ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- P.otencial〜異能のチカラ〜
- 日時: 2010/10/05 09:00
- 名前: ツェベリンスキー (ID: WWouN6/z)
どうも、ツェベリンスキーと申します。
小説を書くのは初めてですが、以後お見知りおきを。
舞台は、現実世界の超能力サスペンスモノです。
某『とある魔術の〜』などといったエスパーモノが
好きな作者です、その手のものが好きな方も嫌いな方も是非読んでいただきたいです!
第一話 『消された村。消された歴史』
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- Re: P.otencial〜異能のチカラ〜 ( No.2 )
- 日時: 2010/10/04 06:41
- 名前: ツェベリンスキー (ID: WWouN6/z)
(あなたロシア人?)
「ねえ、大丈夫…?、вы русский?」
道端に、一人の男が倒れていた。
黒い髪に黄色い肌、東洋人の容姿をした男。厚く着込んだ衣服の上には
複数の血の染み…背中から何発もの銃弾を食らっていたようだった。
(助けて……くれ)
「Помогите……」 息も絶え絶えになりながら、男が母親に気付いたのか、そううめき声を上げる。
(一体何があったの?)
「Что с вами!?」
母親が男にそう聞くと、男は懐から 小さなアンプルを取り出し
震える腕を母親のほうへ伸ばす。血まみれになったそのアンプルの中には
少し緑がかった透き通った液体が満杯に入っていた。これは?と母親が首を傾げる。
「これを・・・・奴らに渡す訳にはいかない・・・匿ってくれ。」
奴らとは誰?と母親は聞こうとしたが、それをする間もなく
男は伝える事だけ伝え 頭をガクンと落とし雪面に突っ伏した。
出血多量で意識を失ったようだった。
恐怖のあまり、男の子が母親の服をぎゅっと掴む。
それを察したのか、母親は彼の頭をゆっくりと撫で「大丈夫よ。」となだめた。
「とにかく、彼を家まで運ばなきゃね・・・・・・」
パチパチ、と暖炉の火が爆ぜる音と共に
意識を失っていた男が再び目を覚ました。
気付けば彼は、ベットに横たわり 傷にも包帯が巻かれていた。
「大丈夫?一体何があったの?」
母親が、水とカーシャが乗ったプレートを男の枕元へ運ぼうとすると、
男はそれを「いらない」と手で遮った。
「貴方、名前は?」
「ハヤミ・・・・速水龍一郎。」
男は、途切れ途切れの声でそう答える。
それを聞くと、母親は 数m離れたところにあった机を指さしこう聞いた。
「あれは・・・・・何?」
指をさした先には、先ほどのカーシャが乗ったプレートの横に
一丁の拳銃。ロシア製のトカレフが置かれていた。
勿論、おもちゃやレプリカの類ではなく 実弾入りの本物だ。
勿論、それが拳銃であるという事は見れば誰にでもわかる。
彼女が聞いているのはむしろ、男が何者であるか?という事だった。
だが、男は頑なに答えようとはしなかった。
母親が 『ふうっ』と呆れたような溜息をつく。
どうやら日本人のようだけどこの男は、犯罪者か?何かに追われてるのか?
