ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 天狐の妖刀
- 日時: 2010/04/17 15:39
- 名前: 絹世 ◆baKUMl0gkI (ID: YpJH/4Jm)
/御挨拶
どうもこんにちは、そして初めまして。絹世と言います。
妖刀とか九尾の妖狐とか好きなもんなんで、そんな感じの小説を書かせて頂きます。
作者はまだまだ未熟なもので、色々と見苦しい部分もあるかもしれませんが暖かい目で見守ってくださると嬉しいです。
〆目次-Index-
第一篇 天狐少女の迷走
序章/ある物語の開巻劈頭 >>1
第一章/妖怪の少女と人間の少年 >>5 >>6 >>9 >>11
〆お客様
みどりのみかん様 right様 はるか、様
- Re: 天狐の妖刀 ( No.4 )
- 日時: 2010/04/11 12:41
- 名前: 絹世 ◆baKUMl0gkI (ID: YpJH/4Jm)
>みどりのみかん様
好みの小説とは嬉しい限りです、有難うございます^^
俺も妖怪とか廓言葉大好きなんです。というかファンタジー系は皆好物だったりする作者です。
応援ありがたいです、頑張りますね。
>right様
right様初めまして、絹世と言います。
俺なんてまだまだですよ、俺より文章力の高い方は沢山いるでしょうし。それでもお褒めの言葉、光栄です。
いやいや、大丈夫ですよ。とても参考になりました。
確かにそこだけ数字になってますね……; 修正しておきます。
読み直してみると擬音も多いですし、そこも同じく修正したいと思います。
ご指摘有難うございます。凄いですね、何かプロを見てる感じです……。
応援有難うございます、ご期待に添えるよう頑張ります^^
また読みに来てくれるとは、たいへん嬉しいです^^
- Re: 天狐の妖刀 ( No.5 )
- 日時: 2010/04/11 14:53
- 名前: 絹世 ◆baKUMl0gkI (ID: YpJH/4Jm)
〆第一章/妖怪の少女と人間の少年
1.
「ん……?」
閉じていた目蓋をゆっくりと開くと、視界に映るのは白い天井。更に視線を動かしてみると、数学などの教科書がキチンと並べられてある勉強机。更にその隣には小さな本棚があって、趣味で読んでいる小説やライトノベルが巻数順に揃えられてある。
どうやら此処は自分の部屋で、ベットに仰向けの状態でいるらしい。
「やっと起きたか」
不意に横から声がし、振り返ってみるとそこにはあの少女が。腰まである長く艶やかな金髪に赤い目、髪と同じ色の狐の耳と九本の尾、桜色の着物。何より人形のようなその可愛らしい容貌は特徴的で、見間違う筈もなく。
少女が部屋に居ることに東條は自分でも不思議と驚かず、今度は身体ごと少女の方へ向き直る。するとふとある事に気づいた。
身体に痛みがまったく残っていない。それこそ全身の骨が砕けるんじゃないかというくらいの激痛だったのに……。
東條が疑問に思っていると、それを察したのか少女が言う。
「ああ、傷ならぬしが眠っている間に治療しておいたぞ」
少女の口調は、現代じゃ漫画やアニメでくらいしか聞かないような廓言葉だった。古めかしい言葉遣いは不思議と少女に合っているような感じがした。
掛け時計を見てみると針は午後十一時を指している。既に化け猫の件から一時間以上も経っている。——逆に言えば、少女はたった一時間半程度で重症であっただろう東條の傷を完全に治したわけだ。いや、先程の少女の「やっと」というところから察するに、随分前に傷の治療は終わっていたように思える。
ふと顔を上げ少女を見ると、少女は東條が色々と考え込んでいるのを楽しんでいるようだ。まるでクイズで難題を出して、回答者があれやこれやと考えているのを見るのと同じように。
東條がちょっと悔しい気持ちになるのと同時、少女は口を開いた。
「初めまして、と言っておこうか。わっちの名は詩世(しぜ)。俗に言う妖怪じゃ。あ、見ての通りわっちは狐の妖怪じゃが、九尾の妖狐ではなく“天狐”(てんこ)と呼ばれるものでありんす」
少女——詩世はさらりとそう言った。何の躊躇いも無く、オブラートに包むこともなく、単刀直入に自分の素性を明かした。
