ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- MIRAGE
- 日時: 2011/06/21 12:43
- 名前: 霧月 蓮 ◆BkB1ZYxv.6 (ID: EdkNSjYc)
- 参照: http://pksp.jp/kiriduki/
どうもこんにちは、もしくはこんばんは。霧月 蓮と申します。もう一つの方も完結してはいないのですが、また新しいものを書いてみようと思います。
今回もファンタジーです。魔法使いや死神、吸血鬼、堕天使など色々なものが出てきます。まぁ小説用に本来の意味などを変えているものがほとんどで御座います。
あとは英語などに弱いので、間違いがあったら教えてくださると助かります。脱字、誤字についても同じくです。
更新は非常に遅いです。気長にまってやってください。参照のところにもまったく同じものがおいてあります。
タイトルの意味は、蜃気楼、幻術です
目次
プロローグ:壊れたココロ>>1
第一の魔法劇〜誤解、回り始める歯車〜
第一話:誤解時々責任>>2
第二話:誤解時々平和>>3
第三話:誤解時々行事参加>>4
第四話:誤解時々戦闘>>5
第五話:誤解時々悪龍龍菜>>11
第六話:誤解時々魔道書使い>>12
第七話:誤解時々天才>>13
!お知らせ!
あまりにも設定が雑だったため、一度更新を停止させていただきます。
- Re: MIRAGE ( No.1 )
- 日時: 2011/03/29 19:58
- 名前: 霧月 蓮 ◆BkB1ZYxv.6 (ID: 0iVKUEqP)
プロローグ〜壊れたココロ〜
小さなお墓の前であろうか? 銀髪に赤と青の瞳の少年が静かにフルートを奏でている。静かでどこか寂しげな音。優しく吹く風が少年の羽織っているケープをはためかせる。風に靡いている髪は日を受けてキラキラと光る銀色で腰の辺りまでの長さ。どこか神秘的な雰囲気を作り出している。
少年の名は月音 優希(ツキオト ユウキ)。この世界……魔界の中でのトップの家系、魔王家の第一王子である。魔王と聞くと悪いものをイメージしてしまう人もいるであろう。
でも彼らでいう魔王は魔界の王……魔界をまとめる存在であり、決して人間達の住む下界に無意味な危害を与えたりする者ではない。もちろん必要となればそれなりの行動をとるのだが。
「……ごめんね……姉さん」
フルートの音が途切れたかと思えば、か細くて、消えそうな声で呟く優希。空気に溶けるようにフルートは消えてく。優希フルートが完全に消えると同時にその場に崩れるようにしゃがみこむ。
嗚呼、この場で子供のように大声を上げて泣くことができたら、どんなに楽だろうか? そんな考えが頭の中を駆け巡る。でも涙はとっくの前に枯れていて、一雫もこぼれない。
「本当に馬鹿みたい。なんで制御できなくなるまで自分をいじめ続けたんだろう……そのせいで姉さんが……それに望も……」
優希は静かに笑う。でもそれは、誰かを元気付けるようなものでも、人に安心を与えるようなものでもない。そう……儚くて壊れかけた不安定で、自分の胸を深く抉る様な自虐的な笑み。
静かに吹く風でさえも優希にとっては雑音。子供達の明るい笑い声でさえも、彼にとっては嘲笑……。ぎゅっと唇を噛み、両手で耳を塞ぐ。それでも頭の中では“声”がぐるぐると巡っていて……。
「もう……苦しいよ」
優希の口からこぼれだした言葉は、悲痛で消えそうな微かなものだった。
- Re: MIRAGE ( No.2 )
- 日時: 2011/03/29 19:59
- 名前: 霧月 蓮 ◆BkB1ZYxv.6 (ID: 0iVKUEqP)
第一の魔法劇〜第一話:誤解時々責任〜
窓から朝日の差し込む静かな部屋。部屋には妙に豪華なベッド、机、ずらっと本の並べられた本棚……必要最低限のものしかおいていないようだった。そのせいだろうか? 部屋が異常に広く感じる。そんな部屋のベッドに上には一人の少年が眠っていた。それを見守るかのようにドアの横に優希が寄りかかっていた。
突然、微かで規則的だった少年の寝息が乱れ始める。きつく握られた手と、キュッと結んだ口。どうやら嫌な夢でも見ているらしい。それを見た優希は表情をまったく変えずに少年に近づき、その額に手を当てる。優希の口元が微かに動いたかと思えば、手が弱々しく光を発する。
しばらく間が空いて、ゆっくりと少年が目を開く。輝きを失って濁った赤の右の瞳と、それとは対照的に透き通った青の左の瞳。腰ぐらいまでの長さでさらさらの銀髪。どこか少女を思わせる顔立ちと、華奢な体つき。名を月音 望(ツキオト ノゾム)という。