警察に突き出したほうがいいのか・・・・この謎の日本人をどうするかという
対応に思索を巡らせているその時だった。
家の外から、村人達の喧騒のような声が聞こえてきた。
「何かしら?」
母親が窓から外の様子をみると、
先ほどまで居た街道に、何やら人だかりが出来 村人の喧騒が聞こえてきた。
- Re: P.otencial〜異能のチカラ〜 ( No.3 )
- 日時: 2010/10/04 06:51
- 名前: ツェベリンスキー (ID: WWouN6/z)
「どういうことだ!? 俺達は何もしていないぞ!!」
村の若者の一人が、目の前に立つ男達に抗議する。
だが、威勢の良い男も、体に複数の小銃を付きつけられれば
ハムスターのように頼りなく小さくなり、黙り込むことしか出来なかった。
「何度も言わせるな。この村に反政府分子が紛れ込んだのだ。」
「この村はこれより我々 ソビエト国家秘密警察が接収する。」
先頭に立っていた、背の高い士官がそう言う。
その冷徹な目とドスの聞いた声、そして『秘密警察』の肩書は最初は抵抗の意思を示していた村人達を一気に黙らせた。
この連中に逆らえば、反逆分子として粛清……良くてシベリア更迭は確実だからだ。
村人達の様子を 士官は、見下したように「フッ」と笑うと 後ろに居た部下達に対して大声で指示を飛ばした。
「総員、ガスマスク装着!」
「奴は、確実にこの村のどこかにいる!!徹底的に探し出せ!! 例の物を確実に回収しろ!」
その声と共に、銃を持った兵士達が村中に散っていく。
顔には、何故か物々しいガスマスクを装備し その姿が一層住民たちの恐怖を煽った。
兵士達は家を次々と回り、ドアを蹴破り、棚を荒らし、まるで強盗でも入ったかのように
家をめちゃくちゃに荒らしまわる。折角飾り付けたオーナメントや祭りの準備も
『捜査』の名の下に全てめちゃくちゃに破壊される。その光景を 村人達は
ただ黙って見ているしかなかった。
「畜生…クレムリン(ソ連議会)の狗め・・・・・」
村人の一人が、こう呟いた。
先ほどの威勢のよい若者だった。
彼としては誰にも聞こえてないほどの声量で言ったつもりだったのだろう。
だが、その呟きは不運なことに、先ほどの士官の耳に届いてしまった。
「貴様ッ!!今の発言は何事だッ!!」
士官は、若者のもとまで近づき 持っていた小銃の銃床で何度も若者を殴りつける。
そのリンチの光景すらも、村人はただ傍観するしかなかった。
≪こちら『チョールナヤ(黒)』、未だ目標を発見出来ず≫
≪こちら『クラースィバヤ(赤)』、次の家屋の捜索に入ります。≫
士官の無線に、色分けされた部下達の班からの連絡が次々と入ってくる。
彼らの押し入り強盗の捜索は村の隅々まで着々と浸透していた。
そこらじゅうで、家を荒らされた子供や女達のすすり泣きの声が聞こえる。
そして、捜索隊の一つが、とうとうハヤミの隠れている家の前にさしかかった—————————————
「酷い。何てことを・・・・・・」
母親は、恐怖や怒りのような様々な感情が入り混じった声を上げた。
ハヤミは、外で起こっている事が何かを既に完璧に把握しているようだった。
最初からこうなるであろうことは、彼自身にもなんとなく察しがついていたからだ。
「秘密警察だ!入るぞ!。」
とうとう、秘密警察が家の目の前に立ったその時だった。
ハヤミは覚悟を決め、起き上がり、コートを羽織り 『アンプル』を懐のポケットに仕舞い
最後に机の上に置いてあった拳銃を手に取り、それを家の扉のほうに向け 叫んだ。
「伏せろ!!」 その声を聞き、母親は思わず身を屈めた。
そう言うと共に、バンッバンッという音と共に拳銃から数発の銃弾が発射される。
飛んでいた銃弾は、ドアを突き破りその前に立っていた秘密警察の兵士の頭を同時に吹き飛ばした。
「ッ!!! 居たぞ!! 奴ッ・・ガッ!!』
撃たれた兵士と一緒に居たもう一人の兵士が、村中に響きわたるような声を上げ、知らせようとするが
続けざまに撃たれた銃弾で 彼自身も地面にキスをする事になった。
だが、消音機もつけずに放たれた銃声に 村中にいた兵士達がその存在に気付く。
「クソッ!!・・・・すまないッ!!!」
取り乱したハヤミは、近くに居たアリョーシャを捕まえ自らの体に引き寄せ
