ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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Time
日時: 2010/08/27 17:58
名前: おはる (ID: fqLv/Uya)



初投稿となります、
どうもおはるです。

他の掲示板で小説を書いておりますため、
更新が遅れる事があります;;
ご了承ください;;

この物語のジャンルはファンタジーとなっております。苦手な方は、お読みいただかないようお願いいたします。

初心者なので至らない所は色々とあるかと思いますが、読んでいただけると幸いです;;

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Re: Time ( No.7 )
日時: 2010/09/02 19:02
名前: おはる (ID: hjs3.iQ/)

*6

うぁ、といううめき声が聞こえた。私の右腕が開放される。二回目の銃声の音。私の左腕開放された。
 私は油断している周りの兵士に蹴りを入れ、城のある場所へと向かうため走りだす。
 誰が銃を撃ったのか、それは私の味方なのかは分からない。とりあえず、今はあの場所へ向かって……早く、この場所から逃げなければならない。
 
「リーナ様を捕まえろ!」

 兵士の叫び声が聞こえた。陛下が命令を下したのだろう。
 曲がり角から突然兵士が飛び出してきた。

「っ!」
 
 私は急いで足をとめたが、兵士は私の腕を掴んでくる。
 必死に抵抗をするが、振りほどけない。
 
「くっ……」
「リーナ様、もう抵抗するのはやめて——」

 その時、兵士の後ろに一人の影が降り立ってきた。すると、私の右手が開放され、兵士が床に倒れる。

「き、貴様、何者——」

 影は素早い動きを見せる。あっという間に兵士はのびてしまった。
 黒髪の男性は私を見て、明るい笑顔を見せる。

「早く行け。急いでるんだろ?」
「……ありがとう」

 小さくお礼をした後、私は再び走り出す。
 彼は——いや、彼らは何者……? 敵ではなさそうだけれど……。
 重い鉄の扉を開け、階段を下りていく。
 小さいころ、父親と一緒に探険した城内。道はしっかりと覚えている。

「……やっと着いた」

 再び鉄の扉を前にして、私はふぅとため息をついた。
 重い扉をゆっくりと開く。明りは少なく、少し薄暗い。ほこりまみれの地下室を私はゆっくりと歩いた。
 私の求めている物……どこにあるの?
 細い道を歩きながら、きょろきょろとあたりを見回す。
 その時、足元に何かが落ちてきた。どこから落ちてきたのかは分からないが、とりあえず拾ってみる事にする。小さな掌サイズの箱だった。

「……」

 何気なく、箱を開けてみる。中には何も入ってなかった。
 ため息をつき、箱を捨てる。数十秒歩くと、壁が目に入った。行き止まりのようだ。

「行き止まりか……。……ん?」

 私は少し首をかしげた。
 行き止まりの壁の周りの棚に、何も入っていない——いや、一つだけ小さな箱があった。
 
「……」
 
 私はその箱を手に取り、開ける。

「……あった」

 箱の中には、私のブレスレットが入っていた。

Re: Time ( No.8 )
日時: 2010/09/04 16:01
名前: おはる (ID: hjs3.iQ/)

*7

 ほっとしたのも一瞬の事。ブレスレットを身につけ、私は出口へと走り出す。
 この国にいても、いつか殺されるだけ。この国から、脱出しなければ……。
 地下室を出て、私は裏口へと走り出す。出入り口には、まだ兵士がいると思ったからだ。

「どこに向かうつもりだ?」

 突然、後ろから声が聞こえた。
 足を止め、振り返る。そこには、腕を組んで壁に寄りかかっている人物がいた。城の兵士ではなさそうだ。金髪の男だった。

「……この国から出るのよ」
「……ブレスレットは取り戻せたのか」

 どうして、こいつがブレスレットの事を知っているのか疑問に思ったが、

「……えぇ。取り戻せたわよ」
「そうか。なら、もう魔法も使えるな」

 魔法——その言葉に、私は強く反応した。

「……魔法の事、あんた何か知ってるの?」
「……」

 その時、奥の方から足音とともに人影が見えてきた。
 誰!? ……兵士、じゃなさそうね。

「——あ、お前! 何一人で勝手に行動してんだよ!」
「すまない」
「悪いじゃねぇよ! ったく……」

 さっきの人か、と私は思う。先ほど、兵士から私を助けてくれた人だ。

「……ユリカは」
「……そろそろ来ると思うぞ。ユリカが来たら、さっさとこの城を脱出する。今度は単独行動するなよ!」
「了解した」

 明るい方の男が私に気付いた。

「……色々説明してほしい事はあるんだけど、とりあえず名前を教えてくれないかしら」
「あ、俺はレンっていうんだ。こいつはカイト」
「……カイトだ」

 レンとカイト——もちろん、知らない名前だ。

「……私の名前は……言った方が良いのかしら」
「次期王女リーナ・キャルロス。……同時に、伝説の巫女」

 またその単語だ。
 巫女とはどういう事なのだろうか。私は一切自覚を持っていないのだが……。

「はーい! おまたっせー!」

 いつの間にか一人の女性がこちらに来ていた。茶髪のショートカットで、ボーイッシュな格好をしている。
 女性は私の方を見て、

「私、ユリカ! これからよろしく!」

 と明るく挨拶をしてきた。「はぁ……。よろしく」と曖昧に返事をする。

「とりあえず、城から脱出するぞ! 兵士に追いつかれた面倒だ。えーと、リーナ様? 案内よろしくお願いします!」
「はぁ……」

 その場のノリにあまりついていけなかったが、とりあえず城を脱出する事に決まったようだ。

Re: Time ( No.9 )
日時: 2010/09/06 19:00
名前: おはる (ID: hjs3.iQ/)

