ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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Are you detective?
日時: 2010/08/22 14:04
名前: 獏 ◆jOx0pAVPUA (ID: tuG0e6yh)

はい、ども!! 獏です。
知ってる方も知ってない方もヨロシク。

現在更新㊥の作品がガス欠状態の為、
しばらく此方の小説を中心に進めていこうかなァと思っています。

前作を読んでくださっていた皆様、
本当に申し訳ないです(´x`;;
ネタが集まり次第、前作も更新開始しますんで
気長にお待ちくだせぃ。

【Detective】・・・探偵、の意味です。
まァ、つまりこの駄作は探偵物語になる予定です。
普通の探偵ではありませんがね(フフッ

では、
Are you detective?
  お楽しみください——

◆Are you detective? contents◆
Opening...   >>01

#01  >>02  廃墟
#02  >>03  現場調査
#03  >>04  真実①
#04  >>05  真実②
#05  >>06  先輩と新たな事件
#06  >>07  ゲーム①
#07  >>08  ゲーム②

◆Visitor◆
シュルル様
◆News◆

今日はご訪問、ありがとうございました。

また、
お会いできる日を楽しみにしていますね。

では Good Bay...

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Re: Are you detective? ( No.4 )
日時: 2010/08/10 08:56
名前: 獏 ◆jOx0pAVPUA (ID: mXej9PvR)

#03 真実①

道中特にこれといった心霊現象もなく、名残達は無事最上階、西の客室へ着いた。

汚れた壁
今にも抜け落ちそうな床
湿気で腐った木の机ともう当時の面影すらないベッド。

「うっわ。ホラー映画みてぇ」
周りを見渡した泰斗がそう言った。
二人の女も泣きそうな顔をしている。
そんな三人を無視し、名残は客室内を調べる。
そして部屋を一周し、大きく息を吐いた。
その時だった。

客室の扉の奥、廊下から聞こえる足音。
徐々に近づくその足音に名残を除く三人は青ざめていた。
「き、きっとアイツだ。俺らを呪い殺しに来たんだ。名残、どうしたらいい?」
泰斗の微かに震える声に名残は何も答えようとしない。
「おい!! 何とか言えよ、名残」
足音は扉の前で止まる。
そして扉が音を立てて開いた。
泰斗達三人は名残の背後に隠れ、震えている。
「……見ろよ」
名残は溜息混じりに前方、つまり扉を指す。
恐る恐る顔を上げ扉に目を向ける三人。
「え、なんで……」
三人の表情は情けないものになっていた。
そこに立っていたのは

あの日、死んで自分らを呪い殺すと言った
友人、実史(サネフミ)だった。

「お、お前、ささ実史なのか!?」
泰斗が実史を指差しながら叫ぶ。
「お、おう」
実史は右手を上げてそれに答えた。
いつもと変わらない顔、崩れてもいないし、死んでもいない。
誰が見ても実史は生きていた。
「ななな名残、何でコイツ生きているんだ!!」
パニックに陥った三人を落ち着かせようと名残は話し出す。
「お前らが見た、死んでいる実史は幻覚だったんだよ。よくある話だ。恐怖からそういう幻覚を見るなんてな」
名残は半目で三人を見る。
「実史は死んでいないし、あえて言うならお前らとこの廃ホテルには来ていないそうだ。ずっと家で過ごしていたらしい」
お前らに痛い目見てもらおうと俺が呼んだんだよ、と名残は言った。
「え、でも。俺らをここに連れてきたのって、実史じゃねぇか」
泰斗は再び顔を青くして尋ねる。
「……お前らをここに呼んだのは、ここにいるお前らが強盗と呼ぶ霊だ」
名残は目を扉の奥に向ける。

「……真実を知ってもらいたかったのか」

名残はそう呟き扉に近づく。
そして小さく微笑んだ。
「お前達の真実は俺がこの世の者に伝えるよ。もう、昇れ」
綺麗な、微笑だった。
泰斗らはそれに目を釘付けにされていた。
長い付き合いの泰斗でさえ、名残があんな柔らかく微笑む姿を見たことはない。

「何人の顔見てやがる。馬鹿が」

名残は泰斗の頬をつねり上げた。
「いたたたっ」
そして言う。

「今からお前らに、この廃ホテルの真実を教えてやる」

開かれた紅い瞳が真っ直ぐと彼らを見つめた。

Re: Are you detective? ( No.5 )
日時: 2010/08/11 23:47
名前: 獏 ◆jOx0pAVPUA (ID: mXej9PvR)