はっきり言ってしまえば、妖怪と言われても現実味が湧かない。いっその事全部嘘でコスプレをしているだけの、頭のおかしい少女の方が現実的な気がする。
「えっと、妖怪……?」
「そうじゃ、ぬしも先程猫又(ねこまた)に襲われたでありんしょう? それと同じ妖怪じゃ、“妖”と言っても変わりはありんせんが。まあわっちは猫又のような雑魚とは違うが。一応千年以上生きている妖狐じゃからな」
「ちょ……待てよ! 妖怪って何だ! それに契約者って一体何のことだよ!?」
東條の口から今まで疑問に思っていた事が、一気に溢れ出す。対して詩世は涼しい顔で答える。
「妖怪は妖怪、それ以外の何者でもありんせん」
そして一息ついて、
「“契約者”あるいは“適合者”でも構わないぞ。……その話については」
どこからともなくグウ、という漫画のような腹の虫が鳴る音。東條はその音のおかげで何だが脱力した。
「とりあえず腹ごしらいの後でな。すまぬが何か作ってくれんせんか?」
「……この空気でそれ言うのかよ、分かったからちょっと待ってろ」
真顔で空気を打ち壊す詩世に対し、東條は半分呆れつつ、部屋を出ていつもの台所へ向かう為階段を下りていった。
(ああ、何だこの展開……)
心中でぼそりと呟く。
面倒臭そうに頭をかきながら、あっという間に台所に到着。何か作ると言ったものの、いざ料理するとなると何を作ればいいのか。
簡単なので言えばカップ麺だが、いくら異様な格好をした少女とはいえ流石に客にカップ麺というのは気が引ける。
(あ、そうだ)
東條はコンロの下の扉を開くと、案の定パスタの麺がいくつかの束となって袋に入っている。それを確認した東條は、鍋の大体三分の二くらいの量の水を入れコンロに火をつける。袋の中から少女の分、ついでに自分の分の麺の束も取り出し鍋の中にぶち込む。
東條が作ろうとしている料理は見て分かる通りパスタだが、言ってしまえばレトルトカレーのようなものである。
菜箸で適度に鍋の中の麺をかき回す中、ふと思う。
(……あいつ、レトルトとはいえ西洋料理大丈夫なのか? まあパスタぐらい分かるよな……)
いらぬ心配だと思いつつも、どこか嫌な予感がした東條であった。
- Re: 天狐の妖刀 ( No.6 )
- 日時: 2010/04/11 19:07
- 名前: 絹世 ◆baKUMl0gkI (ID: YpJH/4Jm)
2.
***
東條は呆れるを通り越して、最早何も言えなくなった。
原因は簡単で、目の前の少女。なんと東條の嫌な予感が見事に当たってしまったのだ。
それどころか、
「……すぷーんとふぉーく? とはどうやって使うのじゃ?」
とまで言い出す始末。この少女——詩世は西洋文化にとことん弱いらしい、というか弱いのレベルではないと思う。どれだけ家に引き篭もっていればこんな事になるのだろう。
仕方なく東條が自分の分のパスタで手本を見せると、案外物覚えは良いのか難なく真似してみせた。
「美味じゃのう……」
「レトルトだけどな」
「れ……れとる、と?」
「説明するだけ無駄か、いきなり妖怪とか言い出すこのどっか頭のネジが外れた少女には」
「証拠ならあるでありんしょう、この耳と尾じゃ。それに先程猫又に襲われたのに未だ現実逃避をするぬしもどうかと思いんすが」
「あー、はいはい悪かった悪かった」
「反省しておらんな、ぬし」
「まあ半分反省ってとこかな」
「どういう事じゃ」
そんな会話を続けながら手抜きのレトルトパスタを食べ終える。フォークとスプーンを皿の上に置くと、改めて先程の問いを投げかけた。
「で、妖怪そういうのがあると仮定して」
「猫又が妖でなければアレは何だというのじゃ」
詩世がムッとしていたようだがスルーした。東條としてはあのシリアスな空気を、空気の読めないコミカルな腹の音によって打ち壊された事によって何だか正直「妖怪」だとか馬鹿馬鹿しくなってきたのだ。
「お前の言ってた契約者とかって何なんだよ? 何かの漫画の用語?」
「ああ、それはな……」
詩世は落ち着いた口調で、
「わっちの持っている妖刀の契約者の事でありんす」
最初から最後まで現実味の無い事を言ってのけた。
「……はあ、そう、妖刀」
「ぬし、馬鹿にしておらんか?」
「…………」
「……馬鹿にしておるな」
