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。○*失われた皇女*○。 改訂版!!パートⅠ参照1000突破
日時: 2010/02/22 19:24
名前: Kリン (ID: ovGM7bao)

こんにちは!!!

結構前にかいたことのある失われた皇女ですが,
パートⅠが消え,パートⅡは続きとして書いてもわかりにくかったので,一から書き始めたいと思います。

今まで見ていてくれた方,本当に申し訳ありませんでした。今回はきちんと書いていきます。

初めて読む方も気軽に見ていって下さい!

皇女や皇帝一家はロシアの皇族をモデルにしています。


それでは....

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Re: 。○*失われた皇女*○。 改訂版!!パートⅠ参照1000突破 ( No.2 )
日時: 2010/02/22 19:23
名前: Kリン (ID: ovGM7bao)

    
   
      [第一章 二人]


「ハルト!!ねェ起きて!!」


眩しい光がさしこんで,僕を包み込んだ。
誰かが僕を見つめていた。



真っ青な目—


皇帝ハトルスアの生き写しの目。
このアレス国の頂点に立つものだけに与えられる美しい目。澄んで輝いている。そして誰もが欲しがる。

はるか昔から,この目をもっていない者は,王位継承権は与えられないと決められていた。


それほど,この瞳は美しかったんだ。


「ねェ,起きてるんでしょう?」


瞳の主は僕の肩を揺さぶった。
僕はそっと目を開けた。

そこには満面の笑顔が輝いていた。


「やっぱり!!!見て,あなたのために作ったの」


一面の野原。彼女と僕は二人きりで座っていた。
彼女は手に小さな花の冠をこしらえていた。


「はい」


小さく笑うとそっと僕の頭にのせた。



「あたしね,おっきくなったら,大きな冠がもらえる よって言われてるの。
 ハルトだけないのはイヤっていったんだけど,お母様が許してくださらなかったの。だから,ね??」


嬉しそうに微笑んで僕の手をにぎった。
僕は目をこすって,彼女の髪に触れた。


「ありがとう」


彼女は恥ずかしそうに僕を見つめると,それから空を見上げた。そして雲を指差した。


「雲........」


「雲は決して変わらないことはないよ。いつも動いて,形をかえていく。
 私たちは,いつまでも同じお友達なの。
 雲じゃないのよ」


雲は少しずつだけど,変わっていく。
彼女はずっと指差して,黙っている。



「うん。必ず」


僕が答えると彼女は幼いながら,大人っぽい顔つきになって僕に微笑む。僕が手を伸ばそうとした。



「姫,ハルト,何をしているんです」





Re: 。○*失われた皇女*○。 改訂版!!パートⅠ参照1000突破 ( No.3 )
日時: 2010/02/22 21:09
名前: Kリン (ID: ovGM7bao)

「あ,リリ.....」


立っていたのは彼女の養育長だった。
本来はコルフ侯爵夫人で,実名はリリ・デーン・ド・コルフという名だった。

“コルフ侯爵夫人”は僕らを見つめながら,彼女に大きな手を差し出した。彼女は少しためらいながらその手をとった。


「三時までといったはずですよ。ハルト,貴方がいるから安心していたのに....」


僕は頭を下げた。


「すみません」


そのとき,彼女が“コルフ侯爵夫人”に言った。


「ハルトは悪くないわ!」


そういって,僕に笑ってくれた。
僕は暖かい彼女の心のひだを感じた。


「まあいいでしょう。誰が悪いにしても,今日はもう帰らなければなりません。お母様がお待ちです」


「うん...」


つまらなそうにいうと,僕の手をとり,きつくにぎってからまたはなし,養育長についていった。

彼女は振り返って手を四回振った。

明日また遊ぼうという意思表示であった。


僕は手をそのまま四回振り返す。


“Yes”という意味である。





太陽が沈みかけていた。

Re: 。○*失われた皇女*○。 改訂版!!パートⅠ参照1000突破 ( No.4 )
日時: 2010/02/24 18:58
名前: Kリン (ID: ovGM7bao)


