ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- Time
- 日時: 2010/08/27 17:58
- 名前: おはる (ID: fqLv/Uya)
初投稿となります、
どうもおはるです。
他の掲示板で小説を書いておりますため、
更新が遅れる事があります;;
ご了承ください;;
この物語のジャンルはファンタジーとなっております。苦手な方は、お読みいただかないようお願いいたします。
初心者なので至らない所は色々とあるかと思いますが、読んでいただけると幸いです;;
- Re: Time ( No.2 )
- 日時: 2010/08/27 18:16
- 名前: おはる (ID: fqLv/Uya)
*1
朝。ベッドの上で、私は目を覚ます。
あぁ、今日も私は生きてるんだなぁ——なんて、少し思ったりもする。
体を起こし、窓から城下町を眺めた。
ここから見ると、偉大な人間様もごみほどの大きさでしか見えない。
ノックの音が私の耳に入る。
「リーナ様、お目覚めでしょうか?」
女性の声。おそらくメイドだろう。
「起きてるわよ。どうぞ、入って」
「失礼します」
入ってきたのは、やはりメイド。
朝早くから何の用だ?
「……陛下がお呼びです」
「……」
私はベッドから降りて、たんすの方へと向かった。白いワンピースを取り出し、ベッドの上へと投げる。
「陛下、ねぇ……」
くすりと笑って、メイドの方を見た。
「あなたも、陛下信者なのかしら?」
「……国民達は、その国の陛下に仕える者。誰ひとりとして、例外は認められません。信者という言葉を使うのはどうかと……」
「そう? でも、私はあいつの言うことなんか、聞いちゃいないわよ?」
「消されますよ」
メイドが低い声で言う。私の顔を、私の目を見て。
「……人は、いつか死にます。その時……リーナ様がいなければ、誰がこの国を再建するんです?」
「……」
私は再び窓の外を眺める。
「知らない、って言いたい所だけどね。……結局、誰だって良いじゃない。私じゃなくても、この国をきちんと支えられる人がいれば、その人が陛下という存在になれば良い。貴族だなんだって騒いでるけど、私達はそんなに偉い存在じゃないわ。ただの人間よ」
「……」
「……着替えるから、出て行ってくれないかしら」
「……はい。失礼しました」
扉の閉まる音がする。
「……」
私は深いため息をついた。
- Re: Time ( No.3 )
- 日時: 2010/08/28 14:15
- 名前: おはる (ID: fqLv/Uya)
*2
「何の用でしょうか」
陛下を軽く睨み、冷たい声で私は言う。
そんな私の態度も気にせず、いつものでかい態度で、
「少し、君にやってもらいたい事がある」
嫌です。
そう言いたい所だが、ここで殺されては困る。
「何をやれと?」
「この国も、国民が増えてきた。だが、まだまだ住居希望者は増える……。しかし、家を作れる土地がもうないのだ」
「そんな事で悩んでいるのですか? あなたなら、森林伐採も簡単にやるでしょうに」
くすりと笑って言ったその言葉に、周りの兵士が少し動いた。
陛下は兵士を手で制し、
「森林伐採も考えたのだが、今この世界は環境だなんだを大切にしている。その中で森林伐採などをやったら、この国の信頼が下がるだろう?」
この国のじゃなくて、自分自身の信頼が下がる事を心配しているくせに、何を言っているんだか……。
私は何の返事もせずに、陛下をにらみ続ける。
「……だが、新しい国民を受け入れないわけにはいかない。そこで、私は一つの案を思いついた」
「……へぇー。あなたの案、ねぇ……」
ろくな案ではないのだろうな、と私は思う。
どうせ……。
「人を殺すとか、そういうのでしょう?」
「ほぅ。良く分かったな」
さらりと陛下は言う。
私は目つきを鋭くした。