「おはよう、望。魘されていましたが平気ですか?」
薄い笑みを浮かべて望に問いかける優希。望は少々首をかしげた後に、黙って頷く。それを見れば、優希は安心したように薄い笑みを優しい包容力の有るものへと変え、望に包帯を手渡す。
包帯を受け取れば器用に包帯で右目を隠す望。しばらく間が開いて静かな声で優希が「また、あのときの夢ですか?」と望むに問いかける。その問いかけに対し望は悲しげな表情で頷き、机の上に置いてあった花音と書かれた赤い紙を宙に投げ、シュッと空を裂くような動作をする。
弱い光が走ったかと思えば、クルリと宙返りをして、赤髪をツインテールにしていて、紅の瞳、赤いリボンのついた白いワンピースを着た少女、式紙のカノンが現れる。
式紙というのは多くの魔法使いが用いる下部のことであり、多くの魔力が必要なもの、主に情報収集に向いているもの、更には戦闘に向いているものと色々な種類がいる。そして、式紙を扱う魔法使いは大抵二つは式紙を持っているのだ。
理由は簡単。情報収集に向いている式紙で敵の動き、力を探り、戦闘用に向いている式紙で一気に叩き潰すことが出来るからだ。まぁ魔法使いなら魔法使いらしく、魔法を使えと思うのだが。
「ん? どうしたの? 突然式紙を出して」
突然、式紙を出した望を不思議そうに優希が見つめているのを見て、カノンが首をかしげ「こうしないと言いたいことを伝えらないって主人が伝えて欲しいんだってだよ?」と伝える。それを聞いた優希の表情が一瞬だけ暗くなり「気にしなくても良いんですよ? 僕が魔法を使えば済むのですから」と呟くように言い、望の頭をなでる。
ふるふると首を振る望の後にカノンは「会話のたびにそんなことをしていたら、お兄様の魔力が持ちませんって主は考えてるんだよ」と明るい笑顔を浮かべてそう言う。
その言葉がどれだけ優希の心を抉るものだっただろうか? 望には悪気がない。むしろ真剣に兄である優希のことを心配し、その身を案じているだけなのだ。だが、望が喋れなくなった理由を知っていて、それが自分の引き起こしたことだと思っている優希にとっては、深く心を抉る凶器にしかならなかった。
「まだ……あの時のこと、忘れられない?」
静かに頷く望と「お姉様がいなくなったのは僕のせいだから、忘れるわけにはいかないだって」と望の伝えたいことを言葉にするカノン。さらに優希の表情が暗くなる。
何があったかは後々説明していくとして、本来はどちらも悪くはないのだ。もしくは悪いのは二人どちらも同じこと。だからどちらか一方がすべての責任を負わなくてはいけないという事は無いのである。そのことにこの二人は気づいていないから、すべての責任を一人で背負おうとする。誰がそんなことを望むというのだろうか?
「入るぞ」
ノックの音が響き、落ち着いた少年の声が聞こえてくる。そのしばらく後にドアが開き、肩くらいまでの金髪に、紫の瞳の少年、月城 輪廻(ツキシロ リンネ)が入ってくる。白いTシャツに真っ黒なマントを羽織っていてズボンは普通のジーンズ。ズボンにはチェーンが付けられている。
「外出許可が出たのだが、望と兄様も一緒にどっか行かないか? 月乃と春は行くとさ。つか先に出発したな。あいつら」
なんと言うか空気が読めていない輪廻。しかしそれが逆に救いだったらしく、望は目をキラキラさせて頷く。優希の方も薄い微笑を浮かべ「そうですね。ずっと城の中にいては、気が滅入ってしまいますから」と言う。
輪廻は優希と望の反応を見て満足そうに頷き「じゃあ一時間後には出発するから、飯食って、支度しておけよ」と言って部屋を去るのだった。
- Re: MIRAGE ( No.3 )
- 日時: 2011/03/29 19:59
- 名前: 霧月 蓮 ◆BkB1ZYxv.6 (ID: 0iVKUEqP)
第二話〜誤解時々平和〜
朝食をとった後、望はのんびりと着替える。少々あくび交じりで眠そうにしながらも、黄色のコートのようなものを羽織り、一ヵ所だけを六芒星のボタンで留める。ちなみにその下は赤のTシャツにジーンズを穿いていた。鏡で髪を確認した後、パタパタと可愛らしい足跡を立てて待ち合わせの場所に向かう。
案の定望が一番最後に待ち合わせ場所である門の前に着く。まぁのんびりマイペースに準備をしていたのだから当然と言えば当然であろう。すっかり待ちくたびれた様子の輪廻とすでに読書を開始している優希を見れば望は少しスピードを速めて二人に近づく。それに気づいた輪廻は明るく、優しげな笑みを浮かべて「やっと来たか……まぁ時間通りだが」と言って、少々乱暴に望の頭を撫でてやる。
