ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 背中に翼が在る者々
- 日時: 2010/06/16 21:25
- 名前: 泡沫 ゆあ (ID: h9T9UkU2)
"人"とは違う"ヒト"が居る。
"人"ではない"ヒト"が在る。
"ソレ"を知る人は多くはない。
幼子の、小さな手に収まるほどかも知れない。
けれど、"ソレ"を知る人は確かに"存在"する。
・・・これはそんな人達の物語。
"人"ではない"ヒト"が綴る世界の歴史。
さあ、その扉を開いてみて・・・・・・・・。
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- Re: 背中に翼が在る者々 ( No.6 )
- 日時: 2010/06/26 18:59
- 名前: 泡沫 ゆあ (ID: h9T9UkU2)
第六話;翼を持つ者達の異変
ある日、世界の異変に<翼を持つ者>達が気付いた。
「・・・・・・空がおかしい」
水底から空を見上げるデリチアンジャとタイチ。
「ホントだ。・・・・・・何だか怒っているみたいだよ」
タイチが怯えたようにデリチアンジャに抱きつく。
「・・・お父様がお怒りに?まさか。そんなお心の狭い方ではないさ」
そういいながらも、デリチアンジャは動揺していた。
「ニイナ・・・・・怖いわ」
「大丈夫よ、ヴィアンカ。私がついているでしょう?」
ヴィアンカは涙を浮かべてニイナの手を握る。
そんな二人の下に、チェスティスとサヤノがやってきた。
「ヴィアンカ、ニイナ!!一体どうなってるんだよ!!」
「さっき世界を見てきたんだけど、皆止まってるの!風も、水も、皆止まってるのよ」
チェスティスとサヤノの反応からして、本当のことだろう。
その四人の下に、今度はアマリリシアとユウキがやってきた。
「・・・・・<翼>の力を使っても、芽吹きを育むことが出来ない。
私達の力が弱ってる・・・・・・・」
ゴシゴシといつもなら目蓋をこすっているアマリリシアだが、今日はそれ程眠くないのだろう。
「俺達<羽根>の力も弱ってきているみたいだ」
ユウキはふう。とため息を吐いた。
「・・・・一体、世界で何が起こっているの・・・・・」
ニイナがそう呟いた瞬間、六人の頭に声が響いた。
『さあ、いらっしゃい。私達の愛おしい兄弟達・・・・。
<世界の行く末>を決めましょう・・・・・』
その声が止んだのも束の間、勢いの強い風が吹き荒れ、気がつけば真っ暗な空間に居た。
「・・・・ここ、どこ?」
キョロキョロしていると、二つの声がした。
「おい、お前らもここに来てたのか?!」
「!デリチアンジャ、タイチ!!」
八人は顔を見合わせ、一瞬安堵の笑みを浮かべる。
「一体ここはどこなんだ?それにさっきの声は・・・・」
ユウキが疑問を口にすると、その答えをくれる声が聞こえた。
「ここは<刹那の空間>。矛盾が混沌とする有と無の狭間よ」
後ろを振り返れば、二人の女が立っていた。
「あなた達は・・・・・」
ヴィアンカが聞くと、大人びた女が答える。
「我々は<管理者>だ。<翼>と<羽根>を持つ者達の、な」
<管理者>。初めて聞く名前に、一同は戸惑いを隠せなかった。
- Re: 背中に翼が在る者々 ( No.7 )
- 日時: 2010/06/26 19:22
- 名前: りん ◆mTqouqsI7s (ID: hquqghd4)
始めまして♪
私も小説を書かせていただいてます、りんです☆
文章がすごく上手で一気に読んじゃいました^^
これからも更新頑張ってください!
- Re: 背中に翼が在る者々 ( No.8 )
- 日時: 2010/06/28 21:56
- 名前: 泡沫 ゆあ (ID: h9T9UkU2)
第七話;存在を隠され続けた翼を持つ者
「管理者・・・?」
アマリリシアは眉間に皺を寄せながら女の言葉を鸚鵡返しした。
「そう、管理者。お父様から聞いていないかしら?」
少女の問いに一同は首を横に振った。
「聞いている筈がないだろう。我々は<忌み子>だからな、そう易々と他の兄弟達に
存在を明かすわけにもいかないじゃないか」
女がそう言うと少女は少し悲しげな目をし、また先ほどの凛とした表情に戻った。
「初めまして、私は<ティエラ>。<世界を粛清する翼>を持つ者よ」
純白の髪の少女、ティエラはそう言った。
「・・・・<ジークパレティア>。<世界を還元する羽根>を持つ者だ」
烏の濡れ羽色をした髪の女、ジークパレティアはそっぽを向いて言う。
「?!ちょっと待って。貴方達の力はお互いが<真逆>の力を持っているの!?」
ヴィアンカの言葉に一同がハッとする。
「本当だ・・・・。あんた達は確かに<翼を持つ者>らしいけど、
俺達とは<違う>だろ・・・・・?」
デリチアンジャの問いにティエラが答えた。
「ええ、違うわ。何もかもが、根本的な<役割>がまったく違う」
ティエラの答えがイマイチわからず、一同は首を傾げる。
「はぁ・・・・・。貴様等の<力>はこの世界に生きとし生ける全ての<生命>の為の力だろう?
