ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 浴衣の男の怪談部屋
- 日時: 2010/06/13 18:22
- 名前: 浴衣と銀縁眼鏡 (ID: e2Ia0l.i)
かごめ かごめ
籠の中の鳥は
いついつ出会う
夜明けの晩に
鶴と亀が滑った
後ろの正面だあれ?
はじめまして。そして、こんばんは。
この小説を書かせていただく
「浴衣と銀縁眼鏡」という者です。
以後、お見知りおきを。
この小説は一話完結式で書かせていただきます。
更新期間は不定期なのであしからず。
さて、記念すべき第一回の怪談として選ばれたのは
皆さんご存じの童謡「かごめかごめ」です。
この遊び、歌は知らない人の方が少ない筈。
ですが、これはご存じですか?
この歌に隠された意味を。
かごめ かごめ 「私のお腹の中には子供がいる。」
籠の中の鳥は 「お腹の中の子供は」
いついつ出会う 「いつ生まれるのかと楽しみに
していた。
鶴と亀が滑った 「だが、出産を間近に控えたある日
私たちは殺された。」
後ろの正面だあれ?「私たちを殺したのは誰?」
これが最も有名な解釈の一つです。
今回の話はこの解釈を元にして書きます。
・・・おっと、その前に。
まずは準備をしましょうか。
カーテンを閉め、電気を消して・・・。
貴方の背後に何もいないのを確認して・・・。
・・・さあ、始めましょうか。
- 其の一・かごめかごめ「序章」 ( No.1 )
- 日時: 2010/06/12 03:14
- 名前: 浴衣と銀縁眼鏡 (ID: e2Ia0l.i)
・・・また強盗ですって?
・・・ええ、しかも今回も殺されていたらしいわ。
・・・こわいわよねえ・・・。
・・・犯人には人の心は無いのかしら?
・・・・・
俺だって、好きでやってる訳じゃないんだ。
だけど・・・俺だって人間だ。
食わなきゃ死んでしまう。
だから・・・仕方がないんだ。
・・・俺は悪くない・・・。
ふと、耳を澄ますとどこからか歌い声が聞こえる。
かごめ かごめ
籠の中の鳥は
いついつ出会う
鶴と亀が滑った
後ろの正面だあれ?
- 其の一・かごめかごめ ( No.2 )
- 日時: 2010/06/12 03:22
- 名前: 浴衣と銀縁眼鏡 (ID: e2Ia0l.i)
「・・・え?ほ・・・本当ですか?」
「うん、間違いないね。妊娠おめでとう。」
晴子は喜びのあまり、「きゃーっ」と声を上げた。
和夫は驚きのあまり、口をパクパクさせている。
晴子と和夫は去年結婚したばかりの夫婦だ。
黒髪のショートカット、この晴子という女性は容姿もなかなかのものだが、性格も感受性が高く、明るく
優しい女性である。
和夫はボサボサ頭に無精ひげ、一見ずぼらな風体だが
性格は温厚、そしてよく見るとハンサム。
二人はこの一年特別裕福でも貧乏でもないが、
幸せをかみしめて共に暮らしてきた。
そして今日、更なる幸せの知らせを聞いた。
「・・・にしても、本当に驚いたな・・・。」
「何が?」
「まさか俺たちに子供ができるとはな・・・。」
「え・・・何?嫌だった?」
「いや、そりゃ俺も嬉しいけどさ、
なんつうか・・・こう・・・いまだに信じられん」
「あはは!私も!
・・・でも、やっぱり嬉しい。」
「・・・ああ。」
「・・・男の子かな、それとも女の子かな?」
「うーん・・・俺は男の子がいいな。
名前はどうする?」
「うーん・・・そうだなあ・・・。」
初夏の日差しの下、二人は並んで道を歩いて行く。
- 其の一・かごめかごめ ( No.3 )
- 日時: 2010/06/12 03:54
- 名前: 浴衣と銀縁眼鏡 (ID: e2Ia0l.i)
「・・・はあ・・・はあ・・・」
ある日の夜。
「・・・はあ・・・はあ・・・
・・・ついに・・・俺はやっちまったのか・・。」
月明かりに照らし出された男の顔は、動揺を表していた。
「・・・俺が生きるためだ・・・仕方がない・・・
・・・・・でも」
男の左手には黒いバッグが、右手には・・・
「・・・本当に、人を殺したんだなあ。」
赤く染まった包丁が握られていた。
「・・・でも、大丈夫・・・今回だけ・・・
今回だけだから・・・。」
とある夏の日の蒸し暑い夜だった。
- 其の一・かごめかごめ ( No.4 )
- 日時: 2010/06/12 06:33
- 名前: 浴衣と銀縁眼鏡 (ID: e2Ia0l.i)
彼はもう、人を殺めることに慣れてしまっていた。
彼の名は篠村。
整った顔立ち、ワックスで整えた茶髪。
今年の春まではフリーターとしてなんとか生計を
立てていた。が、今年の春バイト先をクビに
なってからは無職。就職氷河期というやつである。
やがてわずかな貯金も底をつき、彼は一つの解決策を
思いつく。
「お金を盗んでしまおう。」
彼は自分に言い聞かせた。
「これは仕方がない事なんだ。俺は悪くない・・。」
・・・人は限界まで追いつめられると冷静でなくなる。
そしてある日、ある家へ忍び込み、
見事に盗みに成功した
と思い油断した。家を出る際に見つかったのだ。
まずい、と思った彼は、とっさにバッグの中に
包丁が入っていたのを思い出した。
殺すつもりはなかった、などといくら言っても
意味はない。既にやってしまったのだから。
そして、彼は自分にこう言い聞かせた。
「仕方がなかったんだ。俺は悪くない。」
その後、彼は強盗を繰り返し、殺しを重ねた。
そして、その度自分に言い聞かせた。
「仕方がなかったんだ。俺は悪くない。」
彼はもう、人を殺めることに慣れてしまっていた。
「・・・次のニュースです。
今年四月より発生している連続強盗殺人事件ですが
また新たに被害者が発生しました。犯人はいまだ
捕まっておらず、警視庁の調べによると・・・。」
「・・・はあ、まったく物騒だな・・・。」
「あなた」
「ん?」
「お腹、触ってみて。」
「・・・あ、今動いた!」
「・・・元気に生まれてきてね、赤ちゃん。」
少し空気が肌寒い、冬のある日。
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