#04 真実②

名残は窓際の椅子に腰掛け、静かに話し始めた。

◇◆◇◆

三十五年前。
従業員達の明るい声と共にホテル、グランドラインの扉は開かれた。
多くの客は笑顔でホテルに入り、そしてまた笑顔でここを去る。
グランドラインは大変人気だった。
美味しい料理に綺麗に整った客室、従業員の礼儀。
どれをとっても完璧だった。
そしてこのホテルには大金をしまうための巨大な金庫が地下に置かれていた。
暗証番号を知るのは経営者と従業員代表者の森口(モリグチ)だけだった。
そしてその大金に目が眩み、愚かにも手を出そうと考えたものがいた。
それが一従業員の篠崎(シノザキ)だった。
篠崎は仲間数人にこの話を持ちかけ、そして八月六日に決行した。
銃を片手に森口を地下に連れて行き、脅し暗証番号を聞き出す。
「暗証番号は何だ。早く言え」
篠崎は銃を突きつけそう言う。
「な、何故だ篠崎。お前はあんなに仕事熱心な奴だったじゃないか。なのに、なんで」
信じられないという表情を浮かべ、篠崎に恐怖の視線を送る森口。

「金だよ、金。俺は金が欲しい。そしてこの金庫の中には一生手に入らないような大金が入っている。
手を出したくなるのは当然だろ?」

そして再び森口の頭に銃を突きつけた。
「早く言いな。死にたくないなら」
森口は恐る恐る八桁の暗証番号を口にした。
「1、73、556、29……だ」
解除音と共に発砲音が響き渡った。
倒れる体に床と壁を染める真っ赤な血。
「ありがとなぁ、森口先輩。でも、もうアンタは必要ねぇや」
大金を手に笑みを浮かべる篠崎。
もう、彼は正常じゃなかった。

「待て!! 篠崎」

そんな彼らの始終を見ている者がいた。
篠崎と同じ従業員の石原(イシハラ)達五人、彼らは警察を呼び彼等を止めに来ていた。
背後から近づく多くの足音。
それは警察の到着を意味していた。
「もう、逃げ場はない。大人しく捕まれ、篠崎」
石原の言葉に篠崎は悔しそうに顔を歪めた。
そして、

「助けてくれ!! 殺される!!」

そう、叫んだのだった。
石原の手に渡された拳銃。
そしてそれに怯えるような芝居をする篠崎。
「動くな!! 手を上げろ」
警察は篠崎達ではなく、石原達、五人に銃を向けた。
そしてその誤解を解く暇もなく放たれた銃弾。
それは石原を四人の仲間を打ち抜いた。
飛び散る血、
薄い笑みを浮かべた篠原。
この強盗事件は、石原達の仕業として世間に広まったのだった。

◇◆◇◆

「それが、三十五年前の真実。無実の人間が無知な警官に殺された、惨い事件だ」
名残は全て話し終わると椅子から立ち上がった。
「奴らは、石原達はただ、この真実を知ってもらいたかった。それだけだったんだよ。泰斗、今日の日付、覚えてるか?」
泰斗にそう問う。
「今日は……あっ……」

平成二十二年、八月、六日。
事件が起きた日。

「そう。彼らは自分らが死んで伝えられなかった真実をこの日に、お前らに伝えたかったんだろうな」
名残はそう言って部屋を出る。
泰斗達は何かを考え込むように黙り込んだ。
「俺、ここで知ったこの真実を伝える。多くの人に」
実史は雑誌編集者であることを利用し、真実を伝えると、そう言った。
名残はその場で立ち止まる。

「良かったな、石原さん。アンタの伝えたかった真実はアイツ等が伝えてくれる」

小さく浮かべた笑み。
そして紅い瞳は眼帯の下に戻された。

死者の姿を映し
死者の言葉を聞き取る
そして彼等の伝えたい真実をこの世に導く

紅く揺れるその瞳は真実をまた一つ、導いた。

Re: Are you detective? ( No.6 )
日時: 2010/08/12 17:31
名前: 獏 ◆jOx0pAVPUA (ID: mXej9PvR)

#04 先輩と新たな事件

あの廃ホテルから戻り、オカルト研究会室の扉に手を掛けた。
「……誰か、来てるのか」
中から聞こえてくる数人の若い声。
ここは暇人の溜まり場であるため、人がいるのはあたりまえだった。
しかし中から聞こえる会話は耳を疑うものだった。

