ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- ようこそ、完全創造世界(パーフェクトプログラムルーム)
- 日時: 2010/09/02 20:45
- 名前: 神酒 理 (ID: QCkuis7p)
どうも、こんにちは。神酒 理と申します。
えー、「ミサイル。」も書かせていただいています。はい。
本来この小説は「コメディ・ライト小説」のほうにあったのですが、どう見てもシリアスにしか見えないので、こちらに移動しました。
温かい目で見ていただけるととても嬉しいです。
コメントも走る勢いで嬉しいです。。。
では、よろしくお願いします。
- Re: ようこそ、完全創造世界(パーフェクトプログラムルーム) ( No.7 )
- 日時: 2010/09/02 20:50
- 名前: 神酒 理 (ID: QCkuis7p)
午前10:34 真窮都 元新宿区 路上
ここは、真窮都 元新宿区。
文字から見てわかるように、ここは元、「東京都 新宿区」だったところだ。
未来でも変わらず、都内でひときわ明るく目立つ区域。人の多さも変わらず、大人が大半を占めている。
今日もまた、路上は雑踏でひしめいている。
その雑踏の中に一人だけ、粘着くような雰囲気を醸し出す人間が紛れ込んでいた。
「もしもし…遊樹さん…ですか?」
「はい。遊樹です。」
その男は携帯電話の通話口から流れてくる女の声に答える。
何気ない、どこにでもある会話。ただ、『会話している人間』はどこにもいない、故に自然すぎる性格の持ち主だった。
携帯電話を持つ男は見るからに「学生」であった。年は15歳前後だろうか。なかなかに精悍な顔つきをしていた。髪は短く切りそろえてあり、日本人の黒髪。服装もいたって普通の高校生。黒のパーカーとジーンズ。
特に特出した特徴がなく、「つかみどころが無い」という不気味さが必要以上にひきたっていた。
「今日もお仕事ですか。お疲れ様です。」
ただ淡々と。最低限の感情の起伏しか言葉に含めず、感情がまったく感じられなかった。ただ無表情なわけではなかったが、薄く口元が笑っている程度だった。
通話口の向こう、女の声は、しばらく沈黙を続けていたが、やがて決心したように息を吸い込むと、しっかりとした声で話し始めた。
「私はとあるサイトの経営をしているのだけれど、貴方に協力してもらいたいことがあるのよ。」
青年は薄い表情のままその言葉に対しての好奇心も見せず、「はい、わかりました。」と言い、待ち合わせ場所と時間を指定して電話を切った。
青年の横を人々が通り過ぎていく。青年は通り過ぎていく人々に対して心で問いかける。
「お前達はこの美しい『世界』に対して、何を考え、何を知り、この『世界』を汚し続けているのか。」と。
青年は歩きだす。人々の荒波の中、粘着くような吐き気がするような雰囲気を醸し出しながらも、楽しげな『事件』に心躍りながら。そして青年は———
車に跳ね飛ばされた。
- Re: ようこそ、完全創造世界(パーフェクトプログラムルーム) ( No.8 )
- 日時: 2010/09/02 20:50
- 名前: 神酒 理 (ID: QCkuis7p)
———油断した。まさかこんなことになるとは。
己は、そんなにも『事件』が楽しみでならなかったのだろうか?
違う違う違う。そんなはずは無い。
己はただ、この『世界』を愛したいだけだ。
フフフ
アハハハハハハハ
ハハハハハハハハハハハハハハハハ
愛してる。
愛してる愛してる愛してる愛してる。
この『世界』を愛してる。
けれど、なんで。
なんで、『お前達』は大嫌いなんだ?
教えてくれ。大嫌いな訳を。
ど う し て ?
なあ、どうして、己は。
己の。
己の、名前は。
己の名前は、藤原 遊樹。
「……あいかわ…らず…乱暴な人が…多いなこの都市は……。」
ゆっくりと青年は立ち上がる。
野次馬達の間にどよめきが広がる。
青年は気にせず衣服の埃を払い落とすと、自分の体の傷を確認した。
幸いなことにかすり傷程度で済んだようだった。
「すみません。本当にすみません!」
車から降りてきて謝罪をする運転手に向き直ると青年は自嘲気味に笑うと首を振った。
「大丈夫です。こちらの不注意ですから。すみません、ご迷惑をおかけして。」
それでもなお、謝罪しようとする———当然のことだが———運転手を下がらせると、青年は無邪気な子供の目で運転手と野次馬達を交互に見渡すと、やがて興味を無くしたように、運転手の横を通り過ぎていった。
運転手が数秒後に振り返ると、青年の姿はもうすでに人ごみに消え去っていた。
野次馬達もだんだんと自分達の目的に戻り、路上はいつもどおりの雑踏に包まれた。
- Re: ようこそ、完全創造世界(パーフェクトプログラムルーム) ( No.9 )
- 日時: 2010/09/02 20:51
- 名前: 神酒 理 (ID: QCkuis7p)
午前10:40 真窮都 元新宿 某アパート 503号室
「なにが、あったんだろう……。」
涙で真っ赤に腫らした目をまだ潤ませながら、黒髪の青年———藤原 遊樹は自分の部屋の窓から歪な音が聞こえたアパート前の路上を覗き込む。
しかし、集まっていた人だかりは徐々に消え、またいつもどおりの風景に戻ってしまった。
「先輩……もう……大丈夫なんですか……?」
後ろから消え入りそうな声が聞こえる。
遊樹は慌てて振り返り、泣きすぎでやつれた顔を精一杯、笑顔にする。
「だ、だだ、大丈夫!大丈夫だから!ええと、ええっと、……ごめん……。」
