ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 泣き虫道化師たちの笑い声
- 日時: 2010/06/23 20:10
- 名前: 真飛 ◆v9jt8.IUtE (ID: SG7XrUxP)
■ご挨拶、
※ 物語の途中まではシリアスではありません。
初めましての方は初めまして。知ってる方はどうも。
『泣き虫道化師たちの笑い声』の作者、真飛と申します。
この小説では、イギリスを舞台にした、悲しい出来事と不思議な能力、などのファンタジー要素を入れた社会問題なども少しずつ入れたいです。
基本ダークファンタジーと言うことで楽しく見ていただければ幸いです。
■注意事項、
少しばかりですが注意事項には目を通していただきたいです。
・荒らし、チェンメ、等の行為は控えてくださると。
・荒らし、チェンメに反応する方も荒らしとみなしていますのでご了承を。
・スレ潰し目的の方は理由を言って頂くと大人しくロック致します。
・挨拶は礼儀ですので心掛けましょう。
・偽者防止にトリップは付けた方がいいです。
■目次、
第一章 きらきら、光るの?
1 >>1 2 >>5 3 >>6 4 >>7 5 >>8
■お客様、
煌謎さま
- 5 優しい笑顔と似ている一面 ( No.8 )
- 日時: 2010/06/23 20:05
- 名前: 真飛 ◆v9jt8.IUtE (ID: SG7XrUxP)
それはあたたかい紅茶のように。優しい笑顔で。
目の前には、サデュラさんの明るくも怖い笑顔。それと、少し透きとおっている赤茶色の紅茶。
数分後、私はさきほどの出来事を全て話して、サデュラさんのリアクションを待っていた。
「……似てる、わねぇ。メイちゃん。私と」
似てる? 笑顔が素敵で誰にも優しく気配りのできるサデュラさんと、私が、似てる?
私が頭の中に疑問を浮かべていると、またサデュラさんが優しい笑顔をして言う。いや、いつも笑顔なのだけれど。
「ふふふ、何でって思ってるんでしょ? 正直、今の話聞いて少し苛立ったわ。「これあげる」だなんて、ただの言い訳じゃないの。自分が上に立ったとでも思ってるのかしら」
あの時、私が思ったことと同じこと。初めて知った、サデュラさんのこんな一面。
うーん、深い。無愛想な私は言い訳が嫌い。サデュラさんは無愛想ではないけど言い訳が嫌い。変な共通点だよ、全く。
「まあ、純情少年は悪気無いから仕方ないけれど、それをどう思うかは人の個性だから気にしない。それに、混乱して謝ることができない時もよくあるわよ?」
サデュラさんは、紅茶を飲んで、紅茶のカップを持ち上げたままで言う。そして、いつもの優しい笑顔。
ああ、相談して良かったと思う。だてに歳食ってない、大人だな、この人。大人ぶって、冷静ぶっている私とは大違い。いや、別に意識しているわけでもないけど。
二日後、ちゃんと謝ろう。人ゴミは嫌いだけど、頑張ろう。
と、心の中で呟いて、紅茶を飲み干す。
「あと、雑草抜きありがとうね、そろそろ帰ったら?」
「はい。じゃあ明日の昼頃に来ますね。そう言えば、花壇に飾る花、考えといてください。あと、明日の朝に水、撒いといてくれますか」
私が言ったあとに、サデュラさんが「分かったわ」とお得意の笑顔で言う。
サデュラさんに話して、二日後が楽しみになった気がする。
- 6 騒がしい、うるさい、消えて ( No.9 )
- 日時: 2010/06/25 19:07
- 名前: 真飛 ◆v9jt8.IUtE (ID: SG7XrUxP)
何で家の前で事件があるんだよ、と思う。
うるさい音で、目が覚める。目覚まし時計に目をやると、七時前。少しくらい、寝かせてくれたっていいじゃないの、八時でも十分に間に合うのに。
「……外で何が起こってんのさ」
私は気持ちいいベッドから、起き上がって橙色のカーテンが閉まっている窓に立って、勢いよくカーテンを開く。
——騒音の正体とは、そこらへんにあるパトカーやら救急車やらの音。そこの光景は、野次馬と言うであろう人や、刑事、警官などの人が居て、それの中心となる人物の跡があった。
何の事件なんだ、全く。朝っぱらから迷惑だし、道路で事件なんて、何の嫌がらせだよ。
