ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

逆転デキマスカ?
日時: 2009/12/16 20:10
名前: 朝喜 ◆rgd0U75T1. (ID: cRxReSbI)

 プロローグ>>1
 >>2
 >>3
 >>4
 >>5
 >>6
 >>7
 >>8
 >>9
 >>10

 えっと、長いです。

Page:1 2 3



Re: 逆転デキマスカ? ( No.1 )
日時: 2009/12/19 19:34
名前: 朝喜 ◆rgd0U75T1. (ID: cRxReSbI)

 プロローグ

 外では雨が降っていた。
 季節は冬で、気温が低いのにも関わらず、雨が降っていた。

「東京に帰れ、バアーカ」
「あんま調子乗ってるとマジで殺すぞ」
「オレ達を田舎者扱いしやがって————」
 目の前のヤツらは笑っていた。滑稽に、実に満足そうに————

Re: 逆転デキマスカ? ( No.2 )
日時: 2009/12/16 19:38
名前: 朝喜 ◆rgd0U75T1. (ID: cRxReSbI)

  1

 その教室は、騒がしく、楽しそうな声であふれていた——

「清水クンから、音楽室へお呼び出しでーす」
 不潔感極まりない女子がそう告げるのを合図に、周りの生徒たちもニヤけた顔を彼に向けた。
 一人一人見なくてもはっきりと解る。その目は明らかに歪んでいた。「目が死んでる」といっても過言ではない。
 そして言うまでもなく、彼自身の体は忙しなく震え、今にも泣きそうな目で自分を取り囲む者たちを睨んでいた。
 ——怖い。
 自らに誤魔化しの言葉を唱える。
 それはある種のジレンマとも言える行為だが、それを知るものこそ居らず、彼の心の中で“それ”は渦巻き続ける。
 ——俺は……目の前のヤツらが怖い。
(気持ち悪い)
 ——あいつらに何されるか解ったもんじゃない。
(殺す価値すらない)
 ——だから、だから、ここはヤツらの指示に従うんだ。だから……

 泣いちゃ——だめだ……

Re: 逆転デキマスカ? ( No.3 )
日時: 2009/12/16 19:39
名前: 朝喜 ◆rgd0U75T1. (ID: cRxReSbI)

  2

 その教室は騒がしく楽しそうな声であふれていた——
「唐沢耀也(からさわようや)? 誰それ?」
 金髪ピアスの厚化粧顔が口をパクパクさせる。
 面白いというよりは気持ち悪いがあっているだろう。
 少女——小夏(こなつ)は溜息半分に唐沢耀也と言われた少年を指さしながら言う。
「あ、今泣いてるアレ、あいつ。なんで皆で虐め——」
「で? それがどうしたの?」
「で? って……」
 少女は口ごもりながらも目の前の男か女かもわからない顔の人物を嫌悪した。
 目の前の金髪ピアスの厚化粧顔はニヤけた顔を見せながら淡々と物言いをする。
 正直——吐き気がした。
「あいつ“なんか”ムカつくじゃん——“それだけ”でしょ?」

Re: 逆転デキマスカ? ( No.4 )
日時: 2009/12/16 19:39
名前: 朝喜 ◆rgd0U75T1. (ID: cRxReSbI)

  3

 唐沢耀也はカッターナイフを突きつけられ嫌々音楽室に閉じ込められた。
 “ただ、それだけ”
 だから、“その程度のことでは誰もなんとも思わない”思う程の心を誰も持ち合わせていない。良心があるないも問題ですらなかった。
 もしも、もしもそれに理由があったのだとしたら、それは——
 ——彼が、唐沢耀也だから。
 ただ、それだけ。

 一日分の学業も終わり、帰りの学活の時間となった。
 最前列の席である耀也がいないことに気づいた教師は他の生徒に訊ねる。
「唐沢ぁ、アイツぁどうした? 早退でもしたのか?」
「センセー、あいつ音楽室でなんか泣いてました〜」
「ついでになんか変なことブツブツ言ってました〜」
「センセーの悪口言ってました〜」
 最後の前髪の長い少年が言い終わると、その教師は機嫌を損ねたように、
「そうか、後で殺しておかないとな。しかし“それだけ”か。それよりも生きとるのかぁ? 生死は問わぬと言っただろう?」
「すいません。クスクスクス……」
 物騒なことをいう教師に対し、前髪の長い少年は不気味な笑いを堪えながら手で口を覆う。
 そして、その教師は嬉しそうに言うのだ。
「そうか。——では今日皆に嬉しい知らせがある」

「アイツ——唐沢を退学に“する”ことに決めた————」

Re: 逆転デキマスカ? ( No.5 )
日時: 2009/12/16 19:39
名前: 朝喜 ◆rgd0U75T1. (ID: cRxReSbI)

  4

「開かない……」
 少年——唐沢耀也は呟いた。ピアノもなければ防音効果のある訳でもない音楽室と称されただけの部屋で。
 そして、自分の呟いたセリフに苦笑いを浮かべる。
 ——開かなじゃなくて、“開けない”んだな。
 しかし、その扉は否応ぶち抜く以外の方法で開けられるような状態ではなかった。
 なぜなら、内側についているであろう、つまみの部分が外れているのだ。まるで強引にペンチで破壊したように千切れたつまみの部分が歪に曲がっている。
 だが、決して脱出できない状態ではなかった。
 簡単な事だ。
 扉が閉まっているのなら窓を開けて出ればいい。ベランダこそないが、音楽室は四階の高さにあるのだ。飛び降りたくらいで“即死”には至らないだろう、彼——耀也は迷うことなく飛び降りた——


Page:1 2 3



この掲示板は過去ログ化されています。