自分の大切な後輩が心配してくれたことに対し、謝罪するべきか、感謝の言葉を述べるべきかわからず———やはり、謝罪をしてしまう。
そんな遊樹の姿を見て、無表情の異国の青年———リコは、あらぬ方向へ目を逸らしながらも、そっと遊樹の肩に手を置いた。
「…先輩…息抜き……しましょう。」
「え?」
それはどういうことか、と遊樹が口を開こうとした瞬間、リコは力強く腕を握るとそのまま———
ズカズカと先導をきって遊樹を引っ張り始めた。
「え、ちょちょちょリリリリリリコ!?一体なにすすすす、うわぁ!!」
リコにエレベーターの中にとき飛ばされ、遊樹はエレベーターの壁に勢いよくぶつかった。
リコはそれを見てみぬ振りをし、何も見えていないかのようにエレベーターの中に入ってくる。
「ちょっと……なにすんだよ!リコ!」
またもや涙目になりながら、遊樹はリコを弱々しく睨みつける。
「……。」
「これからどこへ行こうって言うのさ!!」
リコが完全に無視しているのを見て、珍しく怒りを見せる。そんな遊樹をボタンを押しながら横目でチラッと見ると『答え』を口にした。
口にしてしまった。
その事実が遊樹とその仲間達、そして『世界』の運命すら変えてしまうことに気が付かずに。
あるいは———
それを望んでいたのかもしれないが。
「…さっきの…事件現場の所……です。もしかしたら……『完全創造世界』が……関わっている……かも。」
急に空気が変わった。
湿度や温度が変わったわけではない。
遊樹を取り巻く空気———気配が急速に冷え込んでいったのだ。
「そうなの。」
何気ない一言が、完全に変わっている。例えるならば、そう、液体窒素の中に言葉を放り込んだような。
リコはその変化に気付いていながら、振り返ることができなかった。
できるわけがない。
後ろでは、遊樹が笑っていた。忍び笑い。俯きながら、笑う笑う笑う。
「そっか、それは興味深いね。」
遊樹は、嘲りと憎しみの色を交えながら、言葉をつむいだ。
「また……そうやって皆『人類』を愛してくれないんだ。」
- Re: ようこそ、完全創造世界(パーフェクトプログラムルーム) ( No.10 )
- 日時: 2010/09/02 20:51
- 名前: 神酒 理 (ID: QCkuis7p)
『完全創造世界』
2030年、人類が自分達の『不満』を解消するために手を出した、『脳内操作』。
その『脳内操作』は「記憶障害」「感覚障害」「発狂」等の悪影響を及ぼすとして、更なる研究開発が進められた。
しかし、結果は進歩なし。
いくら高度な技術や科学を導入しても、人工的な『幸福』は、自然なる『幸福』を求める脳味噌には、病原菌の塊と等しい物でしかないのだった。
そんななか、突如ネット上に現れた、『脳内操作』サイト。
それが『完全創造世界』、『パーフェクトプログラムルーム』だった。
『完全創造世界』は、そのサイトに登録することで自分の『部屋』を設けることができる。
その『部屋』はサイト内では【世界】と呼ばれる。
【世界】のなかでは、自分が創造したことは全て現実となる。
ここで、この時代の『脳内操作』について説明する。
『脳内操作』は、パソコン、携帯などの情報が蓄積されている機器ならば可能である。
『脳内操作』のサイトを開くと、その機器から特殊な周波がうみだされ、それが脳に届くと、脳は『電子世界』に繋がることができる。
脳が操作されている分、体は動かないのが問題視されてもいる。
『完全創造世界』では自分の【世界】はルームわけされており、厳重な守りで固められている。
そして、なによりも注目されているのは———
脳に「記憶障害」「感覚障害」「発狂」等の悪影響を及ぼした事例が挙げられていないことである。
そうした条件により、『完全創造世界』はいまや、世界中の人々が利用している巨大な『仮想都市』成り果てたのである。
しかし、そのサイトを製作した者は不明であり、一部の都市伝説となっている。
- Re: ようこそ、完全創造世界(パーフェクトプログラムルーム) ( No.11 )
- 日時: 2010/09/02 20:52
- 名前: 神酒 理 (ID: QCkuis7p)
そんな『完全創造世界』が1度、機能不能になり世界問題になったことがあった。
原因は、『完全創造世界』の目的———『脳内操作』を利用した、たった一人のゲストによる、【世界】と言う名の兵器を使ったことだ。
今まで人々は、自分の不満を解消してくれる『完全創造世界』を破壊しようなど思うだけで犯罪とされると思うほどだった。
しかも、『脳内操作』は、いくら『完全創造世界』といえどかなり脳に負荷がかかる。大掛かりの【世界】を創れば脳もただではすまない。
だが、そのゲストは創った。【世界】という兵器を創ったのだ。
そのルームは『完全創造世界』が停止すると共に削除され、何を創ったのかはあきらかにされていないが、『事件』が起こった時に居合わせた【世界】の利用者は
「急に強制終了された。」
「なんか、いきなり真っ青になって、気が付いたら現実だった。」
などと証言している。
このことから、通常では干渉できない他人の【世界】に回路をつなぎ、世界中のルームをシャットアウトしたのだと。
しかし、これだけのことをすれば、脳も破壊されるだろう。そう警察判断し、『事件』を追う様なことはしなかった。
『完全創造世界』が完全に復帰するまで3ヶ月を要したのである。
そして、この『事件』から、半年がたち、今に至る。
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