「人を殺すなんて、どういう事よ」
「現時点での国民を少し殺して、その家に希望者を済ませるのだ。もちろん、若者は殺さない。年寄りを殺す」
「その仕事を、私にやれと?」
「あぁ、そうだ」
理由は分かっている。陛下が国民を殺すなどあってはならないことだ。もし、それがばれた場合、彼はこう言い訳をするだろう。「こいつが勝手にやった事だ。私は命令などしていない」と。
自分に罪を背負わせないため、このような仕事は私達「部下」がやる。
「……じゃあ、一つお願いしたい事があるのだけれど、良いかしら」
「何だ?」
「私のブレスレットを返してくれる?」
陛下の顔色が変わった。
「私が、お母様とお父様からもらったブレスレット……返して」
「……なぜ、返さなければいけない? あんなブレスレットなど……必要ないだろう」
「どうして、私からブレスレットを奪った? ……あのブレスレットには、何か特別な意味でもあるの?」
陛下の口が閉じる。
「どうでも良いものなら、私の手にあっても関係ないはず。……なぜ、私から奪った?」
「……黙れ。お前は、私の言う事さえ聞いていれば良い。仕事の日時はのちほど教える。それまで、部屋でゆっくりしていろ」
「散歩がしたいわ」
「駄目だ。絶対に城から出るな」
「……」
私は無言で王室を出て行った。
絶対に城から出るな、か……。
にやりと私は笑った。
- Re: Time ( No.4 )
- 日時: 2010/08/29 17:07
- 名前: おはる (ID: hjs3.iQ/)
*3
城の入り口には、兵士が二人ほど立っている。
時刻は午後二時。この時間帯は、ほとんどの兵士が会議に向かっている陛下のお供についていっている。城にはメイドと兵士が数人いるだけだ。
兵士が私に気付く。
「リーナ様、何か御用でも……」
「うん。ちょっとね、散歩をしてきたいの」
「散歩……ですか? でしたら、中庭にでも——」
「城の敷地内じゃ嫌なのよ。外に出たいの」
兵士の表情が少し険しくなった。
「……申し訳ありませんが、陛下から外出させないようにと言われていますので」
「あなた達は、陛下を信じているの?」
兵士の口が閉じる。
「あんな陛下で、この国を守れるとでも?」
「それは……」
「死にたくないんです」
片方の兵士がきっぱりとそう言う。
私は彼を睨み、
「臆病なのね」
「何と言われても良い。私には家族がいる」
「その家族も、いつかは殺されてしまうかもしれないのよ? ……もう、良いわ。そこをどいてちょうだい」
「どきません」
兵士は持っている槍を私に向けて、そう言った。
彼らは、陛下を恐れている。陛下の命令は絶対だ。……だが、私にはそんな事関係ない。
「……悪いけど、通させてもらうわ」
私はポケットから短剣を取り出し、兵士に向ける。
短剣と言っても果物ナイフだ。さきほど、台所から取ってきた。
兵士二人が私に向かって走ってくる。
私はジャンプをして攻撃をかわし、一人の兵士の首に蹴りをいれた。ワンピースがふわりと少し浮いた。
小さなうめき声が聞こえた後、兵士は倒れる。
「リーナ様、おとなしくしていてください!」
兵士はそう叫ぶと、槍を私に投げてきた。
その攻撃をかわし、私は走る。
武器を失った兵士はあたふたするばかり。
「こんな兵士達じゃ、国を守れるわけなんかないわよね」
みぞおちに蹴りを入れると、兵士はその場に倒れた。
ふぅ、と私はため息をついて、
「ワンピースじゃやっぱり動きづらいわね……」
と独り言をつぶやきながら、城内を出て行った。
- Re: Time ( No.5 )
- 日時: 2010/08/30 10:52
- 名前: おはる (ID: hjs3.iQ/)
*4
城の外に出るのは何ヶ月——いや、何年ぶりだろうか。
私はこの豪華な家に監禁されていた。
私は、ずいぶんと国民の前に出ていない。国民の皆も、どうせ私の顔など忘れているだろう。
