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Vampire Tear-孤独の君主-【オリキャラ募集中!】
日時: 2010/03/05 19:33
名前: 十和 (ID: zCJayB0i)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode

暗闇に独り、立ち尽くす。それはいにしえからの咎人とがびと
老いし人は問う。貴方は何故 罪を犯すのか。
の人は答える。それは、己の存在そのものが罪だから。
若かれし人は問う。貴方は何故、人を殺めるのか。
彼の人は答える。それは、そうすることでしか生きられないから。
無知な幼子おさなごは問う。どうして涙を流すのか。
彼の人は首を振る。それは、誰にも明かせない秘密。

行動することに、理由が必要でしょうか。生きることに、意味が必要でしょうか。
失われゆく命に涙することに、正誤せいごが必要でしょうか。

時の流れに身を委ね、咎人は何処いずこへ流れゆく。
抗うことなど露知らず、ただただ虚無にぜていく。
もし流れに足掻いたなら、セピアの世界は変わるでしょうか。
ならば私は流れに刃向かい、世界に願い、世界を呪いましょう。
願いは他者に、呪いは己に託しましょう。
流れに逆らい、進むことを、世界は、許してくれるでしょうか。


Episode1 >>1
Episode2 >>2
Episode3 >>3
Episode4 >>4
Episode5 >>5
Episode6 >>6
Episode7 >>7
Episode8 >>9
Episode9 >>16←龍さんのオリキャラ登場です!
Episode10>>21←rightさんのオリキャラ登場です!
Episode11>>27←ららァさんのオリキャラ登場です!
Episode12>>28←恢羅さんのオリキャラ登場です!
Episode13>>




オリキャラ用紙 >>10

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Re: Vampire Tear−孤独の君主− ( No.5 )
日時: 2010/02/04 16:51
名前: 十和 (ID: zCJayB0i)

Episode5‐混沌とした世界の秩序‐


場所は変わってEU中央地域、アリエスタ軍隊本部。

「ジャック・・・で、良いんですよね」
「ああ。俺もリザって呼んでるし、別に呼び捨てにしてくれて構わない」
空中艦隊から降りながら、そんな話をしている二人。
「じゃあジャック。今から何をしにEUへ?本国の混血種を殲滅することの方が重要なのでは?」
リザの質問に苦笑いしながらジャックは答える。
「・・・何で、か。実は俺にもわからないんだよね。エリーゼの考えは突拍子もないからなぁ・・・」
「エリーゼ陛下が?全て指揮しているのですか?」
「地域別にはその地域のリーダーが指揮するが、根本的には全部エリーゼがやってるぞ」
「・・・へぇ・・・」
納得したように頷くリザ。ジャックはそれを見ながらはにかんでいた。
『・・・見た目は子供なのにな・・・』
リザ曰く、彼女は18歳らしい。俺より2歳年下なのに、醸し出す雰囲気が大人っぽいと思う。
「・・・ジャック。私の顔に何か付いていますか?またジロジロ見てますよ」
リザの注意にハッとする。しまった。また態度に出ているのか。
「私の顔がそんなに珍しいですか?一般人と変わらないと思うんですが・・・」
そんなこと思っているのは君だけだ。とは敢えて言わない。
「・・・まあ、そういうことにしておこうか」
「はぁ・・・。・・・ところで」
リザは本部の外にある崖の上に立つ。ジャックも直ぐに横に並ぶ。
「・・・酷い、有様ですね」 「・・・ああ」
目の前に広がる光景は、焼けた大地、肉の焦げる匂い、響く轟音・・・。
「治安の悪くない地区だったはずなんだ。なのに、混血種がすべて奪っていったから、こんな・・・」
泣き叫ぶ子供たちが目に映る。なんて、哀しい・・・。
「・・・混血種、が悪いんですか・・・」 「?」
リザはただ、冷たく視線を落とす。
「人間の決めつける<善>が、果たして本当に全てなのでしょうか。
 混血種の求めるものは、果たして本当に全てが<悪>なのでしょうか。
 ・・・見える世界が、果たして本当に<全て>なのでしょうか」
リザがジャックに問いかける。・・・見据える瞳には射殺さんばかりの意思が宿っている。
「・・・だが、何が善悪にしろ、生き残るためにはどちらかが生き残り、死ぬしかないんだ」
そう答えられた時のリザの顔。・・・泣きそうに歪んでいた。
混沌としている世界の中で、ただ一つ、透き通って美しく見えたのは気のせいだろうか。