「ちょっとぉ。誰か来たらどうするのよ泰斗ぉ」
「大丈夫だよ。誰も来ないって」
「そんなこと言ってぇ」

先日名残に大変な迷惑をかけたあの男の声と、
そして女特有の高い声。
「……アイツ、殺してやろうか」
昨日のことも忘れ、女といちゃつく泰斗に苛立ちを覚えた名残は勢いよく扉を開き言った。
「女といちゃつきたいなら他所へ行け!! 迷惑だ、非常にな!!」
そう言い放った名残は目の前の風景に思わず目を丸くした。
そこにいたのは、
泰斗と女ではなく、顔見知りの男。
栗色の肩までの髪に黒曜石のような黒い瞳、高い身長。
「よぉ、名残。元気にしてたか?」
早稲田大、三年オカルト研究会会長、瀬戸原 斎(セトハラ イツキ)だった。
「さすが瀬戸原先輩の声はすげぇな。名残さえ騙しちまうもんな」
泰斗が笑いながらそう話す。
「俺の声真似は世界一だ!!」
名残はそんな二人の様子に脱力しきっていた。
からかわれ騙されたことへの怒りと呆れが一気に押し寄せた。
「もう、いい。寝る。俺は泰斗、お前のおかげで寝不足なんだ。退け、ソファーを開けろ」
ソファーに座る泰斗を蹴り落とし、名残はそのまま寝転がった。

「その前に、ちょっと話がある」

さっきと全く違う真面目な斎の声に仕方なく名残は起き上がった。
「何ですか、斎先輩。手短に頼みますよ」
溜息交じりにそう言って斎の話に耳を傾けた。

「お前等知ってるか? “戻れなくなるゲーム”の話」

名残、泰斗の二人は首を横に振った。
「最近出回っているウェブゲームで、一度プレイするとゲームの中に引きずり込まれ、クリアするまで出られないってヤツ」
よくある話だった。
このゲームをやると死ぬ、二度と目が覚めない、などの怖い話はどこでも聞く。
そしてそのほとんどがハッタリだ。
「斎先輩、アンタそんなの信じているんですか?」
名残は溜息をつき目を伏せた。

「消えたんだよ。アイツ」

悲しそうに目を細め呟いた斎。
「……消えたって、誰がですか」
いつもになく真面目な様子の彼。
こういう時に彼が嘘をつかないということはここにいる名残と泰斗がよく知っていた。
「結沢 春埜(ユイザワ ハルノ)、君島 碇(キミジマ イカリ)、他にもかなりの人数の同期生が消えてる」
名残に手渡された数枚の資料。
そこには早稲田大学生徒の名前が二十五人分書かれていた。
「これが、消えた奴等の名簿か」
目を通せば、話したことのある人物の名もあった。
しばらく沈黙を続けた名残は、資料を机に置き言った。

「仕方ない。先輩、これ借りになりますからね」

つまり協力する、という意味だ。
「ありがとな、名残、泰斗。俺は、この事件は霊関連だと考えている。名残の力が必要なんだよ」
名残の眼帯のついていない黒い左目が斎を捕らえた。

「後で、お〜○お茶、奢ってくださいね」

嬉しそうに微笑み斎は頷いた。

Re: Are you detective? ( No.7 )
日時: 2010/08/20 16:11
名前: 獏 ◆3/PzWcBaQI (ID: tuG0e6yh)

#06 ゲーム①

名残、泰斗、斎の三人は現在パソコン室へと来ていた。
時間は午後七時半。
人気もなく、自分達の足音だけが大きく響く。
「これだよ、これ」
斎は起動させたパソコンの画面を指差した。
「……洋館からの脱出。これが先輩が言ってた戻れなくなるゲーム、ですか?」
名残は画面を覗き込む。
画面上には特にこれと言って問題も異常もない。
至って普通のホラーゲームだ。
「この学校の生徒が多く消えているのには理由があるはずだ。これは霊以外に、もっと面倒なものが絡んでいそうだ」
名残は溜息を落とし、額に手を置いた。
「とりあえず、ゲーム、やってみるか?」
名残と泰斗はそれに頷く。
緊張が高まり、心臓は大きく鼓動する。
クリック音が室内に響き渡った。