人通りの多い大通りを歩きながら、私はそんな事を思った。
「……」
お父様が生きていた頃は、毎日が楽しかった。
陛下という存在だったお父様は国民からも、城に仕えている兵士やメイドからも、慕われていた。お母様が小さい頃に亡くなったせいか、お父様が私は好きだった。
人はいつか死ぬ。
そんな当たり前の事を誰かが言っていた。
お父様は病で亡くなった。皆が悲しんだ。
それが、三年前の五月三十日の話。今日は……何日だったかな。
いつの間にか、城下町の墓場に来ていた。人の姿は見当たらない。
あの時は……あの時は、まだ……。
ふっと私は悲しい笑みを浮かべた。
「平和で幸せだった、かな……」
叔父が——お父様の兄が陛下になってから……この国は変わってしまった。
その頃、私はまだ十二歳。王女になるには、早すぎた。そのせいで、あいつが陛下になってしまった。
次期王女、リーナ・キャルロス。現時点では、姫という存在。それが、私。
「……」
私は深いため息をついた。
そろそろ、城に戻るかな……。
その時——
「次期王女、リーナ・キャルロス」
後ろから、私の名を呼ぶ者がいた。
城の者か?
私はポケットの中の果物ナイフを軽くつかみながら、ゆっくりと振りかえった。
そこにいたのは、見覚えのない女性。黒髪のロングヘア。足首まである長い白いワンピースを着ていた。腕には、ブレスレット。
「……あなた、誰?」
「あなたは、この国を救わなければならない」
「え?」
「……いいえ、この世界を救わなければいけないの」
真面目な顔で、彼女はそういう。
いきなり何……? どういう事?
「城の地下」
「……地下?」
「そこに、あなたの求めている物はある」
私の求めている物……? それって——
「それを手に入れたら、もう一度この場所に来てほしい。……お願い。あなたしか、この世界は救えない……。あなたしか——この世界の時を取り戻す事はできない」
「え……?」
彼女はそういうと、大通りの方へ走って行ってしまった。
「あ! ……何なのよ、もう……」
……。
私の求めている物、か……。
私は城に向かって足を進めた。
- Re: Time ( No.6 )
- 日時: 2010/09/01 15:52
- 名前: おはる (ID: hjs3.iQ/)
*5
「……」
やばい事になったな、と私は小さく舌打ちをした。
目の前には、でかい態度をしている陛下。そして私の周りには数十人の兵士。
城を入った途端にこの有様だ。帰る時間も計算しておくべきだったか……。
「……何をしていた?」
「別に、何も」
「どこを歩いた」
「……大通り」
「どこへ向かって」
「……どこだって良いじゃない」
「答えろ!」
兵士達の槍が私の方へと向く。
私はため息をついた後、
「墓場よ。墓場」
「墓場だと……? あの、塔の近くにある墓場か?」
塔……? ……まぁ、そういう事にしておこう。
「たぶん」
「……静かに暮していれば良いものの……。今まで、私がお前を生かしておいたのはどうしてだと思うか?」
「知らないわ。そんな事」
「お前は、この世界でただ一人の巫女という存在だからだよ」
巫女? と言葉を発する前に、私の周りの兵士達が動いた。
この人数に抵抗するほど馬鹿じゃない。私はおとなしく捕まる。
腕を掴まれ、槍が私の胸元に向けられる。
「……巫女って、どういう事よ」
「今から死ぬんだ。どうでも良い事だろう?」
「……」
私はため息をついた。
「ため息をつく余裕があるのか?」
「……どうしてか分からないけど、助かる気がするのよ」
誰かが助けにきてくれる。そんな気がした。
陛下は笑う。
「勝手に妄想でもしていろ。——殺せ」
……助けに来てくれるわけ、ないか。
「助けるよ」
ばん、と銃声が響いた。
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