

 秋久は右腕から絶たず垂れ流れてくる血を、抑えるのに精一杯だった。銃弾を発砲中の戦場で、流れ弾が当たったのだ。
 ふらついた足取りで、当ても無く足を動かしていた時、自分が歩む足音しかしなかった空間に、ガタンと何かが倒れたような音がした。秋久は反射的にその方向に目をやった。

 「…!」

 崩れた建物の影から、少女と老人が居た。
 老人は下を向き、立っているのがやっという感じで、少女に支えられている。少女は秋久を見るなり、怯えた表情を見せた。

 ——政府派か。

 この地帯で生き残った、政府派の人間。政府派の人間は抹殺しろと言われている。
 少女は涙を流して、怯えながらも秋久を睨んだ。怯えは手に持った銃であり、憎悪は「警察派」という部類にあるものからだ。

 もちろん秋久は殺すつもりなど微塵もない。どうか生き残って下さい、そう心で呟き、二人の小さな人間に背を向けた、その時だった。

 「おい!お前!」

 大きな声と共に、片手に銃を構えた「同胞」が現れた。

 「何をしてる!そいつらは政府派だぞ!銃口を向けろ!」

 そう言って「同胞」は走りながら銃を構えた。少女は支えていた老人にしがみつき、きつく目を閉じる。

 ——兄ちゃん、こいつ今、人を殺そうとしてるんだ。何も意味無いのに。
    赦してくれ母さん、父さん。赦してくれ兄ちゃん。

 秋久は手に持っていた銃を構えた。
 低い銃声が、空間に響いた。

Re: 黒の惨状 ( No.5 )
日時: 2009/12/13 18:25
名前: たきばね ◆rvP2OfR3pc (ID: AzSkpKat)

第三話



 「…早く逃げろ」

 秋久は目の前に横たわる「同胞」をじっと見ていた。人を殺した、人を殺した——。その事実を焼き付ける為に。

 「血、かなり出てますね」

 少女は秋久の腕に目をやる。警察派の兵士という目印である長いフード付きの白いコートが、血で染まっていた。

 「止血剤、ありますけど。良かったらどうですか」

 秋久はゆっくりと首を少女の方へ向けた。同い年か、それより下かくらいに見える。腕には多少の傷があるが、包帯などが巻かれている部分があった。少なくとも治療道具を所持していると思われる。
 秋久が何も応答をいれないでいると、少女の方から手を引っ張ってきた。

 「早くして下さい」

 抵抗するほど精神的に力もなく、秋久は建物のなかへ連れられていった。

 倉庫のような小さな部屋だった。
 六畳半ほどの部屋に、ほこりを被ったデスクと、簡単なソファーが三つ並んでいる。古いが、テレビなどもあった。電気も微妙な明るさだが、ついていた。
 先ほど居た老人が、ソファーの上で横たわっていた。下を向いているので、またしても顔が見えない。秋久は老人の向かい側のソファーに腰掛けた。

 「ちょっと染みるかもしれませんが、消毒液塗りますね」

 少女はそう言って、タオルにたっぷりと消毒液を垂らす。ちょっとどころか、かなり染みる。秋久は思わず小さな悲鳴を上げた。だが少女は動じる事も無く、容赦なく進めていく。

 「…はい。応急処置ですが、かなり楽だと思いますよ」

 秋久の腕に、白い包帯が巻かれた。少し血が滲んでいるが、かなり抑えられた。ここは銃声音も叫び声も聞こえないおかげか、秋久の心も少し落ち着きを取り戻していた。

 「…ありがとう…ございます。気分的にも楽になりました」
 「それは良かったです」

 少女は手馴れた様子で笑顔を見せた。

Re: 黒の惨状 ( No.6 )
日時: 2009/12/13 18:31
名前: たきばね ◆rvP2OfR3pc (ID: AzSkpKat)

第四話



 精神的にも落ち着いてきたところで、この奇妙な状況に理性がついてきた。
 「政府派」と「警察派」が一緒に居る。「警察派」である秋久は「警察派」の人間を殺した。
 殺した?

 「……」

 秋久は頭を抱え、俯いた。
 己との、約束を破った。この手で人を殺めた。あれは確かに、自分の意志だった。震える自分の手を見ながら、秋久は酷く泣きたい気分になった。

 「…どうかしました?」

 片手にマグカップを持った少女が、心配そうに顔を覗いた。

 「俺は…殺したんですね」

 目に熱いものが上がってくるのが分かった。少女は何も答えない。いや、答えられないというのが正しい。

 「人は殺さないと…決めたのに…」
 「同じ事です」

 力強い少女の声に、秋久は思わず顔を上げた。少女の方が驚いたような顔をして、しどろもどろになりつつも、徐々に音量をあげ話し始めた。

 「え…と、あの時、「警察派」の男を殺さなかったら、私達が殺されていました。皮肉ですが、結果は同じ事です。運が悪かっただけです。気に病まないで下さい」

 最後に「救われない答えですいません」と付け足した。少し後悔しているような口調だった。

 「…冷静だな。俺は全然だめだ。どっちにしろ誰かが死んだって事実に悲しんでるしかない。…頭悪いから」

 少女は微笑し、マグカップを秋久に渡した。簡単なミルクのようなものだった。

 「私の親が外科医と薬剤師だったので、生死に対しては冷静なんです。あ、そのミルクには鎮痛剤も入ってますよ」

 なるほど、と秋久は納得した。医者の子ならば、あの手際のよさも頷ける。薬に詳しいのも同じだ。
 秋久はミルクをゆっくりと口へ運んだ。温かく、包まれるような感覚が横切った。ふいに母のことを思い出し、顔が少し赤くなった。