*8

 裏口の扉を開き、周りをちらちらと見る。兵士は見当たらない。
 私は扉の外へと出る。

「……見事に誰もいないんだな」

 レン、と言ったか。彼が周りを見渡しながらそう言う。

「裏口の実用性はないと言って良いほど、裏口を使う人は少ないからね。御覧の通り雑草が伸び方だし、ここから外に出る方法って言ったら……そこの穴を通るしかないからね」

 私は目の前にある煉瓦の壁に小さくあいている穴を指差した。この狭さと小ささでは四足歩行で地面を歩かなければ入れないだろう。

「……ここに入るのか?」

 カイトが言う。
 私はため息をつき、

「まさか。少なくとも、私はこんな所通りたくないわ」
「じゃあ、どうすんだ? この煉瓦の壁は結構高いぞ」
「飛び越えるわけないでしょ。穴を広げるのよ」

 私は掌を煉瓦に向ける。ぱちん、と指を鳴らす。すると、大きな音がして煉瓦が崩れ落ちた——もちろん一部分だけだが。
 ユリカが声を上げる。

「おぉー……」
「久しぶりに使ったからあんまりコントロールができてないわね。今の音で兵士が気付いたかもしれない、さっさと逃げるわよ」

 早口でそういうと、私は崩れ落ちた煉瓦を踏みながら、城の敷地内から足を踏み出した。
 足場が悪く、たくさん生えている木が邪魔だ。

「何ここ、森?」
「森……そうね。確かに森に近い場所だわ。この場所は今の陛下になってから一切手をつけてないの。……前の陛下の時は、ここも綺麗な原っぱだったのだけれどね」

 そう、お父様が生きていた時は……。

「——ここを抜けたら、墓場よ。塔の近くの墓場、っていうのかしら」
「じゃあ、ちょうど良いな。すぐに目的の場所につく」
「目的の場所? ……ねぇ、あなた達一体何者なの。それに、私が巫女って、どういう事?」
「目的地についたら喋るさ。長い話になるからなー」

 のんきな声だ。

「……あんた達の事は『さん』付けで呼んだ方が良いのかしら?」
「いや、タメ語で良いよ。タメ語でー」
「私もタメ語で良いよー!」
「……どっちでも良い」

 明らかに敬語を使った方が良い人が一人いた気がするが、気にしない事にしておこう。
 やっと森から抜け出す事が出来た、ふぅとため息をつく。

「……私はさっさとこの国からおさらばしたいのだけれど……。あんた達は何か他の目的地があるみたいね」
「うん。それはね、あなたの力も必要なの?」
「……私の力も? でも、早く逃げないと……」
「大丈夫、大丈夫! それに何かあっても、私達が絶対守るから! 自分が死んだとしてもね!」

 にっこりとほほ笑んで、ユリカは言う。
 ……自分が死んだとしてもね、か。

「……どこへ向かうの?」
「塔だ」

 カイトが腕を組みながらつぶやいた。

「……塔?」
「そうだ。そこにあるだろ? あの塔だよ」

 レンは、私の後ろを指差した。私は後ろを振り返り、上空を見上げる。

「……」

 声が出なかった。
 まるで天まで届きそうな高さの塔が、そこにはあった。……この塔は、お父様がいた時代に作られていたものではない。なぜなら、今の今まで私はこの塔の存在をしらなかった。今日、この墓場に足を運んだ時には気づかなかったし、私の部屋の窓からこの塔は見えなかった……。

「……行きましょう」

 私はそうつぶやき、塔へと足を進めた。

Re: Time ( No.10 )
日時: 2010/09/09 17:28
名前: おはる (ID: hjs3.iQ/)

*9

 綺麗なクリスタル出来ているような塔だった。

「実際にクリスタルっていう話もあるけどな。本当かはわかんねぇ」
 
 これ全部がクリスタルだとすれば……と考えると、少し怖くなってくる。もし、そうだとすれば……かなりのお金が消えていくだろう。
 透明な扉を開き、中に入る。螺旋階段が続いていて、上を見上げると少し頭が痛くなった。