・・・我々は違う。我々の<力>は<世界>の為の力だ」
納得したように顔を上げる一同にティエラはくすりと笑う。
「貴方達は見ていて飽きないわ。ずっとこのままで居たいくらい・・・。
けれど、そんなわけにもいかないから、貴方達を呼んだ理由を話そうかしら」
真剣な眼差しを向けられ、一同はたじろぐ。
「・・・・・決めて頂戴。<世界の行く末>を」
ティエラの後に、ジークパレティアが続く。
「お父様がお怒りになる前に・・・・、あの<悲劇>を繰り返さないために・・・・・・」
「・・・・あの、悲劇・・・?」
タイチが呟く。
その紡ぎにティエラが少し唇を噛み締め、綻びを解く。
「・・・・貴方達が生まれるよりずっと前、貴方達と同じように<翼>と<羽根>を持ち、
<破滅>の道へと至った<あの子達>のことよ・・・。
・・・・・・貴方達にも知る権利があるわ。話しましょう、あの<悲劇>を」
ティエラがそっと手を振りかざす。
彼女の心を反映させたかのように、水面に静かに悲しげに波を立たせた。
- Re: 背中に翼が在る者々 ( No.9 )
- 日時: 2010/07/03 15:16
- 名前: 泡沫 ゆあ (ID: 7rIzYjoN)
第八話;世界を燃やし尽くした翼を持っていた者
「貴方達が生まれるよりずっとずっと前、もっともっと多くの<翼>と<羽根>を持つ者が居たわ。
何十、何百、何千と・・・・ね。
その中でも、取り分け優秀な子達が居たの。
紅蓮の長い髪をした<ミシェチェリア>。深紅の髪をした<リュウ>。
二人が持っていた力は、<世界を滾らせる><翼>と<羽根>」
「・・・・・世界を滾らせる、力?」
ヴィアンカは不思議そうに言った。
「簡単に言えば、<世界を活気づける>力だ。悲哀で世界が充満されそうになれば、
その力を使って世界の人々の士気を上げていた。
それは並大抵の力じゃできない。だから、彼女等はお父様からも一目置かれていた」
「すごい人達が居たんですね・・・・・」
サヤノが感心したように言い、目をキラキラと輝かせていた。
「そう、本当にすごかったわ。あの子達は。
・・・・・・でも、そんなあの子達だからこそ、<あの悲劇>が起こってしまったの」
「・・・・・悲劇・・・・・」
いつものように、ミシェチェリアとリュウは世界を巡っていたの。
哀しみで満たされていないか。嘆きが渦巻いていないか。
世界の<幸せ>を願って巡回していたの。けれど・・・・。
「リュウ!もう、しっかり見てよね!!私達が世界を見守らないと荒廃しちゃうんだから」
ミシェチェリアは頬を少し膨らませて言った。
「分かってるって!!なんだよ、少しお父様から褒められたからって偉そうにしやがって」
その前の日、ミシェチェリアはお父様から激励を受けていてね。
その所為か、その日のミシェチェリアは少し態度が大きくなっていたらしいの。
「!べ、別に偉そうになんかしていないでしょ?!何でそんなこと言うのよ!!!」
「偉そうじゃないか!何が<見守らないと>だよ!!!」
いつもは仲が良かったのだけど、その日に限って、ミシェチェリアの言葉がリュウの気に障ったらしいわ。
「お前のそういうところが<大嫌い>なんだよ!!!」
リュウが頭に来て言った言葉が、ミシェチェリアの心に深く刺さった。
・・・ミシェチェリアはリュウに好意を抱いていたから、尚のこと深く傷ついたのよ。
「・・・・・嫌い、なの?」
「え・・・・」
俯いたミシェチェリア。その背中から半透明の翼が現れる。
「私のこと・・・・<大嫌い>なの・・・・?」
その翼が、真っ赤に染まっていく。
リュウは驚愕して、目を大きく見開いた。
「・・・・・・大嫌いなの?!!」
ミシェチェリアが叫んだ瞬間、甲高い音が世界を包み、その翼から炎が溢れ始めた。
「!!ミシェチェリア!!!!!」
炎は留まることを知らずに、世界へと降り注いでいく。
世界から悲鳴が聞こえる。嘆きが聞こえる。
「やめろ!!ミシェチェリア!!!このままじゃ・・・・・・・!!!!!」
リュウはミシェチェリアに近づこうとする。が、炎の勢いが強すぎて近寄れない。
ミシェチェリアの瞳は正気を無くし、大粒の涙がボロボロと零れる。
「リュウ・・・・私、は、もう・・・・・・・」
言って、顔を覆うように両手を添えた。
「・・・・・・・・ミシェチェリア!!!!!!!」
リュウが叫んだと同時に、世界は暗転した。
「・・・・ここは」
辺りを見回すリュウ。隣には気を失ったミシェチェリアが横たわっていた。
「!!ミシェチェリア!!!!しっかりしろ!!」
リュウはミシェチェリアを揺り動かす。
「・・・・っ、リュウ・・・・・私・・・」
ミシェチェリアが目を覚ましてところで、ティエラとジークパレティアが現れた。
「「・・・・管理者様・・・・」」
ティエラとジークパレティアは哀しみを浮かべた表情をして言った。
「ミシェチェリア、リュウ。貴方達の<力>は、世界の多くの命を奪いました。
・・・・・・これはお父様の<禁忌>に触れます。私達は<役割>に倣い、
貴方達を<粛清>し、<還元>します」
ティエラの言葉にミシェチェリアが反応する。
「待ってください!!リュウは、リュウは悪くないんです!!!