「……特に、何も起きないじゃん」

泰斗が安堵の息を漏らした、その時だった。
突然真っ暗になったパソコンの液晶画面。
パソコン室内の電気は全て消され、何も視界に映らない。
何かを殴ったような鈍い音。
それに続き、二人の人物が倒れこんだ。
「先輩!! 泰斗!!」
名を呼ぶが答えは返ってこない。
名残は舌打ちをし、目を凝らすが何も見えないことに変わりはない。
自分にとって最悪の状況だった。
そして、
「なっ!!」
突然後頭部を襲った鈍い痛み。
意識が薄まり、真っ暗な視界が歪んでいく。
倒れそうな体を支えようとしても、手も足も力が入らない。
目の前に映った赤い髪の人物を最後に名残の意識は闇に沈んだ。

「悪いな、三人さん。ちょっと眠ってろよ」
赤髪に被せられていた黒いフードが取られ、窓から入る風に髪が流れる。
男は手に持っていた鉄パイプを外に投げ捨てた。
「良い夢を……」

◇◆◇◆

滴る水の音、
風で窓が揺れ、不気味な音を奏でる。
「……っん」
名残は頬を冷たく流れるものに気づき目を覚ました。
それが水であることを確認し、痛む頭を押さえ辺りを見渡す。
月明かりで見えたのは洋館のような豪華な部屋。
自分の横たわっていた床にも高級そうな絨毯がある。
「起きたか」
背後からの声に、名残はゆっくりと振り返った。
そこにいたのは斎と泰斗の二人。
「……無事だったか。それより、これはどうやら霊関連というより人間の仕業じゃないのか?」
痛みや冷たさは感じるが現実味が全くない。
名残は立ち上がり、腕や足を動かす。
感触そのものは現実と現実と変わりないが、恐らくこれは、
「幻覚、薬物か何かを与えられたのだろうな」
名残は至って冷静に判断した。
先に目覚めていた二人もこの現実味のない世界に違和感を覚えていた。
そのため、全員が状況を理解するのに然程時間は必要なかった。

「……人の気配は全くない。仕方ない、少し調べるぞ」

名残の後に二人が続き、
三人の姿は洋館の暗い廊下に吸い込まれていった。

Re: Are you detective? ( No.8 )
日時: 2010/08/22 13:46
名前: 獏 ◆jOx0pAVPUA (ID: tuG0e6yh)

#07 ゲーム②

一階、二階、三階……全ての階を一通り調べたが、特にこれと言った手掛かりはなかった。
「どこにでもある普通の洋館みたいだなぁ」
泰斗は腕を組みながら長い廊下を進む。
「でもおかしいのは窓がまるで空間に固定されているみたいに開かないこと」
今、自分達がいる洋館の窓や玄関は固定されているかのように開かない。
叩いても、殴っても、割れすらしない。
「……でも、ここまでリアルに情景を見せられる薬物があるのか……」
名残は大きく溜息を落とした。
解決の糸口が見えない。

「な、なな名残!!」

肩を揺さぶられ、名残は機嫌悪そうに泰斗へ目を向けた。
「なんだ、俺は悩んで……」
泰斗の指差す廊下の奥に何かがいる。
何か、
そう、得体の知れない何かが。
黒い人型が自分達の目の前へ迫る。
「なっ」
人型は名残のすぐ前まで迫ると動きを止めた。
名残は右の眼帯を外し、その人型見つめる。
「霊……」
名残の右目に映ったのは小さな少女。
白いワンピースを着て嬉しそうに笑う、まだ幼い女の子だった。
「名残、その黒いのは……何なんだ?」
斎が少女を指差し問う。
「……女の子だよ。まだ幼い」
そして斎の腕を下げさせる。
「霊とは言え、人を指差すのはマナー違反だ」
そして泰斗達から見ればただの黒い人型と同じ目線に立ち、話しかける。
「君は、誰なのかな?」
名残は霊に対して綺麗な笑みを向ける。
今日もまた優しく、温かい笑みを少女に向けていた。

「私は、礼羅。譲原 礼羅」

少女は笑顔を浮かべたまま譲原 礼羅(ユズハラ ライラ)と名乗った。
「そうか。俺は名残だ。後ろにいる馬鹿みたいのが泰斗、あのでかいのが斎だ」
名残はその時考えていた。
ここまで内容の凝った幻覚を見せることができるのだろうか。
それに、だんだんと現実味が現れてきている。
もしかして、これは幻覚じゃないのか。
薬で眠らされ、起きた時の頭が覚醒していない状態が原因でこれを幻覚と勝手に考えていただけなのか。

これは

幻覚でも 夢でも ない

現実なんじゃ、ないのか——


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