「もしかして、ここ上って行くの……?」

 ため息交じりにユリカが言った。

「大丈夫よ。一瞬でつくから」

 私は指を鳴らし、塔の一番上へとワープする。瞬間移動という奴だ。
 ユリカが柵から乗り出し、下を見下ろす。

「うーわー……。これは、高所恐怖症のレンさんが見たらとんでもない事になるなー……」
「やめろ。そういう事言うな。足がすくむから」

 高所恐怖症なのか、と少し思いながらも私は近くの扉を開いた。どうやら、丸いホールのようだ。中央には、人影のようなものが見える……。

「……誰?」
 
 私がつぶやく。その人物は私の方へと体を動かした。
 驚いた。そこにいた人物は、ついさっき墓場であった女性……。
 にっこりと、彼女は微笑む。

「私は、あなたがここに来てくれるのをずっと……ずっと、待っていました。あの時から、ずっと……」
「……あなたは誰なの? ……私は、何者なの?」
「あなたは伝説の巫女。私は……」

 くすり、と彼女が笑う。

「私はただの怪物ですよ」
「……怪物?」
「怪物、というより……そうですね。異界の者と言った方が良いかもしれません。そのうち分かると思います」

 異界の者……? 私は首をかしげるばかりだ。

「……さっきから気になってるんですけど、伝説の巫女って……一体、どういう事なんですか?」
「今、この世界は時が止まっています」

 は? と私は声を上げる。

「時が止まってるって……。私は、今日まで普通に過ごしてきたんですよ? 朝、昼、夜……。時が止まっているとは思えないんですけど……」
「いいえ。それは、時が止まっている中人間達が動いているだけの事です」

 意味が理解できなかった。

「この世界には朝も昼も夜も存在しません。曇りかかっている空、動いている人間達。ただそれだけです」
「だけど——」
「あなたは、空が明るくなった所を見たことがありますか? 暗くなった所を見たことがありますか?」

 私は言葉を詰まらせた。
 ここ数年間、私は城の外には出られなかった。今考えてみれば、城の窓にはカーテンがかけられている。カーテンが開いている時間帯は、いつも昼の時間帯だけ……。朝と夜は、城の外の状況を確認することができなかった……。

「……分かったでしょう? この世界の時は、止まっているのです」
「城下町の……国民達は、何も思わないと言うの……?」
「分かりません。ですが、彼らが何を思っても、何もできないでしょう?」

 言われてみればそうだ。国民達には何の力もない。ましてや、この国の陛下は……。

「……そして、時の流れを戻すことができるのは——魔法を使えるあなたしかいないのですよ」

 私が、時の流れを戻す……?
 私は微笑する。

「馬鹿みたいな事言わないでよ。私にはそんな力ないわ」
「いいえ。あなたはその力を持っています。生まれながらにして、ね」
「……」

 その時、彼女が何かに反応をした。

「どうしたの?」
「……兵士が来たようです。まだ、話をしたい事はたくさんあったのですが……仕方ありませんね。このままこの国を出て、シエル王国に行きなさい。そこに行けば、分かるはずです。あなたの使命が」
「シエル王国……?」
「お供を頼みますよ。レン、カイト、ユリカ」

 私は振り向き、三人を見る。三人は同時にうなずいた。

「城の外までは私がワープをさせてあげます」

 私達の足元に、魔法陣が浮かび上がる。

「——気をつけて」

 最後に彼女は、そう言った。

Re: Time ( No.11 )
日時: 2010/09/11 22:47
名前: おはる (ID: hjs3.iQ/)

*10

 いつの間にか、私は国の入口——門の前にいた。

「……シエル王国って、どこにあるの?」

 私がぽつりとつぶやく。
 何と言っても、ここ数年間外に出ていなかったのだ。外の状況も分からないし、国の外に出るのは初めてと言っても良いほど。

「確か、ずっと西の方にあるんだっけ?」
「そうそう。って事は、左の方に歩いていけば良いんだな!」
「右だ。北の方向が違う」

 こいつら大丈夫かと少し不安になりながらも、「右に進めば良いのね? 分かったわ」

「っていうか、お前、ここ数年間引きこもりだったんだよな?」
「引きこもりなんて言わないで。監禁されてたのよ」
「あぁ、悪い。……でも、そうしたら体力とか大丈夫なのか? その……魔法? も無限に使えるわけじゃないんだろ?」
「……そうね。魔法には魔力が必要だわ。たくさん使いすぎるとその魔力がなくなって、自分の体力を使う事になる。……つまり、魔法を使いすぎると自分の体を滅ぼすことになる、ってことね。体力については問題ないと思うわ。別に、城の中の自分の部屋にずっと閉じこもっていたわけでもないし」

 そうか、とレンは一人で勝手にうなずいている。
 
「……どうでも良いけど、あんた達何者なの?」
「シエル王国に行けば分かる。それまで待て」

 カイトがいつも通りの表情で言う。
 私はそんなカイトを軽くにらみ、

「別に、今教えてくれたって良いじゃない」
「んー。でも、説明面倒くさいしな。それに、俺達もいまいち良く分かってないし……」

 苦笑しながらレンは言う。
 私はため息をつき、「そう」と適当に返事をする。

「……他の国は、その……時が止まってる事に何か疑問を抱いたりしないの?」
「そういうわけじゃないみたい。だけど、いっつも上手い理由をつけられてはぐらかされる、みたいな事は聞いた事あるよ」

 ふぅん、と私は返事をする。
 どちらにしろ、一般人には何もできないという事か。

「……何か、長い旅になりそうね」

 深いため息をつきながら、私はつぶやいた。


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