まあ、二ポンドのことが忘れられると思うと少し嬉しい出来事でもあるのだが。
そんなことを頭に浮かべながら、私は階段で下へ駆け下りる。
「マミー、何があったのさ」
「あ、起きちゃった? それが、なーんか首と体が切り落とされたみたい。全く、迷惑よねえ?」
朝ご飯を作りながら、怖いことを淡々と述べてみせるマミー。迷惑っちゃ迷惑だけどストレートに言いすぎな気もする。
て言うか、首と体を切り落とすって、なんてグロテスクなことをするんだ。少し見てみたい気もするけど。
マミーは呑気に鼻歌なんて歌いながら、朝ご飯を作っている。目玉焼きを作っているらしい。膨らんでは潰れるような音が楽しくって仕方がない。
私は目玉焼きの音を聴きながら、テーブルに頬杖をつく。何もせずに、ただ目玉焼きの音だけを楽しんでいた。
が、この時間は無駄なのでサデュラさんの家に行く準備をしよう。
と思ってイスから立ち上がると、テーブルに皿が置かれる音がした。テーブルを見ると、出来たての目玉焼き。形は少し歪だが、これでも味は美味しい。
私はもう一度座って、ソースをかけると、フォークとナイフで目玉焼きを切って、食べる。
……せっかく立ったのに、早く行動するんだった。
十二時半には騒ぎが収まって欲しいと思う。
目の前には、空の皿。
- 7 へんなひと。不法侵入だけど ( No.10 )
- 日時: 2010/06/26 23:14
- 名前: 真飛 ◆v9jt8.IUtE (ID: SG7XrUxP)
道化師って、自惚れてるのか馬鹿なのか分からん。
二階にある自分の部屋の窓から、朝、騒がしかった部屋の下——の道は、人はどこかに言ってしまったけれど、まだ捜査は続いている。本当、迷惑。
時刻は今、午後十二時二十分。サデュラさんの家に行く準備はできている。
財布、雑巾、エプロン、バンダナ、ホウキ、などの色々な道具を鞄に入れて、服装は動きやすい白のTシャツに茶色のブラウス、動きやすい黒の半ズボン。で、準備はできてるんだけど、なかなか行く気になれない。
「……裏玄関から、出れば?」
しばらくの沈黙を切り開いたのは、マミー。
苛立って、何かのオーラを出しながら朝食に使ったテーブルに、頬杖をついている私に、ソファに座って雑誌を読んでいるマミーは気まずそうに言う。
なんで私、今までそれ思いつかなかったんだ。イライラしてばっかで裏玄関と言う家の一部の存在を忘れていた。まあ、ほとんど使わないのだから忘れて正解のような気もするが。
私は、テーブルのイスから立ち上がると、玄関に向かって自分の汚い靴を取り、もう一回テーブルに行き、イスにかけてある鞄を取り、裏玄関に向かう。
玄関を開け、靴を置いて、段差を下り外へと出る。私はマミーに「行ってきまーす」と言ったら、「行ってらっしゃーい」とだけ、気の抜けた返事が戻ってきた。
外を見渡すと、なぜか、なぜか全身黒だけの服を着ている、長い金髪、紫の目の男と思われる人物が立っていた。不法侵入だろ、確実に。
「……私の家から出ないと大声出しますよ?」
「ああ……失礼したね。ただ、今日の事件をどうしても見たくってねぇ」
その男性は、不気味に笑いながら言う。
——何、コイツ。人が殺されて笑ってるとか、馬鹿?
「もしかしてアンタ、あの紫髪の仲間? ピエロとか道化師とか自慢してへらへらしてる奴の」
「……ああ——それは多分、レイジーだ。ちなみに小生の名前は『クレイジー』とでも呼んでおくれ」
クレイジーと名乗るその男性は、少し間を空けてから言った。
よく分かったんだけど、質問の答えが色々と外れている。芸名答えてどうするんだ、この人。
「——しかし、愉快と思わないかい? 首を切り落とすだなんて、犯人も面白いことをやらかす。小生としては、体をばらばらにして散りばめても……」
「変人ですか? 淡々とグロテスクなこと言うな。事件もアンタに会ったことも不愉快な出来事だよ」
クレイジーの言葉を遮って、わざと皮肉を込めて私は言うと、クレイジーは「ははは」と軽く笑うと、
「小生は変人以外の何でもないよ。では、失礼」
と言って、裏庭の柵を軽く飛び越してどこかに歩く。私は、深く溜息をついて、腕時計に目をやる。と、十二時半を過ぎている。
——ヤバイ、喋りすぎたっ……!