Re: Vampire Tear−孤独の君主− ( No.6 )
日時: 2010/02/04 22:03
名前: 十和 (ID: zCJayB0i)

Episode6‐混血種vs人間‐


「どちらかが・・・ですか」
リザは何ともないというような顔をして、また崖から下を見下ろしていた。
「・・・それじゃあ・・・」
リザが何か言いかけたその時、耳をつんざくような音が聞こえた。
超音波のような、聞き心地の悪い音。
「っ、一体何の音だ?!」
ジャックが耳を押さえながら辺りを見わたす。
リザは耳を押さえることなく、冷静に視線を巡らせる。
「・・・これはきっと、混血種の襲撃直前の唸り声。仲間達に勝利を宣言する合図じゃないかと」
リザの推測通りの言葉が、後ろの仲間達が叫びだした。
「大変ですジャック様!!混血種が集団でこちらに攻めてきています!!」
リザとジャックは目で合図をし、そのまま崖から飛び降りた。
「AからD班は右から、EからH班は左、俺とリザは正面から攻撃開始!!」
「「「「了解!!!」」」」
混血種の数は50〜70と言ったところか。正直きついかも知れないが、やるしかない。
ジャックはマシンガンを両手に持ち、一気に敵に向かって弾を撃ち込む。
轟音に轟音が重なって、酷い不協和音だ。
『・・・!リザは大丈夫だろうか。何と言ってもまだ戦ったこともない初心者なのに・・・』
そう思ってジャックはリザの方を見る。
・・・ジャックは、目の前の光景が信じられなかった。
リザは、鮮やかに戦場を駆けていた。疾風のごとく、光のごとく。
無駄な動きなど一つもなく、洗練された動きが美しさを生んでいる。
「小娘が!!!お前なんかに何ができるって言うんだ!!」
混血種の一人がリザに襲いかかる。
リザは、たじろぎもせず、ただ微笑みを湛え、次の瞬間には相手を足技一つで地面に叩き付けていた。
「ッ、な、何なんだお前!!何でそんなに強いんだ!?・・・ゥグ・・・」
これ以上は喋るなとでも言うかのように、リザは混血種の頭を更に地面にめり込ませる。
「・・・・ふん、笑わせるなよ雑魚共が。所詮は貴様等ただの鳥合の戦士だろうが。
 そんな貴様等が、私に勝てるとでも・・・?それこそ愚の骨頂、嗤うにも程があるぞ」
残虐な笑みを浮かべ、リザは剣を振り上げる。
「っ!!待てリザ!!殺すな!!!!」
リザはその言葉を無視し、混血種の首元に剣を突き立てた。
刺さったところから、鮮血がトクトクと溢れてくる。
「・・・っリザ!!何故命令を聞かない!!」
闘いながらジャックはリザに向かって叫びつける。
リザは横目でジャックを見ながら言う。
「・・・だって、どちらかが生き残って、死ぬしかないんでしょう?なら、殺せばいいじゃないですか。
 ・・・貴方だって、そうして生きてきたんでしょう?今更ですよ、そんなこと」
リザの言葉にジャックは少しのショックを受けた。
当のリザはそんなジャックを放置して、また戦場に駆けて行く。
少しの間だけ、本当に、刹那だったけれど。ジャックは動きを止めたのだった。

結局、この戦いはアリエスタ軍の勝利だった。混血種の生き残りは、リザが全て殺した。
命乞いをする相手に容赦なく、剣を振るっていた。
<どちらかが生き残って、死ぬしかないんでしょう?>
そうだ。どちらかしか生きられないんだ。
ジャックは自分に言い聞かせていた。
そこに、リザがやってきて、二人の間にしか聞こえないような声で呟いた。
「・・・その矛盾。いい加減に気がついた方がいいですよ」
美神の化身のような少女は、優しく死刑宣告を下してくれた。


