ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 闇色のタキシード
- 日時: 2010/10/27 06:35
- 名前: クロウ ◆vBcX/EH4b2 (ID: wlOs4aVY)
どうも、初めまして又は二度目まして。九龍です。
今回は、一方通行の恋をテーマにした作品をかいてみます。
題名を見て「なんでタキシードなの?」と思った方もいるでしょう。
そのわけは、多分あとがきの時に書きます。
ここからは、注意です。
荒らし・チェーンメールはお断りです。即刻立ち去ってください。
僕が嫌いな人……は、ここに来ないはずですが、間違ってという可能性もありますよね。
僕が嫌いなのでしたら、避難した方がよろしいかと思います。
最後に。この小説は、一方通行の恋なので、後味とか悪そうな感じがします。苦手なら、猛ダッシュで逃げてください。
……これでも、残ってくださるんですか?
できれば本文も読んで行ってくださると、嬉しいです。
第一幕 闇の先に
>>1 >>2
第二幕 純白の先に
>>3 >>4 >>7 >>12 >>13 >>14
- Re: 闇色のタキシード ( No.10 )
- 日時: 2010/10/20 18:07
- 名前: 羽百合 蕾 ◆Iw1NgPGzYc (ID: 3nlxUYGs)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode
見えるよ!見えすぎるくらいww
- Re: 闇色のタキシード ( No.11 )
- 日時: 2010/10/20 18:56
- 名前: クロウ ◆vBcX/EH4b2 (ID: mCvgc20i)
羽百合 蕾様へ
それはよかったですよ!
……正直、書いてた時も、見えるかどうか不安でしたし。
- Re: 闇色のタキシード ( No.12 )
- 日時: 2010/10/25 18:52
- 名前: クロウ ◆vBcX/EH4b2 (ID: PlVnsLDl)
さて、いつものように山に来たのはいいものの……。
今日は少し、早く来すぎたか。
とりあえず、木の下で座っているとしよう。
私と林檎は、いつもこの葡萄の木の下で会う。
最初に林檎と会ったのも、確かここだったな。と、懐かしいころのことを思い出す。
木が風に揺れる。私の体にも風が当たる。
風が少し冷たく感じられた。秋の風は冷たく、もう少し着こんでくればよかったと思いながら、パーカーのフードをかぶった。
風に揺れる髪を指に絡ませて遊びながら、ふぅ、と息をはく。
すると、冷たい風が止んだ。
「……あの、すみません。待ちました?」
顔を上げると、白いパーカーに白いマフラー。そして黒いスカートといった格好の林檎がいた。
ああ、やっぱり私もマフラーくらいは持ってきた方がよかったな。と思い、小さくため息をつく。
「べつに。今ちょうど来たところだ」
本当に、ついさっき来たからな。
どうやら、私が思っていたほど早かった、というわけでもなさそうだな。
私が答えると、林檎はにこにこと笑いながら、私の隣に座って足を延ばす。
私は葡萄の木の幹に置いている、ワインの入った籠を林檎に手渡す。
「林檎、お前、ワインが欲しいと言っていただろう? このワイン、いるか?」
「え? いいんですか? これ」
林檎が籠の中身を見て、そう確認してきた。
私はただ頷く。林檎はそれを見て、満面の笑みを浮かべ、何度も礼を言った。
しかし、自分が作ったものでここまで喜んでもらえると、こちらまで嬉しくなる。
ここの木の葡萄も、大粒で甘い。とても良いワインが作れた。
「……林檎」
「はい?」
「そのワインは、何に使うんだ? 料理か何かか?」
私の質問に対し、林檎は嬉しそうに答えた。
「父の誕生日のプレゼントと、料理につかうんです。父はワインが好きなので、とても喜ぶと思います!」
林檎がそう答える。私の2つの予想が、どちらも当たった。
父の誕生日に、か。
———そういえば、私も父の誕生日には、いつもパンやワインをプレゼントしていたような。
そのたびに父は喜んでくれたな。
林檎の父も、私の父のよう、喜ぶと良いが。
「本当に、ありがとうございます。ディオスさん」
林檎がそう言って、こちらを向き、微笑んだ。
私も微笑み返して、空を見上げた。
風が冷たく寒いはずなのに、何故か頬がほんのり温かかった。
- Re: 闇色のタキシード ( No.13 )
- 日時: 2010/10/25 21:25
- 名前: クロウ ◆vBcX/EH4b2 (ID: MKQiWlnd)
林檎が、駆け足で帰っていく。
林檎が私の方を向き、大きく手を振った。
私も手を振り返した。
林檎の姿が見えなくなった。
しかし、何なんだろうな。アレは。
そう思いながら、胸に手をあてて、ため息をつく。
この季節にあまり服を着込んでいないにもかかわらず、体はほんのりと温かい。
先ほども頬が熱くなった。
それに、林檎と毎日会うごとに、1人の時間がとても寂しいと思えるようになってきた。
何故に、突然寂しいなどと思うようになったのだろう。今までは、1人でいても別にどうも思わなかったのに。