私は、家の周りの柵を飛び越え、人が三人くらい並んで入れるような道を走って、サデュラさんの家に向かった。
- 8 走って、息切れ、花選び ( No.11 )
- 日時: 2010/06/28 18:29
- 名前: 真飛 ◆v9jt8.IUtE (ID: SG7XrUxP)
走る。この遅い足で一生懸命走る。
「サッ……デュラ、さん……」
サデュラさんの家の裏玄関をノックする私。息を切らし、両手を膝に当てながら言う私に、サデュラさんは驚いている。
「どうしたの?」と一言聞いたと思ったら、答える間もなく「とりあえず入って」とサデュラさんは言った。息は荒いままだが、靴を脱いで、自分の靴を持ってから私はサデュラさん家にお邪魔した。
開いている窓からは風が来て、涼しいサデュラさんの家。
私はサデュラさんに出してもらったお茶を飲みながら、汚かった庭をふと見ると、水滴と緑の芝生が姿を現している。ちゃんと水撒きしたようで良かった。
昨日よりは、綺麗になっているようだ、とか頭に浮かべていると、お茶は既になくなっていた。
「サデュラさん、花、どんなのがいいでしょうか」
私は、ティーカップをテーブルに置いてから、花壇を拭く雑巾を、鞄の中から探りながら、「ちなみに私はオレンジのガーベラとか——」と述べる。
すると、サデュラさんが「私はねえ——」と言いかけて、少し考えると、
「白いダリア、なんて良いと思うわよ?」
いつもの優しい笑顔より、百倍は優しそうな笑顔で、懐かしそうに写真に目を向けながら言った。
サデュラさんの旦那さんは、病気で死んだと聞いた。その時のサデュラさんほど、明るい笑顔はなかったと言う。旦那さんが嫌いではなく、旦那さんとの約束だったらしい。一生笑え、と言う約束。
その日から笑顔が絶えなかったことはないと言う。
心は苦しいはずなのに、相変わらず凄い人だと思う。
ちなみに白いダリアはその人の好きな花で、一回目の結婚記念日には白いダリアだけの花束とメモをサデュラさんにあげたとか。旦那さんも大胆だと思う。
——私がここまで知ってるのは、他にやることがなく、ただただ情報を集めただけ。『小さな情報屋』とか言われてるが、依頼するなら金は大きくしとけよ、って言いたい。
そんなことはどうでもよくて、問題は花。白のダリアとオレンジのガーベラだけだとなんか物足りない。
「……可愛い花があったら買ってきてください。私は庭掃除しとくので」
そう言うと、サデュラさんはすぐに「分かった」と言ってすぐに立ち上がると、すぐに玄関に行き、ドアの閉まる音がした。
……言われたことすぐやるんだったら、掃除くらいできるんじゃないか。と、思いながら、私は真新しい雑巾を水に濡らし、花壇を拭く。一度拭いただけで、茶色くなったと言うことは、相当やばいんじゃないかと思う。
- 9 ゆめとげんじつ、ひろいそら ( No.12 )
- 日時: 2010/07/17 20:56
- 名前: 真飛 ◆v9jt8.IUtE (ID: SG7XrUxP)
現実逃避で夢の中へ逃げる。酷い人だと一人で呟く。
疲れた……只今五時半。あの魔界と呼べる庭掃除が終わったことで、サデュラさんの美味しいホットケーキと紅茶を頂いている。
ふと、庭の方を見てみると、やはり緑だな、とか綺麗になったな、とか言う言葉が頭の中で出る。
黒、と言ってもいいぐらいだった庭は、芝生は緑、花壇は暖かいレンガ色と濃い土、そして赤やオレンジと言った暖色系の色があった。
「綺麗になったわねぇ……」
「そうですねー。やっぱ落ち着く」
サデュラさんが紅茶を飲みながらそう言う。相変わらず笑顔だなぁ、とかしょうもないことを考えながら私は適当に返す。
そして、言い終わってから紅茶を一口。
やっぱ、ここは落ち着く。
外は無論、自分の家よりもここが一番落ち着く。
言うなれば、自分の部屋で読書をしているような感覚。
マミーが嫌いではない。むしろ普通の人たちよりは尊敬できると思うし、どちらかと言うと好きと思う。
でも、ここなら疲れない。
本当の場所はここかもしれない。マミーは、私が居なくても生きれると思う。私が一番大切にしている人は、この人なのかもしれない。
とか、うっすら思うようになった私は、自分ながら酷いと思う。
現実から、逃げ出して、広い空に飛び込めたら、楽なんだろうとか、思ってみるけど、どうしても自分から死ぬことだけはできない。
そんなことを頭の中に浮かべる。
サデュラさんの顔を見ると、ホットケーキをほおば
り笑っている。
——自分って、なんだろう。
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