Re: Vampire Tear−孤独の君主− ( No.7 )
日時: 2010/02/04 22:45
名前: 十和 (ID: zCJayB0i)

Episode7‐純白の忠犬‐


あれから数日後。東地区の混血種の殲滅はほぼ終わり、ジャック達は本国に帰還していた。
久しぶりの故郷に懐かしく思うものが多かったが、ただ一人、ジャックだけは晴れない顔をしていた。
『矛盾、か・・・。そんなつもりは全然なかったんだけどなぁ・・・』
自室でベットに突っ伏し、枕に顔を沈めて溜め息を吐く。・・・かなり息苦しい。
その一連の行為を何回か繰り返してると、控え目にドアをノックする音が聞こえた。
「・・・はい?鍵開いてるから入っていいぞ」
「はい。では失礼させていただきますね」 「っ?!エリーゼ!!何でこんなところに??」
来客がエリーゼと知り、急いでベットから起き上がるジャック。
「お願いがあるんです。頼まれてはいただけないでしょうか」 「?今度は何だ?」
ジャックは少し屈んで、エリーゼと目線が合うようにした。
「皇宮の中の食糧が足りないらしいんです。お兄様、買ってきてはいただけませんか?」
「俺が?世話係に頼んでもダメだったのか?」
心底不思議そうに聞くジャックに、エリーゼは静かに微笑みこう答える。
「お兄様じゃないとダメなんです」

「・・・で、俺は御使いに使われてるわけだな」
皇宮の周りを取り囲む市場で、ジャックは人波にもまれながら前に進んでいた。
「ま、気晴らしになるしいいんだけど・・・」
そこでふと気付く。もしかして、エリーゼは俺に元気がないのを知って、慰めようとしてくれたのか?
そう思うと何だか顔の筋肉が緩んでくる。優しい妹を持って、幸せだと思う。
そんな感覚に浸っていると・・・。
「!!わっ、ちょ、お兄さん危ない!!!」
勢いよく走ってきた少女にぶつかられたのだ。
「アイタタタ・・・。お兄さん大丈夫?えらい派手にぶつかってしもて・・・堪忍な?」
手を顔の前で合わせて首を傾げる少女。
「い、いや、怪我がないのなら別に・・・」
いい。と言いかけた時、向こうから怒声を発する男が走ってくる。
「こら待て林檎泥棒!!!」
その声に反応して少女の手元を見ると、腕イッパイに抱えた林檎の山が。
「うわヤバ!!お兄さん走って!!」 「は?!ってうわぁ!!!」
少女はジャックの手を掴むと、ものすごい勢いで走り始めた。
『な、何なんだこいつは!!!』


「はぁ・・・、ここまで来ればもう大丈夫やろ。お兄さん本間堪忍ね、いきなり走らせてもて・・・」
足きつかったやろ?と場違いな質問をしてくる。
「・・・それ、盗んだのか?」 「ん?ああ、これかいな。せや。ウチが盗ってったんやで?」
それが何か?とでも言うように少女は真剣な顔をして見つめている気がする。
帽子を深く被っているため、表情がよく読みとれない。
「・・・何故、そんなことを・・・?」 「何故?!おもろいこと言うなぁお兄さん」
ケラケラ笑う少女。ジャックは驚愕から頭からクエスチョンマークを浮かべていた。
「これは、元々ウチラの所の林檎や。それを横から取って行きよったんはアンタラやないの」
少女がどこかに去ろうとするので、俺は止めようと肩を掴む。
そのとき、少女が被っていた帽子がずるりとずれ落ちた。
「!!」 「・・・あ〜ぁあ。バレてもた」
帽子の下から現れたのは、銀色の美しい髪。フワフワしている髪が、肩より上で跳ねている。
その頭の少し上あたりの両サイド。人間ではありえないものが生えている。・・・犬の耳だ。
「お前、混血種か?!」 「アンタラにんげんはまあそう呼んどるな」
ニコニコと笑う、混血種の少女。
「そこを動くな!!」ジャックはマシンガンを構える。
「・・・止めとき。弾の無駄遣いやさかい」
抱えていた林檎の一つを齧る少女。
「まあ、バレてもたから名前くらい言わなアカンのかな?」
面倒やわぁ、とか言いながら少女はまた林檎を齧る。
「初めまして!ウチはデディ。キングの右腕やってるんよ。ま、よろしく頼みますわ」
とか言う少女、デディの発言に耳を疑う。
「キング?!Blood Kingのことか!!」 「キング言うたらそのキングしかおらんやろ」
アンタ頭大丈夫か?と本気で心配してくる。
「奴はどこに居るんだ!!」 「えぇ〜??ウチ忠犬やからそんなこと言えへんねん」
そう言って、走り去ろうとする。
「!おい!!」 「一つだけ教えたるわ」
デディがくるりと振り返り、にやりと笑う。
「キングはめちゃめちゃ強い。本気だしたら、アンタラ人間なんか一発で全滅や。・・・肝に命じときや」
それだけ言って、デディはどこかへ行ってしまった。
・・・Blood King。血の王。奴さえ潰せば・・・。
ジャックの決意とは裏腹に、王は更なる運命の歯車を回すのであった。

