ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

回転と僕
日時: 2010/09/13 08:07
名前: 95 ◆/diO7RdLIQ (ID: lD2cco6.)

回転と僕



バンド青春小説ではない。
ちょっと壊れた愛がある。




目次

登場人物紹介(たまに更新) >>12

第一章
プロローグ 回転と僕 >>1
第一話 エルレガーデン>>3>>5>>6
第二話 三年後>>7
第三話 出会いの始まり①>>8
第四話 出会いの始まり②>>9
第五話 出会いの終わり①>>10
第六話 出会いの終わり②>>11

第二章
第七話 恋?>>13



Page:1 2 3



Re: 回転と僕 ( No.1 )
日時: 2010/08/30 11:15
名前: 95 ◆/diO7RdLIQ (ID: gQELPCFY)

プロローグ  回転と僕



 頭痛がする。

 朝起きた時からずっとだ。気付いたら治ってるだろと思っていたが、夕方になってもまだ痛い。

 会社の帰り道、薬局でCMで有名な某頭痛薬を買った。家に帰り、注意事項など特に読まず水と一緒に飲み込んだ。
 頭痛って事はつまり、脳がズキズキ痛い訳だ。でもなんでこんな小さな粒を口からいれて効くんだろうかと小学生並みの疑問を持ちながら服を脱ぎ、シャワーを浴びた。

 それから全裸で牛乳をがぶ飲みし、「生きてて良かった〜」などと叫んでみる。一人でいる部屋で声を出すというのは中々恥ずかしい。

 それからスウェットを着て、なんとなくテレビを見て、ビールを飲んで、明日に備えて眠りにつく。
 
 そしていつも、口の悪い下ネタが大好きな少女の夢を見るのだ。
 





 

Re: 回転と僕 ( No.2 )
日時: 2010/08/30 11:23
名前: 絶櫨 ◆kaIJiHXrg2 (ID: NN.yKTYg)

口の悪い下ネタが大好きな少女……
なんか嫌ですね、口が悪いまでなら良いけど下ネタって…

Re: 回転と僕 ( No.3 )
日時: 2010/08/30 11:46
名前: 95 ◆/diO7RdLIQ (ID: gQELPCFY)

第一話 エルレガーデン



 耳に入った途端、僕は催眠術にでもかかったように繰り返し聴いていた。

 当時僕は中学一年生で、学校の帰りに、ビルに入っているCDショップで時間を潰していた。
 友達はみんな部活。だいたいの人は部活に関心を向けているが、なぜか僕にはまったく無かった。部活をやりたいなんて微塵も思わなかったのだ。我ながら不思議だった。新入生部活紹介なんか見ていても、そそられるものをまったく感じない。人間が球使ったり楽器使ってなんかしてるだけ。僕にとってはそれだけの事。価値なんて見出せなかった。

 だから部活の盛んな僕の中学で、(しかもやる気満々の中一で)部活に入部届けを出したことのない人間は僕だけかもしれない。担任にも「部活入らないの?」と大きなお世話極まりない言葉をかけられた。

 僕は気にいらなかった。
 なぜ、中学に上がったイコール部活なのか。
 なぜ、成績が良いイコール良い高校なのか。

 こんなデザインされた人生を歩むなら、ホームレスになった方がマシなんじゃないかと思う。こんな馬鹿みたいな事、誰にも言えないなかったけど。

 僕の価値観は中一で土台はできていた。
 それから細かく変わったところはたくさんある(例えば先ほどのデザインされた人生よりホームレスのがマシだという件だが、あれは真っ当な人生を歩んでいる人にも、ホームレスにも失礼だという事を理解した)が、根は変わらない。

 そんな僕は、音楽にも特に関心が無かった。
 中学生にもなれば、好きなアーティストの一人や二人居てもいいのだが、僕にはまったくいなかった。
 友達にいくつかお勧めアーティストのCDを借りて聴くが、話題についていく為でしかない。歌詞にも音楽も、ただの言葉と音でしかなかった。

 嫌いではないが、好きでもない。どうでもいい。
 僕にはそういうものが多すぎるのだ。
 でもドラマもバラエティも人並みに観るので、学校生活を送っていて浮く事はなかった。

 なんとなくCDジャケットを眺めながら、いまいち活気のない店員には働けよと念を送り、本屋でも行くかと思っていたその刹那——。

 耳に入る、音。

 音。
 音。
 音。
 なんだこれは。

 最初は訳の分からない不快感が体を蝕む。
 なんでこんなに気持ち悪いのか。

 それはこの店内に流れる音楽が、僕が始めて「音楽」だと認識したものだったからだ。
 今まで僕にとって音楽とは「音」でしかなかった。
 しかし流れる音は僕の中で果てしなく音楽になっていく。

 僕の心を乱し、生かし、殺す。

 今までこんな事無かった。
 これが、僕の嫌いな奇麗事として使われる「心を動かす」というものなのか。
 静かに、そう感じた。

 これが僕とエルレガーデンの出会いだった。

Re: 回転と僕 ( No.4 )
日時: 2010/08/30 11:52
名前: 95 ◆/diO7RdLIQ (ID: gQELPCFY)

>>2
まあ学生程度のもんですから(^^

Re: 回転と僕 ( No.5 )
日時: 2010/08/30 12:28
名前: 95 ◆/diO7RdLIQ (ID: gQELPCFY)

 先ほどの活気の無い店員にすぐさまこのアーティストは誰なのか聞いた。すると特に深く考えていない表情で

 「ELLEGARDENです」

 聞き取りやすい声だった。短い英単語なのにちゃんと英語に聞こえた。僕はCDどこにありますかと尋ね、活気のない店員改め(ネームプレートを見た)坂木店員は迷いのない足取りで案内してくれた。もしかしてこの人、そのエルレガーデンのファンなんじゃないだろうか、と思った。

 エルレガーデンのところには、ちゃんと何枚かCDが置いてある。中でも黒いジャケットのアルバムらしきCDには店員が書いたと思われるカード(POPというらしい)があって、そこには「ELLEGARDENベストアルバム!!」と書いてあった。僕はここで初めてエルレガーデンというのがバンド、バンド名のスペル、を知った。

 「これが活動休止前最後のアルバムです。メンバーが選んだベストアルバムなので、初めて聴く人でもお勧めします」

 愛想よくCDを手に取り、僕に渡した。迷いはない。買う以外ない。元々物欲があまりない僕は、お小遣いが有り余っている。

 「え?活動休止?」

 思わず流してしまいそうになったが、顔をあげ店員を見る。愛嬌のある、少し太った顔。エプロンがよく似合う。

 「ええ。去年に活動休止を宣言して、まだ現在進行形です。ああでも、休止、なので解散したわけじゃないですからね」

 やはりこの店員、ファンなんだ、と思った。
 僕はCDをぎゅっと握り締めた。
 いつのまにか店内を流れる音楽は変わっていた。

 「今流れているこの曲はどうですか?最近ブレイクしかけてこの季節には——」
 「いや、あの、結構です」

 曖昧に笑い、拒否した。商品を売りたい気持ちは分かるが、他人の勧めほど不愉快なものはない。

 「…ELLEGARDEN、良いですよ〜!」

 満面の笑みで店員は言った。僕は思わず、「何が?」と聞き返しそうになったが、堪え、今はこのCDを開封し、プレイヤーに挿入しなければ。そればかり考えていた。





Page:1 2 3



この掲示板は過去ログ化されています。