 「本当に、助けてくれて、有難うございます」

 少女は改めて礼を言う。

 「助けただなんて、そんな」

 秋久は謙遜するが、少女は真っ直ぐな瞳で、どこか遠くを見るような表情で言った。

 「私の名は、高岡皐月と言います。十五です」
 「俺は、宮城秋久。俺も十五だ。偶然だな」

 同じ年齢と言っても、状況が状況であるから故、実感が沸かなかった。秋久は学校でも女子と話すタイプではなく、同級生ともなれば一緒に居るのも耐え難い空気になるのだが、皐月に対してはあまり感じられなかった。

 「なんだか…同級生って感じがしませんね」

 皐月は年齢を知って尚、敬語を続けた。相手もそう思っているらしい。

 「そうだな。でも敬語じゃなくていい」

 そういうと皐月は苦笑した。最初は、どこにでも居そうな覚えにくい顔だと思っていたが、それなりに美人といえるような顔つきだった。傷だらけではあるが、清潔感があった。十五にしては、百五十三、四センチメートルくらいの、小柄な体格だ。

 「…十五か…」

 不意に声が聞こえた。低く、今にも消えそうな声で、この静寂な空間に、ぽつんと響いた。

 「おじさん、具合どう?ちゃんと休めば、明日には回復するんだからそんな急がないで」

 皐月は向かい側のソファーに横たわる老人のもとへ駆け寄った。俯いていた老人が顔をあげ、秋久は始めて老人の顔を見た。足取りからして、かなり老いていると思ったが、顔つきからは六十前後だと考えられた。
 しかし、目が虚ろで、「元気に生きている」という人間ではなさそうだった。髪は深い黒で、ホームレスのようにごわごわしている。一言でいうと、「恐い」という印象だった。

 「そんな若いもんを戦場に出さなければならないとはな…警察派の手駒も最早限界か?」

 皮肉のようにも聞こえる口調は、秋久に対してだった。

 「おじさん…」

 皐月は少し呆れるようにため息をついた。老人が持つ「恐さ」も、華の十五歳の皐月と並んでいると、なんとも奇妙で、それでいて「恐さ」も抑えられていた。
 「どなた…ですか」
 老人の「恐さ」に呑まれそうになりつつも、声にビビリを出さずに出来た。老人は秋久をあからさまに睨む。

Re: 黒の惨状 ( No.7 )
日時: 2009/12/13 18:35
名前: たきばね ◆rvP2OfR3pc (ID: AzSkpKat)

 「あ、宮城くん、こんな仏頂面だけど、怒ってるとか機嫌悪いとかじゃないの」
 「え?」

 思わず間抜けな声を発した。

 「俺は本当に機嫌が悪い」

 老人は低い声でいう。皐月は困ったように二人を交互に見た。

 「おじさんもそんな事言わないで」

 皐月は老人の母親のようにいう。老人は面白くなさそうな顔をし、黙っている。何も言おうとしない老人にまたため息をつき、皐月が口を開いた。

 「このおじさんと私は、血が繋がってるわけでも、知人ってわけでもないの」

 秋久はまた驚いた。そういえば先ほどから、老人の名が出ていない——。


 「政府派が攻撃を始めてすぐ、警察派も攻めてきた。とくにこの地区は、政府派の警備も厳重じゃなくて、警察派のやりたい放題になってしまって」

 秋久は外の現状を思い出す。崩れた建物、倒れる人々、灰色の空気。云十年前の第二次世界大戦を見るようだと誰かが言っていた。

 「…やっぱり思ったより酷いんだな。こんな事になってから行動範囲が狭まって、外のこととかが分かりにくくなってる」

 皐月は頷く。

 「一夜にしてこの地区は壊滅状態…世界大戦から戦争の技術っていうのは進んでるものなんだね…」

 皐月は自分の腕についている傷を撫でた。悲しそうに、俯く。秋久は彼女に目を向けているのは辛くなり、反射的に老人の方を見た。丁度、老人も秋久の事をじっと凝視していた。秋久は驚き、思わず声を発する。

 「な、なんですか」

 そういうと皐月も顔をあげ、老人の方を向いた。

 「……いや。ちょっと似ていたものでな」
 「似ている?」

 皐月が興味深そうに声を出した。最も秋久自身が一番驚いていた。

 「俺が…?誰に…ですか」

 老人は何も言わない。でも、言う気がないとは感じられなかった。ためらっている、困っているといった気持ちのようだ。秋久は先ほどの老人と皐月との会話を思い出していた。


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