林檎と会ってから、私が変わってきている。
その事実に少しだけ腹が立った。
人間が、林檎が神である私を変える。そう考えると、林檎に変えられる自分にも、自分を変える林檎に対しても苛立ちを覚えた。
冷たい風が体に当たる。
先ほどまで温かかった体が、少しずつ冷えてくる。
手に息を吹きかけると、少しの間は手が温かく思えた。
林檎に変えられる自分。少しずつ、少しずつ、バラバラに壊れてゆく、過去の自分。
頭を抱えて、縮こまる。
苛立ちが消え、恐怖が芽生える。
だっが、それでも、私は林檎を嫌いになったわけではない。むしろ、嫌いになれない。と言った方が正しいのではないのだろうか。
自分が少しずつ壊されても、人間の女が嫌いになれない。その女に対して、何もしようともしない。ギリシャの神から見れば、なんとも奇妙なものだ。
父は自分達を拒絶する人間の女に対して、残酷な運命を背負わせ、一生苦しめさせる。
私も、そうだ。自分を拒絶するものには、絶望を与える。人間を狂わせる神のはずなのに。
———やはり、自分が変わり始めている。
そう思い、小さく呻く。呻き声に答える者もいなく、何故か胸に鋭い痛みが感じられる。
人間が嫌いになれない。でも、嫌いになれないのは林檎だけで、他の人間はどうにでもなる。
1人の人間にだけ、このような感情を抱いている私は、きっと頭がどうかしている。
その時、やっと今までの感情の整理がついた。
相手を好いていて、相手に変えられて、怖くて憎くて、でも嫌いになろうとしない。林檎がいないと、なぜか寂しい。
自分が林檎をとても好いている証拠だ。
そして、その感情は友に向けている感情ではないことのだろう。
多分、多分。私は———。
彼女のことが、好きで、彼女に惹かれているのだろう。
こんなに、1人の人間に悩まされる自分は、本当にどうかしていると思え、苦笑する。
だが、間違いがない。私は、彼女を愛しているんだ。
「愛している、か」
呪いの言葉でも吐くように、そう呟く。今の自分にとっては、この気持ちは、まさに呪いだった。
なんて、忌々しく、愛しい感情。
初めての感情に戸惑い、苦しみながらも、天に帰る馬車が来る場所へ、歩いて行った。
- Re: 闇色のタキシード ( No.14 )
- 日時: 2010/10/26 21:04
- 名前: クロウ ◆vBcX/EH4b2 (ID: wlOs4aVY)
天界に戻ってから、自然とため息がもれた。
恋。なんて、愛しく、忌々しい感情。
愛しい。相手を思う気持ちと、幸せな時間が。
忌々しく、憎らしい。相手に変えられる心と、耐えがたい苦痛が。
今も、胸辺りが痛い。
細い糸できつく縛られたような感じがして、息苦しく、痛い。辛い。
こんな感情、くしゃくしゃに丸めて捨ててしまえればいいのに。
そう思いながら、こぶしを固く握りしめた。
嫌だ。こんな自分は、嫌いだ。
そう思いながら、体育座りになって、手で顔を覆った。
体が小刻みに震えて、どうしたらいいのか解らない。怖い、怖い、怖い。
解らない、でも、怖い。
「おい、どうしたんだ、ディオニュソス」
突然声をかけられ、顔を覆っていた手を離し、顔をあげる。
私のすぐ目の前には、アポロンがいた。
アポロンは私の反応に驚きながら、呟いた。
「これはまた、厄介なことになったな……」
アポロンの言葉を聞き、私はムッとした顔でアポロンを睨みつけた。
だが、今の私はとても弱弱しく見えるらしい。いつもは慌てて修正するが、今日は少しばかり困ったかを押して見せた。
その後、すぐにアポロンは私に先ほどの謝り、私の隣に座った。
「……何をしに来た」
震える声で、そう言った。
アポロンは目を丸くしながら、私の目を見た。
「ディオニュソス、最近元気がないようだが、どうしたんだ?」
「お前には関係がないだろう」
「いいや、あるな。お前は私の兄弟だ。それに、父も心配しているぞ」
アポロンがそう言って、心配そうに私を見た。
私は今の自分を見られたくなくて、目をふせた。
「お前、あの女と会ってから、ずっと悩んでいるようだが?」
アポロンがそう言い、私を見た。
アポロンの言う女とは、林檎のことだろう。
悩んでいる、か。確かにそうだな。あの女と会ってから、自分は悩まされてばっかりだな。
そう思うと、自分も、この感情も、馬鹿馬鹿しくて笑えてくる。
アポロンは心配そうに私の顔を覗きこんだ。
「私のことは気にしなくていい。本当に、気にしなくていいからな」
力のない笑みを浮かべて、アポロンにそう言った。
アポロンはまだ何か言おうとしていたが、諦めてくれたのか、無理をするな、と言って、歩いて行った。
アポロンの後ろ姿が見えなくなった後、私は空を見上げた。
ぽたり。
手に、一筋の雫が落ちてきた。
雨は、降っていない。透明な液体が頬をつたい、手にぽたぽたと落ちてきた。
痛い、痛い。胸が締め付けられる。心が壊れて、自分まで壊れてしまいそうで。怖くて、不安で、だが、この感情を手放せなくて。
この苦しみに、耐えられなくて。
その時、私は生まれて初めて、涙を流した。
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