その頭に銃を突きつけた。 恐怖のあまり、アリョーシャが泣きだす。
「う・・・・ぇ・・・うぇぇぇぇぇっぇええええええええええええんん!!」
「ッ!! アンタ、待ちなさい!何をする気!!??」 母親が声を荒げるが
その言葉を遮るように、ハヤミが銃で母親を殴って気絶させた。
母親がバタンと床に大きな音を立てて倒れ込む。
もはやこの時点で、アリョーシャは自失状態となり、声すらも出せない状況になっていた。
「すまない・・・すまないすまないすまないすまない・・・・人類の為なんだ。」
- Re: P.otencial〜異能のチカラ〜 ( No.4 )
- 日時: 2010/10/04 07:00
- 名前: ツェベリンスキー (ID: WWouN6/z)
ハヤミは、アリョーシャを人質に取ったまま 家を飛び出す。
家の周りには、既に秘密警察の兵士達が続々と集まりつつあった。
ハヤミは彼らに対して散発的に発砲を繰り返しながら
距離を取ろうとする。 彼らにとってその気になれば射殺は簡単な事だが、
相手は子供を人質にとっている。いくら残忍な秘密警察とは言え、兵士達としてもそれは
躊躇われたのだろう。だが、ゆっくりだが確実に 包囲網はハヤミを追い詰める。
そして、とうとうハヤミは 秘密警察の兵士達に四方を完全に包囲された。
完璧に互いが膠着状態の中で、秘密警察側から 背の高い士官がハヤミのほうに歩み寄る。
「大人しく投降して、例の物を渡せ。そうすれば罪を償うチャンスをやろう。」
士官をそう言って、手をクイクイと動かし 『差し出せ』という意思表示をする。
一方ハヤミは、銃の引き金に手をかけて頑なにそれを拒んだ。
「罪だと!? ふざけるな。これは人類が生み出した『負』の象徴だ。お前達がこれを使ったら人類がどうなることか…」
「これを始末する事が、僕ら研究者の責任だ。」
目が血走り、いつ引き金を引いてもおかしくないような状況だった。
士官はそれを冷静に流し、続けた。
「負の遺産?違うな。それは科学が生み出した有益な産物だよ。我々にとっては絶大な力となる。」
「さぁ、早くそれを渡せ。」
士官は、先ほどより一層語気を強めた。
緊迫状態は、張りつめた糸のようの頂点に達し 今にも破裂し切れる寸前のところまで来ていた。
だが、ハヤミはそれでも最後まで首を振り続けた。
「仕方ない」 そう言って士官は右手を宙に向けて挙げた。
その瞬間、ドン!!という拳銃より重い発砲音が 寒空の中に響き渡る。士官がひそませていた狙撃手の
銃弾によって、張り詰めていた糸は切られた。
それと共に、ハヤミの両足が千切れ、彼の体はそのまま地面に崩れ落ちた。
流れ出す血が真っ白な雪のスポンジに吸い込まれ雪面が深紅に染まっていった。
ハヤミは、薄れゆく意識の中で最後の力を振り絞り、懐にあったアンプルを手に握りしめた。
士官がそれに気付き、「やめろ!」と声を上げたが、遅かった。
「神は…人類にどういう罰を課すんだろうな……」
握力を込めて握りしめたアンプルは、パリンと音を立てて割れる。それはハヤミの命が砕ける音でもあった。
中に入っていた緑色の液体は、一瞬のうちに気化し大気中に紛れていった。
「クソッ!!……やりやがった!!! 『ウイルス』を流出させやがった!!」
そう叫んだ瞬間に、士官は苦しみだし突然地面にうずくまった。
鼻や、口から血が大量に溢れだす。
「が・・・・っ・・・『覚醒』しない・・・そうか・・神は、俺を選ばなかったということ・・・・・か。」
「総員に告ぐ、『プランB』発動だ。村人を全員始末し、この村を焼き払・・・・・う」
そう言い残し、士官も寒空の下に散った。
『ウイルス』の影響を受けなかった残された隊員達は、士官の命令を実行しようと動き出した。
だが、その中で兵士達の頭の片隅で 士官が残した奇妙な言葉がループした。
『覚醒』?——————————————————
- Re: P.otencial〜異能のチカラ〜 ( No.5 )
- 日時: 2010/10/04 06:46
- 名前: ツェベリンスキー (ID: WWouN6/z)
村中で、同じような惨状が繰り広げられていた。
先ほどの士官と同じような症状が、多くの村人に発症していた。
ハヤミが流出させた『ウイルス』は、瞬時にして村中に広がり
多くの村人の命をものの数分で奪い去った。