輪廻に撫でられ、心地よさげに目を細める望を見て優希は本を閉じ、クスリと笑みを浮かべる。輪廻は望の頭を撫でるのをやめ「さて、出発することにするか。その前に望、そのコート脱いで兄様に預けて」と言っう。望はキョトンとしながらも羽織っていたコートを脱ぎ、優希に渡す。
「全知全能の神ゼウスよ、わが魔力を糧にこの者に声を与えよ」
まるで歌うかのように、輪廻は呪文を紡ぐ。その言葉に合わせるように揺ら揺らと手を動かし印を結ぶ。魔法とは魔力を使って神や精霊の力を借りて様々なことを行う事である。よって魔法を使うためには上手く神や精霊の力を制御できなくてはいけない。それが出来るかできないかが、人間と魔法使いの大きな違いである。
ちなみに魔力は生命エネルギーが元になっていて、一応は人間も魔法を使うことは出来る。しかし、人間は元々魔力となる生命エネルギーが少ない上にその回復も遅い。だから、元々の生命エネルギーも多く、その回復も早い魔法使いのように魔法を使えばどうなるか……それは簡単。死が待っているだけである。ちなみに一番使う魔力が少ない魔法でも、人間の回復スピードを考えた生命エネルギーでぎりぎり発動できるぐらいの魔力を使う。ゆえに人間は魔法を使えない……否、使わないのである。
呪文や印は魔法を発動したときの“ムラ”を無くし、暴走を防ぐためのものであり、実際のところは呪文や印がなくても魔法は使えるし、人々がイメージする杖を持つような魔法使いも少ない。
杖は魔力の逆流を防ぐためのものであり、魔法には直接関係しないのだ。それに魔力が逆流するなんてことはそうそうない。それに魔力が逆流したところで生命エネルギーを魔力に変換するのを止めてしまえば、あら不思議と言う具合に魔力の逆流は止まってしまう。だから、言ってしまえば杖はただの飾りともいえるのだ。
淡い光が走った後、望はキョトンとした表情で輪廻を見つめる。輪廻は静かに手を叩き「声、一時的にだけど出せるようにした。不便だろ?」と言う。輪廻の言葉を聞いた望は少し驚いたような顔をした後「えと……ごめんなさい」と謝る。優しげな笑みを浮かべ「気にすんな」と望の頭を軽く小突くのを見れば、そんなに魔力を消耗していないことが伺えた。
のんびりと歩くこと約一時間。たどり着いたのは上質な水晶が取れると有名な町、クリスタルエリアだ。多くの魔法石が売られている町で常に人でにぎわっている。ちなみに魔法石というのは、水晶にある一つの魔法の力を閉じ込めたもので、まだ自力では魔法を発動できない幼い魔法使いが使うことが多い。他にも全く使えない魔法を補うために使うものもいたりする。
そんな魔法石を売っている店の前に二人の少女が立っていた。一人は黄色い髪を尻尾のような纏め方をし、紫色の瞳で黄色のラインが入ったコート、その中に白いTシャツを着ていて、水色のスカートを穿いている少女、花月 月乃(カゲツ ツキノ)。もう一人はピンクの髪をポニーテールにしていて、触覚のような緑色のアホ毛が二本生えている青紫色の瞳をした少女、花月 春(カゲツ ハル)。こちらの服装は月乃のコートのラインがピンクになっただけだ。
「おっそいよー輪兄、優兄、望兄」
月乃が頬を膨らませて言う。春の方はニコニコと笑って「後五分遅かったらぶん殴ってやろうと思ったよぅ」と言う。危なかったなと言うような表情をする輪廻と苦笑いを浮かべる優希。望は黙って首をかしげている。
月乃はため息を付いた後「んで? 今日は何処に行くの? 確か第三特別エリアで魔法大会開かれてるはずだけどー?」と言う。それに続けて春が「そう言えば春達ってイベントに一般人として参加したことないよぅ」と言った。輪廻が少々困ったような顔をし頭を掻く。優希の方は静かに微笑んでいるだけで何も言わない。
「どうっすっかなぁ……望はアクアエリアに行きたいって言ってたんだけど……」
真剣に悩んだような表情をする輪廻に、望は「別に僕は良いです。兄は妹の意見を優先するべきですから」と言って笑いかける。それを聞いた月乃と春は満面の笑みを浮かべ「ひゃっふーい!! 望兄最高」なんて叫んでいる。微笑ましい光景だとでも思ったのか、周りにいた人は優しい微笑を浮かべて輪廻たちの事を見ていた。
「確かに俺ら、仮にも王族の身だから一般人として参加するのは無理だったからなぁ。今日は別に正体をばらす必要もねえし、ま知ってる奴が殆どだけど、どーにかなるよな」
輪廻の発言を聞いて望は小さく頷いて、少し嬉しそうに笑っていた。優希の方は話がまとまったことに気づけば静かに手を動かし印を結び「さぁ、僕に近づいてくださいな。移動魔法を使いますよ」と言う。全員が自分に近づいたことを確認すれば、優希は呪文さえ唱えず静かに、手で空を裂くような動作をする。瞬間、五人の姿は光の中に消えた。