「ハルト...」


星が光る夜,僕はテラスにでて俯いていた。
母さんの声がレースごしに聞こえた。
呼ばれているのが分かっているのに,僕はそちらを向くことが出来なかった。


「ハルト...いるんでしょう?」


僕がゆっくりと振り返ると,母さんは微笑んでいた。
けれどいつもの優しさに溢れるような,母さんの微笑みではなかった。どこか,悲しみの色を湛えていた。

母さんはそっと僕を抱いた。

僕は少しためらった。母さんがいつもと違うから。

母さんは僕の反応を見て,心の奥が気付かれたように少しとまどいの色を見せた。そして心配させまいとしてもっと強く抱きしめるのだった。


「今日は...皇女様と会えた?」


「うん...」


「そう...........」



長い沈黙の中で,夜風が僕の頬をなでた。
そして走り抜けていった。

母さんは少しうつむくと,僕を抱くのをやめて,夜空を見上げた。そして静かに目を閉じた。


「あなたは,皇女様が好きかしら...」


僕は迷わず答えた。


「はい」


母さんはフッと目を開けた。真剣な目だった。


「いきなりで本当に私もびっくりしてしまったの。
 できればあなたにこんなことは問いたくないけれど,確かめなければいけない......」


そして僕の肩につつむように手を置いた。


「この先.......」


「もし,皇女の身に何かが起き,はなればなれになってしまっても,永遠に逢えなくなってしまっても...
 あなたは皇女を想い続ける事はできますか?」


いつになく,威厳のある姿だった。
僕は小さくうなずいた。

母さんは安心したように微笑をうかべ,もう一度,確かめるように僕を抱きしめた。


僕は突然の母の問いに,不安を抱いたが,あの日まではその問いの意味を知る由もなかった。



荒野の風が,ビュウと吠えている。


満月は,これからの不穏な未来を象徴するかのように,怪しげにきらめいていた。


母さんは優しく僕を中へ連れていった。








Re: 。○*失われた皇女*○。 改訂版!!パートⅠ参照1000突破 ( No.5 )
日時: 2010/03/04 18:28
名前: Kリン (ID: ovGM7bao)



この世で一番栄華をほこるアレス国の中で,
王侯貴族の中には,洗命祝日という日が存在する。

その名のとおり,普段汚れてしまっている命を洗うという日である。洗命祝日は,普通誕生日の一ヶ月前にするもので,もちろん個人個人違っている。

特に,皇族(皇帝,皇后,皇太子,皇女)の洗命祝日は,国全体で盛大に行われる。





今日,10月2日は第七皇女アリアナの洗命祝日だ。
僕は大臣である父さんに連れられて出席することになった。皇帝陛下のはからいもあったようだった。

朝早く起きると,すぐに朝食を食べ,身だしなみを整えて馬車にのり,宮殿へ向かった。

僕はアリアナに会えるというだけでとても嬉しかった。父さんは宮殿に着くころになると僕に耳打ちした。


「皇女様にとって,誕生日の次に大切で聖なる儀式だからね。決して会っても声をかけないようにするんだ。洗命式の主人公はその日1日家族以外はなしてはいけないんだ。分かったかい??」


「はい。父さん」


僕は声をかけられなくてもよかった。
会えるんだから。


とうとう宮殿の門の前に着いた。巨大な門が僕達を見下ろしていた。父さんは大臣らしく堂々と歩き出した。兵隊はみんな整列してお辞儀をする。

さまざまな階級の人々がいた。

伯爵や公爵,男爵,侯爵,枢機卿など聖職者もいた。
たくさんの美しいドレスに身を包んだ貴婦人達。
どれもこれも圧倒されるようなものばかりだった。

宮殿(僕等はグレートパレスと呼んでいた)内はさまざまな装飾が施されていて,どれもこれも荘厳で価値あるものばかりだった。


「ムシュー,お久しぶりだわね」


「マダム・クリストル,お元気でしたか?」


「わたくし,初めてアリアナ様を見るのですよ」


さまざまな会話が飛び交っている。
僕はあまりの人の多さに呆然としていた。

父さんはさまざまな人に挨拶をしながら人ごみをすり抜けていった。何かを探しているようだった。

Re: 。○*失われた皇女*○。 改訂版!!パートⅠ参照1000突破 ( No.6 )
日時: 2010/03/05 18:47
名前: Kリン (ID: ovGM7bao)



父さんは僕を引っ張りながら豪華な階段を上って行った。
キラキラ光るシャンデリアの下のボックス席に王並びに,家族,限られた皇族がすわっていた。
皇帝ハトルスア陛下は父さんの姿を見ると,こっちにくるように合図した。
父さんはそっとボックス席に入った。僕もそれについていった。
皇帝のとなりには皇后アルセリーナがすわり,そのとなりに第一皇女エリーザベト。横には第二皇女オルセリア...他にも三人の皇女がすわっていた。
僕の前には第六皇女ナターリアがすわっており,僕を見るとニッコリ笑った。


「あなたはだァれ?」


ふいの問いかけに僕はとまどいながらも,


「ハルトです...」

控え気味にそういうと,皇女はおかしそうに微笑んだ。皇女の手元には銀の箱にに入っているチョコレートがあった。皇女はそれをとると僕に一つわたした。


「アリアナをいつもありがとう。あなたのこととても気に入ってるみたいよ」


僕はチョコレートを口に含みながらお辞儀をした。
こんな場面をみたら父さんは怒るだろううが,幸い父さんは皇帝陛下を話していた。


「アリアナに会いにきたの?」


「はい...」


「もうすぐ来ると思うよ」


そういって前に向き直るとチョコレートを食べだした。白い高価そうな手袋は茶色く染まっていた。


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