「コイツは酷いな……」 ガスマスクをした兵士の一人がマスク越しに呟く。
プランB———ウイルスが流出した場合、感染を抑止する為に周辺の感染者を含めた全員を始末する。
そう出撃前のブリーフィングの時に説明されてはいたが…この惨状では、わざわざ俺達がそれをする必要はないな。
とその兵士は思った。それくらい、辺り一帯には死人の姿しかなかった。
そう思っていた矢先、一人うずくまっている生存者を見つけた。
一番最初に、こちらに対して反抗してきてリンチされたあの若者だった。
他の罹患者と同じように、鼻血を垂れ流し、うずくまっている。
コイツももうそう長くない、早く楽にしてやるか…兵士はそう判断し、彼に銃口を向けたその時だった。
兵士は、自らの腕が妙に熱くなっているのを感じた。
凍傷の兆候か?と最初は思ったが 違う……本当に『熱い』
「熱い・・・・うっ何だこりゃああああああああああああああああああああああああ!!!』
兵士は明らかに取り乱した、自分の持っているマシンガンが 熱でまるで飴細工のように
くにゃりと曲り、とろけ落ちる。それと同時に自分の腕から青白い炎が付き、それがみるみるうちに
全身に回っていく…ものの十秒としないうちに、その炎は兵士の体中に回り 彼の体を焼き尽くした。
しばらくして・・・青年の頭痛と出血は止まった。鼻血を拭いながら、青年は奇妙な感覚を感じていた。
自らの中に、今まで自覚できなかった力が芽生えた感覚。
現に、今自分を殺そうとした兵士は、謎の炎に包まれ灰塵に帰した。
「何なんだ…この力は…」
時を同じくして、別のところでも複数の悲鳴が上がっていた。
「何だ!! 何だこのガキ!!銃弾が効かない!!」
バババババババババッとマシンガンの乱射音が村に響き渡る。
銃口の先には、ハヤミに人質に取られた小さなアリョーシャが立っている。
だが、無数に飛んでいく銃弾は ただの一発も届かず まるでバリアのような
見えない壁に弾かれる。
「ママ…ママ…ママァァアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアァアァァ!!!!!」
『ウイルス』の流出で、母親を失ったアリョーシャは パニックに陥っていた。
その上で、謎の力に目覚め暴走する彼を止める事は誰にも出来なかった。
「ぐっぎゃああああああああ!!俺の腕がっあああああ!!!」
「ぐ・・・息がくる・・・・・」
発砲していた兵士達が、次々と『見えない力』の攻撃で、腕を折られたり、窒息したりしていく。
何の事情も話されていない兵士達にとってはまさに地獄のような状況だった。
村中の各所で、同じような光景が繰り広げられていた。
殆どの村人が発症後すぐに息絶えたが 『生き残った』何人かの村人は
皆 何らかの『能力』に目覚める。目覚めた『能力者』達は、
牙を向く秘密警察の兵士達を悉く蹴散らしていった。
そういった戦闘が、十分程続いたその時だった。
突然、上空で耳をつんざくような、キィィィイィィィィイィィィイィィィイィィィイィィィンという音が響き渡り
生き残った村人達も、秘密警察の兵士達も同様に空を見上げる。
上空には、複数のソ連の大型爆撃機が飛行しているのが見えた。
多くの者がそれに気付いた瞬間、爆撃機から、村へ向けて絨毯爆撃が敢行される。
ドドドドドオドドドッドオドドドドオドドドオドドドドオドドン!!ともはやこの世のものとは思えない
轟音と、地獄の業火が、小さな村の全てを飲み込み、家も、木々も、人も全てを砕き、焼き尽くした——————————。
- Re: P.otencial〜異能のチカラ〜 ( No.6 )
- 日時: 2010/10/04 07:03
- 名前: ツェベリンスキー (ID: WWouN6/z)
◆
この一連の騒動は、後に『コルプチ村事件』と呼ばれソ連上層部の一部の者しか知らない隠匿事項として、歴史の闇に葬られた。コルプチ村は、地図から抹消され ソ連上には『存在しない』という事になった。
ハヤミをはじめとした研究員が開発した『ウイルス』も、全てクレムリンによって記録が抹消され後のペレストロイカ、情報開示、そしてソビエト連邦崩壊の流れの中でもこの情報が他国に漏れる事は決してなかった。コルプチ村で生まれた『能力者達』や、それを誘発する『ウイルス』も史実には一切記載がない。