Re: Vampire Tear−孤独の君主− ( No.8 )
日時: 2010/02/05 00:00
名前: 十和 (ID: zCJayB0i)
参照: http://www.kaki-kaki.com/bbs_m/view.html?372243

リザを書いてみました。
下手とか突っ込んじゃダメですよ(~_~;)

Re: Vampire Tear−孤独の君主− ( No.9 )
日時: 2010/02/06 20:23
名前: 十和 (ID: zCJayB0i)

Episode8‐巡らされた赤い糸‐


「・・・ジャック。貴方は何を迷っているんですか」
リザは買い物から帰ってきたジャックの前に立ち、沈黙を破るようにそう問いかける。
「リザ・・・か。迷う?俺が?・・・そんなこと、あるわけないじゃないか」
自室のベッドに腰掛けて、項垂れているジャック。リザは冷ややかな視線を送りながら続ける。
「私の言葉が、そんなにも貴方の胸を抉りましたか?絶対だと思っていた信念を破壊されて、
 そんなにもショックを受けたのですか?」
ジャックはピクリと肩を震わせた。
「・・・図星ですか。とんだ甘ちゃんですね。たったそれだけの覚悟で、戦ってきていたんですか」
その言葉にジャックは反応し、リザ肩を勢いよく掴む。
「黙れ!!お前に何がわかるというんだ!!!俺は、俺は・・・」
自分の幼き頃を思い出す。無力だった、あの頃。
大事な人すら守れず、ただ泣き叫んでいた自分。
「・・・私は、貴方の過去なんて微塵も知りません」
リザはジャックの手を離させながら、答える。
「ただ過去に囚われて生きる貴方なんて、知りたいとも思わない。
 ・・・過去に囚われて生きるだけなら、きっと、死者にだって出来る。
 貴方は、何のためにここに、こうして生きているのですか」
疑問符をつけることなく、問いかける。ジャックの瞳は、揺れている。
「・・・生きることに、意味なんて必要ないと思います。けれど、意義はあるでしょう。
 それがわからなければ、貴方はずっと袋小路の中を彷徨わなければいけなくなりますよ」
リザはそれだけ言い、ジャックの部屋から出て行ってしまった。
「生きる・・・意義・・・」
ポツリと言った、その言葉。ジャックは心の奥底から、何かが溢れて出る感覚に襲われた。



「これから、アイツはどうするのだろうな」
静寂の中、響く声は闇に溶ける。
「張り巡らされた無数の運命の糸の内、どの運命を、どんな風に選ぶのだろう・・・。少し楽しみだ」
左の薬指を立てて、微笑みながら見つめる。
「まあ、どんな運命を選ぶにしろ、私には勝てないよ、アリエスタ」
冷酷な笑みを浮かべ、彼の王は嗤う。運命に抗うなど、許さないというように・・・。


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