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双子戦争∞
日時: 2010/10/11 12:40
名前: 栞。 (ID: UwYbeBF1)

登場人物
フォルテ帝国皇帝 シュラ
ピアノ小国国王 シュリ

side-シュラ
 大国フォルテピアノから独立し、この国が帝国になってからもう5年が経つ。
 そして、シュリと別れてから5年。
 帝国になってから、確かに暮らしは豊かになった。
 でも、
「ナニか大切なモノを忘れてきてしまった気がする…」
コンコンッ
「誰だ?」
「カイです。」
「入れ。」
 俺は椅子に沈めていた体を起こした。
「小国フェルマータが、明後日に攻めてくるそうです。いかが致しますか?」
「決まっている。全滅だ。」
(俺が行ってみるのもいいな…)
小国フェルマータ…
あそこはロクな戦力がなかったから野放しにしておいたが、この国にはむかうのなら…
口角がきゅっと上がる。
(楽しませてくれよ…フェルマータ)
「いけません。」
「なにも言ってないだろう…」
「顔に出てます。」
(ちっ…)
俺は思わず唇を噛んだ。
サアァァァッ-
「今日は雨か…」

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Re: 双子戦争∞ ( No.1 )
日時: 2010/10/11 02:36
名前: 栞。 (ID: UwYbeBF1)

side-シュリ
 私は書類にサインする手を止め、窓を見上げた。
「雨か…」
 しばらくぼーっと窓の向こうをみつめていた。
 私は雨が嫌い。
 雨を見るだけで1日憂鬱な気分になる。
「シュリ様、少し休憩をとりましょう。」
「え…でも、まだ書類…」
「シュリ様は真面目過ぎます。それでは体がもちませんよ。」
 ハクさんが私の手から書類を取る。
「紅茶、入れましたから。」
「ふぅ…ありがとうございます。ハクさん。」
 私は紅茶を口に運ぶ。
「…ダージリンですか?」
「そうです。シュリ様、ダージリン好きでしょう?」
 覚えてくれていたことに少し感動。
「シュリ!」
「ゼンさん…廊下は走らないで欲しいのですが…」
「そんなことどうでもいい!!隣国のフェルマータが、明後日フォルテに攻め入るそうだ!!」
「フォルテに!?」
 無謀だ…!
 フォルテは軍事力がずば抜けている。  フェルマータのかなう相手ではないわ…!!!
「フェルマータもフォルテに入ると…ますますつらくなりますね…。」
 ハクさんの言う通りだ。
 どうしよう…

Re: 双子戦争∞ ( No.2 )
日時: 2010/10/11 12:15
名前: 栞。 (ID: UwYbeBF1)

side-シュラ
 フェルマータが攻めてくるのは、明日。
 口角が上がったまま下がらない。
「シュラ様…」
「アヤ、どうかしたのか?」
「シュラ様はフェルマータを倒すのが嫌なのですね…」
 え…?
「なにを言って…」
「だって今、シュラ様泣きそうになっていたもの。」
 俺が…潰すのを嫌がっている…?
「あなたの意志に反することはなさらないでください。」
 アヤ…なんなんだ、一体。
 アヤは時々おかしな事を言う。
俺が小国を潰すのを嫌がるなんて有り得ない。だって、帝国になるまでに数え切れない程潰したの…だか……ら……?
「あれ?」
 俺はその時、望んで潰したのか…?

Re: 双子戦争∞ ( No.3 )
日時: 2010/10/11 12:58
名前: 栞。 (ID: UwYbeBF1)

side-シュリ
 兄さん、あなたはこんなことを望んでいるのですか…?
 思わず泣きそうになってしまった。
 “あの日”から5年。5年であなたは変わってしまいました。
(あの頃の兄さんはどこへ行ってしまったのですか…?)
 私の頬に冷たい雫がながれる。
 フェルマータがフォルテに攻め入るのは明日。
 明日はきっと、血の雨が降る。
 私は震えた。フェルマータの兵士が殺されるのも勿論嫌だが、兄さんが血の海の中にいるのが、何より怖かった。
「シュリ様、大丈夫ですか?」
 ハクさんが優しく話しかけてくれる。
「大丈夫です。」
 仕事を続けますからと言って、部屋から出て行ってもらった。
(兄さん…)
 叶うなら、もう一度兄さんと話がしたい。
 でも、それも叶わぬ夢だった。

Re: 双子戦争∞ ( No.4 )
日時: 2010/10/11 14:52
名前: 栞。 (ID: UwYbeBF1)

side-シュラ
 フェルマータは潰した。
 俺がこの手で。
 俺一人でフェルマータを潰した。あっけなかった。本当にロクな戦力が無くて、赤子の手を捻るのと同じようなものだった。
「これで、残るはピアノだけですね。来月にでも潰…「やめろッ!!!!!!!」
 気がついたら叫んでいた。
 カイも驚いている。
「…あの方がピアノにいらっしゃるからですか?」
「違うッ!!あいつとはもう縁を切った。あいつは関係ない…!!!」
「なら潰してもいいでしょう。」
 カイの言葉が胸に突き刺さる。
「……いい…だろう…“あの日”と同じ日に、ピアノをうつ。ピアノに手紙を送れ!!」
「わかりました。」
 ピアノの様な小国に負ける訳はない。じゃあ、何故俺はピアノに手を出すのを嫌がっていたのだろう。
 シュリ…
 不思議と俺の片割れの顔が浮かぶ。
 大好きだったシュリ。可愛いシュリ。優しいシュリ。
 あの頃の俺はシュリといつも一緒にいた。
 俺の隣にはシュリがいて、シュリの隣には俺がいた。
 それが当たり前だった。
 でも、成長した俺はフォルテピアノの生活にうんざりしてきた。
 そして“あの日”。止めるシュリを半殺しにして、俺は帝国を築いた。
 忘れもしない“あの日”は12月25日。
 俺達の誕生日。
 そして俺はまたあの悲劇を繰り返す。


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