奇しくもこの1977年。ソ連国内で、『ソ連風邪』と呼ばれる新型インフルエンザが爆発的猛威をふるい、
感染爆発はソ連国内に留まらず、欧州、北米、南米、ひいてはアジア全土にも広がり、多くの死者を出した。
だが、その死者の何%かが、『ソ連風邪』ではなく、拡散した例の『ウイルス』によるモノで
その過程で世界各地に多くの『能力者』が出現したことは教科書には記されていない、所謂『裏の歴史』となっている
時は流れ、30年後。
日本———————————————————————2009年。冬。東京都品川区。
「え〜という訳で、新型インフルエンザが昨今猛威をふるって・・・っておい、聞いてるのか浜見!」
日本中、どこにでもあるような教室の風景。どこにでもいるような高校2年生 浜見俊介は
喚き散らす担任の話を、頬杖を突き窓の外を見ながら右から左に流していた。
どうせ、保健通信の内容をそのまま読んでるだけだろう。
手洗い、うがい、マスクを着用しなさい。そんな当たり前な事、小学生のガキでも
わかるようなこと、いちいち言及してんじゃねぇよこのタコ。
と、心の中で浜見俊介は思っているわけだが 先生に逆らって
いちいち面倒事になるのもアレなので反論しないでいた。
そのうち先生も諦めるだろう……
と思った矢先、キーンコーンカーンコーンとHRの終わりを告げるチャイムが
鳴る。今日も今日とて退屈な学校が終わる。
「ハマミー、遊びに行こう!!」
後ろから、一人の女の声がした。
同級生で、幼馴染の柚木美香だった。
ハマミーというのは彼女がつけたあだ名だった。
「今日は金欠だし、皆でマックでも行こうぜ。」
「賛成ッ!!」
もう二人、中学時代からつるんでいる親友の結城幸太、須藤大樹の二人も居た。
基本的に、浜見は いつもこの4人と一緒になってそれなりに楽しい学校生活を送っている。
今日もいつもとかわらない、平凡な日々を過ごそうと思っていた。それが当たり前だと思っていた。
だが、運命とは数奇なモノで、そういう事を根底からぶち壊してくれるものらしい。
◆
「じゃあ、また明日〜」
ダラダラマック会が終了し、結城と須藤と分かれ
美香と二人でとぼとぼと歩きながら帰っている時だった。
「ねぇ、見て!飛行機雲!」
美香が、夕焼け空を指差しながらこちらを見つめる。
見上げると、確かに綺麗な飛行機雲が、夕焼けの空を横切って……
「…おい、あれ飛行機雲か?」
浜見は、その光景に奇妙な違和感を感じていた。
飛行機雲というよりあれは…隕石?いや違う。
「あれ、飛行機が墜落してるぞ!?」
確かに、飛行機が炎上しながら空中分解して落ちて行っている。
美香が「うそだ〜」と言っているその時だった。
ほんの数十m先で、ドゴンッ!という落下音がする。
どうやら、例の空中分解した飛行機の破片が落ちてきたようだった。
見に行ってみよう!好奇心の強い美香が速水の手を引き破片のほうへと走る。
落下した破片は、どうやら何かのコンテナの破片のようだった。
コンテナには、ロシア語の文字と思われる文字で何かが書かれている。
「読める…訳ないよね。ハマミー馬鹿だし。」
「こんなの普通の高校生ならだれでも読めねぇよ。」
美香の毒に対し浜見が突っ込みを入れる。
だが、一体何が入っていたコンテナなんだろうと浜見は気になった。
コンテナのサイズ自体はそこまで大きくないようだが…何かのパーツや、液体か何かだろうか?
だがその時は それが一体どんなモノなのかという事の検討すら彼にはつかなかった。
後になってわかったことだが、その飛行機は 意図的に東京上空で爆破されたこと。
そして、その飛行機の中には、ある『液体』が満載されていた。
その『液体』は、爆発の衝撃により、猛烈な勢いで気化し、東京を始め
神奈川、千葉、埼玉、栃木…関東一帯、そして日本中へと広がっていくのにそう時間はかからなかった。
そして、この事件が世界規模で動く大きな陰謀の最初の狼煙となるとは
この時の浜見達は知るよしもなかった。
その夜からだった。
彼の体に、異変が現れ始めたのは————————————————————————
第一話 完。
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