「いや、だって妖怪とかファンタジーなモノ言われた直後に、更に妖刀とかいうファンタジー用語+その契約者とかいうので追撃されたら黙るしかない。無かった事にする、あの猫から助けてくれた事には感謝するけど無かった事にするわ」
「薄情者め」
詩世がさっきより更にムッとした口調で言う。確かに薄情者だ。いくら詩世の言った事が現実感ゼロの妄言だったとしても、一応助けてもらった事自体は事実なのだから。
と言っても、やはり詩世の言っている事が信じられないのも事実だ。ここは論より証拠、実物を見せてもらう方が早い。
「じゃあさ、その妖刀っていうの見せてくれないか? それが本物だったら妖怪もお前の話も信じる」
「悪いがそれは無理じゃ」
「…………」
一瞬の沈黙を隔てて、東條は「はあ」と小さな溜め息をついた。何だそれは、結局のところ口先だけではないか。
「その妖刀は透明ですとか言うんじゃねえだろうな」
「何故妖刀が透明でなければならぬ」
「じゃあ見せろ」
「だから無理じゃ」
「……なら全てはお前の妄想という事で片付けていいか?」
「妖刀は本当にある」
「嘘にしか聞こえねえ……」
東條はもう一度溜め息をついた。証拠も無しにファンタジックな刀がありますとか言われても、いかにも嘘くさいパワーストーンよりも信じられない。詩世は自分の事を狐の妖怪だと言ったが、きっとそれもコスプレなのだ。そうに違いない。東條はそう結論付けた。
だがちらりと詩世の顔を見て、一瞬驚くどころか気圧された気もした。先程のムッとした表情は消え真剣な顔つきになっている。嘘はついていないと訴えている、真っ直ぐな眼差し。
それでもやはり、信じられないモノは信じられなかった。別にファンタジーが嫌いなわけではないがそれはあくまで創作物の話で、実際魔術だの妖怪だの云々言われると胡散臭くて耐えられない。
「……確かにさ、助けてくれた事には感謝するけど、やっぱ俺にはそういう話は無理だわ。他、当たってくれねえか?」
「…………」
そう言われた詩世の顔は、残念とかそういうことだけではなく、どこか苦しそうな感じもした。流石に東條も罪悪感が湧いてくる。
詩世は噛み付いてくるだろうと思っていたが、予想に反して、
「……分かった」
只一言、そう言った。
(……そんな顔、されると)
今の詩世の表情を見ていると、罪悪感しか湧き出てこない。悲痛さを、信じてくれない事への悲しみを必死に隠そうとしている少女を見るのが、これ程までに辛いとは。
それでも東條はそんな感情を面に出さず、ごく普通な声と口調で、
「……俺は寝るから、じゃあな詩世」
別れを告げベットの中へと潜った。詩世の顔を見ないように、壁側の方向へ寝転がる。
「……うむ、さらばだ」
詩世が別れの言葉を告げた時、どんな顔をしていたのかは見えない。いや、見なくていい。
相手の言う事は現実味など皆無な話だというのに、何故こんなにも罪悪感が湧くのか。
東條は罪悪感を軽減させる為なのか、自然と言葉が紡がれた。
「家教えろよ、送ってくから」
「……いや、平気じゃ」
その言葉が、更に自身の罪悪感を増させた気がした。
東條は眠るというよりは、自身の感情を振り切るように目を瞑った。
- Re: 天狐の妖刀 ( No.7 )
- 日時: 2010/04/11 21:09
- 名前: はるか、 ◆iF2YFA4/ws (ID: XkXzKb57)
こんにちは! 初めまして、はるか、と申します。
カキコには珍しくしっかりとした文章を書かれている方で、とても面白かったです。
それに、情景描写がとても上手で、想像しやすかったです。
とても面白いので、がんばってください!
それでは。
- Re: 天狐の妖刀 ( No.8 )
- 日時: 2010/04/14 20:09
- 名前: 絹世 ◆baKUMl0gkI (ID: YpJH/4Jm)
>はるか、様
こんにちは、絹世と申します。
面白いと言って頂けるとは光栄です^^
背景描写が苦手な自分は情景描写しかないので……。いや、背景描写も伸ばすべきなんですが。
応援有難うございます、絹世なりに頑張りますので。
では。
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