私が暴走してしまったんです!!!だからリュウだけは」
「<禁忌>に例外は無い。<翼>は力を支配しなければならず、
<羽根>は<翼>に力を上回られてはいけない。
・・・・お前達の均衡は崩れた。修復は、不可能だ」
言い終わると、ティエラとジークパレティアはお互いに左右の手をあげ、振りかざす。
すると、ミシェチェリアとリュウの足元が光り、二人の間に壁を作る。
「ミシェチェリア。貴方の<翼>を切り落とし、貴方の存在を抹消します」
「リュウ。お前の<羽根>を無に還元し、お前の存在を<人>に堕とします」
二人は、引き裂かれ、二度とお互いの存在を認知することはできなくなった。
「・・・・・そんな・・・・・・・・」
アマリリシアは涙を浮かべて言った。
「二人は、これから先転生することがあっても、二度と会うことはできないわ。
それがお父様の決められた<掟>だから」
それを聞いた一同は俯いた。
「・・・・・この悲劇を繰り返さないためにも、貴方達に決めてほしいの。<世界の行く末>を」
「・・・・俺達はどうすればいいんだ」
チェスティスは真剣な面持ちで言った。
「・・・・<世界を浄化する翼>を持つ者に、会いに行ってほしいんだ」
初めて聞く名に、すこし戸惑う。
「その方は今どこに?」
ユウキが尋ねた。
「・・・・・・お父様の離宮で暮らしている」
その言葉に、全員が驚愕した。
- Re: 背中に翼が在る者々 ( No.10 )
- 日時: 2010/07/13 16:26
- 名前: 泡沫 ゆあ (ID: Wwp0q0mP)
第九話;父を糧とする愚かなる者
「・・・嘘だろ?お父様の離宮に別の誰かが住んでるなんて・・・・・」
ユウキが、信じられないと言った声で首を軽く横に振る。
「お父様は自分以外の者を、あまり好みはしない。なのに、自分の懐に他者を住まわせているなんて、矛盾してる」
アマリリシアは目尻を少し上げて言った。
「・・・・・・・残念ながら、本当だ。お父様の離宮には<カッサジニア>という我々の兄妹が住んでいる。
そして、お父様の懐に居るのを良いことに、お父様の力を貪っている・・・・・・・・下衆な野郎だ」
ジークパレティアは不機嫌そうに眉間に皺を寄せて溜め息をついた。
「カッサジニアの影響でお父様は日に日に弱っていらっしゃるわ。そしてお怒りにもなって居る。
・・・その怒りが、今貴方達に向けられているのよ」
ティエラの声に一同が驚いた。
「俺たちの所為じゃ無いだろ!!」
チェスティスが叫ぶ。その叫びはティエラとジークパレティアにも届いたが、二人は俯くだけ。
「このままでは<あの悲劇>が繰り返される。それだけは、食い止めなければならないんだ」
「私達は<忌み子>。だから、ここから出ることは許されていないの。
だから、貴方達に頼みます・・・世界を」
ティエラとジークパレティアが右手を上げると、空間に裂け目が出来、光が差し込んできた。
「・・・・・・武運を祈る。兄妹達」
眩い光に包まれ、一同は暗闇の世界から抜け出た。
「ティエラ、私達は・・・・・」
「ええ。・・・・・・・・・覚悟を決めなければならないわね」
二つの瞳には、真っすぐな意思が秘められていた。
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